『母と暮せば』
2015年(平成27年)・日本 監督/山田洋次
出演/吉永小百合/二宮和也/黒木華/浅野忠信/加藤健一/本田望結/広岡由里子
辛気臭い映画だった。
『Winny』
2023年(令和5年)・日本 監督/松本優作
出演/東出昌大/三浦貴大/和田正人/池田大/阿部進之介/田村泰二郎/渡辺いっけい/吉田羊/吹越満/吉岡秀隆
7年の歳月をかけて、最高裁で無罪を勝ち取った金子であったが、無罪判決から1年7か月後に死去し、「未来の技術者のため」という意志を貫いた金子が再び技術者として過ごせたのは、わずか半年ほどであった。日本からGAFAが出なかった大きな原因の一つとされた事件。出る杭は打たれるごとく、何も分からない日本国の官僚・政治家たちが寄ってたかってせっかく生まれた日本人の一人の天才を殺してしまった。判決など出来るはずもない裁判官が天才を殺してしまった。winnyというソフトを訳も分からず使った経験があることが驚きだった。もしも彼の才能がそのまま生かされていたら、日本のIT世界は大きく変わっていたことだろう。良くも悪くも「平等」思想を押し付ける日本社会には天才は必要ないのかもしれない。
『ナイトメア・ホリデイ』(Holiday)
2018年・アメリカ 監督/ロバート・クック
出演/マーカス・ジャン・ピラエ/マディソン・ローラー/リチャード・H・ナーヴィク/ディンピー・アナンド
映画とはいえ若い娘が拉致されて薬を飲まされて何をされているのかも分からない時間を過ごすのは、ちょっとどころか酷く痛ましい。3人の娘の父親だった経験からすれば、こんなことがあり得るから娘一人では海外留学もさせられないだろうと。そんなことは関係なく娘たちに海外留学を勧めたのに、大人になってから留学させてくれれば良かったのにと言われたときは、元妻と目を合わせて「言ったじゃない。」と思わず合唱したことがあった。
『バイオレント・ハート』(The Violent Heart)
2020年・アメリカ 監督/ケレム・サンガ
出演/ジョヴァン・アデポ/グレース・ヴァン・パタン/ルーカス・ハース/メアリー・J・ブライジ
おぞましい映画だった。なかなか観る映画が見つからないこの頃、久しぶりに力のある映画だった。ストーリー的に言えば、この映画に登場する人たちはこの後どうやって生きていくのだろうか。高校の教師をしながら何食わぬ顔で自分の過去を捨て去っている人が自分の父親だったら。たまたま知り合った人物が黒人だったら。アメリカの闇は深い。トランプが平気で大統領を演じられる社会は病んでいる。ひとりでアメリカという国をくさしている。ただ、それを熱狂的に支持する多数の集団が存在するという事実の方が、ショックなことでありおぞましいのかもしれない。
『カディア 内なる世界』(Cadia: The World Within)
2019年・アメリカ 監督/セドリック・ゲゲル
出演/キーガン・セルズ/カーリー・セルズ/タナー・セルズ/コービン・バーンセン/ジェームズ・フェルプス
母親を亡くしたマシュー、デイビッド、ルネの3兄妹は、叔母アリスの家に引き取られることになった。ある日、デイビッドとキャッチボールをしていたマシューは庭で黒い石を見つける。その石をつかむや否や、2人は見知らぬ森の中に飛ばされてしまう。そこで不審な人物を見かけたマシュー2人は命の危険を感じ、再び石を掴んで何とか元の世界への帰還を果たした。こっそり読んだルネの日記に不思議な森の記述があったことを思い出…(Filmarksより)
『プレシェント 予知能力者』(Prescient)
2015年・シンガポール/アメリカ 監督/ハン・シー・レム
出演/マイケル・ピッキリーリ/パメリン・チー/ピーター・ビショップ/ニコレット・ハート
遺伝性疾患の治療法を研究している医者の主人公は、生まれつき誰かの目を見ると、時折その人の死が見えてしまうという特殊予知能力を持っていた。こんな予知能力なんていらない。観ていてわくわくしない予知能力はまったく魅力がない。残念ながら世の中の良いことに使われるのなら特殊能力は望むところだが、そんなに超能力を持った人間が存在することも現実的にはないだろう。
『マザー・アゲイン 最後の夏の日』(An Audience of Chairs)
2018年・カナダ 監督/ディアン・フォーリー
出演/カロライナ・バルトチャク/ゴード・ランド/エディ・インクセッター/クリストファー・ジャコー
ずーっとりっぱな母親をやることは出来ない。男親だってそうだが、子供を育てる役割としては母親の負担は計り知れない。たとえ自分が、自分の精神状態をコントロールできなくても、子供にとってはいつだって母親は母親なのだ。何に苦しみ何に苦悩するのか、神は人間に試練を与える。生きているうちに大きくなった子供たちに出会えれば、それはそれでよしとするしかない。死んでから自分の親はいい人だったんだ、なんて思われたって浮かばれるわけがない。
『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』(Till We Meet Again on the Lily Hill)
2023年(令和5年)・日本 監督/成田洋一
出演/福原遥/水上恒司/伊藤健太郎/嶋﨑斗亜/上川周作/小野塚勇人/出口夏希/中嶋朋子/坪倉由幸/松坂慶子
ほんの半日間のタイムスリップで行った先は「特攻隊」の町だった。日頃現実社会では母親に文句を言ったり、友達からいじめを受けたりとよくある風景を過ごしている主人公の目には昭和20年6月の特攻隊の町の風景は衝撃しかなかった。出逢った特攻隊員との淡い恋物語なんでどうでもいい。無差別で爆撃をうけた日本中の町、焼け野原となった焦土からよく復興したものだと、先人たちの人間力に感嘆するしかない。やわい現代の若者では一日たりとも自分の命を生き延びさせる胆力も勇気もなかろう。
『87分の1の人生』(A Good Person)
2023年・アメリカ 監督/ザック・ブラフ
出演/フローレンス・ピュー/モーガン・フリーマン/セレステ・オコナー/モリー・シャノン
事故を起こして同乗者2人を殺してしまった主人公の苦悩がひしひしとしのばれる。苦悩しているのは本人だけではなく、死んでしまった家族たちも大きな影響を受けざるを得なかった。鎮痛剤の飲み過ぎで中毒患者状態になってもがき苦しむ事故当事者とせっかく辞めていた酒にまた手を出してしまった祖父が同じ自助グループで顔を合わせるなんて、人生とは皮肉の重ね餅のようだ。
『ブラックバード 家族が家族であるうちに』(Blackbird)
2019年・アメリカ/イギリス 監督/ロジャー・ミッシェル
出演/スーザン・サランドン/ケイト・ウィンスレット/ミア・ワシコウスカ/サム・ニール
母親の命がもうすぐ尽きるということを医者である夫も自覚し、離れて暮らす二人の娘とその子供たちそして母親の親友が集められた。最後の晩餐会を開いて明日には安楽死をするという告白は集まった誰をも混乱の極に陥れる。それぞれの家族にもそれぞれの事情があり、これまでの歴史の絆も掘り起こされてカオスとなってしまう。学生時代にオイタナジー(安楽死)について記せという問題が出たことを思い出す。その当時の素直な学生は一般的で愚にもつかないような模範解答をして喜んでいた。若いということはそんなものだ。今の若者たちがいう、「自分たちのお金で高齢者が年金をむさぼり取っている。自分たちにはそんな幸せは考えられない。と。」煽るのはマスゴミだが、そこまで言うなら高齢者に安楽死の自由を与える法律くらい作ったらいかがなものだろうかと。
『イマジナリー・ヒーロー』(Imaginary Heroes)
2004年・アメリカ/ドイツ/ベルギー 監督/ダン・ハリス
出演/シガニー・ウィーバー/エミール・ハーシュ/ジェフ・ダニエルズ/ミシェル・ウィリアムズ
将来有望な競泳選手だった長兄の自死が家族のひとりひとりに大きな影を落とす。家族の形態は家族の数だけ存在する。家族を構成する個々の心のうちも同じだ。立ち直れないのは分かるが、現実社会はものともせずに回っている。父親も母親も弟も永遠に終わりのない人生が始まってしまったのかもしれない。
『DOGMAN ドッグマン』(DogMan)
2023年・フランス/アメリカ 監督/リュック・ベッソン
出演/ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ/クリストファー・デナム/マリサ・ベレンソン/マイケル・ガーザ
際どい内容だったがそれなりにおもしろかった。名だたる監督の名前を見て、さもありなんと思える。父親と兄に相当痛めつけられた少年時代。犬小屋で寝起きする生活から逃れることは出来たが、犬たちとの奇妙な友情、主従関係が不思議だ。あれほどまでに信じられる主人、人間の存在があれば犬たちも幸せだろう。こういう映画を観終わった後の時間はちょっとばかり映画に支配された自分が残骸として横たわっている。
『テイキング・サイド ヒトラーに翻弄された指揮者』(Taking Sides)
2001年・イギリス/フランス/ドイツ/オーストリア/ハンガリー 監督/サボー・イシュトヴァーン
出演/ステラン・スカルスガルド/ハーヴェイ・カイテル/モーリッツ・ブライブトロイ/オレーグ・タバコフ
ヴィルヘルム・フルトヴェングラーは1933年ベルリン国立歌劇場でワーグナーの「マイスタージンガー」を指揮した際、首相ヒトラーと握手している写真を撮影される。この著名な指揮者をもナチの一員ではなかったのかと戦勝連合軍は疑っている。彼の意識し過ぎるくらいのナチへの犯行行動の裏に隠されたものを暴こうとする尋問は無情だ。ナチものは永遠に終わらない。いろいろな切り口から切り刻んでいく様は日本軍の所業を悪と決めつけた映画とは違いが大き過ぎる。
『恋するベーカリー』(It's Complicated)
2009年・アメリカ 監督/ナンシー・マイヤーズ
出演/メリル・ストリープ/スティーヴ・マーティン/アレック・ボールドウィン/ハンター・パリッシュ
離婚して10年、『ニューヨーク・タイムズ』に全米No.1の評価を受けたベーカリーの経営者であり、3人の子供を女手ひとつで育て長女が結婚する年頃になった。元夫は離婚の原因ともなった若い女と暮らしている。再び急接近してきた元夫の誘いに不覚にものってしまった主人公を不思議な目で見る子供たちがいた。離婚から10年か~!! 自分の場合も同じような期間なのかなぁ、と思い出そうとしたがよく分からないのが実情。どうなのだろう? 映画の中の二人よりもだいぶ歳をくっているのが幸いなのか、恋慕の情は湧いて来ない。嫌いではないことは確かだが、もう昔のこととしか。
『フォードvsフェラーリ』(Ford v Ferrari、Le Mans 66)
2019年・アメリカ 監督/ジェームズ・マンゴールド
出演/マット・デイモン/クリスチャン・ベール/ジョン・バーンサル/カトリーナ・バルフ
この題名にまったく興味を示さなかったが、Amazonプライムで観たい映画が見つからず仕方なく観始まった。いきなりマット・デイモンの顔が見えて驚いた。途中休憩で上映時間がゆうに2時間を超えることにも驚いた。偽レース・ファンとしてはちょっと興味がある中身だった。フジテレビが元気なころは深夜のF1中継をいつも観ていた。子供たちに本物の鈴鹿F1レースを体験させられたことが今でも嬉しい。セナとプロストが第一コーナーでいきなり接触レースアウトした現場にいられたことも嬉しいことのひとつ。
『バッド・デイ・ドライブ』(Retribution)
2023年・アメリカ/イギリス/フランス 監督/ニムロッド・アーントル
出演/リーアム・ニーソン/ノーマ・ドゥメズウェニ/リリー・アスペル/ジャック・チャンピオン
自分の車に爆弾を仕掛けられた。しかも席を立つと自動的に爆発するんだ、と。仕掛けられた張本人にも世間から恨まれる投資の仕事をしていた。状況設定がいくら何でも、と思わせる。こんな経験をすることのある人はいないだろう。主人公や周りの人に投影できないストーリー・映像に世間離れした雰囲気が。
『ヒトラーのための虐殺会議』(Die Wannseekonferenz)
2022年・ドイツ 監督/マッティ・ゲショネック
出演/フィリップ・ホフマイヤー/ヨハネス・アルマイヤー/マキシミリアン・ブリュックナー
1942年1月20日正午、ドイツ・ベルリンのヴァンゼー湖畔にある大邸宅にて、ナチス親衛隊と各事務次官が国家保安部代表のラインハルト・ハイドリヒに招かれ、高官15人と秘書1名による会議が開かれた。議題は「ユダヤ人問題の最終的解決」について。「最終的解決」とはヨーロッパにおける1,100万ものユダヤ人を計画的に駆除する、つまり抹殺することを意味するコード名だった。(Filmarksより) おぞましい。
『F.L.E.D./フレッド』(FLED)
1996年・アメリカ 監督/ケヴィン・フックス
出演/ローレンス・フィッシュバーン/スティーヴン・ボールドウィン/サルマ・ハエック/ウィル・パットン
警察もののリメイク作品。おもしろい発想だと自分が作ってみたくなるよね。唯我独尊でそれなりにいいアイディアも他人をも巻き込むくらいにならなければ生きている意味がない。2024東京都知事選挙もなかなか興味があるところだが、人間のクズのような所業を展開して選挙妨害のような行動をしている輩に大喝だ。自分が宇宙のゴミにも値しないということすら分かっていない人間が多過ぎる。あなた方が何をしたって世の中の人は無視するだけどよ。だからと言って世の中の迷惑になることを平気でする奴は許せない。
『ウエスト・サイド・ストーリー』(West Side Story)
2021年・アメリカ 監督/スティーヴン・スピルバーグ
出演/アンセル・エルゴート/レイチェル・ゼグラー/アリアナ・デボーズ/デヴィッド・アルヴァレス
ナタリー・ウッドとジョージ・チャキリスの役を誰がやるのだろうか、というのが前回の映画に触れたことのある人たちの興味の先。ミュージカル大嫌いな自分にとってはこの映画を観る勇気が必要だった。スピルバーグだからきっとおもしろいに違いないという興味が少し芽生えていた。いわゆるミュージカルっぽくないところは気に入ったが、全神経を注ぐほどの事は出来なかった。アニメ映画と同じく、どうしても観ておかねばという通過点は必要不可欠なバリアである。オペラ座の怪人以来ミュージカルの音楽だけは結構気に入ったものに出逢えているのが嬉しい。
『オーバードーズ 破滅の入り口』(Overdose)
2022年・フランス 監督/オリヴィエ・マルシャル
出演/ソフィア・エッサイディ/アッサード・ブアーブ/アルベルト・アンマン/ニコラ・カザレ
日本国内だけだって県をまたぐ警察捜査情報共有は至難の業なのに、フランスとスペインの警察が国境をまたいで麻薬組織を捕まえようとするのはたいへんだろう。警察官同士の恋愛感情なんて不必要なものがフランス的エスプリとでも言いたげな。「犬」として潜入している犯罪人への扱いも外国らしく乱暴。もっとも、慎重ばかりで埒が開かない日本の警察に比べたらはるかに解決へと向かう速度が速い。
『ナース・キリング -死への誘い-』(A Nurse to Die For)
2023年・アメリカ 監督/ピーター・サリヴァン
出演/アリソン・マカティー/ジェレミー・ジョン・ウェルズ/ヘイリー・グレイ/キラ・ピーターセン
派遣されて来た在宅看護師に悪意があったらどうしようもない。そんなことは考えただけで震えあがる話だが、映画の中だけで良かったと思える。人体は摩訶不思議な創造物に似ている。誰もその真実を知らない。何度も繰り返して検証するだけが唯一の科学的根拠でしかない。それなのに偉そうに断定的な物言いをする輩が結構いることの方が不思議だ。
『エージェント:0 漆黒の暗殺者』(The Virtuoso)
2021年・アメリカ 監督/ニック・スタグリアーノ
出演/アンソニー・ホプキンス/アビー・コーニッシュ/アンソン・マウント/エディ・マーサン
殺し屋が受けた最後の指令は相手が誰かは明確なものではなかった。現地に着いてみると何人ものそれらしき人たちを殺す羽目に陥った。という馬鹿馬鹿しくも3流映画の典型のようなもの。自分が殺される標的になっているなんて最後になってはじめてわかること。世の中の動向と同じだ。知らぬは本人ばかりなり、という状況はそこいらじゅうに存在する。もっと謙虚に、もっと控えながら人生を送らないと神に唾するのと同じことになってしまう。
『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』(Mr. Jones)
2019年・ポーランド/ウクライナ/イギリス 監督/アグニェシュカ・ホランド
出演/ジェームズ・ノートン/ヴァネッサ・カービー/ピーター・サースガード
1933年、実在のイギリス人ジャーナリストのガレス・ジョーンズは、世界恐慌の中でソビエト連邦だけが繁栄していることに疑問を持ち、その謎を解き明かすため、当局の監視をかいくぐってソビエト連邦に潜入、ウクライナで想像を絶する光景を目の当たりにする。帰国した彼はウクライナの惨状を記事にするが、当初は誰からも相手にされなかった。観ている間は何のことだか分からなくて往生した。観終わってからどこかの解説を読もうと何度も思っていた。嘘つきソ連の面目躍如、ウクライナを穀倉にして、自分たちだけ栄華を極めていたのか。
『エルヴィス』(Elvis)
2022年・アメリカ 監督/バズ・ラーマン
出演/オースティン・バトラー/トム・ハンクス/オリヴィア・デヨング/リチャード・ロクスバーグ
言わずと知れたエルヴィス・プレスリーの伝記映画。1997年。エルヴィス・プレスリーの元マネージャーであるトム・パーカー大佐は、脳卒中で死の床に就きながら、エルヴィスとの日々を追憶して行く。元マネージャーの目線と語りで今までとは違うスーパースターの姿を映し出している。ビートルズ世代の自分たちよりもひとつ前の時代に生まれたスーパースターは結構長生きの人気を保っていた。カリスマ・スターは永遠に語り継がれることだろう。若い人が名前も知らないなんて、言わせない。
『エンドロールのつづき』(Last Film Show)
2021年・インド/フランス 監督/パン・ナリン
出演/バヴィン・ラバリ/リチャ・メーナ/ラウール・コーリ/Tia Sebastian/ビーカス・バータ
「ニューシネマ・パラダイス」のインド版のような映画。ついつい観てしまう。インド映画は基本的におもしろいという先入観があるのも影響している。インドの田舎町で暮らす少年たちがおおらかで嬉しい。映写技師と仲良くなって、映画のフィルムを細切れに手作りの映写装置で壁に映していく。時代の波は確実に映画館にも襲ってくる。フィルムからHDD・パソコンで映写するという大改革は世界的な潮流だったらしい。実際に最近の映写室を見たことがないので、すごく興味がある。鈍行列車が泊まっていた駅も急行電車の通過駅となり少年も夢をかなえるために都会へと出ていかなくてはならなくなった。
『ゴヤの名画と優しい泥棒』(The Duke)
2022年・ イギリス 監督/ロジャー・ミッシェル
出演/ジム・ブロードベント/ヘレン・ミレン/フィン・ホワイトヘッド/アンナ・マックスウェル・マーティン
1961年のイギリス、孤独な高齢者のために公共放送BBCの受信料無料化を求める活動に大いに賛同していた主人公の本当にあった話の映画化。このあと2000年に75歳以上の受信料がなくなったというコメントが流れて映画は終わるが、現実は厳しい、2020年6月以降はこの対象を年金受給者のいる低所得世帯に限定することになったという。日本円にして年間約2万2000円の受信料は年金生活者にはどう考えたって高過ぎる。さっさとスクランブル方式で視聴料システムを構築すれば誰も文句を言わないのに、公平平等を謳って迷走する政治やの姿が哀しい。いずこも同じ初夏の夕暮れ。
『たかが世界の終わり』(Juste la fin du monde、It's Only the End of World)
2016年・カナダ/フランス 監督/グザヴィエ・ドラン
出演/ナタリー・バイ/ヴァンサン・カッセル/マリオン・コティヤール/レア・セドゥ/ギャスパー・ウリエル
第69回カンヌ国際映画祭グランプリ受賞作品。カンヌ映画祭グランプリ作品なんておもしろいはずがない。格好いいのは題名だけでフランス人によるフランス語の会話は聞くに堪えない。意地悪なフランス人のイメージが彷彿とする。生まれ変わるなら、願わくばフランス人にはなりたくない。よくもこんな映像を作れるもんだと感心するしかない。100の家族があれば100の家族関係が存在することは確かだが・・・・。
『ザ・コントラクター』(The Contractor)
2022年・アメリカ 監督/タリク・サレー
出演/クリス・パイン/ベン・フォスター/ギリアン・ジェイコブス/エディ・マーサン/キーファー・サザーランド
アメリカ陸軍特殊部隊から不本意ながらも強制的に除隊させられた主人公は、知っている唯一の方法で最愛の家族を支えるために準軍事組織に参加した。身体を張って仕事に従事することをしたことがない。命懸けとはこういうことなのだろうというシーンの連続で、妙に生々しい。国家の機密機関は怖い。闇から闇へ、裏切りの連続、命が繋がったとしてもたった一人ぽっちで人生を生きていかなければならない。
『トスカーナの幸せレシピ』(Quanto basta)
2018年・イタリア/ブラジル 監督/フランチェスコ・ファラスキ
出演/ヴィニーチョ・マルキオーニ/ルイジ・フェデーレ/ヴァレリア・ソラリーノ/ニコラ・シリ
ちょっと短気な腕の立つ料理人の主人公は最新の拘置所暮らしから解放されて、社会奉仕に従事しなければならなかった。ガスパルガー症候群の若者の中には特殊な能力を持つ子がいる。よくありがちな物語だが、イタリア風レシピがほんのりとした味を観客に届けてくれる。美味しい料理に出逢うことは人間の幸せのうちでも最大と思えるほどの喜びに通じる。何を食べても分からない人、なんでも美味しいと評価のできない人に出逢うと顔をしかめてしまう。
『MEMORY メモリー』(Memory)
2022年・アメリカ 監督/マーティン・キャンベル
出演/リーアム・ニーソン/ガイ・ピアース/モニカ・ベルッチ/レイ・スティーヴンソン
認知症によるメモリーとUSBに記録されたメモリーとを掛けた邦題が寒々しい。殺し屋の主人公だが子供だけは決して殺さない。悪者を無慈悲に消し去っていく様は気持ちいいい。ちょっと危険な思想に見えるが、甘っちょろい現在の社会は善良な市民をも平気で殺されてしまう。ダメなものはダメだと言い切れない国民が墓穴を掘ってしまいそうだ。似非自由主義が横行し、確実ではない現象が確かなものだと信じる馬鹿者が増えている。
『サヨナラ』(Sayonara)
1957年・アメリカ 監督/ジョシュア・ローガン
出演/マーロン・ブランド/高美以子/ナンシー梅木/レッド・バトンズ/パトリシア・オーウェンズ
マーロン・ブランドの若い頃のこの作品がおもしろいよ、と友人からDVDを送ってきた。さっそく観たが予想以上におもしろかった。日本を舞台に日本を愛していたらしい監督による日本様式礼賛の映画だった。日本人としての振る舞いに学ぶところが結構あって頭の中をすっきりさせてくれた。興行的には成功し、ブランドの主演男優賞ノミネートを含む10のアカデミー賞ノミネートを受ける大ヒットとなった。この作品は4つのアカデミー賞を受賞した。一見をお勧めする。
『ロスト・フライト』(Plane)
2022年・イギリス/アメリカ 監督/ジャン=フランソワ・リシェ
出演/ジェラルド・バトラー/マイク・コルター/トニー・ゴールドウィン/ヨソン・アン
LCCに転職した主人公の機長は正義感強く、最後まで乗客を守り抜くのが生き様だった。嵐の中で離陸した飛行機だったが、最初から迂回航路を取れば避けられる事故だった。ガソリンも時間ももったいないと運行責任者が雲の上を飛べば避けられるよと迂回することを許さなかったあたりは現実のLCCの苦しい選択なのかもしれない。単なる飛行時事故だけでは終わらない世界情勢も踏まえたストーリーに飽きは来なかった。
『オペレーション・フォーチュン』(Operation Fortune: Ruse de guerre)
2023年・アメリカ 監督/ガイ・リッチー
出演/ジェイソン・ステイサム/オーブリー・プラザ/ジョシュ・ハートネット/ケイリー・エルウィス/ヒュー・グラント
なんだか分からないけれどかなりの高額で取引されるだろうという物品を取り返すことが命題だった。AIプログラムが入ったハードディスクという物品は今風過ぎる。ノンストップ・アクションで力と色気をミックスしたチームが奮闘する。こういう映画は日本では間違っても製作できない。映像もここまでくると、行きつく先が見えなくなってくる。あまりにも出来過ぎた状況設定もAIのおかげだなぁと妙な納得の仕方で終わった。
『ブローン・アウェイ/復讐の序曲』(Blown Away)
1994年・アメリカ 監督/スティーヴン・ホプキンス
出演/ジェフ・ブリッジス/トミー・リー・ジョーンズ/スージー・エイミス/ロイド・ブリッジス
今日は、2024年5月8日(水)。アマゾンからのお勧めで観始まった。携帯電話とパソコンの形を見て、アッ!これは結構古い映画だなぁということを実感した。爆弾処理班の物語。赤線を切るのか黒線を切るのか、最後には理屈なしで実行しなければならない時がある。そんな時に現実社会での個々の振る舞いが運命を決めるのは残酷だ。同じではないけれど、似たような状況を何度経験するかで、天国か地獄かを実践することになるのだろうか。
『ゴジラ-1.0』(GODZILLA MINUS ONE)
2023年(令和5年)・日本 監督/山崎貴
出演/神木隆之介/浜辺美波/山田裕貴/青木崇高/吉岡秀隆/安藤サクラ/佐々木蔵之介
ゴジラ大好きのヘラルド時代の後輩から「小河さんこのゴジラはおもしろいから絶対観た方がいいよ」という強いお勧めがあったことをずーっと覚えていた。早々とAmazon PrimeVideo に登場したので、早速観ることにした。無料だったことにはちょっとした驚きも。ただ、お勧めの映画にしては期待を裏切った。結局は一番気になる子供騙しの典型ではないか! だからこそ強く進めていたのかなぁ、とその理由を推測したりしている。
『デイ・トゥ・ダイ 最後の戦い』(A Day to Die)
2022年・アメリカ 監督/ウェス・ミラー
出演/ブルース・ウィリス/フランク・グリロ/ケヴィン・ディロン/ジアーニ・カパルディ
アメリカ映画にしては陳腐なアクションだった。しかも影の主演には超有名俳優。世界各国の警察関係映画には、警察署内裏切りが堂々と描かれているケースが多い。しかもトップから平警官まで、平気で不正行為を行っているのには驚かされる。現実社会がここまでひどいとは思いたくないが、身内に優し過ぎるニュースを聞いていると、あながち映画の描く世界も大袈裟ではないのだろうと思えてくる。
『遠い声、静かな暮し』(DISTANT VOICES, STILL LIVES)
1988年・イギリス 監督/テレンス・デイヴィス
出演/アンジェラ・ウォルシュ/ピート・ポスルスウェイト/フリーダ・ダゥウィー/ロレイン・アシュボーン
1940~50年代のイギリス、 リバプールを舞台にした監督自身の自伝的ファミリー・ドラマ。全編にわたって当時イギリスで人気のあったヒット曲や映画音楽など約30曲が散りばめられている。暴君のように君臨した家族の大黒柱だった父親が亡くなるという瞬間に家族はこれまでの人生を思い出すが、「殺してやる」と叫んでいた娘もその死を悲しむ。死というものはかくも大きな出来事かもしれないが、死んでいく本人に自覚はない。いつも言う、生まれてくる時と死んでいくときに本人の意識がないことはいいことなのだろう。
『生きる LIVING』(Living)
2022年・イギリス 監督/オリヴァー・ハーマナス
出演/ビル・ナイ/エイミー・ルー・ウッド/アレックス・シャープ/トム・バーク
原作:黒澤明、橋本忍、小国英雄、黒澤明監督による「生きる」(1952年・昭和27年)のリメイク版だ。脚本はカズオ・イシグロ、長崎県に生まれ6歳の時に渡英したノーベル文学賞受賞者。1953年のイギリスを舞台に市役所の市民課に働く余命6か月を宣告された主人公の短い最後の官僚生活が哀しい。この期に及んで後輩に模範となる心意気を残せる仕事を全う出来た。でも、究極的には何も変わらない日常が続くという皮肉をしっかりと観客に伝えてくれる。何も変わらないよね、結局世の中は。
『ヘイティング・ゲーム 恋とキャリアの必勝法』(The Hating Game)
2021年・アメリカ 監督/ピーター・ハッチングス
出演/ルーシー・ヘイル/コービン・バーンセン/オースティン・ストウェル/ヤシャ・ジャクソン
軽さのアメリカ映画に勝てる国の映画はない。出来事はたくさん起こっても行きつくところはハッピーエンドならば、何も気にすることはない。ただ、その結末に行きつくまでには嫌なことだってたくさん起こる。すべては時間が解決してしまうのだけれど、その過程がいつだって重要なのだと言い続けている。そうなんだよ、誰だって終わってしまえば気にしないから、結果が悪くなければ何をしてそうなったかの検証が出来ていない。だから次の時に同じようなシチュエーションで結果が伴わないことが起こってしまうのだ。
『僕たちは希望という名の列車に乗った』(Das schweigende Klassenzimmer)
2018年・ドイツ 監督/ラース・クラウメ
出演/レオナルド・シャイヒャー/トム・グラメンツ/レナ・クレンケ/イシャイア・ミヒャルスキ
悪者はソ連だ。と言い切ってしまっても何も解決しないのは分かっている。悪いのはイスラム教だ、声高に叫んだらもっと解決しない問題が発生する。報復とジハードなるものを叫ぶ輩に何を説いても無駄であることは明らかだ。何ごとも穏便に済ませようとする大人の世界は今の日本でも健在なり。どうせ100年もないひとりの命がたまには結束して社会変動を起こせないものだろうかと。夢物語はその途中で息絶えてしまうのがおちなんだろう。
『ガンズ・アンド・キラーズ』(The Old Way)
2023年・アメリカ 監督/ブレット・ドノフー
出演/ニコラス・ケイジ/ライアン・キエラ・アームストロング/ケリー・クヌーペ/ノア・ル・グロー
準主役の娘が可愛い。それ以上に感情を忘れてしまったような彼女の精神構造に驚愕する。一風変わった西部劇、力がなければ生きていけない時代、腕力がなければ銃の達人でも生き抜ける時代は羨ましい。XXXXハラスメントなんていう言葉が通じない時代が懐かしくなってきている。この時代の速すぎる移り変わりに心も身体も追いつけない。もう一度100年後に生まれ変わってこの目で世の中を眺めてみたい。
『すずめの戸締まり』
2022年(令和4年)・日本 監督/新海誠
出演(声)/原菜乃華/松村北斗/深津絵里/染谷将太/伊藤沙莉/花瀬琴音/花澤香菜/神木隆之介/松本白鸚(松本幸四郎)
1年に1本観るかどうかのアニメ。ここぞという作品はとにかく観るようにしている。動かない背景、子供騙しの妄想ストーリーに代表される日本のアニメーション映画の何処に魅力があるのだろうか。子供心を持つことがなかった自分の感情が他人には恥ずかしくて理解されたくもない。アニメが好きな人を罵るつもりはない。ただ自分にはどうして超えられないハードルが高過ぎて。観る事まで否定していた若いころに比べれば、はるかに丸くなったと思っているが・・・
『アメリカン・フィクション』(American Fiction)
2023年・アメリカ 監督/コード・ジェファーソン
出演/ジェフリー・ライト/トレイシー・エリス・ロス/ジョン・オーティス/エリカ・アレクサンダー
アフリカ系アメリカンの売れない小説家がやけくそで書いた小説が大ベストセラーになってしまう。そもそも黒人に代わってアフリカ系アメリカンと呼ぶのですら、そこには差別の意識が感じられる。非正規雇用と称する言い方にも悪意が感じられる。何故あえて非正規と叫ばなければならないのだろうか。せめて準正規くらいの言い方にとどめようという社会的コンセンサスはないのだろうか。
『アップグレード:どん底女子の幸せ探し』(Upgraded)
2024年・アメリカ 監督/カールソン・ヤング
出演/カミラ・メンデス/アーチー・ルノー/トーマス・クレッチマン/グレゴリー・モンテル
何が幸運なのか不運なのか分からない。受験生が1学部で2万人もいれば、1点という点数が合否の分かれ目になる。結果、合格しても不合格だったとしても何点差でそのような結果になったのかを知らないでその時点を通過している。一言でも囁いてくれていれば、次の人生設計に少しは影響したのではなかろうかと、今思えている。何点差だったんだろうね~?!
『83歳のやさしいスパイ』(El agente topo/The Mole Agent)
2020年・チリ/アメリカ/ドイツ/オランダ/スペイン 監督/マイテ・アルベルディ
出演/セルヒオ・チャミー/ロムロ・エイトケン
ドキュメンタリーと記載があるがホントのドキュメンタリーか映画か区別がつかない。老人ホームの内定のため入居者として潜入した83歳の男性セルヒオの調査活動を通して、ホームの入居者たちのさまざまな人生模様が浮かび上がる様子を描いたドキュメンタリーということらしい。が、映画としては題名ほどおもしろくない。眠ってしまったのは仕方のないことか。
『リデンプション アメリカのタブーに挑んだ男たち』(Prayer Never Fails)
2016年・アメリカ 監督/ウェス・ミラー
出演/エリック・ロバーツ/ロレンツォ・ラマス/コービン・バーンセン/リン・ウィットフィールド
高校でバスケットボールチームのコーチを務めるポールは、メンバーの生徒カートから、父親との関係に悩んでいると相談を受ける。話を聞いたポールは祈ることを勧め、カートと一緒に祈りを捧げた。しかし、無神論者のカートの父親は、ポールの行為を“強引に宗教を強要した憲法違反”だと校長に訴え、結果、ポールはひと言の弁解も許されずに解雇されてしまう。(Filmarksより) アメリカの最高裁判例としてきちんとあるらしい。教師が生徒と共に祈りをすることは出来ないと。いろいろな意味が含まれているこの規定、確かに宗教を生徒に押し付けることにもなるという解釈が出来ないわけではないが・・・
『カード・カウンター』(The Card Counter)
2021年・イギリス/中国/アメリカ 監督/ポール・シュレイダー
出演/オスカー・アイザック/ウィレム・デフォー/タイ・シェリダン/ティファニー・ハディッシュ
カードカウンティングとは、カジノでプレイできるブラックジャックにおいて既に排出されたカードを計算し、まだデッキに残っているカードを予測する攻略法。この方法は、ブラックジャックにおいてカジノ側が最も恐れる攻略法と言われ、違法ではないものの見つかればカジノを出禁になるほどです。紙に書いたりすれば問題だろうが、頭の中で記憶と勘を頼りにカードを予測することがいけないとしたら、ゲームのひとつの面白さ要素がなくなってしまう。それが出来るのがゲームの醍醐味だろう。麻雀だって捨て牌を見て自分の手を整えていくのが王道・常道だから。
『ティル』(Till)
2022年・アメリカ 監督/シノニエ・チュクウ
出演/ダニエル・デッドワイラー/ジェイリン・ホール/フランキー・フェイソン/ヘイリー・ベネット
1955年にアメリカ合衆国ミシシッピ州で起きた、アフリカ系アメリカ人による公民権運動を大きく前進させるきっかけとなった「エメット・ティル殺害事件」と彼の家族のその後の闘いを描く。アメリカの人種差別は数々の映画で知ることになるが、この事実に基づいた映画を観ると黒人に対する差別は「差別」をはるかに超えた白人至上主義の極みに見える。おそらく今だって、いろいろなシチュエーションで白人といわれるアメリカ人のエゴが人種差別を引き起こしているに違いない。その矛先は日本にも向けられていることを自覚しておこう。
『ロードハウス 孤独の街』(Road House)
2024年3月21日よりAmazon Prime Videoで全世界同時配信・アメリカ 監督/ダグ・リーマン
出演/ジェイク・ギレンホール/ダニエラ・メルヒオール/ビリー・マグヌッセン/ジェシカ・ウィリアムズ
1989年製作のリメイク作品。第10回ゴールデンラズベリー賞で5部門にノミネートされた(最低作品賞/最低監督賞/最低脚本賞/最低主演男優賞/最低助演男優賞)というから相当酷い映画だったようだ。前回の作品を観ていないが、この作品を観る限りはそこまで非難されるものではないと思う。むしろ、私は好きだなぁ~! 正義の味方が肉体的にも強い力を持つことは映画のヒーローには絶対条件。ひ弱な色男が登場したって、そっちの方がはるかにおもしろくない。
『サンセット』(Napszallta/SUNSET)
2018年・フランス/ハンガリー 監督/ネメシュ・ラースロー
出演/ユーリ・ヤカブ/ヴラド・イヴァノフ/スザンネ・ヴェスト
1913年、オーストリア=ハンガリー帝国が栄華を極めた時代。イリスは、ヨーロッパの中心、ブダペストのレイター帽子店で働くことを夢見てやってくる。そこは、彼女が2歳の時に亡くなった両親が遺した高級帽子店だ。だが今のオーナーであるブリルは、突然現れた彼女を歓迎することはなく追い返してしまう。オーストリア皇太子も訪れるような華やかで憧れの場所に見えた帽子店。しかし、そこには大きな闇が隠されていた。サスペンスの押し売りのようにあとからあとkら押し寄せてくる。普段、薄っぺらい疑惑ドラマに触れている今風映像をあざ笑うかのように。ストーリーは進んでいく。
『マーベラス』(The Protege)
2021年・アメリカ 監督/マーティン・キャンベル
出演/マイケル・キートン/マギー・Q/サミュエル・L・ジャクソン
よくわからないストーリーだった。発端はベトナムという珍しい設定。唯一戦争でアメリカに勝利したとされるベトナム、南北に分かれていたものが今は合体して共産国になっているらしい。よく理解していないここらへんの歴史、国民が幸せなら民主主義だろうと共産主義だろうと関係ない。中国のちょっかいにいちゃもんをつけているベトナムなので、共産国家になっていたとは思わなかった。
『アウトロー・ジョニー』(Johnny 100 Pesos: Capitulo Dos)
2017年・チリ 監督/グスタヴォ・グラフ・マリーノ
出演/アルマンド・アライザ/ルシアナ・エチェベリア/ルーカス・ボルバラン/イグナシア・ゴンサレス
珍しいチリ産の映画だった。結構残酷なシーンを堂々とスクリーンに見せるのは国民性としか思えない。正義のために他人を殺して20年の懲役を終えた後の主人公、いさぎよい生き方には感嘆する。このあたりをこういう風に描くことが許される国民性だと感じるのだ。チリ産の食べ物もそれなり以上に輸入されている。こういう潔癖性を持つ国の製品なら中国産よりはるかに信頼が出来るような気がする。
『トップガン マーヴェリック』(Top Gun: Maverick)
2022年・アメリカ 監督/ジョセフ・コシンスキー
出演/トム・クルーズ/マイルズ・テラー/ジェニファー・コネリー/ジョン・ハム/グレン・パウエル
ようやく AmazonPrime で無料鑑賞できるようになった。ちょうど現役だった頃、2年前に現場をやったことがないのに宣伝部長をやれと言われてようやく仕事に慣れた時期だった。1986年「トップガン」がCIC配給で大ヒットした。どんなに映画が面白くても、この題名はないよね、と業界で話題になった。それでも大ヒットしたのはひとえに観客が圧倒的に支持したことが最大。38年前の次回作を今観ようとは想像だにしなかった。そういえばテレビドラマで話題の「不適切にもほどがある」もまさしく1986年時代と今とのタイムスリップ物語だ。考えてみるとなんとのどかな時代だったのだろうか。
『SISU/シス 不死身の男』(Sisu)
2022年・フィンランド 監督/ヤルマリ・ヘランダー
出演/ヨルマ・トンミラ/アクセル・へニー/ジャック・ドーラン/ミモサ・ヴィッラモ
俺に死んでる暇はない! と、解説の冒頭に記載があった。まさしくその通りのスーパー年配者戦士が第二次世界大戦の末期、ナチス相手にまさしく不死身の活躍をする。スーパーマンのようにただ強いのではなく、スパイダーマンのように普通の人間ポイ年寄りが、何故か死なない。死なないのではなく、死にかけている身を不死身の精神力で切り抜けていく。翻訳不能な「シス」というフィンランド語が「折れない心」に代表される意味合いが肝のようだ。
『パラレル 多次元世界』(Parallel)
2018年・カナダ 監督/アイザック・エスバン
出演/アムル・アミーン/マッティン・ヴァルストレム/ジョージア・キング/マーク・オブライエン
鏡の向こうは未来の別世界。入るのも簡単だし戻ってくるのも簡単だ。それ故にやってしまう人間の悪知恵、誰にでも当てはまりそうなSFシーンが。そんなことはあり得ないと思いながら、そんなことがあったらいいなと思う子供心。100年後をこの目で見てみたいと誰にでも言って憚らないこの幼稚な神経がこのままでいて欲しい。
『ひまわりのラブ・ストーリー』(Love Stories in Sunflower Valley)
2021年・カナダ 監督/ロバート・リーバーマン
出演/エリン・ケイヒル/マーカス・ロズナー/コリーン・ウィーラー/ブレント・ステイト
陳腐な邦題を眺めると観る気がおきない。観てみれば、さすがにアメリカ映画とは一味違うカナダ風恋愛ものといえようか。「ひまわり」ソフィア・ローレンを想い出すのはこの年齢の人たちだろう。一面に広がったひまわり、ウクライナで撮影されたというそのシーンは何十年たっても脳裏に残っている。時々見るひまわりの咲き誇る写真に一種の不満足感を呈するのは贅沢なのだろうか。
『輝ける人生』(Finding Your Feet)
2017年・イギリス/オーストラリア/アメリカ/カナダ 監督/リチャード・ロンクレイン
出演/イメルダ・スタウントン/ティモシー・スポール/セリア・イムリー/ジョアンナ・ラムレイ
サンドラ・アボットは35年連れ添った夫マイクが親友のパメラと不倫していたことを知る。荷物をまとめて自宅を飛び出したサンドラは、ロンドンに暮らす姉ビフの家に転がり込んだ。サンドラは自由奔放なビフとそりが合わなかったが、ほかに行く当てもなかったのである。しかし、この決断がサンドラの人生に潤いをもたらすことになった。サンドラはビフの勧めでダンスレッスンに参加することになったのだが、その参加者たちは皆魅力的な人物であった。彼/彼女らとの交流を通して、サンドラは離婚が人生の破滅を意味しないこと、恋愛は全ての世代に開かれたものであることを学ぶのだった。(Wikipediaより)
『トップ・ランナー』(THE FLYING SCOTSMAN)
2006年・ドイツ/イギリス 監督/ダグラス・マッキノン
出演/ジョニー・リー・ミラー/ビリー・ボイド/ショーン・ブラウン/ローラ・フレイザー
実話の物語。主人公のあだ名となった「フライングスコッツマン(空飛ぶスコットランド人)」の由来になったらしい、スーパーマンスタイル。自転車競技の中で「アワーレコード」というトラックを1時間で何キロ走れるかという競技の世界記録保持者、世界大会優勝者のひたむきな自転車への向き合いを映像化している。ヨーロッパではなじみ深い自転車競技。日本には中野浩一という類稀なる自転車アスリートがいる。世界選手権個人スプリントで1977年に開催されたベネズエラ大会から、1986年のアメリカ大会までのすべてを制覇。世界大会10連覇達成という偉業を達成し、中野浩一さんは世界的に認知されるようになる。長年競輪の時代を支配していた中野浩一選手の大記録は未だに破られておらず、現在はギネス世界記録として認定されている。
『ドント・サレンダー 進撃の要塞』(Fortress)
2021年・アメリカ 監督/ジェームズ・カレン・ブレザック
出演/ジェシー・メトカーフ/ブルース・ウィリス/チャド・マイケル・マーレイ/シャナン・ドハティ
ブルース・ウィリス作品は結構おもしろいものが多い。しかし彼は、引退から約1年後の2023年2月中旬に、「失語症診断を発表してからも病状は進行しており、前頭側頭型の認知症と診断された」と家族より発表された。なんか戦争のような邦題だが、現代の金融戦争からとった題名なのかもしれない。
『ジェイコブ 危険な息子』(MOTHER'S DEADLY SON)
2022年・アメリカ 監督/クリス・ランシー
出演/ルネ・アシュトン/ブリタニー・アンダーウッド/ノア・ファーンリー/クリス・クリーヴランド
ある日、日頃から何かと競い合っては反発していた2人を心配する母親の嫌な予感は、最悪の形で的中。兄弟で岩登り競争を始めた結果、エイデンが崖から落下し死んでしまったのだ。三流映画。
『イコライザー THE FINAL』(The Equalizer 3)
2023年・アメリカ 監督/アントワーン・フークア
出演/デンゼル・ワシントン/ダコタ・ファニング/エウジェニオ・マストランドレア/デヴィッド・デンマン
今日は、2024年2月24日(土)。スーパーマンが大好きなことが確信できた。今回の舞台はイタリア、シチリア、マフィアの本部でしか発揮できないスーパー・アクションを見る事が出来る。平気で悪党どもを瞬殺するくせに、悪党の子供といえども、少年には手を出さずに逆に瀕死の重傷を追ってしまうあたりが人間の性を表現することに長けているアメリカ映画ならではのことなのだろう。Amazon PrimeVideo で有料だったが\100で観る価値は大いにあった。
『ブラックライダー』(Black Moon Rising)
1986年・アメリカ 監督/ハーレー・コクリス
出演/トミー・リー・ジョーンズ/リンダ・ハミルトン/ロバート・ヴォーン
製作年も知らずに観始まったらいきなりトミー・リー・ジョーンズの顔がアップで出てきて、わかいなぁ~! 30年前の映画だろうと思いながら最後まで観切ったが、何と38年前の映画だった。しかも配給はヘラルドだったので二度の驚き。ヘラルド現役時代の時期だったが、知らねぇなぁ~! アナログ・アクションが妙に生々しくて好感が持てるといった印象か。
『ワン・モア・ライフ!』(Momenti di trascurabile felicita)
2019年・イタリア 監督/ダニエーレ・ルケッティ
出演/ピエルフランチェスコ・ディリベルト/トニー・エドゥアルト/レナート・カルペンティエリ
イタリア映画のお得意な「人生賛歌」映画だ。起伏の無いストーリーは観客を飽きさせるが、ときどき珠玉なセリフが飛び出して、なんとも言い難い「良さ」が身に染みる。それでも、途中で寝てしまうのは困ったものだ。何とか耐えられれば、人生賛歌の福音を享受することができるかな。
『ヴィーガンズ・ハム』(原題:Barbaque)
2021年・フランス 監督/ファブリス・エブエ
出演/マリナ・フォイス/ファブリス・エブエ/ジャン=フランソワ・キ エレイ/リサ・ド・クート・テイシェイラ
フランスのブラック・コメディ映画カニバリズムを題材とした映画作品という解説があったが、なんともはや、おぞましい映画だった。映画とはいえこんな題材を永遠と見せつけるのは愚かなことだろう。映画としての評価が悪くない?? それこそ不思議な現象だ。日本人なら頭から毛嫌いするであろうと思っていたが、日本の小さな映画祭でも上映されているというから驚き、ましてや批評集積サイトRotten Tomatoesでは、17件の批評家レビューがあり、支持率100%で平均点は7.0/10となっている、という数字に仰天するほかない。
『孤児院』(La revolte des innocents)
2018年・フランス 監督/フィリップ・ニアン
出演/ジュリー・フェリエ/ブルーノ・デブラント/テオ・フリレ
1911年、フランス。まだ100年ちょっとしか経っていないという事実が頭を混乱させる。光景が悲惨ばかりではなく、フランスでの孤児院がこの体たらくだったとは。言葉が出ない。
『ペトルーニャに祝福を』(Gospod postoi, imeto i' e Petrunija/God Exists, Her Name Is Petrunya)
2019年・北マケドニア/フランス/ベルギー/クロアチア/スロベニア 監督/テオナ・ストゥルガル・ミテフスカ
出演/ゾリツァ・ヌシェバ/ラビナ・ミテフスカ/ステファン・ブイシッチ
北マケドニアの小さな町での出来事。司祭が川に投げた十字架を裸の男たちが奪い合う儀式があった。伝統的に男しか参加できないのだが、偶然職探し中の主人公の女性が川に飛び込んで十字架を掴んでしまった。大騒ぎの町に訳アリの女性テレビリポーターが登場する。警察署に連れていかれた主人公、司祭も無理に十字架を取り返すつもりはないが、問題が大きくなっていく。といった他愛もないストーリー。日本の裸祭りでも女性の参加がどうのこうのと話題になっている。世の中は確実に変化していくんだということを肝に銘じなければならない。
『スクール・デイズ』(That's What I Am)
2011年・アメリカ 監督/マイケル・パヴォーネ
出演/エド・ハリス/チェイス・エリソン/モリー・パーカー/ダニエル・ローバック/ランディ・オートン
久しぶりに好きな映画に出逢えた。8年生というから日本なら中学2年生というところか。いじめあり、恋愛ありと日本よりはだいぶ進んだ学校生活、スクリーンがまぶしい。先生がいい。まだホモ・セクシャルという表現で社会が拒絶している時代、疑いをかけられたこの先生の言葉がいい。事実に基づいて出来た映画らしいが、子供のころに悪だった輩は大人になっても道を誤っているという記述が最後にあった。確率として、ダメな奴はいつになってもダメなのかもしれない。
『リゲイン 奪還』(Blood, Sand and Gold)
2017年・アメリカ 監督/ガエラン・コネル
出演/アーロン・コスタ・ギャニス/モニカ・ウェスト/クリストファー・レッドマン/ジェニー・スターリン
三流映画の典型。漫画を観るように。宝探しのストーリーに兄妹の宝探し会社の覇権争い、探し出したインカ帝国の財宝を隠し通せるのか、といった子供騙しの話のオンパレード。こんな映画を間違って買ってきてしまったら、宣伝部はどんな風に扱うのだろうか、などと心配したりする。もっとも、こんな映画を掛けてくれる劇場網がないことも確かだが。
『セラヴィ!』(Le Sens de la fete)
2017年・フランス 監督/エリック・トレダノ/オリヴィエ・ナカシュ
出演/ジャン=ピエール・バクリ/ジャン=ポール・ルーヴ/ジル・ルルーシュ/ヴァンサン・マケーニュ
Wikipediaには、「ベテランのウェディングプランナーと個性的なスタッフたちが様々なトラブルに見舞われる姿をユーモアとペーソスを交えて描いている。」とあるが、自分が生まれたのが日本人としての日本であることを心から神に感謝することとなった。とてもじゃないけどフランス流エスプリの世界では生きていけないと悟らされてしまう。観たばかりの『英雄の証明』をイランのせいだとばかりと思っていたが、どうもフランスもその一端に加担していること間違いない。邦題のセラヴィ(C'est la vie.)とはフランス語で「それが人生!」という意味。原題は「パーティーの意味」ということらしい。
『英雄の証明』(A Hero/Ghahreman)
2021年・イラン/フランス 監督/アスガル・ファルハーディー
出演/アミール・ジャディディ/サハル・ゴルデュースト/モーセン・タナバンデ
2021年7月に第74回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門で上映され、グランプリを獲得した。第94回アカデミー賞国際長編映画賞にイラン代表作として出品された。戦争時の題名のようだが、戦争がテーマではない。もっと庶民が被りそうなどうしようもない不条理の世界が。こんな国民性に「平和」を叫べる筋合いはまったくないと感じる。
『アンブレイカブル』(Unbreakable)
2000年・アメリカ 監督/M・ナイト・シャマラン
出演/ブルース・ウィリス/サミュエル・L・ジャクソン/ロビン・ライト・ペン/スペンサー・トリート・クラーク
オカルト的SFチックな映画だったが、意外としゃべりが少なく飽きが来たりした。特殊な能力を持つ人間が世の中には存在するようだが、目の前でその特殊能力を見せつかられなければ信用には値しない。時々というよりしょっちゅう、念力をかけたり送ったりしているが、これが結構嵌まっているのがおかしい。
『キングスマン:ゴールデン・サークル』(Kingsman: The Golden Circle)
2017年・イギリス/アメリカ 監督/マシュー・ヴォーン
出演/タロン・エガートン/コリン・ファース/ジュリアン・ムーア/マーク・ストロング/ハル・ベリー
エルトン・ジョンもお笑いのひとりとして出演しているコメディ・アクション映画とでも言えばいいだろう。Wikipediaにはアクションスパイ映画と記されていたが、そんな真面目な映画ではないことは確かだった。映画としてのシリーズ2作目になるらしいが、この後もこの程度のお笑いでシリーズを続けていけるのだろうか。日本のお笑いと大差なくなってしまった欧米のコメディに「残念」という言葉を投げつけるしかない。
『トゥモロー・ワールド』(Children of Men)
2006年・イギリス/アメリカ 監督/アルフォンソ・キュアロン
出演/クライヴ・オーウェン/ジュリアン・ムーア/マイケル・ケイン
西暦2027年11月。人類はなぜか出産の能力が失われ、18年間にわたって全く子供が生まれない世界となっていた。そんな中、奇跡的に妊娠を果たした若い女性を守ることになった主人公を描いている。結構近い未来を描いている。手を変え品を変え、近未来が映画に登場するが、それこそ夢も希望もない地球、世界になっていくことは必至。これからの人生の方が長い人たちにはお気の毒としか言いようがない。
『ウルブズ・オブ・ウォー』(Wolves of War)
2022年・イギリス 監督/ジャイルズ・アルダーソン
出演/エド・ウェストウィック/ルパート・グレイヴス/マット・ウィリス/サム・ギッティンズ
第二次世界大戦の末期、天才科学者の身を奪還するという秘密指令をイギリス政府から受けた主人公他の全6名。状況設定の甘さが映画を台無しにしてしまう。多くを語りたくない三流映画になってしまっている。
『魅せられて』(Stealing Beauty)
1996年・イギリス/イタリア/フランス 監督/ベルナルド・ベルトルッチ
出演/リヴ・タイラー/シニード・キューザック/ジェレミー・アイアンズ/ジャン・マレー
1996年という製作年は微妙な遠さだ。そんなに昔ではないなと感じているが、もう30年近く昔のことだと改めて思う。映画のテーマのひとつに主人公の19歳の処女といったセリフが入っている。今時ならそんなことを話題にすることすらハラスメントでつまはじきにされそうだが、ほのかな匂いのする映画のようで、なんとなく微笑ましい。それにしても、時代は間違いなく超スピードで動いている。
『アリータ: バトル・エンジェル』(Alita: Battle Angel)
2019年・アメリカ 監督/ロバート・ロドリゲス
出演/ローサ・サラザール/クリストフ・ヴァルツ/ジェニファー・コネリー/マハーシャラ・アリ
日本の漫画が原作らしい。地球と火星連邦共和国の間で繰り広げられた没落戦争から300年というのが設定だが、SF大好きの自分にとってはちょっと荷の思い時代設定だった。主人公の女の娘のキャラクターとしての顔、特に目の大きさに見惚れてしまった。人間への特殊メイクでもないし、アニメと実物顔との合成でもなさそうだし、不思議な魅力のあるキャラクターに仕上がっている。驚いた。
『スパイ』(MARIE-OCTOBRE)
2008年・フランス 監督/ジョゼ・ダヤン
出演/ナタリー・ベイ/グザヴィエ・ボーヴォワ/サミュエル・ラバルト
13年前に殺されたのは、レジスタンスのリーダーだったカスティアだった。マリー・オクトーブルは大戦中にレジスタンスとして活動していた。彼女らは勝利を収め、フランスは解放されたが、10人の仲間の中に裏切り者がいることが彼女の脳裏から離れなかった。大戦終結から10年後、彼女はかつての仲間たちに招待状を送り、パーティーを開催する。おそろしく情報の無い映画だった。フランス特有の会話が全編を覆っていた。ちょっと飽きる。犯人は誰だという最大の問題を解かなくても眠りに付けてしまうのが難点。
『ナイトメア・アリー』(Nightmare Alley)
2021年・アメリカ 監督/ギレルモ・デル・トロ
出演/ブラッドリー・クーパー/ケイト・ブランシェット/トニ・コレット/ウィレム・デフォー
なかなか面白い映画だった。ただ、最後の30分くらいのストーリーが、あまりにも予想通りになっていくので、ちょっと・・・・。他人の心を読むのは簡単なようだ。よく言う「あなたのお父さんは・・死んで・・」「・・いませんね」と相手に問いかけたときに何を言わなくても二通りの受け取り方が出来ることなんかは典型的なマジック的読心術だろう。因果応報、自分の企みを辿る自分の人生とでも言うのだろうか。
『REDリターンズ』(RED 2)
2013年・アメリカ 監督/ディーン・パリソット
出演/ブルース・ウィリス/ジョン・マルコヴィッチ/メアリー=ルイーズ・パーカー/キャサリン・ゼタ=ジョーンズ
ノン・ストップ・アクションは飽きさせないが、それなりに一貫したストーリーを辿っているようで好感が持てる。1作目を観たような気がするが、もちろんよく覚えていない。ただ、登場人物に個性が際立つので、同じ映画を観ていたのかなぁという気持ちになったりした。お金がかかっている映画なのはよく分かる。この手の映画に日本人俳優が出る時代は来ていない。
『サイキッカー 超人大戦』(Enhanced)
2019年・カナダ 監督/ジェームズ・マーク
出演/ジョージ・チョートフ/アラナ・ベイル/エイドリアン・ホームズ/クリス・マーク
どうみたって面白くなさそうだったが、観始まったら超人人間が出現して一種のSFっぽい雰囲気に観続けることになった。が、だんだんと本領を発揮してきて、面白くなさが顕著となった。所詮はこんな邦題を付ける段階から分かっていたことだろう。訳の分からない内容となっていった結末を覚えていない。ただ、予想した通り死んだと思われた不死身の超人が再び顔を出すところで「The End」となっていた。へ、へ~ん!!
『65/シックスティ・ファイブ』(65)
2023年・アメリカ 監督/スコット・ベック/ブライアン・ウッズ
出演/アダム・ドライバー/アリアナ・グリーンブラッド/クロエ・コールマン
6500万年前の惑星ソマリスから不時着したのが地球だったなんていう物語がすんなりと心に入って来ない。恐竜期だったらしい地球ではソマリス人が生き残ったもう一人のソマリス人の娘と奮闘するのだった。あれっ!最後はどうなったんだっけ、と思い出せもしない映画鑑賞記となってしまった。
『リーグ・オブ・レジェンド/時空を超えた戦い』(The League of Extraordinary Gentlemen)
2003年・アメリ/ドイツ/チェコカ/イギリス 監督/スティーヴン・ノリントン
出演/ショーン・コネリー/スチュアート・タウンゼント/ペータ・ウィルソン/シェーン・ウェスト
何ともはや、大作感だけが先行してガチャガチャと訳のわからない戦いやアクションがまかり通っているだけの愚作だろう。案の定深く眠ってしまって頭の中もすっきりした。アメコミ作品『リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン』を原作とした映画だが、原作とはほぼ別物になっている、という説明に大いに納得するのであった。
『ターミネーター: ニュー・フェイト』(Terminator: Dark Fate)
2019年・アメリカ 監督/ティム・ミラー
出演/リンダ・ハミルトン/アーノルド・シュワルツェネッガー/マッケンジー・デイヴィス/ナタリア・レジェス
拳銃を命中させてもライフルをぶち込んでも例えバラバラにしたとしても、ひたすら復活する機械人間のシーンはやっぱり飽きが来る。最後の40分くらいは見事に眠ってしまったようで、もう一度そのあたりから見直してようやく死んでくれた機械人間。ストーリーというよりはアクションシーンを見せようとする映画は、残念ながら共感できるものがなかった。
『終身犯』(BIRDMAN OF ALCATRAZ)
1961年・アメリカ 監督/ジョン・フランケンハイマー
出演/バート・ランカスター/カール・マルデン/セルマ・リッター/ベティ・フィールド
観始まってすぐに、このまま最後まで観続けることになるんだろうなぁという予感通りだった。2時間28分の長尺だったが、もう少し物語が続いてくれれば、と思ったほどだ。もっとも、この映画は事実に基づいているから1890年から1963年までの彼の生涯を傍観するしかない。こういう映画を観ると、特に何に感動するというわけではないが、「人生」を思わざるを得ない。こうやって生きているのが不思議で仕方がないのは自分だけではないのだろう。
『アルマゲドン・タイム ある日々の肖像』(Armageddon Time)
2022年・ブラジル/アメリカ 監督/ジェームズ・グレイ
出演/アン・ハサウェイ/ジェレミー・ストロング/バンクス・レペタ/ジェイリン・ウェッブ
1980 年代、ユダヤ系アメリカ人で中流家庭の様子が描かれる。日常的な問題がこの映画のテーマなのだろう。中学生になっやばかりの主人公の男の子、ただの反抗期と捉えてしまえばそのあたりの人間社会の単なるひとつの事実に過ぎない。社会は多くの人々が関与する人間模様、それを司るのはひとりの人間たちの集まりだ。どうにもならない社会の構造、秩序とやらが、ひとりの人間の人生を圧し潰してしまうのが常なる現実。
『カンダハル 突破せよ』(Kandahar)
2023年・アメリカ 監督/リック・ローマン・ウォー
出演/ジェラルド・バトラー/ナヴィド・ネガーバン/アリ・ファザル/バハドール・フォラディ
歴史に埋もれる壮絶な事実をなんと見る。今だってイスラエル、ウクライナと大きな戦いが厳然と行われている。人間の摩訶不思議さが歴史という時間軸でしか語れないのは悲しい。イラン、アフガニスタン、日本人のほとんど知らない世界で淡々と歴史が刻まれていく。やるのは人間、犠牲になるのも人間、一人の特殊工作員が誰も知らない世界を動かしていく。痕跡を辿れば、多くの人間が一つの歴史を形作っている。庶民には分からない世界が繰り広げる歴史が暗闇の中にほんのりと映っているようだ。
『映画 イチケイのカラス』
2023年(令和5年)・日本 監督/田中亮
出演/竹野内豊/黒木華/斎藤工/山崎育三郎/柄本時生/西野七瀬/尾上菊之助/吉田羊/向井理/小日向文世
岡山県秋名市に異動したみちおは、とある傷害事件を担当することとなった。事件は主婦の島谷加奈子が史上最年少で防衛大臣に就任した若きエリート政治家・鵜城英二に包丁を突き付けたというもの。事件の背後には島谷の夫が犠牲となった貨物船と海上自衛隊イージス艦の衝突事故があり、その事故も不審点だらけのものだったが、イージス艦の航海記録は全て国家機密に該当するため、みちおの伝家の宝刀たる職権発動も通用しない・・・(Wikipediaより)
『ビヨンド・ザ・ロウ』(Tueurs)
2017年・フランス/ベルギー 監督/ジャン=フランソワ・アンジャン/フランソワ・トロウケンス
出演/オリヴィエ・グルメ/ルブナ・アザバル/ケヴィン・ヤンセンス/ブーリ・ランネール
家族と静かな暮らしを送るために、最後の仕事に挑んだプロの強盗フランク。だが現金輸送車強盗計画の裏には、謎の犯罪組織の罠が潜んでいた。事件の関係者たちは次々と殺害され、その中には、ヴェロニクという検事もいた。検事殺しの濡れ衣を着せられフランクは逮捕されるが、真犯人を見つけるため脱獄を決行・・・・(Filmarksより)
『ストーリー・オブ・マイ・ワイフ』(A felesegem tortenete/The Story of My Wife)
2021年・ハンガリー/ドイツ/フランス/イタリア 監督/イルディコー・エニェディ
出演/レア・セドゥ/ハイス・ナバー/ルイ・ガレル/セルジオ・ルビーニ
1920年のマルタ共和国。船長の主人公は、カフェに最初に入ってきた女性と結婚するという賭けを友人とし、そこに現れた美しい女性と結婚する、というところから映画は始まる。延々と2時間49分、だらだらと海の男が陸に上がってダメになって行く姿を映していく。奔放に見える妻に翻弄されるように一人の男が骨を抜かれて行く。哀しいなぁ~、という印象が強い。
『暗殺者たちの流儀』(Anatomia zla)
2015年・ポーランド 監督/ヤツェク・ブロムスキ
出演/クシシュトフ・ストロインスキ/マルチン・コヴァルチック/ミハリナ・オルシャンスカ
暗殺を生業とする男・ルレクは刑務所から解放されるが、彼を解放した検事は彼に拒否できない仕事を依頼する。それは警察庁長官の暗殺だった。初老を迎え、暗殺者としての能力が衰え始めているルレクは、若きスナイパー・ワスコを雇うことにする。(Filmarksより) というポーランド映画としては珍しいテーマ。アメリカ映画といわれても分からないほどのテンポがあった。自分で出来ないことを他人を使って実行するのは頭のいい人の所業。それが出来なくて、何でも自分が自分がという人間がダメな仕事師と言える。
『アビリティ 特殊能力を得た男』(Doe)
2018年・アメリカ 監督/ジャスティン・フォイア
出演/ティモシー・デイビス/タチアナ・アリ/マシュー・セント・パトリック/アーロン・ファーブ
8年前、とある公園のベンチで、ジョンという名の男が発見された。過去の記憶が全くない状態だったが、37ヵ国語を流暢に話せる才能を持っていたことから、言語学の教師となった。彼を発見した探偵カールとは親友になり、彼の妹レイチェルと結婚したジョンは娘にも恵まれ、幸せな暮らしを送っていた。(Filmarksより) もっと面白くなるはずだったが、堂々巡りのだらだら映画となってしまって最後のシーンでようやく目を覚ました体たらくさ。
『ウェイ・ダウン』(Way Down/The Vault)
2021年・スペイン 監督/ジャウマ・バラゲロ
出演/フレディ・ハイモア/リーアム・カニンガム/サム・ライリー/ファムケ・ヤンセン
大学生が頭脳で参加するのは窃盗団、というよりは一獲千金を目論む特殊集団と言ったらいいのだろうか。アクション映画でありながら知恵を絞っての危機からの回復策を見せてくれる。アメリカ映画だったらもう少しアクション映画っぽくなるのだろうが、ちょっと理屈に負けてしまったきらいがある。サッカー・ワールドカップ2010年の映像をも入れ込んで、いかにスペイン人がサッカーに熱狂しているかも知らせてくれる。
『デリシュ!』(Delicieux/Delicious)
2021年・フランス/ベルギー 監督/エリック・ベナール
出演/グレゴリー・ガドゥボワ/イザベル・カレ/バンジャマン・ラヴェルネ/ギヨーム・ドゥ・トンケデック
1789年、革命直前のフランス。誇り高い宮廷料理人のマンスロンは、自慢の創作料理「デリシュ」にジャガイモを使ったことが貴族たちの反感を買い、主人である傲慢な公爵に解任され、息子と共に実家に戻ることに。民衆の力で王政を崩壊させたフランスには誇りの歴史がある。現在の日本を見てみれば、傲慢と無秩序だけが横行する時の政権なんて、とっさに民衆に押し倒されても歴史のほんの一掴みにしか残らないだろうと思えてくる。
『アンテベラム』(Antebellum)
2020年・アメリカ 監督/ ジェラルド・ブッシュ/クリストファー・レンツ
出演/ジャネール・モネイ/エリック・ラング/ジェナ・マローン/ジャック・ヒューストン
「過去は死なない、過ぎ去りさえしない」という言葉が何度か出てくる。「戦前」という原題の意味らしい、今回の場合は「南北戦争前」のことを言っているという。南北戦争時代の奴隷たちの虐げられた生活が生々しい。アメリカ人は平気で過去を葬る。原子爆弾を落としておいて、あれは正当だったと未だ持って過半数が思っていると聞くと、教育がいかに重要かを教えられる。アメリカがアメリカ人が悪いわけではない、すべては教育のなせる業だ。やっぱりそういう教育をする国も人も悪いのかもしれない。
『隣の影』(Undir trenu/Under the Tree)
2017年・ドイツ/アイスランド/デンマーク/ポーランド 監督/ハーフシュテイン・グンナル・シーグルズソン
出演/ステインソウル・フロアル・ステインソウルソン/エッダ・ビヨルグヴィンズドッテル/シグルヅル・シグルヨンソン/ソウルステイン・バックマン
性根の悪い国民だなぁ、と思いながらどこの国での話だろうと考えていた。製作国に予想していたデンマークとポーランドが出て来たので、ちょっと合点がいった。国民を一緒くたにして国を語るのは適切ではないとは思うが、概してDNAらしき人間性が同じものたちが集まるのが国民だから仕方がないのかもしれない。ポーランドではないだろうと思う。隣の芝生は青いのではなく、隣の芝生は腐敗臭を放っていると考える隣同士の醜い争いに気持ちが悪くなってくる。こういう映画を最後まで観られるのは、余程の鈍感者か忍耐強い人なのだろう。
『ノッティングヒルの洋菓子店』(Love Sarah)
2020年・イギリス 監督/エリザ・シュローダー
出演/セリア・イムリー/シャノン・ターベット/シェリー・コン/ルパート・ペンリー=ジョーンズ
なんていうことない、ありきたりのストーリー。
『カム・バック 検事の女』(Corrupt)
2016年・カナダ 監督/カーティス・クロフォード
出演/ニコール・デ・ボア/スコット・ギブソン/ピーター・マイケル・ディロン/スティーブ・バラン
出来の悪い検事もの。
『Mr.ブルックス 完璧なる殺人鬼』(Mr. Brooks)
2007年・アメリカ 監督/ブルース・A・エバンス
出演/ケビン・コスナー/デミ・ムーア/デイン・クック/ウィリアム・ハート
邦題のサブタイトルが酷い。ネタ晴らしもいいところで、映画が始まってすぐにそれだと分かったとしても、観る前からばらしていたんじゃ話にならない。話は思いがけない方向に進んで気分の悪さを紛らわせてくれるが、この歳になってみると正義の味方だと人生の先がないことをいいことに殺人鬼になってもいいなぁ、なんて思えて思わずぞっとした。
『すばらしき世界』
2021年(令和3年)・日本 監督/西川美和
出演/役所広司/仲野太賀/六角精児/北村有起哉/白竜/キムラ緑子/長澤まさみ/安田成美/梶芽衣子/橋爪功
主人公が13年の殺人罪での刑期を終えて出所するところから物語は始まった。世間の目は冷たい、どころかどうやって生きていくのかさえ皆目見当がつかない。身近に同じような人物に会ったことがないので分からないが、結構神経を使う日常になってしまうことは想像できる。それでも、ひとり、ふたりと、心から援助する人たちが周りに集まってくる風景は人間の美徳かもしれない。
『ファイヤー・ウィズ・ファイヤー 炎の誓い』(Fire with Fire)
2012年・アメリカ 監督/デヴィッド・バレット
出演/ジョシュ・デュアメル/ブルース・ウィリス/ロザリオ・ドーソン/ヴィンセント・ドノフリオ
アメリカでも劇場未公開だっという。ちょっとばかり設定が甘くてサスペンス・アクションというジャンル分けも泣こうというもの。ただ、アメリカの証人保護プログラムというのはさすがだと感嘆させられる。証人のデータを国家として抹消してしまうなんて、日本では到底考えられない。それでも居場所が分かってしまうのはただ設定が甘いというのではなく、現実社会だって人間のやることの限界を露呈しているような気がする。
『オペレーション・ミンスミート』(Operation Mincemeat)
2021年・イギリス 監督/ジョン・マッデン
出演/コリン・ファース/ケリー・マクドナルド/マシュー・マクファディン/ペネロープ・ウィルトン
1943年、第二次世界大戦の終わりまでにはまだ2年ある。ナチス・ドイツは攻勢を極め連合軍各国は苦戦を強いられていた。実話に基づくストーリー、戦争映画の実話は重い。ヒットラーをだます作戦を敢行したのはイギリス軍、その諜報員やMI6。誰が味方で誰が敵なのかも定かではない。二重スパイ、三重スパイだって当たり前。作戦の最終決断は時の首相ウィンストン・チャーチル、決断をする人の責任と見識は歴史を変えていく。
『アインシュタイン~天才科学者の殺人捜査~』(Einstein)
2017年・ドイツ 監督/トーマス・ヤーン
出演/トム・ベック/アニカ ・エルンスト/ロルフ・カニース/ヘイリー・ルイーズ・ジョーンズ
主人公はアインシュタインの玄孫で、天才物理学者、大学教授だが大の女好きで、女子学生や犯罪の参考人まで手当たり次第、玄人刑事を超える推察力で事件を解決して小気味よいが、いかんせんドイツ・コメディを実践してしまう。評判がよくシリーズになっているらしい。納得は出来る。アメリカでリメイクされるだろう作品が観てみたい。
『バーバラと心の巨人』(I Kill Giants)
2018年・アメリカ/イギリス/中国/ベルギー 監督/ アンダース・ウォルター
出演/マディソン・ウルフ/イモージェン・プーツ/シドニー・ウェイド/ロリー・ジャクソン
ウサミミと眼鏡がトレードマークのティーンエイジャーのバーバラの心の闇(空想)を映像化して、摩訶不思議な世界へと誘ってくれる。母親の重病を直視できないことが闇の正体なのだが、実生活・学校生活までもその世界は支配してしまうのだった。最後の最後になって眠ってしまったが、巻き戻して観ようという気になったのが幸いだ。
『カムバック・トゥ・ハリウッド!!』(The Comeback Trail)
2020年・アメリカ 監督/ジョージ・ギャロ
出演/ロバート・デ・ニーロ/トミー・リー・ジョーンズ/モーガン・フリーマン/ザック・ブラフ
1982年の映画『The Comeback Trail』のリメイク作品で、借金苦にあるB級映画のプロデューサーが主演俳優を事故死させて保険金を得ようと画策する姿を描いている。業界人が業界を描いた映画は概しておもしろくないが、この映画は業界の中身というよりはこんなこともあるよという示唆に富んだことを取り上げているだけなので、何とかおもしろさが辛うじてとどまっている。でも、途中に居眠りが発生した。
『眠りの地』(The Burial)
2023年・アメリカ 監督/マギー・ベッツ
出演/トミー・リー・ジョーンズ/ジェイミー・フォックス/ジャーニー・スモレット=ベル/ママドゥ・アティエ
Amazon Prime Videoで2023年10月13日から配信。いきなりアマゾン・プライムかぁ~! アメリカの裁判劇は迫力がある。日本のテレビドラマでも弁護士や裁判に関するテーマは数多く企画・放映されているがいろいろと曖昧にするところがあり、ここにも忖度があるのかとうんざりすることがある。だいたい訴訟額が違い過ぎる。この映画だって1億ドル(150億円)という金額にさすがアメリカと拍手せざるを得ない。黒人・白人・男・女、というサブのテーマも骨格をなすほどの扱いが素敵だ。
『オットーという男』(A Man Called Otto)
2023年・アメリカ 監督/マーク・フォースター
出演/トム・ハンクス/マリアナ・トレビノ/マヌエル・ガルシア=ルルフォ/レイチェル・ケラー
これってトムハンクスだよなぁ、というのが最初の印象。歳を喰っているし、顔が長く見えたのは生え際がさらに切れ上がったせいなのかもしれない。妻に先立たれた超堅気なきちんとし過ぎている老人がいる。何かと役に立つ存在なのだが、本人は妻のもとへ早く旅立ちたいと何度もトライするが「生きて」いるのが運命のように・・・・。コメディで片付けなくてはそれこそ暗い映画になってしまう。陽気なメキシカン家族が隣に引っ越してきたことが終活の潤いになっている。最後には思わず涙がこぼれて来た。自分もこんな風に旅立ちたいと思ったのかもしれない。
『フェイブルマンズ』(The Fabelmans)
2022年・アメリカ 監督/スティーヴン・スピルバーグ
出演/ミシェル・ウィリアムズ/ポール・ダノ/セス・ローゲン/ガブリエル・ラベル/ジャド・ハーシュ
スピルバーグ監督の映画だった。何も知らないで観始まるのはやっぱりいいことだと確信できた。最初のうちはおもしろくなくて、少し寝てしまったが、急に面白くなりだしたのには驚いた。その後はおもしろさが継続して、終わってしまうのが惜しく感じたほどだった。スピルバーグ監督が自身の子ども時代にインスパイアを受けて制作した作品で、スピルバーグの母リアと父アーノルドに捧げられている。2時間31分と長尺である。
『余命10年』(The last 10 years)
2022年(令和4年)・アメリカ 監督/藤井道人
出演/小松菜奈/坂口健太郎/山田裕貴/奈緒/黒木華/リリー・フランキー/原日出子/松重豊
久しぶりのテレビ放映映画を観た。監督の藤井の「四季を通して茉莉の10年を追いかけ、その時彼女が感じた気持ちを映像で表現したい」という強い希望があり、1年を通しての撮影が行われ、桜や雪や夏の海はVFXではなく実際の撮影となっている。映画としてのインパクトは事実を超えられない。まったく自分の身体としての自覚と感覚のない病院ベッドでの生活を経験した者にとって、「死」とは遠いものではなく、自分の手で手繰り寄せようとするものでもない。
『ルーム・フォー・レント』(Room for Rent)
2019年・アメリカ 監督/トミー・ストーバル
出演/リン・シェイ/オリバー・レーヨン/ヴァレスカ・ミラー/ライアン・オチョア
観ていて気持ち悪い老婆の殺人狂人が映画の質までも落としてしまっているのは皮肉だ。こんな人が近所に住んでいたら、とてもじゃないけど周りの人たちは居心地が悪過ぎるだろう。それでも、その意地悪さにさえも気づくまでに時間がかかるだろうから、人生の大半を不愉快に過ごすことになってしまう。たまには戦う日常も必要なのかもしれない。
『マトリックス レザレクションズ』(The Matrix Resurrections)
2021年・アメリカ 監督/ラナ・ウォシャウスキー
出演/キアヌ・リーブス/キャリー=アン・モス/ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世/ジェシカ・ヘンウィック
たぶんまだ観ていないだろうと観始まった。最初の3作ともなんとか観ているが、実は何が何だか内容が分からない。「マトリックス」という世界と自分の空想力が合致しない。この映画も、何度も停止して観終わるまでに何日もかかってしまった。よくよく考えたら、子供騙しのようなストーリーを映像化して、関係者だけが喜んでいるのではなかろうか。それでも、世間的にはヒットした映画のジャンルに入るのだろうから、要は自分の頭の中身が映画に追いついていないということに違いない。
『THE ICEMAN 氷の処刑人』(The Iceman)
2012年・アメリカ 監督/アリエル・ヴロメン
出演/マイケル・シャノン/ウィノナ・ライダー/ジェームズ・フランコ/レイ・リオッタ
実在の殺し屋リチャード・ククリンスキー、家族の前では良き夫、良き父親である一方で、逮捕されるまでに100人以上を手にかけた冷酷な殺し屋としての顔を持つ。三流映画のような雰囲気だが、ストーリーがよく理解できない。簡単に依頼された殺人をするようになった心のうちはまったく描かれていない。そういえば、映画に出てくる悪人どもは自分の家族を溺愛しているが、殺してしまった相手にも家族がいたりすることを理解できていないのだろう。
『RENDEL レンデル』(Rendel)
2017年・フィンランド 監督/ジェッセ・ハーヤ
出演/クリストフェル・グンメルス/ラミ・ルシネン/レンネ・コルピラ/マッティ・オンニスマ
バットマンの出来損ないのような格好とスーパーマンやスパイダーマンを連想させるスーパーヒーロー?らしき主人公が痛々しい。強いのか弱いのか分からない格闘シーンに思わず苦笑いしてしまう。本物のスーパーマンは期待できなくても、思いっきり期待できるスーパー・ヒーローが日本の政治社会に現れることはないのであろうか。
『事故物件2013号室』(The Landlord)
2017年・アメリカ 監督/ダニエル・リンゲイ
出演/モリー・マクック/ジャック・ターナー/テッド・マッギンレー/アン・スウォード
スリラーものは映画の出来が恐怖の深さを現す。よほどではない限りスリラーものを名乗ることすら憚れる。それにしても、どんな高級だろうと賃貸アパートメントには想像以上の危険な仕掛けがしてあってもおかしくない現代社会だ。
『355』(The 355)
2022年・イギリス/アメリカ 監督/サイモン・キンバーグ
出演/ジェシカ・チャステイン/ルピタ・ニョンゴ/ペネロペ・クルス/ダイアン・クルーガー/ファン・ビンビン
タイトル及び作中のスパイチーム名の「355」とは18世紀のアメリカ独立戦争時代に実在したパトリオット側の女性スパイエージェント355にちなむという。5人の女性アクションが見世物だが、チャーリーズ・エンジェルのように最初から出来上がっているチームではないところが売りか? 麻薬の大量売買ではなく超最新デバイスによるテロ行為可能なシステムを売買しようとする今風題材に時代を感じる。
『街のあかり』(LAITAKAUPUNGIN VALOT)
2007年・フィンランド/ドイツ/フランス 監督/アキ・カウリスマキ
出演/ヤンネ・フーティアイネン/マリア・ヤンヴェンヘルミ/マリア・ヘイスカネン/イルッカ・コイヴラ
先日観た「過去のない男」を含めて敗者3部作というらしいが、何ともはや暗くてどうしようない。気分が良い時なら、この手の映画も人生の教訓として眺めることもできるのだろうが。「まだ死なない」という主人公の言葉が重々しく感じる。鋭い「鈍感力」を駆使しながら、短い人生を謳歌することが人生の使命なのだろうか。
『ストレンジ・アフェア』(Strange But True)
2019年・カナダ 監督/ローワン・アターレ
出演/ニック・ロビンソン/マーガレット・クアリー/エイミー・ライアン/グレッグ・キニア
なんか幻想的なほんわかしたストーリーかと思っていたら、実はおぞましい話だった。アメリカ映画に見慣れていると、ちょっと雰囲気の違う映画がすぐに分かるのがおもしろい。なにしろ、所かまわずいろいろな映画を観続けているので、めったにいい映画に出逢えないのが残念なり。
『過去のない男』(Mies vailla menneisyytta)
2002年・フィンランド/フランス/ドイツ 監督/アキ・カウリスマキ
出演/カティ・オウティネン/マルック・ペルトラ
暴力によって記憶を失くしてしまった主人公、自分の名前さえわからくなってしまった街で一体何が出来るというのだろうか。認知症になったとしたら同じことなのだろう。幸せなのは本人だけで、周りの人は堪ったものじゃない。でもそんな家族が世の中にはどんどん増えているのだろう。せめて、死ぬ時ぐらいみんなに迷惑を掛けることなく息を引き取りたい。さんざん迷惑を掛け通しの人生だったから。
『レミニセンス』(Reminiscence)
2021年・アメリカ 監督/リサ・ジョイ
出演/ヒュー・ジャックマン/レベッカ・ファーガソン/タンディ・ニュートン/クリフ・カーティス
人間の記憶を呼び起こして記録するという技術が開発された。SFである。事件の解決に使われることがある。この時世界は都市の半分が水に沈んでしまっているという状況だった。マイアミのビル群がだいぶ水に浸かって世の中も荒んでいる。記憶潜入エージェントの主人公は偶然に出逢ったと思われた女性に興味が惹かれ過ぎて、ある事件へと引きずり込まれていった。ちょっと独りよがりのストーリー展開がうざったい。
『ハーバーマン 誇り高き男』(Habermann)
2010年・ドイツ/チェコ/オーストリア 監督/ユライ・ヘルツ
出演/マルク・ヴァシュケ/カレル・ローデン/ベン・ベッカー/ハンナー・ヘルツシュプルング
悲しい思いがこみ上げてくる映画だった。実話に基づく物語と思わせるような雰囲気が、息を詰まらせる。350万人ものドイツ系民族が住むチェコスロバキア・ズデーテン地方が舞台。ナチス・ドイツの所業を日本の韓国統治と同じだと嘯く韓国人は、自分が教育された嘘の歴史をもう何度でも勉強し直す必要がある。それにしても酷いヒットラーの悪事は、末端まで行き届いている。少しはヒットラーのいいところを描いた歴史はないものなのだろうかと考えるのは無駄なことなのだろう。
『アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド』(Ich bin dein Mensch/I'm Your Man)
2021年・ドイツ 監督/マリア・シュラーダー
出演/ダン・スティーヴンス/マレン・エッゲルト/サンドラ・フラー
ベルリンのペルガモン博物館で、楔形文字の研究に没頭する学者アルマは研究資金を稼ぐため、とある企業が極秘で行う特別な実験に参加することに。そこに現れたのは紺碧の瞳でアルマを熱く見つめるハンサムなトム。初対面にもかかわらず、積極的に口説いてくる彼は、実は、全ドイツ人女性の恋愛データ及び、アルマの性格とニーズに完璧に応えられるようプログラムされた高性能AIアンドロイドだったー!(Filmarksより)
『ラストオーダー 最後の注文』(Last Orders)
2001年・イギリス/ドイツ 監督/フレッド・スケピシ
出演/マイケル・ケイン/トム・コートネイ/デビッド・ヘミングス/ボブ・ホスキンス/ヘレン・ミレン
ロンドンの下町にあるパブに、うだつのあがらない3人の老人たち。カウンターに置かれたグラスの横には、1つの骨壺が置いてある。つい先日まで、若かれりし頃からこの場で酒を酌み交わしていた友が亡くなり、“遺灰は海にまいてほしい”という彼の要望を叶えるため、海辺の町マーゲイドを目指す弔いのドライブが始まる。おもしろいはずなのに何てことなかった思い出話が恨めしいが、友に遺灰を撒かれた主人公は幸せだったろうな。
『アリバイ 高額報酬の代償』(Fatal Performance)
2011年・カナダ 監督/ジョージ・アーシュベイマー
出演/ニコール・トム/デヴィッド・パルフィー/スティーヴ・ベーシック/エミリー・ウラアップ
出来の悪いサスペンス映画。五流映画。最後まで寝らなかったのが救いだった。
『クリード 過去の逆襲』(Creed III)
2023年・アメリカ 監督/マイケル・B・ジョーダン
出演/マイケル・B・ジョーダン/ジョナサン・メジャース/テッサ・トンプソン/ウッド・ハリス
出来の悪いボクシング映画。五流映画。それなりに楽しめるギリギリのところ。
『郵便探偵ロストレターズ 手紙がもたらす小さな奇跡』(Signed, Sealed, Delivered: The Vows We Have Made)
2021年・アメリカ 監督/リンダ・リサ・ヘイター
出演/エリック・メビウス/クリスティン・ブース/クリスタル・ロウ/ジェフ・グスタフソン
配達不能の郵便物を届けるため、その謎に迫り、差出人や受取人を導き出す異色ミステリー! お涙頂戴で終わるのはなかなかいい。ちょっと変わった映画だが、配給会社の立場になって観る癖が抜けきらないので、どこの映画館で掛けたらいいのだろうかと、頭を縦に傾げてしまう。
『シー・セッド その名を暴け』(She Said)
2022年・アメリカ 監督/マリア・シュラーダー
出演/キャリー・マリガン/ゾーイ・カザン/パトリシア・クラークソン/アンドレ・ブラウアー
#MeToo運動が世界へ広がる大きなきっかけのひとつとなった、ニューヨーク・タイムズ紙による2017年の性暴力報道を描く。ハリウッドで大きな影響力を持っていた映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインの何十年にもわたる性暴力事件を2人の女性記者が追いかけ、ワインスタイン側からの激しい攻撃をはねのけて記事の公開へ至る姿が描かれる。(Wikipediaより)
映画界での話だ。MIRAMAXといえばだれでも知っている映画会社。その創始者の恐ろしい所業が公になるのには幾多の困難があった。おぞましい。映画は金を生むから、こういう輩も生み出すことになったのだろう。声を上げられないように周到な防御をして悪事を働く人間の行く末を見てみたい。もちろん、映画界だけではなく同じような悪行をしでかしていながら平然と生きている人間がたくさんいるに違いない。嫌だね人間社会。楽しいはずなのに。
『チケット・トゥ・パラダイス』(Ticket to Paradise)
2022年・アメリカ 監督/オル・パーカー
出演/ジュリア・ロバーツ/ジョージ・クルーニー/ケイトリン・デヴァー/マキシム・ブティエ
夫婦生活をたった5年で終え、ひとり娘リリーのためだけに20年間「家族」という関係をつづけてきたジョージア(ジュリア・ロバーツ)とデヴィッド(ジョージ・クルーニー)。 険悪なムードが漂うふたりの旅の目的は、卒業旅行先のバリ島で出会ったばかりの青年と恋に落ちた娘のスピード婚目前の娘を止めること。「恋」という一時の「気の迷い」で人生をフイにして欲しくない、自分たちと同じ過ちを犯して欲しくないとふたりは…という軽いコメディ。
『月面着陸』(Il grande passo)
2019年・イタリア 監督/アントニオ・パドバン
出演/ジュゼッペ・バッティストン/ステファノ・フレージ/ロベルト・シトラン/カミッラ・フィリッピ
原題を翻訳機にかけると「大きな一歩」だった。イタリア独特のユーモアなんだろう。子供の頃から夢見てきた決断を35年経った今、実行しようとしている兄と疎遠になっている弟のやり取りがイタリア映画。ペーソスのあるストーリーや結末を望んでいたが、さすがに個人がロケットを作って発射までしてしまうのでは、それ以上の映像は期待できない。町のみんなの心配をよそに、ロケットが月に向かって発射されたところで、映画は THE END 。
『忘れられない年、春』(Um Ano Inesquecivel 4 - Primavera)
2023年・ブラジル 監督/ブルーノ・ギャロッティ
出演/リビア・シウバ/ホナウド・ソット/ビア・ジョルドン
世界中の親子関係のように、親は子供には学校で満遍なくいい成績をとって欲しいと願っている。子供には特に好きなことがあって、その方向に人生の道を進みたいと願っている。ブラジルの青春映画のようだ。春、夏、秋、冬、と四部作になっているらしい。気楽に観られる映画というよりは映像の雰囲気。たまには異国の映画も観ておいた方がいい。
『ミセス・ハリス、パリへ行く』(Mrs. Harris Goes to Paris)
2022年・ハンガリー/イギリス/カナダ/フランス/アメリカ/ベルギー 監督/アンソニー・ファビアン
出演/レスリー・マンヴィル/イザベル・ユペール/ランベール・ウィルソン/アルバ・バチスタ
1957年、戦争で夫をなくした未亡人で家政婦で掃除婦の主人公が、偶然に出会ったクリスチャン・ディオールの服に恋をしてしまった。憧れのパリと日本人は全員がパリに恋い焦がれていた時代があった気がする。ロンドンに住む主人公も同じようにパリに恋しているようだった。お金もないのに陽気な主人公がまき起こす事件は、周りの人たちを幸せにしていく。こういう人がいるのが嬉しい。自分もそういう人になりたいと思うけれど、すぐに挫折感を味わうことばかりで、終始一貫しない人生が恨めしい。
『バッジ・オブ・ビトレイヤル』(Badge of Betrayal/Sole Custody/Arson Mom/ The Arsonist)
2014年・アメリカ 監督/ブレントン・スペンサー
出演/ジュリー・ベンツ/リック・ラヴァネロ/マックスウェル・コヴァチ/マシュー・ケビン・アンダーソン
サスペンスフルな展開の果て、思いも寄らぬ結末が訪れる衝撃のラストに震えが止まらない! この程度の映画でそんな大袈裟なことを言うなんて、と思うのが昔からの映画関係者だと嘯く。結婚生活と子供のことを描くアメリカ映画には共通の価値観があるようだ。それにしても溺愛する母親も父親も、好きで結婚した相手に対してはあっさりと関係を断ってしまう神経がイマイチよく理解できない。
『REVENNGE リベンジ 鮮血の処刑人』(Army of One)
2020年・アメリカ 監督/スティーヴン・ダラム
出演/エレン・ホルマン/マット・パスモア/ジェラルディン・シンガー/ステファン・ダンレヴィ
セクシーに、容赦なく、ぶっ殺す悪党どもに、夫を殺され、銃で撃たれ、森に捨てられた女彼女が無敵の女兵士であることは、誰も知らない復讐の名のもとに、地獄の底から蘇れ。(Filmarksより) アメリカの特殊部隊兵隊さんは女といえど、極めて怖い存在みたいだ。体力もさることながら、その精神力に驚かされる。日本の女性はしとやかだ。
『サイレント・トーキョー』
2020年(令和2年)・日本 監督/波多野貴文
出演/佐藤浩市/石田ゆり子/西島秀俊/中村倫也/広瀬アリス/井之脇/海勝地涼
最初から最後までサスペンス映画として悪くはない。東京を舞台にした爆破テロ犯人は誰なのか? 最後には犯人と思われる人物が現れるが、人間関係性がイマイチ表現しきれていないストーリー展開にちょっと苛立ちを感じる。後出しじゃんけんのようなサスペンスは、観客を馬鹿にしているとしか思えない。解決できない頭の中をそのままにして映画は終わってしまう。ちょっと編集のし過ぎなのかもしれない。さすがにテレビの2時間ドラマに比べれば、迫力のある映画として賛辞を得られるかもしれない。
『ブラック・イースター』(Black Easter)
2021年・アメリカ 監督/Jim Carroll
出演/ジェイソン・カストロ/ハイディ・モンタグ/ドニー・ボアズ/Christina Birdsong
ナザレのイエスの十字架貼り付け直前にまでタイムリープしてしまうストーリーは、あまりにも独りよがりのSF過ぎて、とてもじゃないけど理解不能に陥った。この頃は、この映画に限らず考えても分からないストーリーや事象に出くわす映画が多くて往生している。老いたんだろうねぇ~!! 決して若い映画製作者の思考を責めているわけではない。
『エグゼキューター 暗殺者』(Executor)
2017年・アメリカ 監督/モジコ・ウィンド
出演/ポール・ソルヴィノ/マーキス・マクファデン/アイデン・ウィンド/ミーシャ・バートン
5流映画の真髄を観るような映画だった。神という名のもとにかなりの不条理が横行しているような気がする。神という言葉を使えば、他人を殺しても神の思し召しだと平気でのたまう。千年前の掟を今の時代に適用させること自体が不条理なのに、そんなことすら理解できない頭の悪い人々で満ち溢れている地球になってしまったようだ。
『レオニー』(Leonie )
2010年・日本/アメリカ 監督/松井久子
出演/エミリー・モーティマー/中村獅童/原田美枝子/竹下景子/吉行和子/中村雅俊
もう少し早く観ておきたかった映画だった。世界的な彫刻家イサム・ノグチを育てた母レオニー・ギルモアの物語。このイサム・ノグチという名前を何度か見たり、聞いたりするたびにもっとよく知りたいと思っていた。何でも知っているようなふりをする私のような似非知識人にとっては、心の底から実践できていない芸術の世界。それにしても凄い。この母親の精神構造から生き方まで、スーパーな女性の典型のようだった。羨ましいその人間力という才能。
『アイ・キャン・オンリー・イマジン 明日へつなぐ歌』(I Can Only Imagine)
2018年・アメリカ 監督/アンドリュー・アーウィン/ジョン・アーウィン
出演/J・マイケル・フィンリー/デニス・クエイド/ブロディ・ローズ/マデリン・キャロル
クリスチャンソングというジャンルがあるというのを知った。歌手としての成功物語だが、それぞれの人生にはそれぞれの道があろうというもの。ほんの一握りの成功者の陰には、その何十倍の夢かなわぬ人たちの人生もあることをしっかりと覚えていなくてはならない。
『タイムトラベラーの系譜 サファイア・ブルー』(Saphirblau)
2014年・ドイツ 監督/フェリックス・フックシュタイナー/カタリーナ・シェード
出演/ヤニス・ニーヴナー/マリア・エーリック/ローラ・ベルリン/ヴェロニカ・フェレ
タイムトラベラー一族のはなし。おもしろいはずなのだが、分かり難くて腹が立つ。現役高校生の主人公女性が苛立つ。馴染めない生活感が疎ましい。人生だって難しいんだ、タイムトラベラーなんて夢にもなりやしない。
『新聞記者アレックス 殺人の手助け』(CHRONICLE MYSTERIES: HELPED TO DEATH)
2021年・カナダ 監督/ジェイソン・ボルク
出演/アリソン・スウィーニー/ベンジャミン・エアーズ/クリスチャン・アルフォンソ/レベッカ・スターブ
この頃の社会には詐欺まがいのお誘いがうようよしている。本当になってしまえば文句も言えない。全員が騙されて、初めて詐欺だったと知った時にはもう遅い。違法すれすれの事象を判断するのは難し過ぎる。君子危うきに近寄らずという例えがあるように、決して触らず遠くから見守っていた方が賢明な事柄が多くて困っているのが多数派なのだろう。
『チューリップ・フィーバー 肖像画に秘めた愛』(Tulip Fever)
2017年・アメリカ/イギリス 監督/ジャスティン・チャドウィック
出演/アリシア・ヴィキャンデル/デイン・デハーン/ザック・ガリフィアナキス/ジュディ・デンチ
チューリップ・バブルと呼ばれる時代があったらしい。オランダ黄金時代のネーデルラント連邦共和国において、当時オスマン帝国からもたらされたばかりであったチューリップ球根の価格が異常に高騰し、突然に下降した期間。チューリップ・バブルのピーク時であった1637年3月には、1個当たり、熟練した職人の年収の10倍以上の価格で販売されるチューリップ球根も複数存在した、というから凄い。いつの時代にも金の魔力に負けた社会環境が発生するらしい。それが人間の本能だと言ってしまえば元も子もない。そんな時代に弄ばれた男と女の世界、愛欲の世界が繰り広げられる。世の中は変わっても、人間の心は進歩しようがないようだ。
『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』(My Salinger Year)
2020年・アイルランド/カナダ 監督/フィリップ・ファラルドー
出演/マーガレット・クアリー/シガニー・ウィーヴァー/ダグラス・ブース/コルム・フィオール
1990年代のニューヨークで老舗の出版エージェンシーに就職し、伝説的隠遁作家J・D・サリンジャーと彼のファンを結ぶ窓口係となった作家志望の女性を描いた青春奮闘記で、ジョアンナ・ラコフが2014年に上梓した自叙伝『サリンジャーと過ごした日々』を原作としている。『ライ麦畑でつかまえて』という本をまだ読んでいない。1本だけこの作家にまつわる映画を観た時に、強烈にこの題名が頭に焼き付いて離れない。どうしても死ぬまでに読んでおかなければいけない本だ。
『シャドウ・イン・クラウド』(Shadow in the Cloud)
2020年・ニュージーランド 監督/ロザンヌ・リァン
出演/クロエ・グレース・モレッツ/ニック・ロビンソン/ビューラ・コアレ/テイラー・ジョン・スミス
クロエ・グレース・モレッツがだいぶ大人になって嬉しい。子供を産んだ時間経過もありかな。映画はあまりにも荒唐無稽で画面は暗くて飛行機の中なのにやっていることが明確に見えずに辟易する。だけども、こんなストーリーを展開できるのも映画だからこそのことだろう。グレムリン?と戦う母親のシーンがやけに格好良かった。
『大脱走2』(The Great Escape II: The Untold Story)
1988年・アメリカ 監督/ポール・ウェンドコス/ジャド・テイラー
出演/クリストファー・リーヴ/ジャド・ハーシュ/チャールズ・ヘイド/マイケル・ネイダー
1963年に公開された映画『大脱走』(真の続編ではないが、1963年版で描かれていなかった他の脱走者など)にスポットを当てた1963年版の後日談的なストーリーとなっているらしい。1988年にアメリカで製作されたテレビ映画で「脱出編」と「復讐編」の二部構成で放送された。途中にあった黒味はそういう意味だったのか!? それなりに面白いが3時間は長い。テレビで観る映画ならではの環境だ。
『ライダーズ・オブ・ジャスティス』(Retfardighedens Ryttere;Riders of Justice)
2020年・デンマーク 監督/アナス・トマス・イェンセン
出演/マッツ・ミケルセン/ニコライ・リー・カース/アンドレア・ヘイク・ゲーゼベウ/ラーシュ・ブリグマン
デンマーク映画といえば「暗い」のが相場だが、この映画はさらに奇妙な価値観に戸惑う。それでも、今まで観たデンマーク映画の中では一番かもしれない。人間社会の出来事は、偶然と必然とのせめぎあい。何が当然で何が異常なのかは誰にも分からない。生まれてきたこと自体が奇跡と言えるのなら、毎日の出来事も同じように奇跡の重なり合いかもしれない。
『遙かなる帰郷』(La tregua)
1997年・イタリア/フランス/ドイツ/スイス 監督/フランチェスコ・ロージ
出演/ジョン・タトゥーロ/マッシモ・ギーニ/ラデ・シェルベッジア/ステファノ・ディオニジ
なんと日本ヘラルド映画配給だった。私が知らないのは当然で、ヘラルドを辞めた8年後の作品だった。ヘラルドらしい配給作品である。アウシュヴィッツ強制収容所から奇跡的に解放されたイタリアのユダヤ人作家プリーモ・レーヴィが、故郷イタリアへ戻るまでの8か月の旅を書き記した記録文学のベストセラー『休戦』(La tregua)の映画化。原作者のプリーモ・レーヴィは映画化の企画を喜んだが、その1週間後に事故死した(自殺とする説もあるが、遺書などの確たる証拠はない)。
『ダウントン・アビー/新たなる時代へ』(Downton Abbey: A New Era)
2022年・イギリス/アメリカ 監督/サイモン・カーティス
出演/ヒュー・ボネヴィル/ジム・カーター/ミシェル・ドッカリー/エリザベス・マクガヴァン
2010年から2015年まで放映されたテレビシリーズ『ダウントン・アビー』の2019年の映画版の続編だ。たぶん一作目を観ていると感じた。久しぶりに映画らしい映画で嬉しかった。人間関係がイマイチ良く分かっていないのが残念だが、機会があればもう一度見直してその関係性をはっきりさせて頭の中をすっきりしたい。伯爵、男爵、資産家という人間模様に憧れる。大変だろうな、でも、あの社会の中に生きるのは。
『オリーブの樹は呼んでいる』(El olivo)
2016年・スペイン 監督/イシアル・ボジャイン
出演/アンナ・カスティーリョ/ハビエル・グティエレス/ペップ・アンブロス
脚本は『麦の穂をゆらす風』や『わたしは、ダニエル・ブレイク』などのポール・ラヴァーティという解説があった。『麦の穂をゆらす風』はいい映画だったような記憶がある。このオリーブ・・は題名負けしている。原題のように単にオリーブの樹で充分なのだろうと思う。進展しないストーリーに付き合っていくのは大変だ。単純におもしろくないと評価されてしまう映画。
『ザ・ガーディアン』(The Gardener)
2021年・イギリス 監督/スコット・ジェフリー
出演/ロバート・ブロンジー/ゲイリー・ダニエルズ/サラ・T・コーエン/ベッキー・フレッチャー
チャールス・ブロンソンにそっくりな主人公が出てきて、ずーっと彼が歳をとった演技だと思いながら観ていた。調べたら、チャールス・ブロンソンはもう20年前に81歳で亡くなっていた。歳をとった彼だと思っても仕方のないようなアクション・サスペンス映画が陳腐だった。辻褄がうまく合わないシーンが多いと、映画は興味を抱かせずに堕ちていく。
『ビッグ・フィックス』(The Big Fix/Contractors/Safe House)
2021年・カナダ 監督/ジェフ・グリックマン
出演/アンドリュー・チャップマン/ディアナ・リトル/ダニー・コーデュナー/ジョン・ターナー
FBIの特殊任務チームだとかいうあたりの軽い冗談劇には反吐が出そうだった。最近の外国映画は相当質が悪くなっている。困ったものだ。
『わたしの叔父さん』(Onkel/Uncle)
2019年・デンマーク 監督/フラレ・ピーダセン
出演/イェデ・スナゴー/ペーダ・ハンセン・テューセン/オーレ・キャスパセン
27歳の女性と身体の不自由な叔父さんの穏やかな酪農の日々。小津作品を観ているような気がしてきた。何も起こらない日常を淡々と描いてくれる。結末のなさそうな映画は未来を予告することなく終わっていく。それでいいのだ、人生は。
『キリング・ブラッドリー』(Killing Your Daughter)
2019年・アメリカ 監督/クレイグ・ゴールドスタイン
出演/サラ・アルドリッチ/ジェイソン・ブルックス/クリスティ・バーソン/ステファニー・チャールズ
映画の中身に関しては、日本のテレビ連続ドラマよりもはるかに出来の悪い作りで呆れるばかりだ。スリラーやサスペンスに細かい配慮がないのはアメリカ人のせいだろう。いずれにしろ、男(夫)の命運を決めるのも妻の有り様だというのは紛れもない事実だろう。
『アバウト・レイ 16歳の決断』(3 Generations)
2015年・アメリカ 監督/ゲイビー・デラル
出演/エル・ファニング/スーザン・サランドン/ナオミ・ワッツ/テイト・ドノヴァン
娘が3人いるが、そのうちの一人が男になりたいと言い出したら、私は正しく対応できていたであろうか。原題にある3世代が同居している。16歳の主人公が男になるためには育ててくれている母親だけでなく、10年も会ったことのない父親のサインが必要だった。イワクつきの3世代の素性が明らかになって行き、話はとんでもない方に走り出した。理解は出来ないけど、時代の趨勢としてLGBTQ事象はまだまだ世の中を騒がしてくれそうだ。
『AIR エア』(AIR a story of greatness)
2023年・アメリカ 監督/ベン・アフレック
出演/マット・デイモン/ベン・アフレック/ジェイソン・ベイトマン/マーロン・ウェイアンズ
Amazon Prime Videoは、今もなお愛される伝説のシューズ「エア ジョーダン」誕生を描いた映画「AIR/エア」を、2023年5月12日から240を超える国と地域で独占配信している。親友でもあるマット・デイモンとベン・アフレックのふたりが立ち上げた製作会社「Artists Equity」の第1弾作品で、アメリカ国内では4月7日から劇場公開されている。adidas、コンバースに差を付けられていたバスケ・シューズ部門のナイキが、一発逆転NBAに全体3位指名されたマイケル・ジョーダンと契約し現在も進行形の伝説的ブランド『エアー・ジョーダン』を作り出すまでの経過が描かれている。おもしろい。
『スイッチ・トリック 双子の罠』(Twin Betrayal)
2018年・アメリカ 監督/ナディーム・スマー
出演/ジェン・リリー/ピーター・ダグラス/ジェイソン・オリーブ/ニック・バラード
どういうテーマかは分からなかったが邦題で興味の半分はなくなってしまう。さすがに二転三転のストーリーにちょっとは間が持つといった按配だった。小学生の頃に出逢った双子以外に自分の身の回りに双子は存在しなかった。
『少女バーディ ~大人への階段~』(Catherine Called Birdy)
2022年・イギリス/アメリカ 監督/レナ・ダナム
出演/ベラ・ラムジー/アンドリュー・スコット/ジョー・アルウィン/ソフィー・オコネドー
13世紀イギリスのとある村に住む14歳の少女のはなし。月経も妊娠も知らない少女がそのまま大人になって行くようなストーリー。不思議な空気が漂う空間は、夢見る少女たちの世界なのかもしれない。富と金が支配するのはいつの世も世界のどこの土地でも見ることが出来る。それでいて、同じことを平気で繰り返すことしかできない人間生活は、いったい宇宙の塵以上になれているのだろうか。
『イントゥ・ザ・トラップ』(IMPROPRIETY DEADLY MISCONDUCT)
2021年・アメリカ 監督/ナディーム・スマー
出演/アナ・マリー・ドビンズ/コルト・プラッツ/ルイス・マンディロア/アーリカ・トラボナ
検事の仕事と愛娘の育児で多忙を極めるシングルマザーのアニーは、現在担当する裁判で悪評高い弁護士ラーソンに苦戦中。そんなある夜、ラーソンから取引を求められたアニーは酒に薬物を盛られ、彼の家で意識を失ってしまう。深夜、ベッドで目を覚ました彼女は、その横でラーソンが殺されていることに気づく。その際、現場に戻ってきた犯人の手を、とっさに隠れたベッドの下で目撃。まもなくしてある男が犯人として逮捕されたが、アニーは彼の手を見て別人と確信する。一方、何者かが犯行の夜の盗撮写真を用いて、アニーへの脅迫を開始。さらには元彼で捜査官マークは、ラーソンと金髪女がベッドを共にしていた事実を突き止め、その正体を探ろうとしていた。(ビデックス より)
日本の2時間ものテレビドラマよりはちょっとましかなぁと思えるくらい。主人公は新人女性検事とは言いながら、設定が甘過ぎて興醒めからドラマは始まってしまう。設定が甘いと言っても、それは映画の中だけの話ではなく、人生のきびに通じるものがある。ダメなことはダメ、許せないことは許せない、超えてはいけない一線は絶対守るというような生き方をしていかなければ、自分が奈落の底に落ちてしまうか落とされるのを指をくわえて見ているのがオチになってしまう。自分で蒔いた種は自分で刈り取らなければならない。
『情熱の航路』(Now, Voyager)
1942年・アメリカ 監督/アーヴィング・ラパー
出演/ベティ・デイヴィス/ポール・ヘンリード/クロード・レインズ/グラディス・クーパー
メリハリがあって観ていて気持ちいい。ボストンのお金持ちの家に生まれたが、年をとってからの子供だからと母親にいじめられて醜いと思わされながら育てられた子供が、みるみる綺麗になっていく。それでもあくまでも自分の命令下に従わせようとする母親からの自立がテーマになっている。この時代の映画は分かりやすくていい。妙に複雑なストーリー展開に持って行かないのがいい。自信をもって生きれば人間なんて同じもの、ただお金持ちなのか貧乏なのかの違いくらいだ。お金持ちに越したことはないが、それがなんだ。どうせ生まれて来た時と同じように、死ぬ時だって知らないうちに息を引き取っているのだから。
『レジェンド&バタフライ』
2023年(令和5年)・日本 監督/大友啓史
出演/木村拓哉綾/瀬はるか/宮沢氷魚/市川染五郎/和田正人/高橋努/斎藤工/北大路欣也/本田博太郎/音尾琢真
2023年1月27日に公開されたばかりの映画が5月12日からアマゾン・プライムで観ることが出来るなんて。当たらなかったからなのか、予定通りの行動なのか。おもしろくない。2時間48分もだらだらと詰まらないシーンばかりで反吐もでない。木村拓哉の演技たるや評価に値しない。イベントでのナマ木村拓哉の登場では大騒ぎになるほどの人気だったようだが、役者は映像の中で評判を呼ばなければ何の意味もない。東映創立70周年記念作品ということらしいが、東映の記念映画はいつも大作感優先で内容が伴わない。くそみそだが、せっかくのいい機会にアニメ何か目じゃないところを見せて欲しかった。
『かくも長き不在』(Une aussi longue absence)
1961年・フランス/イタリア 監督/アンリ・コルピ
出演/アリダ・ヴァリ/ジョルジュ・ウィルソン/シャルル・ブラヴェット/ジャック・アルダン
パリ郊外でカフェを営むテレーズはある日、店の前を通る浮浪者に目を止める。その男は16年前にゲシュタポに強制連行され、行方不明になった彼女の夫アルベールにそっくりであった。テレーズはその男とコンタクトをとるが、その男は記憶喪失だった。第14回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞。(Wikipediaより) 去る者は日日に疎しと云われるように、目の前にいる人間交友が最大優先。理由が戦争のためでもいなくなってしまえば同じこと、人間とは儚いものである。
『ジャック・リーチャー ~正義のアウトロー~』(Reacher)1話~8話
2022年・アメリカ 製作総指揮/リー・チャイルド
出演/アラン・リッチソン/マルコルム・グッドウィン/ウィラ・フィッツジェラルド/ブルース・マッギル
一気に8話まで観てしまった。単発映画と違って1話1時間くらいがほとんどなので、観易いことは間違いない。だから、一気に観ることもないのであろうが、話が重なるほどにおもしろくなっていった。ひとつの事件が最後までいくなんて思わなかったが、あとからあとから手を変え品を変え観客の盲点を突いてくる。男は強くあらねばならない、なんていう思いはこういう映画で培われるのだろう。そういう意味では罪作りな映画の1本だ。世界を背負わなくていいのだよと、親に言われて育った主人公たちだったが、その体力を精一杯使ってみろとは言われていた。そう思いながらこの歳まで来てしまったが、今や歩くのさえままならない状態を露呈して、生きている意味さえも分からなくなっている。
『エンドレス・ラブ』(Endless Love)
2014年・アメリカ 監督/シャナ・フェステ
出演/アレックス・ペティファー/ガブリエラ・ワイルド/ブルース・グリーンウッド/ジョエリー・リチャードソン
1981年撮影当時15歳だったブルック・シールズが主演した映画のリメイクで間違いなかった。その当時の監督はフランコ・ゼフィレッリ、1968年オリビア・ハッセー、レナード・ホワイティングでの『ロミオとジュリエット』を撮っていた監督だ。リアルタイムでブルック・シールズの映画を観てはいないが、心の片隅に残っていた。今となって観る機会が訪れた。所詮はだらだらとした恋愛映画ではあるが、エピソードが気が利いている。アメリカに生まれてアメリカ人として青春を送る自信がない。それは、自分が日本に生まれた人間だからこその想いなのだろう。
『デッド・シティ2055』(Vice)
2015年・アメリカ 監督/ブライアン・A・ミラー
出演/トーマス・ジェーン/ブルース・ウィリス/アンビル・チルダーズ/ジョナサン・シェック
近未来の悪徳リゾート都市を舞台に、自我に目覚めたレプリカントたちの反乱、ということらしいが、うまくストーリーに乗れないでまた寝てしまった。後で考えればこうやってすぐに寝てしまう体調は、あの世への入り口を彷徨っている時期なのかもしれない。もっともあの世に行ってしまえばこの世のことなんか知覚出来ないのだろうから、単なる笑い話にも匹敵しない。
『パーフェクト・ソウルメイト』(The Perfect Soulmate)
2017年・カナダ 監督/カーティス・クロフォード/アンソニー・ルフレズニ
出演/キャシー・スケルボ/アレックス・パクストン=ビーズリー/スコット・ギブソン/Jeff Teravainen
ひどく偏執的な性格を持つ人間に付きまとわれたら、自分の生活、人生までもくるってしまう。自分を好いてくれることは嬉しいことだが、度が過ぎた行動を平気でされると迷惑極まりない。人間というものは不思議なもので、好きな人には嫌われて、嫌いな人に好かれるケースが多かったりする。それでも、感情が動くということは悪くはない。無味乾燥な人生を送っている人から見れば、感情が高揚することはこの上ない仕合わせだと思えるから。
『アザーズ』(The Others、Los Otros)
2001年・スペイン/フランス/アメリカ 監督/アレハンドロ・アメナーバル
出演/ニコール・キッドマン/フィオヌラ・フラナガン/クリストファー・エクルストン
第二次世界大戦の終結直後のチャネル諸島ジャージー島が舞台。グレースは色素性乾皮症を患う娘アンと息子ニコラスの3人きりで、広大な屋敷で暮らしていた。夫は出征したまま帰ってこず、使用人もおらず、不安な日々を送る家族の元に、新しい3人の使用人が現れる。それを境に、屋敷で不可解な現象が次々と起き始めた。何が何だか分からないままに眠っていた。急に起きだした時から場面が展開して観続けたようだ。映画の内容と同じように、生きているのか死んでいるのか定かではない日々が続いている。
『キラー・ジーンズ』(Slaxx)
2020年・カナダ 監督/エルザ・ケプハート
出演/ロマーヌ・ドゥニ/ブレット・ドナヒュー/セハール・ボジャニ/ステファン・ボガアート
中国・新疆ウイグル自治区での人権問題をめぐり、ユニクロのフランス法人などフランスで衣料品や靴を販売する4社に対して、人道に対する罪に加担した疑いで仏検察が捜査を始めたことがわかった。というニュースが世界を駆け巡った。この映画はそういう比喩をジーンズの原料である「綿」を産出するインドでの怨念をジーンズに込めたスリラー仕立て。幼稚でどうしようもないシーンの連続にほとんどの人が飽き飽きするだろう。カナダ映画というのは珍しいが、この程度のスリラーものでは!? それでも、日本のお茶らけスリラー、ビデオから人が飛び出るようなシーンに驚くようでは、何にも変わらない幼稚な恐怖映画としか言いようがない。
『ウイング・アンド・プレイヤー』(On a Wing and a Prayer)
2023年・アメリカ 監督/ショーン・マクナマラ
出演/ヘザー・グラハム/デニス・クエイド/アンナ・エンガー・リッチ/ジェシー・メトカーフ
実話に基づいているらしい。チャーター・ジェット小型機のパイロットが操縦中に急に意識を失って亡くなってしまった。さ~て大変、何とか妻を副操縦席に座らせて子供二人共々無事着陸できるのか。手に汗握るシーンの連続という場面だが、さほどの緊張感は伝わってこない。こういう話があった、というだけで満足していいような映画だった。庶民には主人公になって心底心配する境遇が想定できない。
『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』(Jurassic World: Dominion)
2022年・アメリカ 監督/コリン・トレヴォロウ
出演/クリス・プラット/ブライス・ダラス・ハワード/イザベラ・サーモン/ローラ・ダーン
飛び飛びに観ていると話が繋がらなくて往生する。スターウォーズとインディジョーンズのアイディアやアクションが恐竜世界にもあふれていた。遺伝子操作の進歩はこれから先、人間社会をどんな風に変化させていくのだろうか。やっぱり突然氷河期説を推す私の推論は正しいのかもしれない。そうしてまた、ゼロから新しい人間社会が始まると考えた方が理にかなっている。
『ナニー・マクフィーの魔法のステッキ』(Nanny McPhee)
2005年・イギリス/アメリカ/フランス 監督/カーク・ジョーンズ
出演/エマ・トンプソン/コリン・ファース/ケリー・マクドナルド/アンジェラ・ランズベリー
ドタバタの童話のような映画だった。気楽に観られるのは最高だが、どれでも寝てしまうのはどういう訳だろう。悪ガキの躾には魔法使いが一番と思わせる。普通の人間が普通のことをやっていたのでは傍若無人のガキどもを抑えることは出来ない。何か信じられないような能力を見せつけられれば黙ってしまうのがおちである。
『デス・コード 遺書に記された暗号』(Your Family or Your Life/April's Flowers)
2019年・アメリカ 監督/トム・シェル
出演/ジェニー・ガース/アンジェリカ・ブリッジス/ジョシュ・サーバー/エリック・マイケル・コール
何本か見捨てた映画の後ではこの程度の陳腐なスリラーものでもいいかな、と思える。アメリカの若者男女は簡単にくっついて簡単に相手を信じてしまう。そこが悲劇の源になるケースが映画には多い。翻って日本ではなかなか相手を心底信用しない。きっとそれが社会の秩序を守ってきたのかもしれない。今どきは訳の判らない老人が老害と思えるような規則や団体の中で、社会の発展を遠慮なく阻害している。高野連なんかはその典型だろう。教育的だと嘯きながら自分たちはちっとも教育的ではないことを推進している。信じられないような江戸時代の耄碌頭脳はいつになったら朽ち果てるのだろうか。
『ザ・ディテクティブ 殺人レクイエム』(2:13)
2009年・アメリカ 監督/チャールズ・エーデルマン
出演/マーク・トムソン/マーク・ペルグリノ/テリー・ポロ/ケヴィン・ポラック/ドワイト・ヨーカム
プロファイラーとは警察関係なら容疑者性格分析官という人らしい。よくwebで自分の身上を記載する場所をプロフィールという。はなしをわざわざ複雑にして映画を面白そうに見せているやり方が気に食わない。時間時空と人間関係がまったくかみ合わない。こういう映画を観ていると自分の精神世界も崩れてしまいそうだ。他人には絶対分からない他人の心の中。人間という動物は不思議な精神構造をしている。
『東京リベンジャーズ』(TOKYO REVENGERS)
2021年(令和3年)・日本 監督/英勉
出演/北村匠海/山田裕貴/杉野遥亮/今田美桜/鈴木伸之/眞栄田郷敦/清水尋也/磯村勇斗/間宮祥太朗/吉沢亮
今風若者が見る映画を観てみた。意外以上におもしろく、下手な大人映画なんて目じゃないという感じさえした。2023年GWに『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』、同年夏に『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』の前後編2部作での公開となる事が発表されているという。タイムスリップ的要素も大きいのが観る足しになっている。これくらいの質があれば、日本映画を観る気にさせてくれる。やさぐれ軍団の人間だって実は立派な心根をもった人間だと強調しているが、現実のやさぐれ軍団にはそんな理想は微塵もないように見える。神のみぞ知るという言葉を味わって生きて欲しい人種であることは間違いない。
『TOVE/トーベ』(TOVE)
2020年・フィンランド/スウェーデン 監督/ザイダ・バリルート
出演/アルマ・ポウスティ/クリスタ・コソネン/シャンティ・ロニー/ヨアンナ・ハールッティ
あの『ムーミン』の作者のはなしだった。トーベ・マリカ・ヤンソン(1914年8月9日 - 2001年6月27日)。フィンランドでは画家としての評価も高く、水彩画や油彩画、雑誌の風刺画や公共建築の壁画など多くの作品を残しているらしい。創作領域は絵画、小説、コミックス、脚本、詩、作詞、広告など多岐にわたる。そんな主人公をどちらかというと性の倒錯者のように女性との愛や不倫の愛をメインで描いている感じの映画だった。意外だったが、単にムーミンの誕生秘話を子供っぽく描こうなんて気は全くなかったのだろう。どこまで本当か分からないが、ちょっと悪くはない映画的なアプローチに見えた。
『8月9日午後5時の議員暗殺計画』(Hacker)
2017年・アメリカ 監督/ナディーム・スマー
出演/ヘイリー・ダフ/クレイグ・スターク/ダン・スペクター/トリップ・ラングレー
原題を見れば「ハッカー」わかる通り、インターネット世界から派生した事件のはなしだ。邦題は面白おかしく付けたのだろう。政府機関に侵入して情報を守る役目だった主人公たちが、触れてはいけない国家機密を知ってしまったための事件だった。設定の悪さが映画をつまらなくしている。この手の映画は緻密な舞台がなければ興味が失せてくる。てなわけで、これからの世界、いずれにしたってIT技術のさらなる進歩が世の中に大きな影響と影を落とすことが必至である。
『ブレット・トレイン』(Bullet Train)
2022年・アメリカ 監督/デヴィッド・リーチ
出演/ブラッド・ピット/ジョーイ・キング/アーロン・テイラー=ジョンソン/真田広之
昨年(2021年)9月1日ロードショーの映画がもうAmazonPrimeに登場した。その時期、映画館まで足を延ばそうと考えていたが、テレビでの宣伝キャンペーンを見ていたら急に行く気が失せてしまったのだった。それ故今回は楽しみに観始まったが、最初からどうにも詰まらない。それでもしばらく我慢して観ていたが、なんと20分が経たないうちについに諦めて観るのを止めてしまった。期待していた作品をここまで早く終わってしまうことはまずない。何の情報もない映画の場合は、5分もしないで終わってしまうことは多々あり過ぎて言い訳のしようがない。結局観ていないのと一緒なのでこの映画リストには相応しくないのがホントのところ。
『キネマの神様』(The God of Cinema)
2021年(令和3年)・日本 監督/山田洋次
出演/沢田研二/菅田将暉/永野芽郁/野田洋次郎/リリー・フランキー/前田旺志郎/北川景子/寺島しのぶ/小林稔侍/宮本信子
2020年1月25日「シネマトゥデイ」の記事には「志村けんと菅田将暉が、原田マハの同名小説を映画化する山田洋次監督の最新作『キネマの神様』でダブル主演を務めることが明らかになった。」と記載されていた。志村けんは2020年3月29日あっという間に新型コロナウイルスのため死去してしまった。志村けんの代役は親交のあった沢田研二が務めた。映画の最後のクレジットには志村けんに対する記載があった。映画人の端くれとして期待していた映画だったが、残念ながら面白くなかった。細かい監督の指示が見え隠れしていい感じはしなかった。セリフもストーリーもカビが生えていた。
『モーリタニアン 黒塗りの記録』(The Mauritanian)
2021年・イギリス/アメリカ 監督/ケヴィン・マクドナルド
出演/ジョディ・フォスター/ベネディクト・カンバーバッチ/タハール・ラヒム/シャイリーン・ウッドリー
グアンタナモ収容所のことは気になっていた。なるほどこういうことだったのかと納得すると同時に怒りがこみあげて来た。「これは真実の物語である」というクレジットから映画が始まる。木下グループは相変わらずいい映画を配給する。日本ヘラルド映画のいいところだけを受けついてくれたような気がする。国家権力の横暴と力のない庶民が対照的だ。日本にだって同じようなことは起こっているのだろう。黒塗りの記録を平気で公開するのはいくらなんでも横暴過ぎる。残された個人の抵抗は自らの命を絶つことしかないだろう。
『ヴァンキッシュ』(Vanquish)
2021年・アメリカ 監督/ジョージ・ギャロ
出演/ルビー・ローズ/モーガン・フリーマン/パトリック・マルドゥーン/ジュリー・ロット
「Vanquish」1.〔戦闘で敵を〕征服する 2.〔競争などで相手を〕打ち負かす、優位に立つ 3. 〔感情などを〕抑える、克服する ということらしいが、ひたすらアクションを見せようとする映画だった。戦うのは若い女性、アクションにも辻褄が合わないと興醒めするところがあり、乗り切れないうちに映画は終わってしまった。為にするアクションではファッション映画と同じになってしまう。
『ドアマン』(The Doorman)
2020年・アメリカ 監督/北村龍平
出演/ルビー・ローズ/ジャン・レノ/アクセル・へニー/伊藤英明/ルパート・エヴァンス
出来の悪いアクション映画だった。監督が日本人だったとは。伊藤英明も判明できなかった。ジャン・レノが突然出て来たが彼が出てくると途端に映画はおもしろくなくなってくる。演技は上手いのだろうがどうにも第三者的な喋りと振る舞いが鼻につく。北川景子の登場にも似た雰囲気がある。決して悪くはないのだが、人間味のない立て板に水のような喋り口が気になる。アクションの一貫性がなさ過ぎて主人公が強いのか弱いのかと観客を戸惑わせる。漫画チックにまでも行っていない。残念。
『ガーディアン24』(Walter)
2019年・フランス/ベルギー 監督/ヴァランテ・スージャン
出演/アメッド・シラ/イサカ・サワドゴ/アルバン・イヴァノフ/Julien Duverger
なんというお茶らけたコメディ! コメディにも匹敵しないかもしれない。まだ日本のお笑いの方がいいかもしれないと思わせるような幼稚な映画だった。あの気高い、気位の高いフランス人がフランスのエスプリを表現しているとはとても思えない。信じられないような世界がどんどん襲ってくる。
『エージェント・ゲーム』(Agent Game)
2022年・アメリカ 監督/グラント・S・ジョンソン
出演/ダーモット・マローニー/エイダン・カント/ケイティ・キャシディ/メル・ギブソン
終始暗い画面と同じような顔つきの登場人物でおもしろさが半減する。最初の画面と終わりの画面が同じだった。『問題が発生した』。第2作目がなければおもしろさがもっと減っていくだろう。誰も信じられない秘密作戦は、誰も知らないトップが机上でやる作戦と実行部隊だ。所詮、コマのようにしか振舞えないのが普通の諜報員。それでいいのだ、そうやって世の中は安泰を保っている。
『ファーストレディ ホワイトハウスの品格』(First Lady)
2020年・アメリカ 監督/ニナ・メイ
出演/ナンシー・スタフォード/コービン・バーンセン/ステイシー・ダッシュ/ジェン・ゴズゾン
軽いお笑いものだが舞台がホワイトハウスというだけで興味が湧く。この程度の軽さの映画なら何本観ても記憶に残る作品はないだろう。それでいいのだ、もう長くない時間を楽しく過ごすためにはこの程度の毎日が一番いいに決まっている。
『THE INFORMER/三秒間の死角』(The Informer)
2019年・イギリス/アメリカ/カナダ 監督/アンドレア・ディ・ステファノ
出演/ジョエル・キナマン/ロザムンド・パイク/コモン/アナ・デ・アルマス
NYPDとFBIが覇権を争う様はおもしろい。毎度のことだが、FBIが登場するとニューヨーク市警はすごすごと逃げ出すのがおちだが、今回は一人の刑事が頑張っている。『情報提供者』の主人公は、FBIからひどい仕打ちを受けながらも家族のために必死に仕事を全うしている。裏切られたって子供のことを思うと自由にならない。アメリカ人の家族愛は離婚率と比例しているのかもしれない。
『ノイズ』(The Astronaut's Wife)
1999年・アメリカ 監督/ランド・ラヴィッチ
出演/ジョニー・デップ/シャーリーズ・セロン/ジョー・モートン/クレア・デュヴァル
ジョニー・デップがデビューから15年後の作品だった。彼らしいという顔立ちだったが確信が持てなかった。ノイズは宇宙からの音だった。宇宙飛行士が何らかの事故により急遽帰還したが、帰ってきてからの夫の様子がどうもおかしい。もう一人の宇宙飛行士夫婦は謎の死を遂げていた。間違いなく地球人ではない宇宙人がいるが、どこにどうやっているのかは永遠に謎かもしれない。不思議でしかない。地球があるなら同じような地球がもう1個、2個あったってなにも不思議ではないのに。
『プロジェクト:ユリシーズ』(Tides/The Colony)
2021年・ドイツ/スイス 監督/ティム・フェールバウム
出演/ノラ・アルネゼデール/サラ・ソフィー・ボウスニーナ/イアン・グレン/ソープ・ディリス
近未来、気候変動や伝染病、戦争による汚染のせいで人類は地球に住めなくなり、ケプラー209惑星へ逃げ延びた。いずれにしろ、地球の未来を描く物語は悲惨だ。画面が暗くて何が何だか判別がつかない。どうにも中途半端だなぁと思いながら観ていたが、アメリカ映画ではなかった。やっぱりこの手のものはアメリカ映画に限る。
『光の旅人 K-PAX』(K-PAX)
2001年・アメリカ 監督/イアン・ソフトリー
出演/ケヴィン・スペイシー/ジェフ・ブリッジス/メアリー・マコーマック/アルフレ・ウッダード
精神病棟の患者がK-PAXという星から来たのだという。とても信じられない話に担当の精神医は真相を究明したようなのだが、それが本当なのかどうかは分からない。信じるに足るものがなくとも、異星人が存在するだろうことは大いにありうる。精神病棟の住人だからといって、言っていることがすべて嘘だと決めつけるには根拠が何もない。それでも・・・・・。
『死刑執行人もまた死す』(HANGMEN ALSO DIE)
1943年・アメリカ 監督/フリッツ・ラング
出演/ブライアン・ドンレヴィ/ウォルター・ブレナン/アンナ・リー/デニス・オキーフ/ジーン・ロックハート
ラインハルト・トリスタン・オイゲン・ハイドリヒはナチス・ドイツのベーメン・メーレン保護領(チェコ)副総督。チェコ人により暗殺された、その後のチェコ人の振る舞いが描かれている。『決して降伏はしない』と国民が口々に叫ぶ団結力が素晴らしい。現在のウクライナに通じるものがある。1年前にロシアの侵略が始まった時に、さっさと降伏した方が国民の命を守ることになる、などと知ったかぶりをする日本の著名人に是非見せたい映画だ。2023年3月WBC本戦に初めて出て来たチェコ・チームはその清々しさで日本人に深い印象を植え付けて行った。監督はオーストリア出身でフランスに亡命しその後アメリカに渡ったユダヤ人のフリッツ・ラング。
『ミラクル コークビルの奇跡』(The Cokeville Miracle)
2015年・アメリカ 監督/T・C・クリステンセン
出演/ジェイソン・ウェイド/サラ・ケント/キンボール・スティンガー/ネイサン・スティーヴンス
1986年アメリカ ワイオミング州の田舎町の小学校で起きた人質爆弾事件を巡る奇跡の話を映画化している。キリスト教とは言わないまでも、神の存在を信じて祈りましょうと、布教活動の一環のように描かれるストーリーを見たのは最近2本目だ。アメリカ合衆国の信心への誘いなのだろうか。
『きっと、またあえる』(Chhichhore)
2019年・インド 監督/ニテッシュ・ティワリ
出演/スシャント・シン・ラージプート/シュラッダー・カプール/バルン・シャルマ/プラティーク・バッバル
久々のインド映画だった。ポスターのコピーは『最強の友と最高の人生、世界が笑いと涙につつまれる-』、これじゃ映画のおもしろさが伝わらない。せっかくの人生、思いっきり食べて飲んで楽しめ! と映画は語っている。2時間13分の上映時間。インド映画は何度か褒めちぎっている。国民性、DNAがいいのかもしれない、確実に大国になる。中国の大国?への道とは全然違う。断言できる。私がこの世から居なくなってしばらくしたら、世界の地図は大きく変わるだろう。かつての大国は滅亡の道を歩むしかない。それが地球の定めだと言い切れる。
『過去の罪』(Endabrechnung)
2016年・オーストリア 監督/ウムト・ダー
出演/ロバート・パルフラーダー/トビアス・モレッティ/トーマス・リッツォーリ/ハラルド・ウィンディッシュ
国籍不明で観ていたら、なんとオーストリア産だった。ちょっとばかりかったるい刑事もの。わざわざ神父を名指して殺人犯という汚名を着せ、神父の自殺がストーリーに含まれる背景が知りたい。親友が犯人だったなんて・・・。世の悪に立ち向かうひとりの敗北者の物語が哀しい。人間の世の中は成功者と失敗者、そして大多数の庶民が存在している。
『ダークサイド・セオリー』(Respite)
2020年・アメリカ 監督/サロ・ヴァルジャベディアン
出演/モンテ・ベゼル/ジュリアン・ジュアキン/アフメット・デヴラン・ダヤンク/ヘイセム・ヌール
アフガニスタン人がアメリカに移住している。アメリカ軍の協力をすればパスポートをもらえるらしい。ただ、そのアフガニスタン人のアフガニスタンでの行いがアメリカにまで持ち込まれ、事件を起こしている。おぞましい事件だが、これは映画だけのことであってほしい。刑事もの・探偵ものとしてはなかなか異色のストーリーだった。
『ラブ、ケネディ 神に遣わされた少女』(Love, Kennedy)
2017年・アメリカ 監督/T・C・クリステンセン
出演/ジェイソン・ウェイド/ヘザー・ビアーズ/テイタム・チャイニークイー/スカーレット・ヘイズン
バッテン病、欧米の罹患率は1万人に1人と比較的多いが、日本では2001年の調査では27人と極めて稀な病気。この病気に侵された主人公の少女は短い16年間の人生を終える。キリスト教の布教活動のような映画だったが、悪い気はしない。
『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』(A Quiet Place: Part II)
2020年・アメリカ 監督/ジョン・クラシンスキー
出演/ミリセント・シモンズ/ノア・ジュープ/エミリー・ブラント/キリアン・マーフィー
映画は様々なエイリアンを出現させる。今度は音に反応する怪物だった。音さえ立てなければ悟られることはないが・・・。音が聞こえない兄弟が主人公となっていた。サブタイトルのない1作目があったようで、経緯が分からないなりに最後まで観ることが出来たのは、所詮その程度の映画だと理解すればいいだろう。
『テーラー 人生の仕立て屋』(Raftis/Tailor)
2020年・ギリシャ/ドイツ/ベルギー 監督/ソニア・リザ・ケンターマン
出演/ディミトリ・イメロス/タミラ・クリエバ/Thanasis Papageorgiou/Stathis Stamoulakatos
アテネの高級仕立て屋の主人公は36年も仕事を続けてきたが銀行の差し押さえを受ける羽目に陥った。父親も入院をし明日の希望は何も見えてこない。イタリア映画のような人間の愛を感じて嬉しい。そんなものは何とかなるさ、と今の瞬間を楽しむ人生があったら、毎日の悩みは一体何なのだろうと思えてくる。どうせ、たかが100年もない個人の人生なんて宇宙のごみにも成れない、と常々言っているが、詰まらない小さな目の前のことをぐじぐじと考えたって仕方のないことさ。
『特捜部Q 知りすぎたマルコ』(Marco effekten/The Marco Effect)
2021年・デンマーク/ドイツ/チェコ 監督/マーチン・サントフリート
出演/ウルリク・トムセン/ザキ・ユーセフ/ソフィー・トルプ/アナス・マテセン/Lobus Olah
特捜部Qシリーズだ。デンマークの映画はとにかく暗い。ストーリー展開もそうだが、シーンシーンのやり取りにしても、また映像そのものも暗い。なかなか内容はおもしろいが、寝てしまうほどのストーリー展開の遅さがある。融通の利かない上司は何処にでもいるものだ。それが警察だと市民の権利やそれ以上のケアが出来なくなる。身内には甘い警察署がよく映し出されるが、この映画はいつも身内に厳しい。こういうところから国民性の一端を見ることが出来るのかもしれない。
『恋するモテない小説家』(We Love You, Sally Carmichael!)
2017年・アメリカ 監督/クリストファー・ゴーラム
出演/クリストファー・ゴーラム/ポーラ・マーシャル/エリザベス・トゥロック/フェリシア・デイ
邦題ほどお茶らけていない。基本はコメディだが日本のお笑いのようにお笑いを押し付けて来ないのが欧米流。小説を書きたくても才能がないと出来ない。才能は何処からやってくるのだろうか。努力で補えるのなら小説家なんて星の数ほど生まれるに違いない。ピアノや楽器の才能もそうだ。ただ只管に練習をすれば得られる技でもない。プロ・スポーツ選手も然り、努力が続けられる人しかスターになる要素はないけれど、努力をしたって誰もが成れるプロ・スポーツ競技なんてない。それでは、大半の庶民のように何の才能もない人間が生きている意味は何処にあるのだろうか。
『ロマンス・オン・メニュー 約束のミートパイ』(Romance on the Menu)
2020年・オーストラリア/アメリカ 監督/ロージー・ルーデ
出演/シンディ・バズビー/ティム・ロス/ナオミ・セケイラ/ジョーイ・ヴィエイラ/バーバラ・ビンガム
料理とアメリカとオーストラリア、叔母さん、こういうキーワードだろう。爽やかで嫌みのないストーリーに好感が持てる。AmazonPrimeVideoのどの映画を観てよいのかの情報がゼロなので、毎回選択に苦労している。単純に視聴者ランキングを知りたいわけではなく、どの映画祭で受賞したかのリストが見られれば選択基準は容易になってくる。あるいは日本の劇場のどの劇場でロードショーしたかを知れば、もっと選択肢が狭められる。劇場公開しなかったという情報も重要だ。映画評論家10人の星取表を掲載してくれていてもいい。サービスとは本来そう云うものを指すのだ。ありきたりの現在地点をのうのうと述べたり、褒め殺しのような文言を並べたって何の意味もない。最近の若者志向のシステム作りに一言も、二言も申し述べたい。
『PLAN 75』
2022年(令和4年)・日本 監督/早川千絵
出演/倍賞千恵子/磯村勇斗/たかお鷹/河合優実/ステファニー・アリアン/大方斐紗子/串田和美
倍賞千恵子主演のそんな映画があるという話を聞いていた。「少子高齢化が一層進んだ近い将来の日本。満75歳から生死の選択権を与える制度<プラン 75>が国会で可決・施行された。」 50年前ならまったく現実感がなく、単なる映画の戯言として歯牙にもかけなかったろう。ところがどうだ、今となっては絵空事に思えない、もしかすると現実感あふれた物語として多くの人にとらえられる題材となった。成田悠輔氏の「集団自決論」が炎上している昨今、私は彼の提案に全面的に賛成するが、同じような視点での問題提起は、今だからこその話題なのだろう。自分の死を自分で選べたら、こんな満足のいく方法はない。日本人的にはとてもそんな議論もあり得ないだろうけれど、そんな世の中になってくれればもっと住み易い世の中になるだろうに。
『すれ違い』(La bella gente)
2009年・イタリア 監督/イヴァン・デ・マッテオ
出演/アントニオ・カターニア/モニカ・ゲリトーレ/イアイア・フォルテ/ヴィクトリア・ラルチェンコ
「すれ違い 映画 イタリア」このキーワードでヒットしたのは結局観たばかりのアマゾンプライムビデオの映画紹介ページだけだった。イタリア映画のペーソスは、日本映画の昭和中期の頃と空気が似ている。余計なことを言わずに淡々と日常、出来事を語っていく。考えるのは観客だ。 すれ違いは人生の本筋のような気がする。どんなに正直に相手に本心を語ったとしても、ほんの一瞬のすれ違いが大きな亀裂の入り口となる。敏感過ぎるのだろう、人間の心たちは。サッカーのフェイントに動じない鈍感力と同じように、細かいことを気にならない精神力が求められる。特に現代のようにちまちました心根が刺激される時代には。
『博士と狂人』(The Professor and the Madman)
2019年・アメリカ/メキシコ/イギリス/フランス/ベルギー/アイスランド/アイルランド/香港 監督/P・B・シェムラン
出演/メル・ギブソン/ショーン・ペン/ナタリー・ドーマー/エディ・マーサン
原作はサイモン・ウィンチェスターによるノンフィクション『博士と狂人 世界最高の辞書OEDの誕生秘話』。主演の博士の顔がメイクで分からない。声は確かに聞き覚えがあるが思い出せない。メル・ギブソンだったとは。二つのはなしが同時進行している序盤は何が何だか分からない。ようやく二つのはなしが合流して映画的におもしろさが広がって行った。天才と狂気は紙一重とは昔からよく言われる。確かにそうなのだろう。ただ、そんな天才もあんな狂人も身近に居たことがないので、観念としてしか理解できない。自分も一種の天才・狂人なのだろうなんてこれっぽっちも根拠のない思いを抱いたことはない。
『クーリエ:最高機密の運び屋』(The Courier)
2020年・イギリス/アメリカ 監督/ドミニク・クック
出演/ベネディクト・カンバーバッチ/メラーブ・ニニッゼ/レイチェル・ブロズナハン/ジェシー・バックリー
これぞ事実に基づく物語と納得できる内容だった。時は1960年アメリカとソ連は冷戦の真っただ中。かのキューバ危機につながる情報戦の中、英国人の一介のセールスマンがモスクワにいるスパイの情報を持ち帰ってキューバ危機を回避したという。そこに芽生えた友情は、まさしく世界平和の象徴になるような話だったが、こんな事実に基づくストーリーは事実に沿わない映画的なストーリーに比べれば地味で残酷な。だからこそ、事実に基づいているのだろうと思わせてくれる。
『TENET テネット』(Tenet)
2020年・アメリカ 監督/クリストファー・ノーラン
出演/ジョン・デヴィッド・ワシントン/ロバート・パティンソン/エリザベス・デビッキ/ディンプル・カパディア
「その言葉の使い方次第で、未来が決まる」――主人公に課せられたミッションは、人類がずっと信じ続けてきた現在から未来に進む〈時間のルール〉から脱出すること。時間に隠された衝撃の秘密を解き明かし、第三次世界大戦を止めるのだ。ミッションのキーワードは〈TENET(テネット)〉。突然、国家を揺るがす巨大な任務に巻き込まれた名もなき男とその相棒は、任務を遂行する事が出来るのか? と解説、あらすじのページがあったけれど、開始10分も経たないうちに何!この映画は!という状態になってしまい、何が何だか理解できずに何とか最後まで行き着いた。観客である自分の頭の悪さが露呈されてしまったのかなぁと心配する状態だった。う~ん!
『オペレーション・ローグ』(Roger Corman's Operation Rogue)
2014年・アメリカ 監督/ブライアン・クライド
出演/マーク・ダカスコス/トリート・ウィリアムズ/ソフィア・パーナス
『オペレーション・ローグ2 ザ・ハント』(Rogue Warfare: The Hunt)
2019年・アメリカ 監督/マイク・ガンサー
出演/スティーヴン・ラング/ウィル・ユン・リー/ジャーメイン・ラブ/ロリー・マーカム/ケイティ・キーン
『オペレーション・ローグ3 デス・オブ・ア・ネーション』(Rogue Warfare 3: Death of a Nation)
2020年・アメリカ 監督/マイク・ガンサー
アメリカ 監督/ブライアン・クライド
出演/スティーヴン・ラング/ウィル・ユン・リー/ジャーメイン・ラブ/ロリー・マーカム/ケイティ・キーン
1作目だけ監督・キャストが違っているが情報がよく理解できない。3作を一気に観たけれど、銃撃シーンばかりでお勧めするようなしろものではない。この頃は特に当たり作品を引くことが少なくなって困っている。個人志向の塊のような映画の好き嫌いだから、高望みするのは間違い。でも、ほかに趣味がないから仕方がない。
『ロンドン・バーニング』(The Corrupted)
2019年・イギリス 監督/ロン・スカルペロ
出演/サム・クラフリン/ティモシー・スポール/ノエル・クラーク/デヴィッド・ヘイマン
何処までが「事実に基づく」話だったのかが分からない。舞台はロンドン・オリンピックをひかえた土地買収にまつわる暗黒街と警察の癒着のストーリー。どいつもこいつも汚職警官ばかりで、正義警官は一人しか出て来ない。まさか、こんなところが事実だったんではなかろうが。信用のおける警察官は日本にもたくさんいるのだろうけれど、こういう映画を観てしまうと疑いの目が出てくるのは困る。白バイ警官を守るためにバスの運転手を罪人にしてしまった事件があったけれど、身内のためなら他人をも犠牲にするのは警察官僚の絆が一番強いのかもしれない。あぁ!いやだ!
『ダイブ』(La caida/Dive)
2022年・アルゼンチン/メキシコ/アメリカ 監督/ルシア・プエンソ
出演/カーラ・ソウザ
事実に着想を得て作った作品だとクレジットがあった。2004年アテネ・オリンピックに向けてのメキシコ・飛び込みチームでの出来事・物語・今や稀ではなくなったコーチの選手に対するセクハラが徐々に真実味を帯びてくる。選手も大変だろう。オリンピックに出るためにはコーチの言うとおりにならなければ夢もかなわない。ましてやコーチが男で選手が女では何かと難しい面があるのは分かっている、誰にでも。ようやく選手自身が言い始めたセクハラ・モラハラ・パワハラ、どうしても人間の所業には神に誓えない部分が出来てしまうようだ。当然と言ってしまえば必然、そんなことはあり得ないと言ってしまえば・・・・。
『パリの調香師 しあわせの香りを探して』(LES PARFUMS)
2019年・フランス 監督/グレゴリー・マーニュ
出演/エマニュエル・ドゥヴォス/グレゴリー・モンテル/セルジ・ロペス/ギュスタヴ・ケルヴェン
なかなか洒落た映画だった。華やかな香水の世界を語るのではなく、裏方の香水師という職業を通して、そのプロたる所以が語られる。匂いを感じなくなってしまった香水師の行く先は何処なのだろうか。お抱え運転手の生活と共にパリ・フランスでの離婚・その後の子育ての一端を垣間見る。悪くはない。東京・文化村での上映だった。いい映画をやるなぁ~!
『実在した犯罪小説』(Die Muse des Morders)
2018年・オーストリア/ドイツ 監督/サシャ・ビッグラー
出演/クリスチアンネ・ヘルビガー=ヴェッセリ/フロリアン・タイヒトマイスター/フリッツ・カール
出来の悪い小説のように眠気を誘う展開に飽きが来る。犯罪は確かに起こって、それをどう解決するかが面白味というところだろうが、何故か乗れない。こんな面白くない犯罪映画も珍しい。
『Marley & Me』(Marley & Me)
2008年・アメリカ 監督/デヴィッド・フランケル
出演/オーウェン・ウィルソン/ジェニファー・アニストン/エリック・デイン/アラン・アーキン
再び観た映画。Amazon Prime では英語だけのタイトルだったが、どこで使われているのか分からない「マーリー 世界一おバカな犬が教えてくれたこと」という邦題があることが分かった。この邦題の通り、馬鹿な犬に翻弄されながらも仲良く家族を築いてきたカップルとその後の家庭の物語。犬を飼ったことのない自分には羨ましい話。犬が嫌いなわけではない。犬を飼うという行為がそもそも人間の驕りのような感じがして仕方がない。そんなに厳しく見なくてもいいんじゃないの、と言われればその通りと答えるしかない。昔のテレビ映画の中に、人間が檻の中で動物園のように宇宙人に眺められていた。トラウマになっているのかもしれない。
『ラスト・コマンドー』(Qu'un sang impur.../The Breitner Commando)
2019年・フランス 監督/アブデル・ラウフ・ダブリ
出演/ヨハン・ヘルデンベルグ/リン・ダン・ファン/リナ・クードリ/ピエール・ロタン
1954年から1962年にかけて起こったアルジェリア独立戦争時の1960年の出来事。『アルジェの戦い』(La battaglia di Algeri・1966年・イタリア/アルジェリア)はこの独立戦争を描いたものだけれど、この映画はその戦争の中での小さなひとつの出来事を描いている。独立前のアルジェリアは名目上、植民地ではなくフランス本国の一部とされていた。このため、アルジェリア地域内で完全なフランス市民権を付与されていた「コロン」(ピエ・ノワール)と呼ばれるヨーロッパ系入植者と、対照的に抑圧されていたベルベル人やアラブ系住民などの先住民(indigene,アンディジェーヌ)との民族紛争、親仏派と反仏派の先住民同士の、かつフランス軍部とパリ中央政府との内戦でもある。(Wikipediaより)
『ビキニの裸女』(MANINA LA FILLE SANS VOILE)
1952年・フランス 監督/ウィリー・ロジェ
出演/ブリジット・バルドー/ジャン=フランソワ・カルヴェ/ハワード・ヴァーノン/エスパスタ・コルテス
ブリジット・バルドーの顔もよく分からければ、作品も観たことがない気がする。この作品は彼女の映画出演2作目になるようだ。まだ原石といった雰囲気で初々しい。BB(ベベ)と称されていたことは当時の人なら誰でも知っている。どうしてこういう邦題になったのか全く想像がつかない。映画の内容がお粗末すぎるので、邦題では何かありそうだと色気を出して付けたのではなかろうか。あの頃に今をも凌ぐようなビキニを着ていれば、人気が出て当然と思えてくる。童顔の彼女だったんだ。動物保護活動家である。まだ生きている。88歳らしい。
『タイムトラベル家族 1991年から愛を込めて』(Manana es hoy)
2022年・スペイン 監督/ナチョ・G・ベリーリャ
出演/ハビエル・グティエレス/カルメン・マチ/シルヴィア・アブリル/ペポン・ニエート
ハチャメチャなタイムトラベルものだけれど、摩訶不思議ないい加減さが心地よい。イタリア映画みたいにどこかペーソスのある結末になろうかと思っていたが、まぁそれなりに終わった。いつも思う30年後の世界が見たい。いや、思っているのは100年後の世界だ。5年や10年の未来を見たっておもしろくない。100年後、200年後、はたまた千年後の地球を見られたら死んでもいい、なんてね。
『ベル&セバスチャン』(Belle et Sebastien/Belle and Sebastian)
2013年・フランス 監督/ニコラ・ヴァニエ
出演/フェリックス・ボシュエ/チェッキー・カリョ/マルゴ・シャトリエ
フランスで国民的に愛されている「少年セバスチャンとグレート・ピレニーズ・ベル」の物語だという。いきなり「アルプスの少女ハイジ」のような景色が出て来た。アルプス・・・と書いても一度もきちんと観たことがないので恥ずかしい。極めて素直なストーリーで分かりやすい。ということは物足らないということだが、この手の映画は物足らなくて充分。切った張ったの世界でなければ、みな平穏無事がいい。
『リチャード・ジュエル』(Richard Jewell)
2019年・アメリカ 監督/クリント・イーストウッド
出演/サム・ロックウェル/キャシー・ベイツ/ジョン・ハム/オリヴィア・ワイルド
この題名と絵柄から観たいとは思えなかったので、結構な期間スキップしていた。観始まってすぐにクリント・イーストウッドの名前を見つけて、これはおもしろい映画だったんだ、と今までのスキップを後悔した。1996年のアメリカ・アトランタオリンピックの最中、アトランタの公園で催されたコンサート会場で爆発があり、爆発物の第一発見者である警備員のリチャード・ジュエルが人命を救った英雄と讃えられた直後にFBIにより重要参考人として強い疑いを掛けられたという事実に基づいている。恐ろしきは警察権力。冤罪どころではない。ないものをあるように持って行かれたら、庶民に戦う術はない。クリント・イーストウッドはやっぱり面白かったが、この映画に関してはちょっと後半が息切れしてしまった。この時彼はもう90歳、ちょっと息切れしても仕方がない。
『ザ・グレイテスト・キング』(Il primo re)
2019年・イタリア/ベルギー 監督/マッテオ・ロヴェーレ
出演/アレッサンドロ・ボルギ/アレッシオ・ラピーチェ/タニア・ガリッバ/ファブリツィオ・ロンジョーネ
超歴史もの。 ローマの建国神話に登場する双子の兄弟ロムルスとレムスの伝承神話をもとにしているという。この二人の名前は学生時代からの記憶に残っていて、それがこうやって映像になって観られるというのは感慨深い。ローマを作ったといったって一体どんな風に作ったんだろうと、想像も出来なかった。紀元前750年という時代背景は想像もつかない。神が持つとされる火の存在はあったようだが、獣、鹿などを血の滴ったまま食らう姿は想像だにしなかった。「神」という存在がひといちばい強烈な時代の人間の精神状態は、如何なものだったのだろう。単に洗脳されたというだけでは済まされない、ひどく大きな力が世の中を支配していたに違いない。
『リトル・シングス』(The Little Things)
2021年・アメリカ 監督/ジョン・リー・ハンコック
出演/デンゼル・ワシントン/ラミ・マレック/ジャレッド・レト/クリス・バウアー
警察ものでおもしろかったが、日本での劇場公開はなかったらしい。ワーナー・ブラザース・ピクチャーズの映画なので、普通に行けば日本での劇場公開は当たり前なのだが、宣伝費をかけてまでロードショーする意味がないと踏んだのだろう、ワーナーの日本支社は。そこんところがむずい。この映画が出来上がったのがちょうどちょうどコロナ禍の真っただ中では、この程度の映画では劇場に足を運んでくれる人は極めて少ないと思ったのだろう。警察ものの王道ではないけれど、なんともコメントに困るような内容だったことも公開に踏み切れない一因だったのかもしれない。そんなところが分かると、映画の内容とは別にまたおもしろい話が・・・・。
『海の淵』(Landkrimi Tirol: Das Madchen aus dem Bergsee)
2020年・オーストリア 監督/ミリアム・ウンガー
出演/パトリシア・アウリツキー/Dominik Raneburger/マレシ・リーグナー/Fritz Egger
大変珍しいオーストリア映画。デンマーク映画のようにひたすら暗いわけではないが、どことなく似た暗さを感じる。売春婦の死体が湖で発見され、担当していた主人公の女刑事が捜査をするが事態は思わぬ方向にどころかどんどん広がっていくストーリーに追いつけない。名前どころか顔も区別できず、このあたりが日本映画でないところの泣き所。もう少しどの国の人間にも分かるように製作者が細心の注意を払っていれば、インターナショナル的にも商売になる映画になるだろうに。
『イチケイのカラス スペシャル』
2023年(令和5年)・日本 監督/森脇智延
出演/竹野内/黒木華/小日向文世/北村一輝/中村アン/堀田真由/吉沢悠/高橋優斗/宮世琉弥/渡邉美穂/戸塚純貴
2021年に放送された「イチケイのカラス」は、東京地方裁判所第3支部第1刑事部(イチケイ)を舞台に、職権発動を駆使して事件に粘り強く向き合うクセモノ裁判官と、対照的なエリート裁判官らイチケイメンバーの活躍を描いた連続ドラマだったという。この1月13日より劇場版となる『映画 イチケイのカラス』が公開に因んで特別版が放送された。このテレビでの連続ドラマを全く知らなかった。ネットニュースでもテレビドラマの評判を知ることが出来るけれど、このドラマの放送時には私の網には引っかからなかった。おもしろいので驚いている。法律用語にも少しは馴染みがあるので、興味が湧いたのかもしれない。ここのところテレビドラマにもそっぽを向かなくなっているので、結構面白く時間が過ぎていった。
『クレイジー・リッチ!』(Crazy Rich Asians)
2018年・アメリカ 監督/ジョン・M・チュウ
出演/コンスタンス・ウー/ヘンリー・ゴールディング/ジェンマ・チャン/リサ・ルー/オークワフィナ
途中でちょっと止めたら(よくあることだが)この映画の上映時間がなんと2時間だったことが分かり、なんでこの程度の映画が2時間?と首を傾げてしまった。中国人礼賛映画かと思わせるような内容にちょっと観るのを後悔した。アジア系の役者ばかりのアメリカ映画は極めて珍しいらしい。舞台はニューヨークからシンガポールへ。最後のシーンだけは賛同する。 なぜこれほど中国、中国人が嫌いなのか分からないけれど、理由は何だっていい、嫌いなものは嫌いだと言い切ってしまう。
『AK-47 最強の銃 誕生の秘密』(Kalashnikov/AK-47)
2020年・ロシア 監督/コンスタンチン・バスロフ
出演/ユーリー・ボリソフ/オルガ・ラーマン/アルター・スモリアニノフ
「トカレフ」という銃はよく映画の中でその名前を聞くことがある。カラシニコフという名前も聞いたことがあると思っていたが、自動小銃の開発者だと初めて知った。ロシアでの銃器が多いのには何か理由があるはずだが、その多くがこの映画の中で語られている気がする。銃の開発で競技会がありその中の最優秀作が戦争の武器としてロシア軍に使われていたというのだ。第二次世界大戦が終わってからも銃の開発がまだまだ行われていた。人を殺すのが好きな国民なのだろう。
『Life or Something Like It』
2002年・アメリカ 監督/スティーヴン・ヘレク
出演/アンジェリーナ・ジョリー/エドワード・バーンズ/トニー・シャルーブ/クリスチャン・ケイン
Amazon Primeでは邦題がなく原題のままでリストアップされていた。第23回ゴールデンラズベリー賞 最低主演女優賞にノミネートされた。という記載を見つけたが、私はこの映画が好きだ。玄人筋に評価が低いということは、私の映画感覚も評価が低いのだろう。
この原題に邦題を付けるとしたらと考え始まった。『人生!クソッタレ!』『完璧?な人生!』『人生の意味は?』『本当の人生って』『人生も積もれば海となる』『人生の定義』、決して『人生の予言』なんていう題名は提案しないだろうなんて。『死霊のはらわた』を名付けたのは私だとヘラルド宣伝部では認識されているが、この程度の題名の付け方ではどれも採用されないだろう。どうしても「人生」から頭が離れないところがだめなんだろう。
てなことを考えていたらあれっこの映画見たかもしれないと思い始まった。Wikipediaには『ブロンド・ライフ』という邦題が記されていて調べ直したら自分の記録でもこの題名で登録されていたのには驚いた。この題名はDVD発売用に付けられたのかもしれない。言い訳をすれば、映画の公開には小さな劇場1館でやるか全国一斉にたくさんの映画館で公開するかによって、その扱いは全然違ってくるという現実があった。簡単に言うと宣伝費予算が1500万円か1億円かの違いがあり、それによってどの題名を採用するかの決断も変わってくるのだ。
『ジョン・ウィック』(John Wick)
2014年・アメリカ 監督/チャド・スタエルスキ/デヴィッド・リーチ
出演/キアヌ・リーブス/ミカエル・ニクヴィスト/アルフィー・アレン/エイドリアンヌ・パリッキ
1作目を後から観るとヒットした理由が分かろうと云うものだ。それでもまだまだ続編が作られているというのは大したものだ。どんどん激しさを増していくアクションを考える方も演技する方もかなり苦労しているに違いない。でも、映画はおもしろくなくちゃという王道を行くような作品があるのは嬉しい限りだ。
『科学捜査官の女』(Evidence of Truth)
2016年・カナダ 監督/ジェシー・ジェームズ・ミラー
出演/アンドレア・ロス/ウディ・ジェフリーズ/セバスチャン・スペンス/メレディス・マクゲアチー
日本のテレビの2時間ドラマのようなタイトルだ。もっとも、そのテレビドラマを一度もきちんと観たことがない。というか、観る気が起こらないので比較のしようがないが、この映画はそれなりにきちんと作られていて違和感はなかった。日本のテレビでは、どう考えたって雰囲気の合わない主人公が長年主演しているのが不思議で堪らない。きっといいところがたくさんあるのだろうが、チラ見するシーンでさえ違和感いっぱいで不思議の念が膨らんでくる。
『マシンガン・ファーザー 悪党に裁きの銃弾を』(The Mercenary)
2019年・アメリカ 監督/ジェシー・V・ジョンソン
出演/ドミニク・ヴァンデンバーグ/ルイス・マンディロア/カーメン・アルジェンツィアノ/マニー・アルバ
なんという題名!と思っていたら、内容も然りだった。ひたすらに悪に立ち向かうひとりの元悪党。以前は見境もなく命令されるままに手当たり次第に人殺しをしてきた人間でも、心根を入れ替えて今や悪人どもを一人残らず殺していくのは善と言えるのだろう・・・か。まぁ~、悪を懲らしめられれば、前世での悪事は問われないかもしれない。
『キング・アーサー』(King Arthur: Legend of the Sword)
2017年・アメリカ/イギリス/オーストラリア 監督/ガイ・リッチー
出演/チャーリー・ハナム/アストリッド・ベルジュ=フリスベ/ジャイモン・フンスー/エイダン・ギレン/ジュード・ロウ
イギリスのアーサー王伝説を題材とした映画で全6部作となるシリーズの第1作目として製作されたが、製作会社のワーナー・ブラザースは1億5000万ドルの赤字を計上したため、計画されていた続編は制作中止となったという。壮大な雰囲気に映像も大作感いっぱいだったが、所詮この手の映画は内容が薄く、それでもそんなことはどの大作にも共通するのでストーリーだけが当たらなかった原因ではないのだろう。私には指輪物語もこの映画も同じように仰々しいストーリーだと思える類似性があるように。役者には責任がないのに、運が悪いとしか言いようがない。
『LAMB/ラム』(Lamb)
2021年・アイスランド/スウェーデン/ポーランド 監督/ヴァルディミール・ヨハンソン
出演/ノオミ・ラパス/ヒナミル・スナイル・グヴズナソン/ビョルン・フリーヌル・ハラルドソン
ジャンルがホラー・ミステリーになっている。アイスランドの山間に住む羊飼いの夫婦イングヴァルとマリア。ある日、二人が羊の出産に立ち会うと、羊ではない何かが産まれてくる。子供を亡くしていた二人は、"アダ"と名付けその存在を育てることにする。奇跡がもたらした"アダ"との家族生活は大きな幸せをもたらすのだが・・・。(Filmarksより) 首から上は羊で体は人間、ちらりとしか見せないその姿を想像しながら映画ストーリーを追っていく。夢に出そうな・・・・。ちょっとばかり発想が気味悪く、結末も後味悪し。
『ミュージック・イン・ミー!』(The Music in Me)
2015年・カナダ 監督/ジョン・ブラッドショウ
出演/デビー・ギブソン/アントニオ・クーボ/グロリア・ルーベン/エイミー・フォーサイス
歌は絶対必要なものに違いない。よく言う、たかが・・・、されど・・・。私のホームグラウンド「映画」はよく例えられる。たかが映画、されど映画、と。音楽は人間社会に必然的に現れて来たものなのだろうけれど、人間の知恵はその音楽を芸術として高めていくことに成功した。音楽か~???!!!
『マリー・ミー』(Marry Me)
2022年・アメリカ 監督/カット・コイロ
出演/ジェニファー・ロペス/オーウェン・ウィルソン/マル―マ/ジョン・ブラッドリー
世界的歌姫のカット・ヴァルデス(ジェニファー・ロペス)は、新曲「マリー・ミー」を携え、大観衆の前で音楽界の超新星バスティアン(マルーマ)と華々しく結婚式を挙げる予定だった。しかしショーの直前、婚約者バスティアンの浮気がスクープされる。失意のままステージに登壇した彼女は、観客の中から一人の男を指名、突然プロポーズするという驚きの行動に出る。新たなお相手は、平凡な数学教師とあって・・・・(Filmarksより) 奇抜なアイディアものだがアメリカ映画は何処までも真面目、日本人のメンタリティーも少しは進化しなくては。
『タイムネット』(Time Loop)
2020年・イタリア 監督/シロ・ソレンティーノ
出演/サム・ギッティンズ/Mino Sferra/エリー・プソ/Eliana Manvati
原題通りタイム・ループばかりでよく分からない。おもしろいはずなのに乗れない。デジャブを繰り返す映画の如く、映画的にはイマイチ。SF、タイムマシーンと好きな分野の映画ながら、アイディア不足が否めない。65分だけ過去に戻ってそこからの未来が分かってロトにも当選しちゃうなんて、イマイチ、イマニ、イマサン。残念ながら過去にも未来にもタイムマシンに乗って行き来出来ない。インチキな占い師と同じようなもの。よくもまぁ~見て来たような嘘を他人に言えるものだね占い師とやらは。
『ハウスワイフの禁断の秘密』(Secret Lives of Housewives)
2022年・アメリカ 監督/デイヴ・トーマス
出演/ジェシカ・モリス/ジャスティン・ベルティ/チャーリー・ヒット/クリスタル・デイ
主婦たちの不倫がきっかけで主婦たちの禁断の秘密が明らかになっていくというテレビの2時間ドラマのような内容。不倫相手だった一人の男が殺される。犯人捜しの結末は意外な方向へと進んで行ったが、最後のシーンが思いがけず・・・。いつも言う、一つの嘘が次々と嘘の塊となって身に降りかかってくる。嘘も方便という言い方もあるが、嘘を言って迄自分を守らなければいけないほどの大した自分なんてそうはいない。
『スクール・アローン』(Christmas Break-In)
2018年・アメリカ 監督/マイケル・カンパ
出演/ダニー・グローヴァー/デニース・リチャーズ/キャメロン・シーリー/ショーン・オブライアン
クリスマスの日の小さな出来事を高校生が作った映画のよう。しかもその対象者は幼稚園児や小学校低学年向け。よくもまぁ~こんな映画に製作費を出す人がいるんだと、驚きしかない。ゆる過ぎて。日本人が作った題名は英語になっていなくて、やっぱりおかしい。配給会社のセンスを疑う。
『ホリデイ』(The Holiday)
2006年・アメリカ 監督/ナンシー・マイヤーズ
出演/キャメロン・ディアス/ケイト・ウィンスレット/ジュード・ロウ/ジャック・ブラック
この映画は好きだねぇ~! もう16年前の映画だということに驚いている。なるべく新しい映画を見逃さないようにしているつもりだが、映画情報に耳を傾けることなくただ只管にAmazon Primeから提供された情報と映画だけに注目していると、かなりの映画をスキップしているような気がする。これだけの一流どころの俳優が出演すると、ギャラも大変だろうと気になる。映画業界の題材も扱ったりしてちょっと興味深い。女性監督のせいだろうか「セックスを1回して、2回一緒に眠った」というセリフがやたらと出てきて。おもしろかった。
『格差恋愛 シークレット・ミリオネア』(Secret Millionaire)
2018年・カナダ 監督/マイケル・スコット
出演/スティーブ・ランド/シオバーン・ウィリアムズ/マイケル・コプサ/アリー・バートラム
金持ちの跡取り息子とそうではない普通の女の娘の恋愛はいかに。というありきたりのストーリーだが、それなり以上の爽やかさに溢れた映画だった。同じような題材で同じような映画はたくさん作られているだろうに、どこに違いが生じるのかが不思議に感じる。もっとも、同じ人間だって、同じような境遇に育った人たちが間違っても同じような心を持ちながら大人になって行くことはないだろう。それが人間社会のいいところなのだから、ひたすら楽しまなければバチが当たるというものだ。せめて正月くらいは。
2023年1月1日
もう12年と半年が過ぎた。塵も積もれば山となるごとく屁でもない感想を書き連ねて来たお陰で、すでに3,110本以上の映画を観たことになる。映画業界に在籍していたころには宣伝部長という役割を担っていながら実際観た映画は10本代だったんではなかろうかという不始末を吐き払うように、60歳を過ぎてからの鑑賞本数はプチ映画評論家に近くなった。
映画はおもしろくなくちゃ、という信念がある。おもしろいというのはもの凄く主観的なことなので、他人が何と言おうと自分が面白いと思わなければおもしろくない映画になることは間違いない。
レンタルDVDやテレビ放映の録画からアマゾン・プライムへと映画を観る環境も変化して行き、テレビ画面だって29インチから34インチ、そして50インチへと大きくなっていった。もう我慢できないように65インチのテレビを手に入れようと気持ちが高ぶって仕方のない現在、限りない欲望の自分なりのプチ実現を楽しんでいる。
『ラスト・ボーイスカウト』(The Last Boy Scout)
1991年・アメリカ 監督/トニー・スコット
出演/ブルース・ウィリス/デイモン・ウェイアンズ/チェルシー・フィールド/ダニエル・ハリス
コメディ・アクション部門はアメリカに勝てるわけがない。一流俳優がおかしなことを言ったり、おかしな行動をして他人を笑わせるわけではない。このあたりが日本のお笑い映画との決定的な違いだろう。年末に何も考えずに観られる映画としては最適だった。ただ30年も前の映画だとは観ているときは全く気付かず、私の頭の中もほとんど動いていないということの証明になったようだ。
『ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK』(The Beatles: Eight Days a Week - The Touring Years)
2016年・アメリカ 監督/ロン・ハワード
出演/ポール・マッカートニー/リンゴ・スター/ジョン・レノン/ジョージ・ハリソン/ザ・ビートルズ
1963年~66年のツアー時期をベースとし、ジョン・レノン、ポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスン、リンゴ・スターがどのように集まり“ザ・ビートルズ”になっていったかを探る。たまたま電気屋の一角にレコード販売を始めていた実家。高校生の自分にとって夢中になって聞いたLPレコードを懐かしむ。毎日のように擦り切れるほど聞いていたことは確かだった。「世界」という言葉をその時はじめて意識したのかもしれない。それでも今の今まで「世界」という光景を見たことはなかった。なるほど、世界中でビートルズが熱狂的に迎えられたのはこういうことだったのかと。死ぬ前のいい思い出になった。偉大なグループだったことがあらためて。
『インヘリタンス』(Inheritance)
2020年・アメリカ 監督/ヴォーン・ステイン
出演/リリー・コリンズ/サイモン・ペッグ/コニー・ニールセン/チェイス・クロフォード
机の上にあるメモにこの映画の題名が書いてあった。う~ん?! 調べてみたらストーリーは確かに観た気がした。最後まで観たと思うが定かではない。これは酷い!! 忘れるのは仕方がないが、思い出せないのは困る。30年も地下室に閉じ込めていたなんていう物語に反吐が出たのかもしれない。それにしてもひどい。
『ロング・トレイル!』(A Walk in the Woods)
2015年・アメリカ 監督/ケン・クワピス
出演/ロバート・レッドフォード/ニック・ノルティ/エマ・トンプソン/メアリー・スティーンバージェン
紀行作家ビルは、長年暮らした英国から故郷の米国へ戻り、セミリタイアに近い生活を送っている。平穏な日常に物足りなさを感じていた彼はふと、家の近くを通る北米有数の自然歩道"アパランチアン・トレイル" 3,500kmの踏破を思いつく。妻を安心させるため旅の相棒を募るなか、唯一現れたのは破天荒な旧友カッツだった。期待と不安を胸に出発した二人の前に、大自然の驚異と体力の衰えという現実が立ちはだかる。(Filmarksより) ストーリーが詰まらない。ロバート・レッドフォードのしわしわの顔を見ていると歴史を感じる。エマ・トンプソンの妻ぶりが素敵だった。
『ミステリーロード/欲望の街』(Mystery Road)
2013年・オーストラリア 監督/アイヴァン・セン
出演/アーロン・ペダーセン/ヒューゴ・ウィーヴィング/ライアン・クワンテン/ジャック・トンプソン
『全世界絶賛』と大きく書かれたポスターの絵柄が載っていた。ちょっと長い(2時間1分)。都会での任務を終えてクイーンズランドの荒れた奥地にある故郷へと戻って来たアボリジニ先住民の刑事が主人公。帰ってきたそうそう少女の殺人事件を追いかけるストーリー。同じようなシーンが繰り返されて、ついつい眠ってしまった。この頃はよく眠る。事件の捜査にあたる主人公だが、凶暴な事件とジェイが戻って来たことによって町の中に長年くすぶり続けていたテンションが明るみになる。白人対アボリジニ、過去対現在、都会対田舎、貧困対チャンス、といった確執が現れるという解説はなるほどと理解する。悪くはないが絶賛するほどでもない。人間関係が相変わらず分からず、映画の面白さを半減させている。もしかすると、私が悪いのか。
『東京2020オリンピック SIDE:A バリアフリー字幕版』
2022年(令和4年)・日本 監督/河瀨直美
出演/
ものの見方は数々あるという大原則を、こういう大多数の観客に向けての映画という手段に当てはめること自体が間違いだろう。この監督の起用にすら賛否が渦巻いている。わざわざ一般的ではない手法を持ちる芸術家を起用することを誰が決めたのだろうか。どこかでひとつの作品を観たことがあるようなないような。ちょっとばかり違うんじゃないの、という印象があった。海外で評価されるも日本国内の評価には疑問符が多い。そん風に決めつけることはいけないことだと思うが、でもそんなもんだよね。事実は小説より奇なり、この映画を観てみれば一発で分かる。ながら族宜しく、垂れ流し的に観ていてさえ、あっこれは、と見直したいというシーンなど皆無。むしろ眠気を通り越して眠ってしまった。
『タルサ 俺の天使』(Tulsa)
2020年・アメリカ 監督/スコット・プライアー/グローリア・ステラ
出演/スコット・プライアー/リヴィ・バーチ/ジョン・シュナイダー/ニコール・マリエ・ジョンソン
実話の映画化は忠実であればあるほどおもしろくない。ただ、主人公が死んでしまう映画は哀しい。
『ワンダーウーマン 1984』(Wonder Woman 1984)
2020年・アメリカ 監督/パティ・ジェンキンス
出演/ガル・ガドット/クリス・パイン/クリステン・ウィグ/ペドロ・パスカル
なんと2時間31分の映画だった。スーパーマン大好き人間としてはこの手の映画は大歓迎なのだが、さすがに眠気を誘うほどの出来の悪さと長編には反吐が出る前に眠ってしまった。アメリカン・コミックの特徴なのだろうか、どうしても正義と悪魔の対決構図を戦わせなければ気が済まないらしい。もうちょっとスーパー・ヒロインの魅力を出して欲しかった。特撮の戦うシーンを延々と見せられる方はたまったものではない。
『A-X-L/アクセル』(A.X.L.)
2018年・アメリカ 監督/オリヴァー・デイリー
出演/アレックス・ニューステッター/ベッキー・G/アレックス・マクニコル/ドミニク・レインズ
開発途上のA-X-Lが研究所から逃げた。このA-X-Lは軍が極秘に開発している軍用ロボット犬である。現在進行形でロボットの開発が進んでいる。当然AIを搭載した自分で考えるロボットである。その形が犬になっただけで、軍用ロボット犬は成立する。そういう世界がもうすぐやって来るのだろう。想像以上に近い将来かもしれない。
『コンプライアンス 服従の心理』(COMPLIANCE)
2012年・アメリカ 監督/クレイグ・ゾベル
出演/アン・ダウド/ドリーマ・ウォーカー/パット・ヒーリー/ビル・キャンプ
何度観るのを止めようかと思ったか。不愉快なシーンの連続だったが、すごく勉強になった。警官を名乗る電話を受けたハンバーガーの中年女性店長の頭の悪さが、この事件の発端だった。警官を名乗っているが何の確証もないのに店員の一人が客のお金を盗んだようだと誘導尋問を繰り返す。あげくの果てにその若い女性店員の服を脱がせて全裸にして屈ませるという性犯罪を勃発させる。アメリカでの実話に基づいた話らしい。事件内容が邦題に表現されている。いとも簡単に信じてしまうのは日本人の得意とするところ。よくよく注意しよう。相手を常に疑うということではなく、信じるに値することから外れたことに遭遇したらきっちりと疑いなさいよ、ということに違いない。
『誰かの幸せ』(Le Bonheur des uns...、A Friendly Tale)
2020年・フランス 監督/ダニエル・コーエン
出演/ベレニス・ベジョ/ヴァンサン・カッセル/フロランス・フォレスチ/フランソワ・ダミアン/ダニエル・コーエン
ずーっと昔からフランス人は知っていたんだ、自分たちが自己中で地球はいつも自分を中心に動いていると思い込んでいることを。会話を聞いているだけで苛ついてくる。さすが映画は凄い。そういう風に観客の心を揺さぶることを平気でする。原題を翻訳機にかけたら「1人の幸せ」と出て来た。だいぶ意味が違ってくるけれど、ここらあたりもフランス風エスプリとか言う奴で決めたのだろうか、配給会社は?
『ハーフ・ア・チャンス』(Une chance sur deux)
1998年・フランス 監督/パトリス・ルコント
出演/アラン・ドロン/ジャン=ポール・ベルモンド/ヴァネッサ・パラディ/エリック・デフォス
この二人が共演したのか、と思ったら、なんと1998年作品だった。しかもジャン=ポール・ベルモンドは2021年9月に88歳で亡くなっていた。アラン・ドロンは今87歳、遠い昔の話のような伝説の二人だ。この映画製作当時の年齢は60代半ば、まだまだ若い雰囲気を醸し出しながらストーリーが展開している。
『ティファニーの贈り物』(Something from Tiffany's)
2022年・アメリカ 監督/ダリル・ウェイン
出演/ゾーイ・ドゥイッチ/ケンドリック・サンプソン/レイ・ニコルソン/シェイ・ミッチェル
同じようなクリスマスものが2本続いた。こちらの方はわざとらしさが排除され、素直に見やすい映画だった。いつも思うことは、何か不都合なことがあったときに正直に相手にその事実を伝えないから物事が複雑になるということ。これは映画だから、不都合なことが起こらなければ映画にならないので、ストーリーとしては当たり前のことなのだが。それにしてもアメリカ人の男と女のくっつき方、別れ方が激しい。さっさと見切りをつけて人生を楽しむのは最高なのかもしれない。ぐじぐじといつまでも仮面夫婦を続けている日本の環境は、社会構造として幼稚園のようなものに見えて仕方がない。
『あなたの、私のクリスマス?』(Your Christmas or Mine?)
2022年・イギリス 監督/ジム・オハンロン
出演/エイサ・バターフィールド/コーラ・カーク/アレックス・ジェニングス/デヴィッド・ブラッドリー
クリスマス・シーズンになると心温まるストーリーが展開されて嬉しい。コメディーだが、日本のお笑いのようなドタバタ、奇声を発する、訳の分からない動作をする、といったジャリのようなことがないところがいい。ただ、この映画はちょっと出来過ぎていて、わざとらしさが随所に現れるのがなんとも。さりげない心からの行動だったはずが、思いがけない結果を招いてしまった時の対処の仕方が、日本とはひと味違って微笑ましい。
『ベルファスト』(Belfast)
2021年・アイルランド/イギリス 監督/ケネス・ブラナー
出演/ジュード・ヒル/カトリーナ・バルフ/ジェイミー・ドーナン/ジュディ・デンチ
1969年(昭和41年)、北アイルランドのベルファスト。早稲田の入試会場、機動隊の列に守られた道を進んで試験会場に入って行った。世界中が荒れていたが、ここベルファストではプロテスタントとカトリック教徒間の争いだったようだ。懐かしいにおいが漂ってきた。決して裕福ではない家族には、はっきりとした絆と温かさがあった。愛想を尽かせて街を出ていく家族の姿がやけに哀しい。
『モービウス』(Morbius)
2022年・アメリカ 監督/ダニエル・エスピノーサ
出演/ジャレッド・レト/マット・スミス/アドリア・アルホナ/ジャレッド・ハリス
映画批評家によるレビュー
Rotten Tomatoesによれば、273件の評論のうち高評価は15%にあたる42件で、平均点は10点満点中3.8点、批評家の一致した見解は「独創性のないエフェクト、決まりきったやり方の演技、そしてほとんど無意味な馬鹿げたストーリーに呪われた、この退屈な汚物は『モービウス』を実現するための無駄な試みである。」となっている。 Metacriticによれば、55件の評論のうち、高評価は7件、賛否混在は25件、低評価は23件で、平均点は100点満点中35点となっている。マーベル・コミックの同名のキャラクターをベースにしたスーパーヒーロー映画。(Wikipediaより) 必ずと言っていいほど対決する二人の構図を作らないと気が済まないのがアメリカ人らしい。
『あなたの名前を呼べたなら』(Sir)
2018年・フランス/インド 監督/ロヘナ・ゲラ
出演/ティロタマ・ショーム/ヴィヴェーク・ゴーンバル/ギータンジャリ・クルカルニー/Ahmareen Anjum
インド映画はおもしろいという先入観を裏切られることはなかった。波長が合うというのはこういうことを言うのだろう。インド第2の大都市であるムンバイに住むインド人の一端を見ることが出来た。「Sir」字幕では「旦那様」と呼ぶ雇い主とメイドの恋に似たものが・・・。終わり方も昔のアメリカ映画のように、余韻を残してストーリーが・・・。階級制度が歴然とあるインドに生まれると、社会制度がどうのこうのと言えない実生活が目の前にある。もうすぐ世界一の人口となるインドは、中国を追い越していくのだろう、どこかで。
『ビューティフル・レターズ 綴られた言葉』(The Letter Writer)
2011年・アメリカ 監督/クリスチャン・ヴィッサ
出演/アリー・アンダーウッド/バーニー・ダイアモンド/パム・アイヒナー/カイリー・サーマン
『人は言葉によって幸せにもなれるし、傷つきもする。』 分かり切ったようなことだが、こういうネタを題材にして真正面から映画を作るのは難しかったろう。登場人物の性根が皆んないい人なのが救いだ。世の中にはどうしようない人間性を平然とひけらかして生きている人種がいる。多様性だからと全部を受け入れるわけにはいかない。ダメな奴を出来るだけ排除しなければ、いい環境は保てない。ダメな奴を特定するのは難しいなどと、詰まらない議論を持ち出す輩本人がダメな奴なんだよ!
『LUCY ルーシー』(Lucy)
2014年・フランス 監督/リュック・ベッソン
出演/スカーレット・ヨハンソン/アナリー・ティプトン/モーガン・フリーマン/アムール・ワケド
観終わってこのコメントを書いた後、「最近見た映画」倉庫に入れようとしたときに既に観ていた映画だと分かった。自分の記憶力のなさに辟易する。サイキックアクションというジャンルらしい。スカーレット・ヨハンソンがどんどん訳の判らない役者になって行く姿が哀しい。この監督の作品も、何故か相容れない。フランス人のDNAが私に合わないのかもしれない。混乱の極みのようなストーリーと映像にちょっと。好きな女優が出ているのに寝てしまった。
『ザッハトルテ』(Sachertorte)
2022年・ドイツ 監督/ティン・ロゴル
出演/マックス・フーバッヒャー/ミーヴ・メテルカ/クリスタ・シュタートラー/カール・フィッシャー
ウィーンには行きそびれてしまった。もう行けないだろうが、結構悔やんでいる。ザッハトルテは、オーストリアのホテル・ザッハーおよび洋菓子店・デメルで提供されている菓子(トルテ)である。古典的なチョコレートケーキの一種。ザッハートルテとも呼ばれる。こってりとした濃厚な味わいを特徴とする、ウィーンのホテル・ザッハーの名物菓子であり、チョコレートケーキの王様と称される。近年は多数のカフェや洋菓子店により、ザッハートルテと称したチョコレートケーキが提供されているが、それらは単にチョコレートのトルテの一種とするのが正しい。(Wikipediaより) せめて、名古屋で有名なザッハトルテを出す店を探そう。
『スパイ・バウンド』(AGENTS SECRETS)
2004年・フランス/イタリア/スペイン 監督/フレデリック・シェンデルフェール
出演/モニカ・ベルッチ/ヴァンサン・カッセル/アンドレ・デュソリエ/シャルル・ベルリング
組織からの命令で世界中を動き回るスパイたちの行き着く先は・・・。非情な決断力で力を発揮するスパイたちだが、無情な組織の力には屈せざるを得ない。サラリーマンだって構図は同じようなもの。力を持てば持つほど、疎まれて切られる運命にあるのは人間社会の見えない掟なのだろう。
『アウト・オブ・デス』(Out of Death)
2021年・アメリカ 監督/マイク・バーンズ
出演/ジェイミー・キング/ブルース・ウィリス/ララ・ケント/ケリー・グレイソン
いやぁー!五流映画にブルース・ウィリが出ている。よほどおかねに困ったのかなぁー!署長以下全員ぐるみで悪事を働く地方の小さな警察署、その近くにある静かなだけが取り柄の保養地まがいの場所を訪れた主人公も現職警察官だった。ストーリーもアクションも酷いスリラー映画だった。
『グッドライアー 偽りのゲーム』(The Good Liar)
2019年・アメリカ 監督/ビル・コンドン
出演/ヘレン・ミレン/イアン・マッケラン/ラッセル・トーヴィー/ジム・カーター
騙し騙され生き続ける人たちがいる。お金持ちが騙されて大金をせしめられたとしても、庶民には痛くも痒くもない感覚がある。お金を持っていないから騙されたってとられる財産もない。たぶん、それが仕合わせの極致なんだろうと思う。もちろん、負け惜しみの気持ちが満タンではあるが。
『コンティニュー』(Boss Level)
2020年・アメリカ 監督/ジョー・カーナハン
出演/フランク・グリロ/メル・ギブソン/ナオミ・ワッツ/アナベル・ウォーリス
必ず死んでしまう終わりのないタイム・ループから脱出しようとする元特殊部隊の男が主人公。それにしても、デジャブの繰り返し映像が苛つかせる。井上尚弥のタイトルマッチが観たくて「dtv」に臨時加入した。AmazonPrimeとは毛色の違ったタイトルが並んでいて、臨時入会の意味がありそうだ。せっかくだから、ボクシングが観終わってもちょっとだけここの映画も観てみよう。
『ローズメイカー 奇跡のバラ』(La Fine fleur/The Rose Maker)
2020年・フランス 監督/ピエール・ピノー
出演/カトリーヌ・フロ/メラン・オメルタ/マリー・プショー/オリヴィア・コート/ファッシャ・ブヤメッド
フランス・パリ郊外、父の遺産のように引き継いだバラ園を経営する肝っ玉フランス女性が主人公。花は絵や映像で見てもその綺麗さは分かっても、心から湧き上がるような感動を覚えるものではない。が、実物を目にすると、しかも花束として受け取る花には神々しい尊厳が宿っている。ましてやそれが薔薇だったら、どれほど心を揺さぶるだろうか。経験したことのない人には感じえない感情のひとつ。是非ともそんな毎日に囲まれることを願うが、そんなことは奇跡のようなものだろう。
『ミッション:30ミニッツ』(Semper Fi)
2019年・イギリス 監督/ヘンリー=アレックス・ルビン
出演/レイトン・ミースター/ジェイ・コートニー/フィン・ウィットロック/ナット・ウルフ
出来のいい兄貴が出来の悪い弟の脱獄を計画実行してしまうなんて。いまよん納得できないストーリーはちょっと。
『エージェント・トリガー』(ブラッド・ターナー)
2021年・カナダ 監督/ブラッド・ターナー
出演/バリー・ペッパー/コルム・フィオール/イヴ・ハーロウ/カルロ・ロタ/ジェイン・イーストウッド
スパイものの究極のようなシーンの連続だが、人間関係性がいまさん分からない。日本の昔のチャンバラ映画のように、主人公はあくまでも強く不死身で、なかなか死にそうもない。瞬間瞬間はおもしろいが、トータルでみるとイマイチなんだろう、こういう映画は。人間力はやっぱり総合力、何か一つに特殊な才能があるに越したことはないが、そんな簡単に才能なんて身に付くものではない。とりあえず、総合力を磨くことがせっかく生まれて来た証かと。
『スペル』(Spell)
2020年・アメリカ 監督/マーク・トンデライ
出演/オマリ・ハードウィック/ロレッタ・デヴァイン/ロレイン・バローズ/ハナー・ゴネラ
事故にあったが目覚めると見知らぬ家のベッドの上、左足裏には長い釘が撃ち込まれている。夢の中の話だったとストーリーが終わるだろうと思っていたら、ずーっとそのまま夢のような悪夢のような光景が延々と続くのには呆れてしまうしかなかった。
『ブラックシープ』(Blacksheep)
2006年・ニュージーランド 監督/ジョナサン・キング
出演/ネイサン・マイスター/ダニエル・メイソン/ピーター・フィーニー/タミー・デイヴィス
なるほど、製作国がニュージーランドだったんだ。羊のゾンビ合戦みたいなストーリーと映像に一瞬引く、ずーっと引きっぱなしだった。
『ミス・フランスになりたい!』(Miss)
2020年・フランス 監督/ルーベン・アウヴェス
出演/アレクサンドル・ヴェテール/イザベル・ナンティ/パスカル・アルビロ/ステフィ・セルマ
この題名から触手は動かなかったが、たまたま観る気になった。9才の子供たちが学校で将来の夢を発表していた。一人の男の子が「ミス・フランスになりたい」と言い出して冒頭の笑いを誘うことになる。基本、コメディだがフランスの笑いはエスプリ、しつこく同じことを言ったり意味のない動作をして観客を笑わせようなんていう軽薄な映像ではないことが救いだ。美男子のミス・フランスへの挑戦は続く。
『ザ・ウェイバック』(The Way Back)
2020年・アメリカ 監督/ギャヴィン・オコナー
出演/ベン・アフレック/アル・マドリガル/ミカエラ・ワトキンス/ジャニナ・ガヴァンカー
高校生の頃の主人公は花形選手だったが、父親との確執からプロの世界どころかバスケットボールすら辞めてしまった。高校時代までは優秀だったけどその後の人生は語るほどではないという人も多いだろう。子どもを亡くしてからの主人公はアルコール依存症になった。卒業して20年経って母校のコーチをしてくれという依頼があった。そのあとはスポ根物語になるが、それなりに見せるストーリーになっていたような気がする。涙にもろくなった。
『ナンシー・ドリューと秘密の階段』(Nancy Drew and the Hidden Staircase)
2019年・アメリカ 監督/カット・シア
出演/ソフィア・リリス/Zoe Renee/マッケンジー・グラハム/アンドレア・アンダース/ローラ・ウィッジンズ
原作はシリーズ小説のようだ。少女探偵団が活躍する軽い映画。事件が起こって普通の高校生が警察官とやりあってまで活躍する姿は、映画といえど日本では到底考えられない内容。どこまでも遅れている日本の社会環境が、欧米並みになることはあるのだろうか。ここまで生きてきて昔のことが今よりも進んで見えたり、こちらが追い付かないような倫理観が発生しないことが凄く問題だと思う。情けない日本がどんどん本格化している。
『ラストナイト・イン・ソーホー』(Last Night In Soho)
2021年・イギリス 監督/エドガー・ライト
出演/トーマシン・マッケンジー/アニャ・テイラー=ジョイ/マット・スミス/ダイアナ・リグ
訳の判らない映画だった。分かったのは60年代の音楽がたくさん流れていたことだけ。主人公の女の子が可愛かったから最後まで観ることが出来ただけだろう。随所にロンドンの匂いは感じた。懐かしい。もう一度行くことは叶わないのだろう。
『黒い司法 0%からの奇跡』(Just Mercy)
2019年・アメリカ 監督/デスティン・ダニエル・クレットン
出演/マイケル・B・ジョーダン/ジェイミー・フォックス/ロブ・モーガン/ティム・ブレイク・ネルソン/レイフ・スポール
ブライアン・スティーヴンソンが2014年に発表したノンフィクション『黒い司法 死刑大国アメリカの冤罪』を原作としている。弁護士ものは実話に基づいたものが多い。アメリカの闇、黒人差別問題が一番顕著に社会に現れているのが警察、司法。白人の若い女性が殺された。その辺にいる黒人を犯人にして死刑囚にしてしまう。冤罪ではなくこれは明らかに他人に罪をなすりつけた犯罪である。しかもそれが、警察、検察、一般警官、白人市民を巻き込んだ人種差別のなれの果てだという真実が。分かっていても涙にくれる自分の姿に老を強く感じるとともに、さらに素直になって行く自分が嬉しくなってくる。
『マザーレス・ブルックリン』(Motherless Brooklyn)
2019年・アメリカ 監督/エドワード・ノートン
出演/エドワード・ノートン/ブルース・ウィリス/ググ・バサ=ロー/ボビー・カナヴェイル/チェリー・ジョーンズ
1958年、ドジャーズが現在のロサンゼルスへ本拠地を移転しようかという話題があがっていた頃が舞台だった。探偵事務所の親分は、孤児院から4人を引き取って部下にしていた。主人公の孤児は、突然思ったことを声に出してしまう病気を持っていた。「イフ・・」と口癖のように頻発してしまう。大きなおっぱいの女性にむかい合うと面と向かって「大きなおっぱい、触りたい」とか言ってしまうのだ。本人は自分の病気をよく理解していて、口に出すときは一応横を向いたりする。てなことで、この探偵会社のボスが何かの事件を追っていて殺されてしまうところから話が面白くなる。久しぶりに映画らしい映画を観た。なかなか最後までおもしろかった。満足、満足。
『ファーザー』(The Father)
2021年・イギリス/フランス/アメリカ 監督/フローリアン・ゼレール
出演/アンソニー・ホプキンス/オリヴィア・コールマン/マーク・ゲイティス/イモージェン・プーツ
80歳になった主人公は日々ボケの一途をたどることとなる。あくまでもボケ老人主人公の目線で物語が進行する。面倒をみてくれる娘は離婚したはずだ、パリに引っ越すと言っている、世話をしてくれる人の名前は、夫はいないはずだ、毎日起きるごとに自分の認識とは違う現実がある。
批評家から絶賛され、特にホプキンスの演技に対して惜しみない賞賛が送られている。 また、第93回アカデミー賞では作品賞を含む6部門にノミネートされ、このうち主演男優賞(アンソニー・ホプキンス)と脚色賞を受賞した。アンソニー・ホプキンスの独り舞台である。
『天気の子』(Weathering With You)
2019年(令和元年)・日本 監督/新海誠
出演/(声)醍醐虎汰朗/森七菜/小栗旬/本田翼/倍賞千恵子/吉柳咲良/平泉成/梶裕貴
新海誠監督の新作『すずめの戸締まり』が今週末に公開されるということで恒例の前作放映を観た。要所要所では毛嫌いせずにアニメ映画を観るようにしている。久しぶりに観るアニメは、やっぱり背景が動かない表情のない光景、人物にへとへとになるが、時間が経つにつれて慣れてくるのもおもしろい。114分ともうちょっと長過ぎる。前回でも書いたような気がするが、アニメでしか表現できないような物語ではないので、是非実写版で映画を撮ってもらいたい。話はちょっとSFっぽかったり、社会に反抗する若者の心だったり、尾崎豊の詩を想い出させるような気がした。何処がそんなにいいのか分からないが、140億円の興行収入を叩き出す力は若者のエネルギーなのかもしれない。せめて選挙やプチ政治力にもその力がそそがれれば、もう少しは社会が良くなるだろうに、と・・・・。
『トランスポーター』(Le Transporteur/The Transporter)
2002年・フランス/アメリカ 監督/ルイ・レテリエ/コリー・ユン
出演/ジェイソン・ステイサム/スー・チー/フランソワ・ベルレアン/マット・シュルツ
トランスポーター3を観ているが肝心の1本目も2本目も観ていなかった。そんなに面白いという印象はなかったが、この1作目を観たらめちゃめちゃおもしろくて驚いた。マンガよりも漫画っぽい映画は凄い。アクションにつじつまの合わないところは多数あったが、それ以上に活気あるアクション映画だった、満足。
『ブレイム・ゲーム』(Das Ende der Wahrheit/Blame Game)
2019年・ドイツ 監督/フィリップ・ライネマン
出演/アリレザ・バイラム/Mohammad-Ali Behboudi/Timo Fakhravar/アレクサンダー・フェーリング
ドイツ連邦情報局のテロ対策班の奮闘を描く。テロ対策というよりむしろ、情報局内の権力闘争がテロ対策をより一層複雑にしている。仕事は、真面目に対象事に向かっているだけではダメなのだ。より政治的でより世渡り上手な奴でなければ、生き馬の目を抜く世間に君臨することは出来ない。その野望のある者に限ってだが。
『ジェントルメン』(The Gentlemen)
2020年・アメリカ/イギリス 監督/ガイ・リッチー
出演/マシュー・マコノヒー/チャーリー・ハナム/ヘンリー・ゴールディング/ミシェル・ドッカリー
ロンドンの暗黒街を舞台に麻薬ビジネスがさまざまな事件を引き起こす。キノ・フィルム配給の映画としては、ちょっと面白みのない映画だった。
『21ブリッジ』(21 Bridges)
2019年・アメリカ 監督/ブライアン・カーク
出演/チャドウィック・ボーズマン/シエナ・ミラー/ステファン・ジェームス/キース・デイヴィッド
久々の骨太でまさしく骨のある警察ものだった。逃走中の強盗殺人犯を捕まえるためにニューヨーク・マンハッタン島にかかる21の橋を全て封鎖する作戦が原題の由来だ。13歳の時親が殉職をして、その遺志を継いで警察官になった根っからの正義警官が主人公で気持ちいい。ニューヨーク市警85分署署長以下の汚職警察官が相手では、正義漢も翻弄されるしかない。味方と思っていた複数の人間が実は敵だったなんて言うことがあったら、人生は滅茶苦茶になってしまう。
『アンホーリー 忌まわしき聖地』(Shrine/The Unholy)
2021年・アメリカ 監督/エヴァン・スピリオトポウロス
出演/ジェフリー・ディーン・モーガン/ケイリー・エルウィズ/ケイティ・アセルトン/ウィリアム・サドラー
マリア様が出現して奇跡を起こす。エクソシストに似た恐怖が襲ってきた。神の存在は凄い。凄いとしか言いようのない精神世界と現実社会のはざまに生きているのが人間なのだろう。
『ビューティフル・グレイス』(Finding Grace)
2019年・アメリカ 監督/ワーレン・ファスト
出演/エリン・グレイ/デヴィッド・キース/ボー・スヴェンソン/パリ・ワーナー/ジェイソン・ウェイド
陳腐なはなしだけれど、すべては神のみ心のままに、という文言だけが心に残った。
『アンダー・ウォー~地下道爆破計画~/アンダー・ウォー 史上最大の地下爆破作戦』(The War Below)
2021年・イギリス 監督/J・P・ワッツ
出演/サム・ヘイゼルディン/トム・グッドマン=ヒル/クリス・ヒッチェンズ/サム・クレメット
第一次世界大戦でのストーリー。ベルギー・メシヌでの大爆発は、核兵器を除いた歴史上で最も大きな大爆発として歴史に刻まれているらしい。地下壕を掘って相手の陣地に行って爆破するしか局面を打開する方法は見つからなかった。兵士ではない民間の企業から5人のトンネル掘削作業員を選抜し戦線へ送り込んだ奇襲作戦と言っていいだろう。イギリス軍とドイツ軍の戦いだった。イギリス軍人の気骨を知った気がする。また、涙が流れた。
『フラッシュバック』(Wake Up)
2019年・アメリカ 監督/アレクサンダー・チェリニアエフ
出演/フランチェスカ・イーストウッド/ジョナサン・リース=マイヤーズ/ウィリアム・フォーサイス/マリク・ヨバ
目が覚めたら病院のベッドであった。自分はいったい誰なのだろうか。そんなことより自分が連続殺人犯人だと疑われている。何もかも分からないでストーリーは進行していく。観客もちょっとした苛立ちを覚える。どういう結末になるにせよ、早めに肝心なポイントを知らせないと観客は納得する前に映画を観るのをやめてしまうかもしれない。人生にも似たようなシチュエーションがたくさんあるような気がする。
『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』(The Last Full Measure)
2019年・アメリカ 監督/トッド・ロビンソン
出演/セバスチャン・スタン/サミュエル・L・ジャクソン/ライナス・ローチ/アリソン・スドル/エド・ハリス
1966年4月、ベトナム戦争で多くの兵士たちの命を救うために命を捧げた空軍兵がいた。彼の名は、ウィリアム・H・ピッツェンバーガー。英雄として讃えられるはずの彼の名誉勲章授与は30年以上も却下され続けた。なぜ、名誉勲章は30年も却下され続けたのか。今、一人の青年が衝撃の真実を暴く。(Filmarksより)
途中少しばかり寝てしまったのに、最後のシーンでは大粒の涙を流していた。ベトナム戦争はまだ終わっていない。体験者が生きている限り。悲しみの涙はもともと無縁だったが、この頃は歳のせいで涙が流れる。絶対的な涙の出方は、人が人として多くの人から尊敬を受けるシーンに他ならない。若いころから変わらず涙が流れるシーンを心が記憶している。
『コズミック・シン』(Cosmic Sin)
2021年・アメリカ 監督/エドワード・ドレイク
出演/フランク・グリロ/ブルース・ウィリス/ブランドン・トーマス・リー/C・J・ペリー
2031年から宇宙開発は勢いを増していくらしい。人類が宇宙に進出してから400年後にあたる2524年を舞台に、というストーリーになるが、確かに地球はそう簡単に無くならないのだろうから、2500年という西暦を人間が迎えることもごくごく普通なのかもしれない。10年後を見たいとは思わないが、いつも100年後、その100年後と人間の歴史をこの目で見てみたい。あり得ない夢を見ていてばかり、幸せだなぁ~。
『パーフェクトマン 完全犯罪』(Un homme ideal)
2015年・フランス 監督/ヤン・ゴズラン
出演/ピエール・ニネ/アナ・ジラルド/アンドレ・マルコン
最初から完全犯罪を企んで作られたものではないところがいつものこの手の映画とは違う。途中はなかなか不愉快なシーンの連続で観たくない気持ちにさせられたが、ラスト・シーンだけは納得のいく終わり方で後味だけが良かった。
『ヘルムート・ニュートンと12人の女たち』(Helmut Newton: The Bad and the Beautiful)
2020年・ドイツ 監督/ゲロ・フォン・べーム
出演/シャーロット・ランプリング/イザベラ・ロッセリーニ/グレイス・ジョーンズ/アナ・ウィンター
ヘルムート・ニュートンって?誰だっけと首を傾げながら観始まった。名前を聞いたことは確かにあるが、写真家だと分かってもその有名な1枚なるものが蘇ってこない。人間プロフィールのドキュメンタリー映画はあまり好きではなく、今回も本人の最初の言葉を聞くことがなかったら、さっそくやめていたことだろう。原題と邦題との乖離がはなはだしい。配給会社の良心を疑う。
『運命のボタン』(The Box)
2009年・アメリカ 監督/リチャード・ケリー
出演/キャメロン・ディアス/ジェームズ・マースデン/フランク・ランジェラ/ジェームズ・レブホーン
昔大好きだったテレビの毎週もの『世にも不思議な物語』のような雰囲気の映画だった。三つ目人間が登場した時の驚きは今でも鮮明に覚えているし、自分の人生の基準をしっかりと決めてくれたものだと感謝している。運命とは自分で切り開くものなのだろうが、この大宇宙には人間の力の及ばない偉大な力が存在しているようだ。
『さよなら、僕のマンハッタン』(The Only Living Boy in New York)
2017年・アメリカ 監督/マーク・ウェブ
出演/カラム・ターナー/ケイト・ベッキンセイル/ピアース・ブロスナン/シンシア・ニクソン/ジェフ・ブリッジス
一流の役者が出演しているのに、かったるくて眠ってしまった。「人生は期待と失望の絶え間ない繰り返し。」というセリフだけが頭に残った。
『ウォーキング・ウィズ・エネミー / ナチスになりすました男』(Walking With The Enemy)
2013年・アメリカ/カナダ/ルーマニア/ハンガリー 監督/マーク・シュミット
出演/ジョナス・アームストロング/デヴィット・レオン/ハナー・トイントン/フローラ・スペンサー・ロングハースト
実在をモデルに映画化された、ナチス兵に成りすました青年が、ユダヤ人救出のために奔走する戦争サスペンス。
第二次世界大戦において、ナチス・ドイツ同盟国のハンガリーは当初、戦火を免れていました。しかし、戦況が連合国側に傾いたことで、ハンガリー政府は連合国との講和を模索。ドイツがその思惑に気づいたことで、両国間に緊張感が漂います。1944年冬、 ナチス軍はハンガリーに侵攻し、連合国のソ連軍と激しい銃撃戦を繰り広げています。ナチス軍に侵攻される9カ月前の1944年の春。ハンガリーのブタペストでは、一部のハンガリー人によるユダヤ人差別はあったけれど、人々は戦争のことなど気にもかけず、ダンスや他のことに現を抜かしていました。レコード店に勤めるユダヤ人大学生のエレク・コーエンは、友人のフレンツとライラシュと共にクラブへ赴き、そこで出会ったハンナやレイチェルら3人の女性とそれぞれ恋に落ちました。しかし、エレクたちが幸せな夜を過ごした翌日。ナチスの親衛隊は国境を越え、ブタペストへ侵攻してきたのです。たった一晩で戦争の矢面に立たされてしまったブタペスト。エレクとフレンツが働くレコード店のユダヤ人店主ヨージェフは、2人に少ない売上金を渡し、「戦争で街が完全に封鎖される前に、これを使って故郷の村に帰った方が良い」と言います。(Cinemarcheより)
『ドライブ・マイ・カー インターナショナル版』(Drive My Car)
2021年(令和3年)・日本 監督/濱口竜介
出演/西島秀俊/三浦透子/霧島れいか/パク・ユリム/ジン・デヨン/ソニア・ユアン/安部聡子/松田弘子/猪股俊明/山村崇子
今日は2022年(令和4年)10月16日(日)。たくさんの賞を獲っているようだが、どうも。Amazon Prime にもう登場して嬉しいことは嬉しかった。なんと3時間の長編。全体が舞台劇のような雰囲気、その舞台劇の中にまた舞台劇がある。喋りが舞台で、あまりにも嫌いな分野なので、そういうことも気に食わないことのひとつだったのだろう。舞台劇でのあの喋り、考えただけでも反吐が出そうだ。日本語吹き替え版の喋りも独特過ぎる、同じようなものだ。プロ好みの映画だからこその賞獲り作品だという気がする。素人や庶民には、この映画の面白さが分からない。映画・演劇業界人や演劇大好きな人種にはとてつもなくいいのかもしれない。原作が村上春樹だというのもおもしろくない要素のひとつだろう。私の尊敬する本好きな友人たちが、誰一人として彼の作品をいいとは言わないことも不思議だと思っているが。
『エリザベス:ゴールデン・エイジ』(Elizabeth: The Golden Age)
2007年・イギリス/フランス/ドイツ/アメリカ 監督/シェカール・カプール
出演/ケイト・ブランシェット/ジェフリー・ラッシュ/クライヴ・オーウェン/アビー・コーニッシュ
ヘンリー8世は6度の結婚に加えて、カトリック教会からのイングランド国教会を分離した。自分の離婚のためにイギリス独自の教会を作ってしまうという離れ業が今に続いている。そのヘンリー8世の2番目の王妃アン・ブーリンとの間に生まれた子供がエリザベス1世である。このあたりのことは、映画『ブーリン家の姉妹』(The Other Boleyn Girl・2008年)におもしろおかしく描かれている。この時代、ヨーロッパ諸国の王族は政治の首領でもあり、血で血を洗う国盗り合戦、政略結婚が入り乱れていた。ヨーロッパを一つの国に見立てれば、日本の戦国から江戸へとつながる歴史に似ていなくもない。
『マキシマム・コマンドー S.W.A.T vs デルタフォース』(ECHO EFFECT/CHAIN OF COMMAND)
2015年・アメリカ 監督/ケビン・キャラウェイ
出演/スティーヴ・オースティン/マイケル・ジェイ・ホワイト/マックス・ライアン
アクション映画なのに半分くらい眠ってしまった。
『オンリー・ザ・ブレイブ』(Only the Brave)
2017年・アメリカ 監督/ジョセフ・コシンスキー
出演/ジョシュ・ブローリン/マイルズ・テラー/ジェフ・ブリッジス/ジェームズ・バッジ・デール/ジェニファー・コネリー
2013年にアメリカのアリゾナ州で発生した巨大山火事「ヤーネルヒル火災」に立ち向かった精鋭消防部隊、グラナイト・マウンテン・ホットショッツの実話を基に描かれている。久しぶりに観たまともな映画に涙してしまった。まさか19人もの消防隊員が死んでしまうなんて。一人だけ生き残った隊員の気持ちがひしひしと伝わってくる。それにしても凄い。アメリカの山火事は想像に絶する。
『ネバー・ダイ 決意の弾丸』(We Die Young)
2019年・ブルガリア/アメリカ 監督/リオール・ゲラー
出演/ジャン=クロード・ヴァン・ダム/デイビット・カスタニーダ/イライジャ・ロドリゲス/ニコラス・シーン・ジョニー
出来の悪い街のギャング物語。いつおもしろくなるのだろうと観ていたが、一向に期待に応えてくれなかった。自分はギャングの手下となって働き始めたのに、弟は絶対まっとうな道を歩いて欲しいと思っている。そんな虫のいい話は実現しない。そういうものだ。原題のように結局は若くして死んでいく道を選んだに過ぎないのかもしれない。
『スティルウォーター』(Stillwater)
2021年・アメリカ 監督/トム・マッカーシー
出演/マット・デイモン/カミーユ・コッタン/アビゲイル・ブレスリン/リロウ・シアウヴァウド
アメリカ・オクラホマのスティルウォーターという町からフランス・マルセイユの大学に留学した娘が、同室だった同性愛相手の殺人容疑で逮捕されてしまった。しがない労働者の父親はマルセイユに赴き、無罪だと信じる娘を証明しようと奔走する。フランス語もろくすっぽ分からない中年オヤジの奮闘が。実話から着想を得て製作された映画だというクレジットがあった。
『七人の秘書スペシャル』
2022年(令和4年)・日本 監督/田村直己
出演/木村文乃/広瀬アリス/菜々緒/シム・ウンギョン/大島優子/室井滋/江口洋介
2020年10月から12月にかけて全8話がテレビ放送されたらしい。基本的にテレビの日本ドラマを観ていなかったので、このタイトルが全くかすりもしなかった。この頃、Amazon Prime の映画が外ればっかりで、前クールのテレビドラマを何話か観ていたので、このスペシャル・ドラマを観る気になったわけだ。この10月7日(金)から『七人の秘書 THE MOVIE』が公開される前宣伝番組のようだった。なかなかコンテンツは素晴らしい。難点があるとすれば、残念ながらそん所そこいらのタレント役者では荷が重い感が強い。おもしろさを表現するためには、さりげない才能がきっちりと集まらなければ、なんか薄ぺらなスタジオドラマになってしまう。
『ラブ・アット・ファーストサイト 運命の出会い』(Emerson Heights)
2020年・アメリカ 監督/ジェニファー・フック
出演/オースティン・ジェームズ/ガトリン・グリーン/マット・シングルタリー/アマンダ・グレイス・ベニテス
ありきたりでベタなはなしだが、進行役がなかなか興味深い。ただそれだけの映画だが、行き違いがありがちな恋の発展には、きっと優しい神の祝福が必要なのだろう。もう一度人間をやったとしても、同じような恋の繰り返しになるだろうと予想がつく。それくらい平凡で生きていても意味のない人生だったような気がしてならない。
『フェイシズ』(Faces in the Crowd)
2012年・アメリカ/フランス/カナダ 監督/ジュリアン・マニャ
出演/ミラ・ジョヴォヴィッチ/ジュリアン・マクマホン/サラ・ウェイン・キャリーズ/マイケル・シャンクス
連続殺人鬼『涙のジャック』の殺害現場を目撃してしまったが、犯人と争って橋から転落したことで「相貌失念」という相手の顔が認識できない病気に陥ってしまった。最初の掴みはいいが、この主人公は相貌失念を医者に宣告されたにも関わらず退院した翌日にはもう前の職場の幼稚園に勤務している。てなことをはじめ、そんな日常生活はないだろうと突っ込みを入れたくなるほどのいい加減な生活態度で、結果的に犯人が目の前に現れてもまったく認識できない現実があった。3流なのか5流なのか分からないサスペンス。つくずくアメリカに住んで面白くないディスコ生活なんて出来無かったろうなぁ、と若いころの生活に思いを馳せる。
『ザ・バウンサー』(Lukas)
2018年・フランスベルギーイギリス領ヴァージン諸島 監督/ジュリアン・ルクレルク
出演/ジャン=クロード・ヴァン・ダム/サミ・ブアジラ/スベバ・アルビティ/サム・ラウウィック
ジャン=クロード・ヴァン・ダムの名前は勿論よく知っているけれど、顔と名前が一致しなかった。アメリカ映画ではないアクションは、どこか違う。何かが違うということを観ながら感じるのが通常だ。人を殺すにもその流儀なるものや、湧き上がる感情などが間違いなく違って伝わってくる。無国籍なサスペンス・スリラー・アクションになればなおさら。
『タイムリーパー 未来の記憶』(Volition)
2019年・カナダ 監督/トニー・ディーン・スミス
出演/エイドリアン・グリン・マクモラン/マグダ・アパノヴィッチ/ジョン・カッシーニ/フランク・カッシーニ
出来の悪いSFスリラーだった。ちょっと先のことが断片的に見えるという主人公だが、その見えた結果をどうしても変えることが出来なかったというお粗末なはなし。他人の命も自分の母親の命も助けられなくては、先が見えたって何の意味もない。ましてやまったく先の見えない人間の生きている価値のなさといったら、言葉にできないほどの悲惨さだ。
『シークレット・チルドレン 禁じられた力』(One & Two)
2015年・アメリカ 監督/アンドリュー・ドロス・パレルモ
出演/キーナン・シプカ/ティモシー・シャラメ/エリザベス・リーサー/グラント・バウラー
なんだか訳の判らない映画だった。子供二人に超能力があるようなのだが、瞬間移動しかその能力はなさそう。その力が何の役にも立たないうちに映画は終わってしまう。いったいこの映画は何だったのだろうか、と訝るしかない。そんな人間も多い。自分の能力のどこに才能が見出せるのか分からない人間なのに、さも才能ありそうにふるまう姿は滑稽としか言いようがない。本当の才能ある人間に生まれ変わりたい。
『桜の樹の下で』
1989年(平成元年)・日本 監督/鷹森立一
出演/岩下志麻/津川雅彦/七瀬なつみ/十朱幸代/久保菜穂子/寺田農/志喜屋文/山本緑/二谷英明/野坂昭如
渡辺淳一が1987年に発表した小説。週刊朝日の5月8日号から1988年4月22日号に連載された原作。渡辺淳一とプライベートな付き合いのある岡田茂東映社長が「東映で映画化した彼の作品、『ひとひらの雪』や『化身』『桜の樹の下で』『別れぬ理由』は、僕が作品に惚れたから映画化した」と話している。映像もストーリーもなんとなく懐かしいにおいが漂っていた。渡辺淳一節とでも言いたげな。
『バトル・オブ・ワルシャワ 名もなき英雄』(Kurier/The Messenger)
2019年・ポーランド 監督/ヴワディスワフ・パシコフスキ
出演/フィリップ・トロキンスキー/ジュリー・エンゲルブレヒト/ブラッドリー・ジェームズ/Martin Butzke
1944年、ロンドン。ポーランド亡命政府のミコワイチク首相はナチスドイツの占領下にある祖国ポーランドにやがてソ連軍が侵攻してくると知り、英国のチャーチル首相にソ連軍と戦うよう協力を求めるが、ソ連と微妙な関係が続く連合国はそれを拒む。そこでミコワイチクは部下ヤン・ノヴァクに、ナチスドイツ相手に武装蜂起するよう、ポーランド国内軍に指示を送るための密使になるよう依頼。ヤン・ノヴァクは祖国に向かうが……。(Filmarksより)
『正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官』(Crossing Over)
2009年・アメリカ 監督/ウェイン・クラマー
出演/ハリソン・フォード/レイ・リオッタ/アシュレイ・ジャッド/ジム・スタージェス
不法入国、不法滞在、不法就労、グリーンカードとアメリカ合衆国をとりまく移民問題に敢然と立ち向かうひとりの捜査官、移民税関捜査局「I.C.E.」の捜査官。正義感が強く良心的。様々な問題を抱えている。自由の国は誰しもが幸せになれる権利を有することが第一なのだろう。でも、誰しもが幸せになれるわけではない。それは当たり前のこと。
『アーチャー 地獄のデス・ロード』(The Archer)
2017年・アメリカ 監督/バレリー・ウェイス
出演/ベイリー・ノーブル/ジャニーン・メイソン/ビル・セイジ/マイケル・グラント・テリー
出来の悪いアメリカ映画だなぁ~。true events に inspired されたと最初にクレジットがあったが、民間の施設と結託して懐を肥やしていた判事がいるなんて、さすがのアメリカでも珍しい事件だったろう。女子供といえど、逞しくなければ生きていけないアメリカ人は大変だ。自分で投票する権利もないくせに、誰がMVPだと言い争っているアメリカ人を見ていると、日本人の方が基礎的に優秀な人類だと思えてくる。
『ガリレオ 禁断の魔術』
2022年(令和4年)・日本 演出/三橋利行
出演/福山雅治/新木優子/澤部佑/村上虹郎/森七菜/朝倉あき/平原テツ/中村雅俊/鈴木浩介/渡辺いっけい/北村一輝
2022年9月16日(金)に映画第3弾となる『沈黙のパレード』の公開された。翌日、福山雅治主演の『ガリレオ』シリーズ、完全新作SPドラマとなる『ガリレオ 禁断の魔術』が放送された。東野圭吾という作家は大したものだ。放送枠は約2時間だが、中身は結構薄い。アメリカ映画の出来のいい作品に比較して満足感が乏しい。話はおもしろいが、表現力に難点がある。所詮はテレビドラマの延長だからだろう。
『燃ゆる女の肖像』(Portrait de la jeune fille en feu)
2019年・フランス 監督/セリーヌ・シアマ
出演/ノエミ・メルラン/アデル・エネル/ルアナ・バイラミ/ヴァレリア・ゴリノ
18世紀のフランスの孤島を舞台に、自らの望まない結婚を目前に控えた貴族の娘と、彼女の肖像画を描くことになった女性画家、2人の女性が宿命の恋に落ちるさまを描き、第72回カンヌ国際映画祭で脚本賞とクィア・パルムの2冠に輝いたほか、世界中の数多くの映画賞を受賞し、LGBT映画の新たな聖典として高い評価を得ている。(Wikipediaより)
いかにも玄人映画評論家受けする映画のにおいがプンプンする。この程度のことでLGBT映画の新しい聖典としているようじゃ、世の中は全く変わらない。最近の若者志向は保守本道を往くようで見ていられない。新しい人生を切り拓かなければ、せっかくの生がもったいない。過激なのは表面だけで実は極めて臆病な老人ももうすぐこの世から消えていく。
『エマ デッド・オア・キル』(Jagveld)
2017年・南アフリカ 監督/バイロン・デイビス
出演/Bouwer Bosch/Leandie du Rand/tLuan Jacobs
何処の映画かといぶかりながら観ていた。言語も時々英語になったりと摩訶不思議だった。六流映画というところだろうか。最後はマカロニ・ウェスタン調の音楽が流れ思わず笑ってしまった。アメリカ映画の素晴らしさが、こんなところからも分かる。
『ナイト・サバイバー』(Survive the Night)
2020年・アメリカ 監督/マット・エスカンダリ
出演/ブルース・ウィリス/チャド・マイケル・マーレイ/リディア・ハル/タイラー・J・オルソン
どんどんと七流映画に成り下がって行く様を見つめていた。アクション・スリラーというジャンル分けがあったが、よくもまぁ~ブルース・ウィリスがこんな映画に出演したなぁという別の驚き方をした。本人は脚本を読んでいないに違いない。後半になればなるほどやるきのない「演技」が際立っていた。
『この世界に残されて』(Akik maradtak/Those Who Remained)
2019年・ハンガリー 監督/Barnabas Toth
出演/カーロイ・ハイデュク/アビゲール・セーケ/マリ・ナギー/ヴェロニカ・ヴァルガ
ナチス・ドイツによって約56万人ものユダヤ人が殺害されたと言われるハンガリー。終戦後の1948年、ホロコーストを生き延びたものの、家族を喪い孤独の身となった16歳の少女クララは、ある日寡黙な医師アルドと出会う。言葉をかわすうちに、彼の心に自分と同じ欠落を感じ取ったクララは父を慕うようにアルドになつき、アルドはクララを保護することで人生を再び取り戻そうとする。彼もまた、ホロコーストの犠牲者だったの…(Filmarksより)
何処の国でのどんな背景の下で起こった話なのかが分からずイライラした。ちょっと不思議な映画。玄人映画評論家が喜びそうな映画であることには違いない。
『キリング・マシーン』(Seized)
2020年・アメリカ 監督/アイザック・フロレンティーン
出演/スコット・アドキンス/マリオ・ヴァン・ピーブルズ/キャーリー・ペレスス/ティーヴン・エルダー
現役時代“殺人兵器:ネロ”と呼ばれていた元特殊部隊の凄腕エージェントの主人公が、人質にとられた息子のために悪党ギャングに言われるがままに敵対するギャング集団を一人で皆殺しにしていく。すごい漫画チックなヒーロだがアメリカ的に家族に対する異常な愛を体現する。ここに出てくる悪党も約束だけは確実に守るという不思議な行動をとる、しかも人質にとった子供を殺さない。痛快なアクション映画だと簡単に受け入れてしまう。
『クリーンスキン 許されざる敵』(CLEANSKIN)
2012年・イギリス 監督/ハディ・ハジェイグ
出演/ショーン・ビーン/シャーロット・ランプリング
イギリスでのテロとの戦いをする秘密諜報部員の物語。敵側からすれば反対勢力の作った映画なら、それだけで十分内容にも疑う余地があることになってしまう。「神」と「天国」を錦の御旗にして人心を操る機関が一番問題なのだろうが、狭義で言えば教育のなれの果てがテロに結びついている。神も天国も残念ながら1個人のことなんかを見守ってくれていないということを教えなければならないのに。
『プロヴァンスの休日』(Avis de mistral)
2014年・フランス 監督/ローズ・ボッシュ
出演/ジャン・レノ/アンナ・ガリエナ/オーレ・アッティカ/ジャン=ミシェル・ノワリー
凡庸な映画だった。雰囲気はいいが、終始同じタッチで飽きが来る。パリからプロヴァンスに2か月の夏休みを過ごす3兄弟。日頃疎遠だった祖父母の元での生活は・・・・。ありきたりで・・・・。平凡なことが一番だが、それは実生活での話。映画の中ではいろいろな事件が起こってくれないと意味がない。
『ポイズンローズ』(The Poison Rose)
2019年・アメリカ 監督/ジョージ・ギャロ/フランチェスコ・チンクェマーニ
出演/ジョン・トラボルタ/モーガン・フリーマン/ブレンダン・フレイザー/ファムケ・ヤンセン
元アメリカン・フットボールのスターだった主人公は、今や私立探偵となって地元で依頼された案件を探索していた。ちょっと中途半端なストーリーと軽い流れに首を傾げながら観ていた。昔の栄光は昔のこと、映画の主人公も分かっていた。いつ迄たっても青春時代の思惑が人生を支えまた悩ましている。生きているのはホントに大変だなぁ~。世の中の悪事を一手に引き受けていい思いをして過ごすのもわるくないなぁ、と思える。
『レディ・ガイ』(The Assignment)
2016年・アメリカ/イギリス/カナダ 監督/ウォルター・ヒル
出演/ミシェル・ロドリゲス/トニー・シャルーブ/アンソニー・ラパーリア/シガニー・ウィーバー
性別適合手術で強制的に男から女にさせられた殺し屋の戦いを描いた異色のアクション映画。途中からこの映画を観たとしたら、何が何だかちっとも分からないだろう。貧乏人の性転換希望者に違法に施術していた執刀医が登場したりして、半分コメディタッチであるが殺し屋は平気で人を殺していく。女の容姿になってしまった殺し屋の男なんて言うのも文字だけ見ればコメディだが、実際の映画はもう少し迫力がある。名匠ウォルター・ヒルもこんな映画を撮るのかという驚き、脚本・原案も彼自身が担当しているらしく、さらに驚く。
『キッズ・オールライト』(The Kids Are All Right)
2010年・アメリカ 監督/リサ・チョロデンコ
出演/アネット・ベニング/ジュリアン・ムーア/マーク・ラファロ/ミア・ワシコウスカ
5人が夜の食卓を囲んでいる。二人の女性はゲイ(レズビアン)で結婚している。もうすぐ大学に進学予定の一人の女性は片方の女性の子供。その弟はもう一人の女性の子供。最後はこの二人のカップルに精子を提供した男性。という奇妙なファミリーは顔を合わせている。顔を合わせるまでにもひと悶着あった。顔を合わせてからもふた悶着問題が発生している。なかなか興味深い題材を映画化している。さすがにアメリカは進んでいるなぁ~。しかもこの映画が作られたのはもう12年前のこと。日本ではタブーな事柄も、アメリカは平気で先に進んでしまう。戦争に勝てるわけがない。
『ジェクシー! スマホを変えただけなのに』(Jexi)
2019年・アメリカ 監督/ジョン・ルーカス/スコット・ムーア
出演/アダム・ディヴァイン/アレクサンドラ・シップ/マイケル・ペーニャ/ローズ・バーン
スマホのAIが人格を持ったようにしつこく主人公にまとわりついて人生の方向さえ邪魔し始めた。スマホ依存症の若者たちが陥るような現象を映像で眺めることが出来る。今後スマホはどういう形で発展を続けて行くのだろうか?見ものだ!
『ドラグネット 正義一直線』(Dragnet)
1987年・アメリカ 監督/トム・マンキーウィッツ
出演/ダン・エイクロイド/トム・ハンクス/クリストファー・プラマー/ハリー・モーガン
1993年にエイズを取り扱ったシリアスなドラマ『フィラデルフィア』、そして1994年に『フォレスト・ガンプ/一期一会』で2年連続、アカデミー主演男優賞を受賞したトム・ハンクスだが、そのだいぶ前の出演作でまだまだひよっこという印象がある。日本とアメリカのコメディの違い、笑いの違いということを昔はよく考えさせられたが、現在地の日本のお笑いとアメリカのコメディとでは大きな差がついてしまったという気がする。
『ベイウォッチ - エクステンデッド・エディション』(Baywatch)
2017年・アメリカ 監督/セス ゴーラン
出演/ドウェイン ジョンソン/ザック エフロン/アレクサンドラ ダダリオ
フロリダのビーチで人々を守るため日々奮闘する水難監視救助隊「ベイウォッチ」、やっていることは真剣でも映画はコメディ。お茶らけないのがアメリカのコメディ、どう考えてもお笑いなのにストーリーは深刻な事件が間違いなく起こる。すべては人生さ、という感じか。
『ある過去の行方』(Le passe、The Past)
2013年・フランス/イタリア/イラン 監督/アスガー・ファルハディ
出演/ベレニス・ベジョ/タハール・ラヒム/アリ・モサファ
映画評論をプロとしている人たちが好みそうな映画。フランス人の女とは関わりたくないなぁ、と思わせる映画。男だって同じようなものだが、嘘を平気で付くのをはじめ所作が乱暴で自分勝手、独りよがりの考えを平気で他人に押し付けてくる。それでいて・・・・。
『サマリタン』(Samaritan)
2022年・アメリカ 監督/ジュリアス・エイヴァリー
出演/シルヴェスター・スタローン/ジャヴォン・“ワナ”・ウォルトン/マーティン・スター/ピルウ・アスベック
なんと2022年8月26日より、アメリカ・日本はじめ240を超える国と地域におけるAmazon Prime Videoで独占配信公開されたという。久しぶりのスーパーヒーロー映画ものだったが、話が古臭くてまさかこの夏に初公開とは思えなかった。スーパーヒーローはいつだって憧れの存在だが、今までのヒーロー像を踏襲していては受けないと思ったのかスーパーヒーローのダーク映画として評価されているという訳の分からない解説があった。あまり気持ちのいいスーパーヒーローではなかったことは確かだ。
『インディ・ジョーンズ レイダース/失われたアーク《聖櫃》』(Raiders of the Lost Ark)
1981年・アメリカ 監督/スティーヴン・スピルバーグ
出演/ハリソン・フォード/カレン・アレン/ポール・フリーマン/ロナルド・レイシー
今日は2022年(令和4年)9月1日。リアルタイムで劇場に足を運んだ作品を見直してみようという気になった。キャパ1200や800なんていう映画館があったことが不思議な時代となってしまった。テアトル東京の一番前の席から見上げるようにスターウォーズのタイトルバックを観るのが良しとされていた時代が懐かしい。かなり新しさを感じた映画だという記憶が残っていたが、今の時代の映像を見慣れてしまうと、いろいろなところで技術の進歩があったんだという感じがする。時代というのはおもしろいし恐ろしい。何もしなくても、一所懸命に生きてきても、大きな世の中は何も変わらない。だったら何もしなければいいじゃん、と考える若者が多くなれば世の中が詰まってしまう。そんな感じの現代だろうか。
『プラスティック』(Plastic)
2014年・イギリス 監督/ジュリアン・ギルビー
出演/エド・スペリーアス/アルフィー・アレン/ウィル・ポールター/エマ・リグビー
実話に基づいた映画にしては4流過ぎる。カード詐欺のカードがプラスティックで出来ていることが原題の由来か?
『ハイジャック エピソード2: ファイナル・アプローチ』(FINAL APPROACH)
2022年・アメリカ 監督/アーマンド・マストロヤンニ
出演/アンソニー・マイケル・ホーン/ディーン・ケイン/リー・トンプソン
4流映画のハイジャンクものではよそ見しながら観るのが相応しい。
『デンジャラス・チェイス』(Abduction)
2019年・中国 監督/アーニー・バーバラッシュ
出演/スコット・アドキンス/アンディ・オン/リリー・ジー/トロン・グォク・アン
舞台はベトナムだが主人公は欧米人、映画製作資本は中国。三流映画と割り切ればそれなりに楽しめる。それ以上でもそれ以下でもない。
『ザ・スイッチ』(Freaky)
2020年・アメリカ 監督/クリストファー・B・ランドン
出演/ヴィンス・ヴォーン/キャスリン・ニュートン/ケイティ・フィナーラン/セレステ・オコナー
殺人鬼と女子高校生の心が入れ替わってしまった。日本なら「時をかける少女」とか言って綺麗な話に仕上げるような内容が、さすがアメリカ、むつけき中年男殺人鬼とかわいい女子高校生では三流映画の誹りを免れない。スリラーコメディというジャンルに分けられるようなストーリと映像を楽しませてもらった。
『7リミット・キルズ』(Psy 3: W imie zasad)
2020年・ポーランド 監督/ヴワディスワフ・パシコフスキ
出演/ボグスワフ・リンダ/マーチン・ドロチンスキー/ツェザーリ・パズーラ/ヤン・フリッシュ
何処の国のマフィアの話なのかなぁ、と不審に思いながら観続けていた。汚職警察官、警察全体が腐敗していては、正義感を発揮すればするほど自分の身に危険が迫ってくる。人間社会というのは、結局こういうものなんだろうという諦めが蠢いてくる。せめて自分の生きているうち、自分の身の回りに起こって欲しくない事実に心が痛む。
『エンド・オブ・ステイツ』(Angel Has Fallen)
2019年・アメリカ 監督/リック・ローマン・ウォー
出演/ジェラルド・バトラー/モーガン・フリーマン/ジェイダ・ピンケット=スミス/ランス・レディック
アメリカ大統領を護衛することを仕事としている主人公、副大統領の陰謀により大統領暗殺の濡れ衣を着せられるなんて、アメリカならではの映画だ。常に銃を敵に向けることを訓練されているアメリカ人は、怖い。「フリーズ!」と警察官が叫べば誰でも撃ち殺される可能性がある。価値観だけでは生きていけない人間社会の一端を観るようだ。
『キング・オブ・シーヴズ』(King of Thieves)
2018年・イギリス 監督/ジェームズ・マーシュ
出演/マイケル・ケイン/ジム・ブロードベント/トム・コートネイ/チャーリー・コックス
元々の盗っ人稼業の年寄りたちが、大金を狙って銀行強盗する話。お互いに信頼感のない仲間の寄せ集めは最初から最後まで罵り合いの連続で、どう考えても仕事が上手く行く訳がない。観客にも不信感が募るストーリーでは、おもしろいというより年寄りの醜さを見せつけられているような変な気分になってしまう。
『非情なつばさ』(BALADA O PILOTOVI)
2018年・チェコ 監督/ヤン・セベシュレブスキー
出演/ダヴィット・シュヴェフリーク/ルツィエ・ザツコヴァー/アントニエ・フォルマノヴァー
チェコのTV向け映画らしい。背景はドイツが降伏しヨーロッパにおける大戦は終結した後のチェコスロバキアということをようやく映画を観終わってから分かった。1945年は分かったが、一体どこで何が起こっているのかがイマイチどころかイマサンも理解できずに往生していた。自国民がDNAに従って理解できることでも外国人には理解できないことが多い。映画が国際的になれるはずなのに、そんなつもりが毛頭もなければガラパゴス映画になってしまうのだろう。日本映画のほとんどがそういう類、映像だけ観て楽しめる映画は優れた映画と言えるのだろう。
『警視ヴィスコンティ 黒の失踪』(Fleuve noir/Black Tide)
2018年・フランス/ベルギー 監督/エリック・ゾンカ
出演/ヴァンサン・カッセル/ロマン・デュリス/サンドリーヌ・キベルラン/エロディ・ブシェーズ
フランス・ベルギー風の刑事コロンボのお手並み拝見といった感じ。それにしてもちょっと酷いのは、アル中のような刑事コロンボでは興醒めする。失踪した息子の真相は永久に闇の中かと思えたが、勇気を出して語られる母親からの真相がショッキングだった。死んでも喋らない事柄に観客も心の整理がつかない。どう表現したらいいのだろうか、他人に説明すら出来そうもない事柄は、う~ん・・・・・。
『ステージ・マザー』(Stage Mother)
2020年・カナダ 監督/トム・フィッツジェラルド
出演/ジャッキー・ウィーヴァー/ルーシー・リュー/エイドリアン・グレニアー/マイア・テイラー
疎遠になっていた息子が亡くなった。息子は女となってゲイバーを経営していたが、母親はその経営権を何とかしてみようと息子の仲間たちに・・・・。今風の人間関係が痛い。理解しようと思っても、そう簡単にはいかない。親になれば分かること、世の中の価値観が大きく変わってしまった世界、これから生きていく人たちには苦難の連続が待っているようだ。
『フラッド』(Hard Rain)
1998年・アメリカ 監督/ミカエル・サロモン
出演/モーガン・フリーマン/クリスチャン・スレーター/ランディ・クエイド/ミニー・ドライヴァー
原題のような邦題は東宝東和のお得意とするところ。この時代まで同じような手法を使っていることが懐かしかった。[flood] ・ 1(川が氾濫して)(土地など)を水浸しにする;(川など)を氾濫させる ・ 2(人・物が)(場所)に殺到する,(光・音などが)(場所)にあふれる;。町が洪水に襲われるパニック・アクション。現金輸送車とそれを狙う泥棒たちが絡んで、まぁ飽きもせず頑張っているね。
『スパイ・ハンター』(Legacy)
2020年・アメリカ 監督/R・エリス・フレイザー
出演/ルーク・ゴス/ルイス・マンディロア/エリヤ・バスキン/ロベルト・"サンズ"・サッチェズ
自分が極悪非道人に強姦されて生まれて来たのだと知ったら・・・・。極悪非道人から遣わされたプロの殺し屋から逃れるアクションは、五流映画のつじつまの合わないストーリーを形成して楽しくしている。ちょっと救われる人間的な光景を作っているのは、製作者の良心かもしれない。
2022年8月14日の記録
2010年の5月頃に書き始まったこの記録が、12年と2か月経ってようやく鑑賞映画本数3,000本に達した。正確な数字ではないがだいたいこんなものだろう。一度観た映画を二度目観てもカウントはしていない。二度観たことを記録することもあれば、この頃のようにまったく無視してしまうこともある。3,000本というのは感慨深い数字である。
以前にも書いたが、映画を観る手段も一変した。レンタルDVDやテレビ放映録画が主だったものが、この頃ではほとんどが「アマゾン・プライム」の無料映画になっている。有料のアマゾン・プライムはせいぜい年に1回か2回だ。劇場映画が少ないのが欠点だが、映画だけではなくボクシングの世界タイトル戦の独占放送をやったりして、アマゾン・プライムもだいぶ頑張っているのが嬉しい。
名古屋市の名鉄本線高架事業にひっかかり引っ越ししなければいけないが、2024年になるかもしれない状況だ。その時には立ち退き費用を元に65インチの有機ELテレビを買って優雅に映画を観ようと算段しているが、それまで生きているのかどうかが問題だろう。う~ん!!!???
『ベスト・オブ・メン~人間の最高~』(The Best of Men)
2012年・イギリス 監督/ティム・ウィットビー
出演/ジョージ・マッケイ/ベベ・サンダース/リー・クイン/エディ・マーサン/ベン・オーウェン・ジョーンズ
ちらりと「パラリンピックの父」とかいう解説文が目に入って、観るのを躊躇ってしまった。性来の捻くれ根性がそうさせている。観てみると実に素直に一人の医者を描いていた。時は1944年、まだ戦争が終結していない、場所はイギリス、主人公はドイツ人の医者だった。患者を治療と称してベッドに縛り付けるだけの旧態依然としたイギリス人の権威ある医者との対比がおもしろい。合理性に富んだ柔らか頭のドイツ人医師が、車いすに乗った患者たちの全国大会を開催するに至る経緯が示唆に富んでいる。最高の人間ではなく、人間の最高という表現も・・・・。
『ウルフズ・コール』(Le chant du loup)
2019年・フランス 監督/アントナン・ボードリー
出演/フランソワ・シビル/オマール・シー/マチュー・カソヴィッツ/レダ・カテブ
1982年日本ヘラルド映画が配給した『U・ボート』(Das Boot)を彷彿とさせるような潜水艦アクションだった。経験をしたことのない潜水艦の中は、いつだって映像でしか想像できないが、それを実感できるほどの感性を備えていない者にとってはあくまでも想像の域に留まってしまうのが惜しい。天才的な耳を持つ乗組員をフィーチャーして船長や副船長、さらには核を発射したと思わせる疑似挑発、そして一度下された核発射の大統領令が取り消すことのできない状況を緊迫感をもって描いている。人間ぽい一面と非情な一面をフランス・エスプリを超越して訴えてくる。秀作かもしれない。
『激動の昭和史 軍閥』
1970年(昭和45年)・日本 監督/堀川弘通
出演/中村又五郎/小林桂樹/中谷一郎/垂水悟郎/睦五郎/藤岡重慶/三船敏郎/細川俊夫/三橋達也
戦争のことを親父から聞いてはいたが、もっと耳を傾ければよかったと。志願兵として高校を卒業してすぐに軍人になった親父、時代が個人も国もコントロールしていたのだろう。終戦ギリギリに中国から帰ってこられただけでもラッキーと言わざるを得ない。ラッキーではなかった数多くの日本人がいたことを忘れてはいけない。人間の命は不思議だ。今どきは親ガチャとか言って、自分の存在さえも茶化してしまう風潮が嘆かわしい。不思議な人間、地球、宇宙。
『ウォーク・トゥ・リメンバー』(A Walk To Remember)
2002年・アメリカ 監督/アダム・シャンクマン
出演/マンディ・ムーア/シェーン・ウェスト/ダリル・ハンナ/ピーター・コヨーテ
何も起こらない青春バカ映画かと思っていたら、後半になって突然核心を突く事実が判明した。この事実の現れ方がなかなかいい。不良仲間から抜け出してまっとうな大人になって行くのを手助けしたのは彼女の存在だった。男だって女だって相手に影響されて人生がいい方向に向けば、それこそ神のなせる業かもしれない。う~ん、自分の青春時代は?
『ラストレター』(Last Letter)
2020年(令和2年)・日本 監督/岩井俊二
出演/松たか子/広瀬すず/庵野秀明/森七菜/小室等/水越けいこ/木内みどり/鈴木慶一/豊川悦司/中山美穂/神木隆之介/福山雅治
ちょうど2時間の映画は長過ぎる。あと20分つまめれば、もっとしゃきっとした映画になるだろう。なんて評論家のような言い方になってしまう。内容は悪くなかったので、そういう印象が強い。甘酸っぱい青春時代、高校生時代の思い出を人生に引きずって生きている日本人が結構いるんだろう、なんてことを想像させるストーリーだった。甘酸っぱい!!
『ムーンフォール』(Moonfall)
2022年・アメリカ 監督/ローランド・エメリッヒ
出演/ハル・ベリー/パトリック・ウィルソン/ジョン・ブラッドリー/マイケル・ペーニャ
壮大なSFアドヴェンチャーだった。今年の映画だと知って驚いた。最近の映画公開からテレビ放映、DVD・Blu-ray発売、そしてamazonなどへの配信のプロテクト期間の規則はどうなっているのだろうか。映画館で観たら途中であくびが出そうな進行だが、辻褄の合わないシーンの連続もご愛嬌と思えるほどの発想豊かな映像には恐れ入る。月と地球がどういう成り立ちなのかを劇中で教えてくれる。奇想天外な話も、ただおもしろいだけではなく。
『ダブルブッキング 奇跡の出会い』(The Christmas Chalet)
2019年・カナダ 監督/ジェニファー・ギブソン
出演/エリカ・デュランス/ロビン・ダン/エルバ・マイ・フーバー/マイカ・カリッシュ
絵にかいたような恋愛映画のひとつ。時・場所・タイミングはちょっとなかったものかもしれない。クリスマスシーズンがテーマなので、真夏に観るのは。他人を好きになることはよく理解できる。すぐに飽きてしまうこともよく理解できる。それでも、飽きずに他人を好きになることを繰り返すのは人間の性だと理由づけているわけではないが。
『エメラルド・グリーン タイムトラベラーの系譜』(Smaragdgrun)
2016年・ドイツ 監督/フェリックス・フックシュタイナー/カタリーナ・シェード
出演/マリア・エーリック/ヴェロニカ・フェレ/ヤニス・ニーヴナー/カタリナ・タルバッハ
イギリスが得意な分野をドイツが製作している。イマイチ乗り切れないのには、どこか理由があるのだろうが。時空を超えてタイムスリップする話は大好きだと何度も言っている。心がウキウキするはずなのに、そこまで高揚させてくれないのは困る。絶対そんなことは出来るはずがないのだが、過去や未来に夢をはせるのは単なる夢想家だと決めつけられてしまうのだろうか。
『イントゥ・ザ・スカイ~気球で未来を変えたふたり~』(The Aeronauts)
2019年・イギリス/アメリカ 監督/トム・ハーパー
出演/フェリシティ・ジョーンズ/エディ・レッドメイン/フィービー・フォックス/ヒメーシュ・パテル
1903年12月17日米国でライト兄弟がライトフライヤー号による有人飛行に遡る、1862年9月5日にガス気球で高度1万1887mに達し、当時の最高高度到達記録を更新した事実に基づいて製作された作品。まだまだ科学が気象学の世界に入り込まない時代の先駆者となったようだ。日本では明治維新まであと5年という時代でもある。今のように情報が瞬時に世界を駆け巡る時ではないのに、地球上のあっちこっちで人間社会の革命的変化が巻き起こっている。おもしろいものだ。
『ラスト・バレット』(Cold Blood Legacy: La memoire du sang)
2019年・フランス/ウクライナ/ベルギー 監督/フレデリック・プティジャン
出演/ジャン・レノ/サラ・リンド/ジョー・アンダーソン/サマンサ・ボンド
アクション映画に分類されていたけれど、かなりおとなしめのアクション映画だった。完璧な殺し屋と自他ともに認める主人公が最後に自ら殺されるように仕向けたシーンがわざとらしいが、それ以上の描き方はなかったであろう。自分の最後を演出できる人間は凄い。凡人たちはすべて死ぬことすらコントロールできずに死んでいくのが常だから。
『オールド』(Old)
2021年・アメリカ 監督/M・ナイト・シャマラン
出演/ガエル・ガルシア・ベルナル/ヴィッキー・クリープス/ルーファス・シーウェル/アレックス・ウルフ
製薬会社が内緒に治験のために既往症のある人たちを平気で結果的に殺してしまうという恐ろしい話。何が何だか分からない展開、最後まで腑に落ちないストーリーは一流ではない映画の証のようだ。こんな映画を映画館にかけることが出来ても、間違っても当たるとは思えない。それにしても、製薬会社の横暴は今でもどこでも行われているのだろう。
『ミッドナイト・ガイズ』(Stand Up Guys)
2012年・アメリカ 監督/フィッシャー・スティーヴンス
出演/アル・パチーノ/クリストファー・ウォーケン/アラン・アーキン/ジュリアナ・マルグリーズ
28年の刑務所生活から帰還した元仲間たちとの他愛もない話。面白おかしく人生は過ぎていくらしい。こんな生活が出来れば人生は万々歳。そんな簡単に毎日が送れるとは思えないが。
『コーダ あいのうた』(CODA)
2021年・アメリカ/フランス/カナダ 監督/シアン・ヘダー
出演/エミリア・ジョーンズ/エウヘニオ・デルベス/トロイ・コッツァー/フェルディア・ウォルシュ=ピーロ
(バリアフリー日本語字幕版)という表示があった。[スマホを操作する音]とか[ドアを閉める音]とか、字幕に注釈が付いて聞こえない人にも理解できるようになっているのがバリアフリー字幕というらしい。家族の中で両親と兄は聾唖者で自分だけが聞こえる喋ることが出来る女子高校生。家族そのものはものすごく暖かくて熱いが、世間の目は不都合な真実だと目を背けられているのが痛ましい。
この話をどこかで観たことがあるなぁ~、とずーっと気になっていたが、2014年のフランス映画『エール!(LA FAMILLE BELIER/THE BELIER FAMILY)』のリメイクだということが分かった。このエール!を記憶に残る範囲で観ていたので、そう思えたのだろう。第94回(2022年)アカデミー賞では作品賞、脚色賞、助演男優賞の3部門でノミネートされ、すべてで受賞を果たした。こんなに近い期間でリメイクされた作品がアカデミー賞の対象になることに驚いたが、きっと作品が良ければそんな条件なんて何の意味もないということなのだろう。
原題のコーダ(CODA, Children of Deaf Adult/s)とは、きこえない・きこえにくい親をもつきこえる子どものことを指す。知らなかった。
『ブロンクス物語 愛につつまれた街』(A Bronx Tale)
1993年・アメリカ 監督/ロバート・デ・ニーロ
出演/ロバート・デ・ニーロ/リロ・ブランカート・ジュニア/チャズ・パルミンテリ/フランシス・キャプラ
1960年と1968年のアメリカ・ニューヨーク・ブロンクス地区での物語。バスの運転手の親父と地元のマフィアのボスの2人に育てられたようなものだった主人公の少年が大人になって行く様が。その少年の映画の最後の言葉がこれだ。二人に教えられたことがある。「愛は無条件であること」「人を受け入れること」「才能の無駄遣いほど悲しいことはない」 人生の様々な人間模様を生き生きと映し出して余りある。ロバート・デ・ニーロ監督&主演の素敵な映画だった。
『ゴッドファーザー(最終章):マイケル・コルレオーネの最期』(The Godfather: Part III)
2020年(1990年)・アメリカ 監督/フランシス フォード コッポラ
出演/アル パチーノ/ダイアン・キートン/アンディ・ガルシア/タリア・シャイア/ソフィア・コッポラ
コッポラ監督自身がオープニングシーンとラストシーンに手を加え、363箇所のシーンの配置変更をした再編集版。パチーノ、コッポラ監督による再編集版は娘ソフィアの名誉挽回のためなのではと明かす!『ゴッドファーザー Part III』には、マイケルの長女メアリーとして、コッポラ監督の娘ソフィア・コッポラが出演している。現在は映画監督として活躍している彼女は、女優としてのキャリアがないまま同作に助演女優として出演したことで、辛辣な批判にあってしまう。最終的に、ゴールデンラズベリー最低助演女優賞、最低新人賞をダブル受賞してしまう結果となった。
パチーノ、新しいオープニングシーンのおかげで“ピントが合った”と語る!「フランシスはオープニングシーンを変更し、マイケルがバチカンの大司教とビジネスを始める場面になった。そのシーンは35分から40分くらいで、以前のままでは、観賞する人々が、ごちゃごちゃとした中で迷子になっていたと思う。新しいバージョンでは、なぜかピントが合うように感じたよ。映画は魔法のようなもので、理解している人たちがクローズアップをカットしたり、シーンをトリミングしたりすることで、大きな違いを生み出すことができる。いつも驚かされるよ。」と語った。
「フランシスに再製作するチャンスがあってよかったし、ソフィアのパートをよりよくしてくれることを願っていた。私はあの子が大好きだし、当時は大したものだった。考えてもみてほしい。10代の子が自分の父親の映画に出演して酷評されたんだ。当時はインターネットがなかったけれど。本作で人々が彼女にまともに接して、もっと理解してくれることを願うよ。娘が傷ついてしまったことが、この度の再編集の、フランシスの本当の動機だったと思うよ。ずっとどうにかしたいと考えていて、やっと方法が見つかったんだ。」とパチーノは語った。
(BANGER!!! 映画評論・情報サイト より)
『靴ひも』(Laces)
2018年・イスラエル 監督/ヤコブ・ゴールドワッサー
出演/ネボ・キムヒ/ドヴ・グリックマン/エベリン・ハゴエル
後見人が必要かどうかを靴ひもを自分で結べるかどうかで判断される。発達障害という呼び方をして平気なくせに、「びっこ」や「つんぼ」そして「めくら」などを差別用語だと罵る社会構造は一体どうなっているのだろうか。ダメなものはダメとはっきり言ってあげないと、何でも許されるんだと勘違いする輩がうようよしてしまう今日この頃の日本である。
『ディナーラッシュ デジタルリマスター版』(Dinner Rush)
2000年・アメリカ 監督/ボブ・ジラルディ
出演/ダニー・アイエロ/エドアルド・バレリーニ/カーク・アセヴェド/ヴィヴィアン・ウー
ニューヨーク・トラベッカの実在する人気イタリアンレストラン“ジジーノ”が舞台。 様々な人間模様がうごめく街の、活気溢れる厨房と美味しい料理を楽しむ常連客や料理評論家も気づかぬ“ディナーラッシュ”の時間に、スリリングで痛快なサスペンスが幕を開けていた。(webより) 料理は美味そうだった。が、厨房で煙草を吸う料理人がいたり、その他もろもろ綺麗な環境ではないところで作られる料理に興味はない。一流の料理人ほど自分の厨房を完璧に綺麗に保つ。身近なデイサービスの料理人もそうだ。映画としてはかなりおもしろい。映画らしい映画とも言える。
『一分間タイムマシン』(One-Minute Time Machine)
2014年・アメリカ/イギリス 監督/Devon Avery
出演/ブライアン・ディーツェン/エリン・ヘイズ
なんと6分間の映画だった。奇を衒っているわけではない。タイムマシン機器のボタンを押すと、一分間だけ元に戻れる。何度も繰り返すことが出来る。人間は間違いを起こすのが当たり前。いつも戻れることが出来ても、何もいいことはないのかもしれない。「待った!」と将棋や碁の一手を待ってもらうのは素人芸。人間という人間のプロをやっている人たちには、待ったやタイムマシンはいらない。失敗は失敗でいい。それを乗り越えたり、失敗を許してくれる人と一緒に生きていけばいいのだ。でも、失敗はせいぜい3度まで。同じ失敗を繰り返しながら隣人に大迷惑をかけていれば、生きている資格さえ失っても当然。
『スパイ・ファミリー』(Scarlett)
2020年・アメリカ 監督/ジョン・ライド
出演/メラニー・ストーン/ブライアン・クラウス/ムサ・アデン/アイザック・エイカーズ
主人公の女性の名前が原題のスカーレット。秘密諜報員のようなオヤジに小さいころから仕込まれた武術や銃刀を使って活躍するのは娘。三流アクションかなと思って観ていたら、いつの間にか五流アクションへと移っていた。それなりに楽しいが、主役2人が著名な役者だったら、それだけで面白さが違ってくるような気がする。
『フロンティア』(Rubezh/FRONTIER)
2018年・ロシア 監督/ドミトリー・トリノ
出演/Kristina Brodskaya/Alexander Korshunov/エレナ・リャドワ/パヴェル・プリルチニー
レニングラード包囲戦にタイムスリップするたびに成長していく主人公がいた。ロシアの価値観が映画の中に投影されているような。戦うことと命と名誉に関して、ロシアが酷くかけ離れているわけではない。なのに、どうしようもない嘘つき癖は永遠に直りそうもない。
『偽りの関係』()
2015年・ドイツ 監督/Reinhold Bilgeri
出演/ヴォルフガング・ベック/トビアス・モレッティ/ペトラ・モルゼ
情報が極めて少ないのに驚く。原題すら分からなかった。Amazonの映画説明にはこんな記載があって映画を観ても終始訳が分からなかったことを象徴している。「裏の顔を警察は、恐ろしい計画を実行する犯罪の主犯格別実を隠しました。」(原文のまま)
『ザ・フィクサー(後編)』(The Fixer)
2015年・アメリカ 監督/ピーター・ハウイット
出演/エリック・デイン/キャスリーン・ロバートソン/アンドリュー・エアリー/カイル・スイッツァー
何故か「後編」だけがすぐ観られるようになっていたので、いつもの如くまぁいいかっ!と観始まった。辻褄の悪いことがたくさんあって、屁でもない映画だった。観終わった後調べていたら、「第一声は、長い!!ダラダラ続くのが、辛かった。」というコメントが見つかって、後編だけ観たのは正解だったんだ、とほくそ笑んだ。
『コリーニ事件』(Der Fall Collini)
2019年・ドイツ 監督/マルコ・クロイツパイントナー
出演/エリアス・ムバレク/フランコ・ネロ/アレクサンドラ・マリア・ララ/ハイナー・ラウターバッハ
観たことあるはずなのに記録がなかったので観始まった。時々、シーンを想い出すのは、やっぱり観た証拠だろう。ドイツの「ナチ」の爪痕は数多く映画になっている。100年経てば生き証人はようやくいなくなるが、何をどう裁こうが傷跡が癒えることもない。背負わされた十字架をどうい生かすのかが問題なのだろうが、アメリカと戦争をしたことすら知らない日本人よりはましにしても、同じような若い世代が教訓をしっかりと見つめ直せるとは到底思えない。人間の歴史は複雑すぎて。
『ブレイン・ゲーム』(Solace)
2016年・アメリカ 監督/アフォンソ・ポヤルト
出演/アンソニー・ホプキンス/ジェフリー・ディーン・モーガン/アビー・コーニッシュ/コリン・ファレル
先が読めるというか先が見えてしまう超能力者でFBIの協力者でもあった主人公。連続殺人の解明に立ち向かう先には同じような、彼以上の能力を持つ人間がいた。原題には慰めという意味があるらしい。主人公も娘を白血病で失っている過去があり、その時の思いが題名となっている。映画の中のキーワードでもある。
『復讐者』(RECOIL)
2011年・カナダ 監督/テリー・マイルズ
出演/スティーヴ・オースティン/ダニー・トレホ/セリンダ・スワン/キース・ジャーディン
復讐に燃える元警察官と悪玉軍団との戦いが強烈。男は強くなければ、と強く考えさせられる。映画の中の世界だけれど、やっぱり強く逞しい誰にも負けない肉体を持てたら、こんな素晴らしいことはない、と大半の男は思うことだろう。
『リーサル・コネクション』(The Mongolian Connection)
2019年・モンゴル 監督/ドリュー・トーマス
出演/カイウィ・ライマン/アマルサイハン・バルジニャム/サンザール・マディエフ/ザンドス・アイバソフ
アメリカはうだつの上がらないFBI、モンゴルは腐敗警察署、映画は5流アクションをふんだんに入れて詰まらないストーリーを展開していく。最後の何分間かは眠りに落ちたけれど、結末を見直そうという気にさせてくれなかった映画に万歳!
『グランド・ジャーニー』(Donne moi des ailes/Spread Your Wings)
2019年・フランス/ノルウェ- 監督/ニコラ・ヴァニエ
出演/ジャン=ポール・ルーヴ/メラニー・ドゥーテ/ルイ・バスケス/リル・フォッリ/ドミニク・ピノン
クリスチャンは風変わりな気象学者で、フランス・カマルグで雁の研究をしている。超軽量飛行機を使い、渡り鳥に安全なルートを教えるという、誰もが無茶だと呆れるプロジェクトに夢中だ。そんな変わり者の父親と大自然の中で過ごすバカンスなど、オンラインゲームに夢中な息子トマにとっては悪夢でしかない。Wi‐Fiも繋がらない田舎で暇を持て余したトマは、ある出来事をきっかけにその無謀なプロジェクトに協力することに…。(Filmarksより)
このストーリーが実話に基づいているというところがすごい。エンジンの付いたハングライダーの後をついて飛んでくる雁たちの姿が微笑ましい。
『幸せは、ここにある』(Here Today)
2021年・アメリカ 監督/ビリー・クリスタル
出演/ビリー・クリスタル/ティファニー・ハディッシュ/ペン・バッジリー/ローラ・ベナンティ
映画評論家たちの玄人享けする映画ではないようだが、私はこういう映画が大好きだ。ひとりでに出てくる涙を、敢えて拭おうともせずに観られる映画は最高だ。自分以外に一人でも家族と呼べる存在がある人なら、死ぬ前にこういう映画を観ておくべきだろう。『恋人たちの予感』(When Harry Met Sally.../1989年・日本ヘラルド映画)の時に覚えたビリー・クリスタルの顔と名前が、久しぶりに会ったスクリーンでも一目で分かったのには自分でも驚いた。監督をはじめ役者の顔と名前も一致しないことを自慢にしている自分にとっては極めて例外的なことだ。
『燃えよ剣』
2021年(令和3年)・日本 監督/原田眞人
出演/岡田准一/柴咲コウ/鈴木亮平/山田涼介/伊藤英明/尾上右近/山田裕貴/髙嶋政宏/柄本明/市村正親
言わずと知れた司馬遼太郎原作。先日観た「峠」に引き続き明治維新へと進む日本の夜明けを描いているが、こちらは「新選組」にスポットライトをあてたもの。映画としてはこちらの方がメリハリが効いていた。ただ、セリフの日本語が聞き取れない場合が多く、もともとの録音の問題なのか、テレビの音声の問題なのか、自分の耳の衰えの問題なのかと考え込んでしまったのが悔しい。
『Miss.エージェント』(The Serpent)
2021年・アメリカ 監督/ジア・スコバ
出演/トラヴィス・アーロン・ウェイド/マギー・ブジナ/クレイグ・コンウェイ/ジア・スコバ
まぁ、最初から最後まで4流映画を貫き通してごりっぱ!! たいして美しくもない主人公のアクションを観ていても、暑さ解消にはならないけれど、それなりにストーリーのある流れが邪魔になるわけでもない。う~ん、こういう映画を堂々と作れる環境を眺めてみたい。
『山猫は眠らない4 復活の銃弾』(Sniper: Reloaded)
2011年・アメリカ 監督/クラウディオ・ファエ
出演/チャド・マイケル・コリンズ/ビリー・ゼイン/リヒャルト・サメル/パトリック・リスター
1993年の1作目以来8作品まで行っているようだ。なかなか見応えがある。ここ12年間の私の視聴記録に跡は1作品もなかったが、最低でも1作品は観ているだろうと確信している。それでも、まったくその内容に覚えがないのが自分のいいところなので、まぁ仕方がないかとこうやって記録するだけ。
『Swallow/スワロウ』(Swallow)
2020年・アメリカ/フランス 監督/カーロ・ミラベラ=デイヴィス
出演/ヘイリー・ベネット/オースティン・ストウェル/エリザベス・マーヴェル/デヴィッド・ラッシュ
怖いですね~、こわいですねぇ~、Wikipediaにはスリラー映画と表記されていた。クリップ、石、砂、ボールペン、紙、小さなドライバー、なんてものまで飲んでしまう「異食症」という主人公の女性が怖いのだ。遠目に見れば何不自由ない仕合わせの極致にいるような新婚夫婦には、妻である主人公の誰にも言えない病が根付いていた。こわいですねぇ~!!
『人生、ここにあり!』(Si puo fare)
2008年・イタリア 監督/ジュリオ・マンフレドニア
出演/クラウディオ・ビシオ/アニタ・カプリオーリ/ジュゼッペ・バッティストン/ジョルジョ・コランジェリ
イタリア人のノー天気な楽天主義ではない、ある意味日本人よりも繊細な神経を久しぶりに味わいました。『人生は、奇跡の詩』(2005年・La tigre e la neve)というイタリア映画がその映画ですが、何とも表現しにくい人生の機微を感じられる映画です。
映画のセリフの中に「精神病患者な医者が創り出したものだ・・・」のような言いぐさがありました。心にグサッとくる言葉です。学問的または世の中の決まり事は、それを学べば一応は頭の中で理解することが出来る。ただ、地球上で生きている人たちひとりひとりにそのことを当てはめることが最も危険なことだということも理解できる。
この手の映画を観ている途中で思い出す夢の中のシーンがある。『ある病室で目の手術をした少女がベッドに座っている。看護師がいよいよ両目を覆っていた包帯を外す時が来た。あっと驚き観客が声を上げるのも無理はない。包帯を取られた少女の顔にはなんと目が3つ付いていたのだった。カメラがパーンするとそのベッドを囲む医者や看護師の目も3つであった。』 何が普通で何が普通でないかというテーマは人間社会に課せられた大きなテーマであろう。大原則としてさっきのシーンがいつも頭の片隅にひっついていて、もう何十年も経とうとしている。
【人生、ここにあり!】は40年前を描いた映画で、イタリアでの実話を基にして作られているが、今の日本には全くこの現実にさえ追いつけない環境しかないように思える。イタリア語の原題(Si Puo Fare)を翻訳機にかけると「それができる」と訳が出てくる。題名の付け方ひとつにも、前を向いて人生を歩む国民性が現れていると思わざるを得ない。「3つ目」という大きな価値観と、誰とも同じではないはずの個人という人間の人生を、自然体で受け入れられる大きな社会環境が求められるこれからの地球価値観だろう。
『こんにちは、私のお母さん』(Hi, MOM)
2021年・中国 監督/ジア・リン
出演/ジア・リン/チャン・シャオフェイ/シャエン・トン/チェン・フー
ヘラルド出身で今も小さな配給会社を営んでいる知人から「サンプル版DVD」を貰ったので観た。普段は意図的に中国映画・韓国映画を観ないことを是としているが、自分にとっては意識して許可をするしかない。おもしろいことは確かだったが、受け取るときにコメディだが最後は号泣するよと言われたことが気になっていた。しかも号泣すると言われてもそれを上回ること必至だと聞かされて、元来のへそ曲がり体質がそうさせなかったのかもしれない。映画は自分の心がその映画に没入しなければ、琴線を動かすことは出来ない。おそらくかの知人は、本人と母親との間に誰も干渉出来ない何事かがあったからこその言葉ではなかったろうかと推察した。
『峠 最後のサムライ』
2022年(令和4年)・日本 監督/小泉堯史
出演/役所広司/松たか子/香川京子/田中泯/東出昌大/芳根京子/榎木孝明/佐々木蔵之介/井川比佐志/山本學/吉岡秀隆/仲代達矢
今日は2022年(令和4年)6月17日(金)。なにしろ本を読まない自分が唯一嵌ったのが司馬遼太郎だった。最初の本は「竜馬が行く」、単行本を毎日買ってきて1冊読み終わるまで毎日のように読み耽った。それ以来司馬遼太郎の本だけは何冊も読むことになった。不思議な感覚だったが、人生にはそんな時期もあるのだろうと、深く考えずに今に至っている。本を好きになったということではなかったらしいことは、彼の本以外をこの歳になるまで、ほとんどといっていいくらい読んでいないことからも分かる。司馬遼太郎の中でもこの「峠」に出てくる河合継之助にいたく傾倒した。その生きざまが目の前で人生の手本のように生き生きしていた。 だから今回のロードショーを知ったときに一目散に映画館に足を運んだのだった。7、8年ぶりだろうか? 映画館で映画を観るのは! 毎日のように Amazon Prime で映画を人一倍観ているが、ほとんどが洋画ばっかりだ。時々観る日本映画は、相変わらずちんたらとしている。製作本数が増えたって、みんなコメディーの出来損ないのような内容で反吐が出てしまう。さてさて、封切り日の朝一番で観た映画はどうだったのだろうか。「物足んねぇな!」という言葉を吐きながら映画館を出て行った一人の老人がいた。その通りだ。
『トゥモロー・ウォー』(The Tomorrow War)
2021年・アメリカ 監督/クリス・マッケイ
出演/クリス・プラット/イヴォンヌ・ストラホフスキー/ベティ・ギルピン/J・K・シモンズ
舞台は2022年、30年後から来た人間が今の地球人に助けを求める。ちょっと無理のあるSFに飽きが来て眠ってしまった。それ以上でも、それ以下でもない。
『キーパー ある兵士の奇跡』(The Keeper)
2019年・イギリス/ドイツ 監督/マルクス・H・ローゼンミュラー
出演/ダフィット・クロス/フレイア・メイヴァー/ジョン・ヘンショウ/ハリー・メリング
元ドイツ兵の身分からマンチェスター・シティFCのサッカー選手に転身し、その後イギリスの国民的英雄となったバート・トラウトマンの実話を基にしている。一兵卒なら誰でも加害者になってしまう運命は悲劇としか言いようがない。意図的に加害者の、しかもトップにあたる人物は歴史をも書き換えてしまう悪魔のような存在だろう。げに憎っくきはプーチン。
『ニューヨーク 親切なロシア料理店』(The Kindness of Strangers)
2019年・カナダ/スウェーデン/デンマーク/ドイツ/フランス 監督/ロネ・シェルフィグ
出演/ゾーイ・カザン/アンドレア・ライズボロー/タハール・ラヒム/ビル・ナイ
ニューヨークでの話なのに、何故かアメリカ以外の5か国が製作国となっている。ニューヨーク・マンハッタンの老舗ロシア料理店を舞台に、そこに集まった訳ありの男女が互いに助け合って支え合うさまが羨ましい。いつも思うことだが、アメリカ人たちは子供の頃から教えられたDNAが他人を支える人生を送っている。キリスト教の教えなのだろうか。はっきりとは分からないが、きっとそうなのだろうと想像している。仏教だって教えに変わりはないだろうが、理屈をこねて他人に親切にしている風な日本的美徳は、どうにもやりきれない。アメリカ人になりたいわけではない。他人が同じドアを入ろうとしていたら、まったく自然にドアを開けて待っている欧米人の姿に、それまで感じたことのない劣等感を抱いた若いころを時々思い出すのだ。
『ヒトラーに盗られたうさぎ』(When Hitler Stole Pink Rabbit)
2019年・ドイツ 監督/カロリーヌ・リンク
出演/リーヴァ・クリマロフスキ/オリヴァー・マスッチ/カーラ・ジュリ
1933年2月、新聞やラジオでヒトラーへの痛烈な批判を展開していた辛口演劇批評家だった父はユダヤ人であったため、“次の選挙でヒトラーが勝ったらヒトラー反対者への粛清が始まる”という忠告を受けていた。スイスからフランス・パリへ、そしてイギリス・ロンドンへの逃避行は子供たちの生活に大きな影響を・・・。生きているだけでも儲けものというその後の世界を考えれば、何ともかける言葉もない。言葉も分からない新しい生活を繰り返す二人の子供たち。ウクライナの避難民たちも同じように苦労しているのだろうな~。親切な周りの人たちが見守ってくれるだろう今の日本なら、心配しないで成長して欲しい、と。
『顔のないヒトラーたち』(Im Labyrinth des Schweigens)
2014年・ドイツ 監督/ジュリオ・リッチャレッリ
出演/アレクサンダー・フェーリング/フリーデリーケ・ベヒト/アンドレ・シマンスキ
フランクフルトを舞台に、ナチスドイツによるホロコーストに関わった収容所の幹部を戦後ドイツ人自身によって裁いた1963年のフランクフルト・アウシュビッツ裁判開廷までの道のりを、フィクションを交えつつ事実に基づいて描いた人間ドラマである。(Wikipediaより) 原題を翻訳機にかけたら「沈黙の迷路の中で」と出て来た。う~ん!考えさせられる。
『罪と女王』(Dronningen)
2019年・デンマーク/スウェーデン 監督/マイ・エル=トーキー
出演/トリーヌ・ディルホム/グスタフ・リンド/マグヌス・クレッペル/スティーヌ・ギルデンケアネ
デンマークのアカデミー賞に当たるロバート賞で、作品賞、監督賞、主演女優賞など主要計9部門を受賞している他、数々の映画賞を受賞していると言うが、かなりエロチックで問題作のような様相を呈しているだけの作品に見えた。ちょっと難しそうなテーマや解釈を提供すると映画通はいい映画だと断言する悪い癖がある。残念ながら面白くない暗い映画だと私は断言する。
『メン・イン・ブラック:インターナショナル』(Men in Black: International)
2019年・アメリカ 監督/F・ゲイリー・グレイ
出演/クリス・ヘムズワース/テッサ・トンプソン/リーアム・ニーソン/エマ・トンプソン
1作目から22年が経過し、前作とは監督や主人公が入れ替わったシリーズ4作目となるという。おちゃらけた作品は健在で、こういうのを面白がる人種はきっと新人類なのだろう。おふざけもいい加減にしないと、映画としての「品格」が失せてしまう。そんなものはいらないとばかりに、無茶苦茶な発想がちょっと。
『女王トミュリス 史上最強の戦士』(Tomiris)
2019年・カザフスタン 監督/アカン・サタイェフ
出演/アルミラ・ターシン/アディル・アフメトフ/エルケブラン・ダイロフ/ハッサン・マスード
紀元前550年頃の中央アジアの草原、壮大な戦の物語を史家の語りと共に映像化されている。柴咲コウに似た主人公の女王が逞しい。それにしても敵か味方か分からない戦には問題がある。黒澤明監督の「乱」などに見られるはっきりとした敵味方の色分けは、こういう映画の見本になったはずだが、しっかりと学ばれていないのが残念だ。なかなか見応えのある戦乱の時代映画だった。
『ターミネーター:新起動/ジェニシス』(Terminator Genisys)
2015年・アメリカ 監督/アラン・テイラー
出演/アーノルド・シュワルツェネッガー/ジェイソン・クラーク/エミリア・クラーク/ジェイ・コートニー/J・K・シモンズ
タイムスリップが複雑過ぎて私には理解できないうちに物語が進行していく。頭のいい人は時間軸だの空間軸だのと難しい概念で人生を送っているのだろうか。殺しても殺しても死なない相手では、興味が薄れてきてしまう。ターミネーター・シリーズはこれ1本で十分かもしれない。少なくとも私と同じような種族にとっては。
『ロボコップ』(RoboCop)
1987年・アメリカ 監督/ポール・バーホーベン
出演/ピーター・ウェラー/ナンシー・アレン/ロニー・コックス/カートウッド・スミス
我が映画界人生で最高の時期だったが、この映画を観ていなかった。もっとも、いつも言っているように現役時代にはほとんど映画なるものを観ていなかったので、そのうちの1本だとしてもこの手の映画には興味を示さなかったことが、後々にもすぐにこの映画を観なかったという現実となった。それでもこの10年間でもうすぐ3,000本の映画鑑賞となることに安堵に浸れるのには複雑な心境がある。
『あなたを見送る7日間』(This Is Where I Leave You)
2014年・アメリカ 監督/ショーン・レヴィ
出演/ジェイソン・ベイトマン/ティナ・フェイ/ジェーン・フォンダ/アダム・ドライバー
亡くなった父の遺言ということで、ユダヤ教の「シヴァ」という7日間を母と子供たち4人が過ごす。弔問客がひっきりなしにこの7日間訪れる。人間にはそれぞれ予測のつかない不合理で複雑な事情がある。「恋人たちの予感」のような洒落たセリフの応酬にちょっと気持ちが弾んでしまった。でもこの映画は日本での劇場未公開だった。淡い洒落た映画はまだまだ日本では一般受けしないようだ。「シバの女王」今やスタンダード楽曲のようなこの曲名を想い出した。
『さがす』
2022年(令和4年)・日本 監督/片山慎三
出演/佐藤二朗/伊東蒼/清水尋也/森田望智/石井正太朗/松岡依都美/成嶋瞳子/品川徹
極めてつまらない映画だった。おぞましいシーンも結構あり、なんでこんな映画をわざわざ作るんだろうと、人生のはかなさを強く感じた。つまらない。
『天外者』
2020年(令和2年)・日本 監督/田中光敏
出演/三浦春馬/三浦翔平/西川貴教/森永悠希/森川葵/迫田孝也/榎木孝明/筒井真理子/かたせ梨乃/蓮佛美沙子/生瀬勝久
天外者(てんがらもん)とは、鹿児島の方言で「すごい才能の持ち主」を意味するという。三浦春馬最後の作品になってしまった。五代友厚という人物像を語ることは難しそうだ。日本を大きく変えたそして日本の礎を創った人物であったことは間違いない。
『テイクバック』(Daughter of the Wolf)
2019年・カナダ 監督/デヴィッド・ハックル
出演/ジーナ・カラーノ/ブレンダン・フェア/アントン・ギリス=アデルマン/サイデル・ノエル
おぞましい映画だった。元軍人の母親のタフネスぶりが光っている。子供のためなら何でもする・・・・、親の心子知らずという構図は世界共通。
『ビルとテッドの時空旅行 音楽で世界を救え!』(Bill & Ted Face the Music)
2020年・アメリカ 監督/ディーン・パリソット
出演/キアヌ・リーブス/アレックス・ウィンター/サマラ・ウィーヴィング/ブリジット・ランディ=ペイン
ここまでぶっ飛んでると何も文句が言えない。キアヌ・リーブスがこういうコメディに出るとは驚き。音楽で世界を一つにとは、今風な物語にも見える。ロックスターにあこがれる高校生のビルとテッドが時空を超えた冒険を繰り広げる姿を描いたSFコメディ映画のシリーズの第3作で、前作『ビルとテッドの地獄旅行』から29年ぶりの新作、という説明があった。
『星から来たあなた』 シーズン1・エピソード1~10
2022年(令和4年)・日本 監督/松木創
出演/福士蒼汰/山本美月/出口夏希/工藤阿須加/福原遥/木南晴夏/今井/光石研/板尾創路/大友花恋/水沢林太郎/出口夏希
もともとの原作、作品も韓国発らしい。エピソード1話が45分程度で10話あるから7時間半くらいを一気に観てしまった。そこまでおもしろいからと言う訳ではないが、観始まると止めるのが難しい。SFものだから観られたのかもしれない。全体で半分くらいの長さで充分だろうと感じた。長い物語をただぶつぶつと切って見せるのは不本意。1話1話に強弱をつけたエピソードが隠されていなければ、おもしろいという評価には値しない。アメリカのテレビシリーズの充実度には遠く及ばない。残念。
『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』(No Time to Die)
2021年・アメリカ 監督/キャリー・ジョージ・フクナガ
出演/ダニエル・クレイグ/ラミ・マレック/レア・セドゥ/ラシャーナ・リンチ/ベン・ウィショー
007シリーズのファンではないが、観ておくべき映画として全作品を観ていると思う。Amazonで宣伝をしていたが最新作が無料で観られるとは知らなかった。他人に言われてそれじゃ、とさっそく観たわけだが、こんなに子供騙しで荒唐無稽な映画だとは思わなかった。ボンド・ガールも今回は美人じゃないし、なんか飽き飽きしながら2時間40分を観終わった。
『グッバイ、リチャード!』(The Professor、別題:Richard Says Goodbye)
2019年・アメリカ 監督/ウェイン・ロバーツ
出演/ジョニー・デップ/ローズマリー・デウィット/オデッサ・ヤング/ダニー・ヒューストン
末期の肺がんと余命宣告6か月を受けた主人公の大学教授の姿。自暴自棄のように見える最後の教壇生活が、すーっとこちらには届いてこない。よく見えない映画だった。
『パスワード:家』(H0us3)
2018年・スペイン 監督/マノロ・ムンギア
出演/ミリアム・トルトーサ/Mariona Tena/ベルナト・メストレ/アンナ・バートラン/ビクトル・ゴメス
コンピューター用語の会話が羅列されて、私程度の者にはギリギリの内容だった。コンピューター世界の未来の一端を見せられたような気分にもなった。
『G.I.ジョー バック2リベンジ』(G.I. Joe: Retaliation)
2013年・アメリカ 監督/ジョン・M・チュウ
出演/ドウェイン・ジョンソン/ブルース・ウィリス/チャニング・テイタム/イ・ビョンホン
アクションの連続で反吐が出るほどだが、まずまずおもしろい。核を使って世界を自分のものにしようなんて、プーチンはこの映画に感化されたのじゃないかと思えてくる。
『カリフォルニア・ダウン』(San Andreas)
2015年・アメリカ 監督/ブラッド・ペイトン
出演/ドウェイン・ジョンソン/カーラ・グギノ/アレクサンドラ・ダダリオ/ヨアン・グリフィズ
原題の“San Andreas”はカリフォルニア州ほぼ全域を南北に縦走するサンアンドレアス断層。地震パニック物語だった。経験者には直視出来ないだろう映像が続く。未経験者にもショックな映像だった。
『ファーザー・フィギュア』(Father Figures)
2017年・アメリカ 監督/ローレンス・シャー
出演/オーウェン・ウィルソン/エド・ヘルムズ/グレン・クローズ/J・K・シモンズ
おちゃらけた映画なのに役者がちゃんとしている。双子の兄弟が自分の父親を探す旅に出た。実は母親も違っていたという結末までの心温まる映画と言いたいのだが・・・。
『真珠の耳飾りの少女』(Girl with a Pearl Earring)
2003年・イギリス/ルクセンブルク 監督/ピーター・ウェーバー
出演/コリン・ファース/スカーレット・ヨハンソン/トム・ウィルキンソン/キリアン・マーフィー
オランダの画家ヨハネス・フェルメールが描いた1枚の絵画の成り立ちが楽しい。1665年頃の社会にはパワハラ、セクハラ、モラハラとあらゆるハラスメントが。そんな被害者である主人公の下働き女性がモデルとして描かれていく。絵画のような映像がユニーク、スカーレット・ヨハンソンが絵画の一部に見えてくる。
『カジノ・ハウス』(The House)
2017年・アメリカ 監督/アンドリュー・ジェイ・コーエン
出演/ウィル・フェレル/エイミー・ポーラー/ジェイソン・マンツォーカス/ライアン・シンプキンス
ヒット作を出し続けているコーエン兄弟とは関係がないようだ。お茶らけ映画の典型、アメリカ映画は懐が深い。さすがに日本での劇場公開は出来なかったようだ。
『下町任侠伝 鷹』
2020年(令和2年)・日本 監督/浅生マサヒロ
出演/原田龍二/野村祐人/階戸瑠李/山本竜二/小柳心/水元秀次郎/上西雄大/中山こころ/関根大学/成瀬正孝/ガッツ石松/菅田俊/中野英雄
東映Vシネマのようなものだった。V・パラダイスと称しているらしい。1時間ちょっとで気楽に観られるシリーズなのだろう。もう「4」まで行っているらしい。
『ヒトラーを殺し、その後ビッグフットを殺した男』(The Man Who Killed Hitler and Then The Bigfoot)
2018年・アメリカ 監督/Robert D. Krzykowski
出演/サム・エリオット/エイダン・ターナー/ロン・リヴィングストン/ショーン・ブリジャース
B級、C級映画と平気で罵っている観客がたくさんいそうだ。それでもいい、映画はおもしろいことが肝心で、ひたすらバカみたいな動作やギャグでお笑いをとろうとする日本的お笑いなんかお笑い草だ。
『ゴーストシップ』(Ghost Ship)
2002年・アメリカ 監督/スティーヴ・ベック
出演/ジュリアナ・マルグリーズ/ガブリエル・バーン/ロン・エルダード/デズモンド・ハリントン
こわいですね~!怖いですね~!!幽霊なんて本当はいないんだと思っている人も怖い夢を見そうな・・・・。
『激流』(THE RIVER WILD)
1995年・アメリカ 監督/カーティス・ハンソン
出演/メリル・ストリープ/ケヴィン・ベーコン/デヴィッド・ストラザーン/ジョセフ・マッゼロ
話の進まないスリラーは、現実にもある事象と同じで待つだけで疲れがたまる。
『スリー・ジャスティス 孤高のアウトロー』(The Kid)
2019年・アメリカ 監督/ヴィンセント・ドノフリオ
出演/イーサン・ホーク/デイン・デハーン/ジェイク・シュア/レイラ・ジョージ
『ビリー・ザ・キッド 孤高のアウトロー』というタイトルでwowow放送されたらしい。もう一組の姉弟の物語かな、と思わせておいて実は違っていたのか。
『20センチュリー・ウーマン』(20th Century Women)
2016年・アメリカ 監督/マイク・ミルズ
出演/アネット・ベニング/グレタ・ガーウィグ/エル・ファニング/ルーカス・ジェイド・ズマン
1900年代を生きた女性の物語。母親となり難しい年ごろの息子とのやり取りがおもしろい。おもしろいだけでは生きてはいけないのが人生だし、楽しまなければ何の意味もない人生ともいえる。
『エマージェンシー 見知らぬ2人』(The Surface)
2014年・アメリカ 監督/ギル・ケイツ・ジュニア
出演/ショーン・アスティン/ミミ・ロジャース/クリス・マルケイ/ジョン・エミット・トレーシー
希望を失くした青年が偶然に出会った人との会話劇。舞台は故障したボートの上。おもいあたるような、あたらないような。
『劇場版シグナル 長期未解決事件捜査班』
2021年(令和3年)・日本 監督/内片輝/鈴木浩介
出演/坂口健太郎/北村一輝/吉瀬美智子/木村祐一/池田鉄洋/青野楓/神尾楓珠/甲本雅裕/渡部篤郎
テレビ放映作品の録画を観るのは極く偶に。ストーリーはおもしろい。日本の警察ものは、拳銃の使用が適切だった、とか警察からのメッセージが出る現実に比べてドンパチが非現実的で興醒めの見本。
『ブラインド 朗読する女』(Blind)
2017年・アメリカ 監督/マイケル・メイラー
出演/アレック・ボールドウィン/デミ・ムーア/ディラン・マクダーモット/ヴィヴァ・ビアンカ
久しぶりに素敵な映画に出逢った。素敵な映画というよりは、素敵な二人に出逢ったと言った方が正しいだろう。生きていたって何も生かせない残りの人生を悔やむだけか。
『オールド・ナイブス』(All the Old Knives)
2022年・アメリカ 監督/ヤヌス・メッツ
出演/クリス・パイン/タンディ・ニュートン/ローレンス・フィッシュバーン/ジョナサン・プライス
CIAの恋人同士の邂逅録とでも言えるような会話劇。相変わらず理解がなかなか出来ない人間関係と事件関係、おもしろいのだろうけれどその面白さを理解できない凡人には退屈な映画に映った。
『ナイト・ウォッチャー』(The Night Clerk)
2020年・アメリカ 監督/マイケル・クリストファー
出演/タイ・シェリダン/アナ・デ・アルマス/ジョン・レグイザモ/ヘレン・ハント
字幕に「コミュ障」という言葉が出て来た。現実社会に生きていないうちに、数々の新しい言葉が氾濫してきてとてもじゃないけれど追いつけない。自閉症スペクトラムなんて何のことだかわからない、とすぐに諦めてしまう。
『Mr.ノーバディ』(Nobody)
2021年・アメリカ 監督/イリヤ・ナイシュラー
出演/ボブ・オデンカーク/コニー・ニールセン/RZA/クリストファー・ロイド/アレクセイ・セレブリャコフ
平凡で何者でもない存在(ノーバディ)として妻子と暮らしていた中年男の正義感が凄い。生身で戦う男の中の男のように見える。憧れる。
『ライリー・ノース -復讐の女神-』(Peppermint)
2018年・アメリカ 監督/ピエール・モレル
出演/ジェニファー・ガーナー/ジョン・オーティス/ジョン・ギャラガー・Jr/フアン・パブロ・ラバ
この手の復讐物は大好きだ。何があっても暴力はいけないとかいう正義漢には分からない人生だろう。一人を殺したら殺人だが、戦場で大勢を殺せば勲章ものと同じことがこの復讐劇の本質だ。
『総理の夫』
2021年(令和3年)・日本 監督/河合勇人
出演/田中圭/中谷美紀/貫地谷しほり/工藤阿須加/松井愛莉/木下ほうか/長田成哉/関口まなと/米本学仁/国広富之
セクハラ発覚で俳優を辞めるまでになっている役者が出ていた。中谷美紀はちょっと歳をとったかな。かなり甘めの設定がコメディ映画にもならない雰囲気を。
『見えない目撃者』
2019年(令和元年)・日本 監督/森淳一
出演/吉岡里帆/高杉真宙/大倉孝二/浅香航大/酒向芳/松大航也/國村隼/渡辺大知/栁俊太郎/松田美由紀
陳腐な設定がストーリーを台無しにしている。せっかく面白い話が展開しているのに、随所随所にあり得ないセリフや声出しがあり、興味が薄れていくミステリー。
『底知れぬ愛の闇』(Deep Water)
2022年・アメリカ/オーストラリア 監督/エイドリアン・ライン
出演/ベン・アフレック/アナ・デ・アルマス/レイチェル・ブランチャード/トレイシー・レッツ
ヘラルド配給「ナインハーフ」の監督。まだ活躍しているんだ。邦題がね~!!?? 色情狂のような若く美しい妻を持っては、他人に危害を与える行動も止む無しか。
『ライブリポート』(Line of Duty)
2019年・イギリス/アメリカ 監督/スティーヴン・C・ミラー
出演/ディナ・メイヤー/アーロン・エッカート/ジャンカルロ・エスポジート/コートニー・イートン
SNSでライブ中継をしながら若い女性が一人の警官の捜査を追っかけている。その行動力は日本人には無理だろう。ストーリーはなかなかだが、あり得ないアクションにおもわず笑い・・・
『ダブル 別人の夫』(The Wrong Husband)
2019年・アメリカ 監督/ベン・メイヤーソン
出演/シャーロット・グラハム/リック・コスネット/ソフィア・マットソン/ケイルブ・ロング
双子の人生は双子でない人には推し量れない奇妙な人生がたくさん詰まっているのだろうと想像する。ましてや貧困家庭に育ち、一人は裕福な家にもらわれて、一人は犯罪社会へと没落していくなんて。
『葡萄畑に帰ろう』(The Chair)
2017年・ジョージア 監督/エルダル・シェンゲラヤ
出演/ニカ・タバゼ/ニネリ・チャンクベタゼ/ケティ・アサティアニ/ナタリア・ジュゲリ
ジョージア発の映画は初めてかもしれない。残念ながら中途半端な政治風刺とコメディがよく伝わってこない。最後まで何とか観ることが出来ただけでもよしとしよう。
『あしたのパスタはアルデンテ』(Mine vaganti、Loose Cannons)
2010年・イタリア 監督/フェルザン・オズペテク
出演/リッカルド・スカマルチョ/ニコール・グリマウド/アレッサンドロ・プレツィオージ/エンニオ・ファンタスティキーニ
イタリア映画は時々人生の佳きことを教えてくれる。パスタ製造会社を経営している家族、跡継ぎの男二人がゲイだと告白した。祖母の結婚式での出来事から映画は始まる。「人生の舞台は無限なの」「すべてがまた巡る」という祖母の遺言に心が揺れる。イタリア語の原題を翻訳したら「ゆるい大砲」と表示された。
『修道士は沈黙する』(Le confessioni)
2016年・フランス/イタリア 監督/ロベルト・アンド
出演/トニ・セルヴィッロ/ダニエル・オートゥイユ/コニー・ニールセン/マリ=ジョゼ・クローズ
観終わっていない。いつもの如く細切れに観ていて、最後の20分を観ようとしたら、昨日まで無料だったのに急に有料に変わっていた。Amazonプライム恐るべし。せっかくのミステリーは解決しないうちに露と消えた。
『ローマに消えた男』(Viva la liberta)
2015年・イタリア 監督/ロベルト・アンド
出演/トニ・セルヴィッロ/ヴァレリオ・マスタンドレア/ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ/ミケーラ・チェスコン
双子がやむにやまれず別人格を演じたらおもしろいことになる。双子でなくとも、まったく違う人生が送れたらこんな楽しいことはないだろう。
『エール!』(La famille Belier)
2014年・フランス 監督/エリック・ラルティゴ
出演/カリン・ヴィアール/ルアンヌ・エメラ/フランソワ・ダミアン/エリック・エルモスニーノ
フランスの田舎町、農家を営む家庭、中学生の主人公以外は母も父も弟も話せないし聞こえない。フランス風エスプリで話が展開していく。パリの音楽学校のオーディションを受けることになった主人公だが・・・。
『再会の夏』(Le Collier Rouge/The Red Collar)
2018年・フランス/ベルギー 監督/ジャン・ベッケル
出演/フランソワ・クリュゼ/ニコラ・デュヴォシェル/ソフィー・ベルベーク
1919年、第一次世界大戦終戦後の平和が訪れたばかりのフランスの片田舎。戦争の英雄であるはずの主人公が、人気のない留置所で頑なに黙秘を続けている。対峙して語り合うことの大切さが身に染みる。
『君の名前で僕を呼んで』(Call Me By Your Name)
2017年・アメリカ/ブラジル/イタリア/フランス 監督/ルカ・グァダニーノ
出演/アーミー・ハマー/ティモシー・シャラメ/マイケル・スタールバーグ/アミラ・カサール
1983年夏、北イタリアのとある避暑地。17歳のイタリア人と考古学教授の父の助手として来た24歳のアメリカの大学院生とのひと夏の「ゲイ」の話だった。素敵な関係ですねと言えるほど寛大な心にはなっていないけれど、とんでもないと言えるほどの若き未熟な思いを今もまとっているわけでもない。
『ノーザン・ソウル』(Northern Soul)
2014年・イギリス 監督/エレイン・コンスタンチン
出演/アントニア・トーマス/スティーヴ・クーガン/ジャック・ゴードン/クリスチャン・マッケイ
1974年イギルス北部の町バーンズワース、高校生にとっては糞みたいな田舎町での生活に我慢ならなくなった。ソウル・ミュージックと「クスリ」は今でもセットである種の人生を破壊している。EP盤と単純なステップがダンスホールに踊る。懐かしい時代だと言ってしまえれば、それ以上のなにものでもない。
『シルヴィ ~恋のメロディ~』(Sylvie's Love)
2020年・アメリカ 監督/ユージン・アッシュ
出演/テッサ・トンプソン/ンナムディ・アサマア/アヤ・ナオミ・キング/ライアン・ミシェル・ベイズ
黒人のミュージシャンの地味な恋愛映画だった。地味なというのは、真面目なという言葉に置き換えてもいい。ささやかながら他人を思い図って生きていくことが大切だと、何度も教えられる。
『わが名はキケロ ナチス最悪のスパイ』(Cicero)
2019年・トルコ 監督/セルダル・アカル
出演/エルダル・ベシクチオール/ブルジュ・ビリジック/エルタン・サバン/ムラート・ガリバガオグル
第二次世界大戦中の最も有名なスパイの1人だという。通称キケロ、実話を基にドイツ、英国、トルコの三つ巴の中を生き抜いた物語。ノルマンディ上陸作戦の偽情報をドイツに渡したという。どこまで本当かは分からない。
『しあわせのカップケーキ』(AN HOUR BEHIND)
2017年・アメリカ 監督/ブライアン・ブラフ
出演/エミリー・ローズ/バリー・ワトソン/アレサンドラ・ダラム/ケイシー・エリオット
軽い恋愛ものは気楽だ。気持ちが若くても、実際の年齢を考えると哀しくなる。まだまだ気持ちだけは若いが、やっぱり気持ちだけでは・・・・。
『闇の処刑人 ザ・ショットガン』(Hollow Point)
2019年・アメリカ 監督/ダニエル・ジリーリ
出演/ルーク・ゴス/デュラン・ジェイ/ジュジュ・チャン/ジェイ・モーア
自警団なんてもんじゃない良質人間グループが悪を成敗する。やり過ぎたってその方がいい。生きている必要のない人間どもを成敗するのは気持ちいいい。
『ジェーン・ドウの解剖』(The Autopsy of Jane Doe)
2016年・アメリカ 監督/アンドレ・ウーヴレダル
出演/エミール・ハーシュ/ブライアン・コックス/オフィリア・ラヴィボンド
怖いですね~、怖いですね-、アメリカのバージニア州の田舎町で息子のオースティンと共に遺体安置所と火葬場を経営し、検死官もつとめる主人公、遺体解剖が結構リアルで作りものと分かっていても気持ち悪い。こういうのには極めて弱い。
『ANON アノン』(Anon)
2018年・ドイツ/イギリス/アメリカ 監督/アンドリュー・ニコル
出演/クライヴ・オーウェン/アマンダ・サイフリッド/コルム・フィオール/デビット・ストーチ
アノニマス(Anonymous)が原題の由来。超近未来の人間プロファイリング、匿名プロキシーなどとIT用語満載で何が何だか意味不明。面白いようなおもしろくないような。
『チア・アップ!』(Poms)
2019年・アメリカ 監督/ザラ・ヘイズ
出演/ダイアン・キートン/ジャッキー・ウィーヴァー/リー・パールマン/パム・グリア
ゴルフ場が3つ、ボウリング場が2つ、室内プール、屋外プールを有する高齢者向けのコミュニティに引っ越してきた主人公。平均年齢70歳以上のチアリーディングチームを組んで面白おかしく毎日が始まる。アメリカのリタイア施設はケタが違う。
『JOLT/ジョルト』(Jolt)
2021年・アメリカ 監督/Tanya Wexler
出演/ケイト・ベッキンセイル/ボビー・カナヴェイル/ラバーン・コックス/スタンリー・トゥッチ
キレると制御不可能になる女性、しかも腕力も男勝りではどうしようもない。シリーズになるような終わり方も、また。
『ティント・ブラス 背徳小説』(L'Uomo che Guarda The Voyeur/Le Voyeur)
1994年・イタリア 監督/ティント・ブラス
出演/フランチェスコ・カセール/カタリナ・ヴァシリッサ/フランコ・ブランチャローリ
聞いたことのあるような監督の名前。日本ヘラルド映画配給「カリギュラ」(Caligula・1980年)を監督したのも彼だった。懐かしさ溢れるが、この映画はほとんどポルノ映画。
『バスルーム 裸の2日間』(MADRID, 1987)
2011年・スペイン 監督/デヴィッド・トルエバ
出演/マリア・バルベルデ/ホセ・サクリスタン
ポルノ映画のような邦題だが、もちろん残念ながらポルノ映画ではなかった。確かに初老の男とまだ大学生の若い女性が裸でバスルームで対峙している。小さな事件だが・・・・。
『ターゲット・イン・NY』(FIVE MINARETS IN NEW YORK)
2010年・アメリカ/トルコ 監督/マフスン・クルムズギュル
出演/ハルク・ビルギナー/マフスン・クルムズギュル/ムスタファ・サンダル/ジーナ・ガーション
イスラム教徒はいい人なんだという喧伝映画か? 宗教がらみと因果関係と分からないことばかりの映画で困った。宗教アクション映画だろうか?
『ダブル-完全犯罪-』(Deception)
2012年・アメリカ 監督/ブライアン・トレンチャード=スミス
出演/キューバ・グッディング・Jr/エマニュエル・ヴォージエ/エヴァート・マックィーン
アメリカのFBI捜査官とアメリカの雑誌記者がオーストラリアで事件を解決する。軽くて余計な埋め込みもないすっきりした映画だった。
『盗まれたカラヴァッジョ』(Una storia senza nome/The Stolen Caravaggio)
2018年・イタリア/フランス 監督/ロベルト・アンド
出演/ミカエラ・ラマツォッティ/アレッサンドロ・ガスマン/イエジー・スコリモフスキ/ラウラ・モランテ
イタリアの種馬根性とフランスのエスプリが合体したミステリー。面白いっちゃ面白いが・・・・。
『心と体と』(Testrol es lelekrol/On Body and Soul)
2018年・ハンガリー 監督/イルディコー・エニェディ
出演/アレクサンドラ・ボルベーイ/ゲーザ・モルチャーニ/レーカ・テンキ/エルヴィン・ナジ
お国が変われば表現方法も違ってくる。摩訶不思議な感覚で映画を見つめていた。
『ポルトの恋人たち 時の記憶』(Lovers on Borders)
年・日本/ポルトガル/アメリカ 監督/舩橋淳
出演/柄本佑/アナ・モレイラ/アントニオ・ドゥランエス/中野裕太/ミゲル・モンテイロ
18世紀のポルトガルと21世紀の日本で起こった事象を時の記憶というカテゴリーで描くのには無理がある。駄作。もったい付けてはいるが、所詮は力のない脚本と監督、そして役者。
『ジョナサン -ふたつの顔の男-』(Jonathan)
2018年・アメリカ 監督/ビル・オリヴァー
出演/アンセル・エルゴート/パトリシア・クラークソン/スキ・ウォーターハウス/マット・ボマー
昼と夜で12時間ずつ人格が切り替わるように設定された二重人格の青年が主人公。一人が二人の人生を歩んでいる。そんな馬鹿なことはないだろうと一般的には思えるが・・・。
『ホテル・ムンバイ』(Hotel Mumbai)
2018年・オーストラリア/インド/アメリカ 監督/アンソニー・マラス
出演/デーヴ・パテール/アーミー・ハマー/ナザニン・ボニアディ/ティルダ・コブハム=ハーヴェイ
2008年に起きたムンバイ同時多発テロ、タージマハル・ホテルに閉じ込められ人質となった500人以上の宿泊客と、プロとしての誇りをかけて彼らを救おうとしたホテルマンたちの姿。事実は小説より奇なりだが、映画としてはイマイチ。
『ハクソー・リッジ』(Hacksaw Ridge)
2016年・アメリカ 監督/メル・ギブソン
出演/アンドリュー・ガーフィールド/サム・ワーシントン/ルーク・ブレイシー/テリーサ・パーマー
沖縄戦の実話だった。銃を持たない衛生兵になる前半がひとつの山場で涙する。弱虫と思われていた主人公がひとりで75人もの負傷兵を助けるくだりがまた泣ける。日本兵が殺されるシーンを観たくないというよりは、このアメリカ衛生兵の命を助けたいという衝動にかられる。
『僕を育ててくれたテンダー・バー』(The Tender Bar)
2021年・アメリカ 監督/ジョージ・クルーニー
出演/ベン・アフレック/タイ・シェリダン/Daniel Ranieri/リリー・レイブ/クリストファー・ロイド
自分の生まれ育ったルーツのようなものを自覚している人は人生の愉しさが増すだろうな~、と強く思う。
2022年1月10日の記録
おはなの流派は3,000以上あるといわれている。どんな分野でもこの3,000という数字はひとつの指針になるような気がしていた。映画を観た記録を始めてこの4月には満12年が過ぎるようだ。今年中にこの作品数が3,000になるかもしれない、という事実に我ながら感動している。学生時代から映画の本数を観ていない。現役の映画マンになったときにもほとんど本数を稼げなかったというのは、どういう理由によるものなのだろうか? 語るときがあれば、誰かに話しておきたいような話題でもある。
現役を卒業してからの映画の楽しみ方には何の制約もない嬉しい環境ばかりだ。レンタルDVDから録画機によるテレビ放映作品、そして今ではアマゾン・プライムの無料映画鑑賞がほとんどというように変化してきた。映画を観る機器だって32インチから40インチへ、そして今や50インチの液晶テレビへと世の中の機械類の進歩を追いかけるような軌跡を辿っている。DVD録画機は使わなくなってから、先日試したら映像が出てこなくなっていた。せっかく初めて買った「ベビメタ」のロンドン公演レーザーディスクも見られなかった。機械が故障したのかはたまたほかの原因なのかは分かっていない。
今住んでいる名古屋市南区呼続1-1-19は名鉄本線「呼続駅」の隣にある。数年前からこの本線の高架事業が知らされていたが、ようやく土地買収が本格化し先日は名古屋市の調査員が部屋に上がり込んで寸法を測ったり写真を撮ったりしていった。実際の立ち退き、引っ越しは2023年になるということだが、その時には65インチの有機ELテレビにしようかと思惑が膨らんできた。何がしかの立ち退き料を頂けるということなので、そんなことを考え始まったわけだが、取らぬ狸の何とかになるような気がするのも、いつものことなのだろう。この頃思うことは、あと何年生きるのだろうかということ。せっかく映画人を経験した身としては、より大きなスクリーンで映画を観ていたいという希望が膨らんできたのだ。今頃になって、と知っている人たちからは責められそうだが、実現するのかその前にこの世におさらばするのかは実際微妙なところだろうと。
『マスター・プラン』(THE MASTER PLAN)
2014年・スウェーデン 監督/アラン・ダルボルグ
出演/シーモン・J・ベリエル/アレクサンダー・カリム/トーケル・ペターソン/スザンヌ・トーソン
スウェーデンの映画製作力は力がある。お金もかけている。多少の辻褄なんて合わせなくても良い、と、どんどんとストーリーを進行させて行く。
『特捜部Q Pからのメッセージ』(Flaskepost fra P)
2016年・スウェーデン/デンマーク/ドイツ/ノルウェー 監督/ハンス・ペテル・モランド
出演/ニコライ・リー・コス/ファレス・ファレス/ポール・スヴェーレ・ハーゲン/ソーレン・ピルマーク
このシリーズはおもしろい。アメリカ映画には結構きついセンサーがあって、残虐シーンはそれなりに映し出されないが、このヨーロッパ連合製作映画には平気で血なまぐさいシーンが登場して驚いてしまう。
『蜘蛛の巣を払う女』(The Girl in the Spider's Web)
2018年・アメリカ/スウェーデン/カナダ/ドイツ/イギルス 監督/フェデ・アルバレス
出演/クレア・フォイ/スヴェリル・グドナソン/ラキース・スタンフィールド/シルヴィア・フークス
主人公は、背中にドラゴンのタトゥーを背負う天才的なコンピューター・ハッカー女性。スパイやサイバー犯罪者、腐敗した政府などの蜘蛛の巣のように絡み合う事件に立ち向かうアクション・ミステリーがおもしろい。
『ロスト・シティZ 失われた黄金都市』(The Lost City of Z)
2016年・アメリカ 監督/ジェームズ・グレイ
出演/チャーリー・ハナム/ロバート・パティンソンシ/エナ・ミラー/トム・ホランド/エドワード・アシュレイ
第一次世界大戦頃のイギリスの軍人で冒険家のはなし。未開の土地に赴いて新しい発見をするのがこんなに持て囃されたとは! 夢のある未来がいつもあれば、人間の精神は成長し続けるのだろう。
『ファイナル・プラン』(Honest Thief)
2020年・アメリカ 監督/マーク・ウィリアムズ
出演/リーアム・ニーソン/ケイト・ウォルシュ/ジェイ・コートニー/ジェフリー・ドノヴァン
警察&警察官にぐるになられたら、どんな人間だって罪を着せられる。身内にやさしい(甘い)警察の体質は、日本だって例外ではない。飛び込んできた白バイにぶつかられてしまった路線バスの運転手が、あの手この手の捏造証拠で有罪になった話は有名だ。
『ブレスレット 鏡の中の私』(La fille au bracelet/The Girl with a Bracelet)
2019年・フランス/ベルギー 監督/ステファン・ドゥムースティエ
出演/ロシュディ・ゼム/メリッサ・ゲール/アナイス・ドゥムースティエ/キアラ・マストロヤンニ
親友を殺した疑いで裁判にかけられる少女、裁判所の中でのシーンがほとんど。有罪なのか無罪なのかを問われてはいない観客。自分の娘ながら、その生活を初めて聞く事実が・・・・。
『アイ・アム・ニューマン 新しい人生の見つけ方』(Arthur Newman)
2012年・アメリカ 監督/ダンテ・アリオラ
出演/コリン・ファース/エミリー・ブラント/クリスティン・レーマン/アン・ヘッシュ
人生のしがらみはそう簡単に切れるものではない。自殺を装って新しい人生を始めようとしたって、なかなか望む境地に行くことは出来ないのかもしれない。
『レッド・ドラゴン』(Red Dragon)
2002年・アメリカ/ドイツ 監督/ブレット・ラトナー
出演/アンソニー・ホプキンス/エドワード・ノートン/レイフ・ファインズ/ハーヴェイ・カイテル/エミリー・ワトソン
あの『羊たちの沈黙』の前哨戦。怖い。
『ロビンソン漂流記』(THE ADVENTURES OF ROBINSON CRUSOE)
1954年・メキシコ 監督/ルイス・ブニュエル
出演/ダン・オハーリヒー/ジェイミー・フェルナンデス
今日は、令和四年(2022年)元旦。あのロビンソン・クルーソーのお話。今どきは彼の名前を聴くこともなくなった。流れ着いた島で28年も生活していたなんて、今の人間では到底出来ないだろう。
『否定と肯定』(Denial)
2016年・イギリス/アメリカ 監督/ミック・ジャクソン
出演/レイチェル・ワイズ/トム・ウィルキンソン/ティモシー・スポール/アンドリュー・スコット
これもアウシュビッツもの。アウシュビッツなんてなかったと主張する「歴史家」が自分を非難する歴史家に裁判を起こした。コロナの件も然り、頭の悪い輩が自分の言っていることがいかに愚かなことかさえわからず世界に生きている。
『エスケープ・フロム・アウシュヴィッツ 命がけの脱走』(The Escape from Auschwitz)
2020年・イギリス 監督/テリー・リー・コッカー
出演/エリオット・ケーブル/Paul Joseph Bonnici/アレックス・リース/David Winfield/Joe Stock
時々はこういう深刻な内容の映画を観る必要がある。このアウシュビッツものは画面も内容もひたすら暗くて、観ることそのものが試練のように思えた。
『おとなの恋の測り方』(Un homme a la hauteur/Up for Love)
2016年・フランス 監督/ローラン・ティラール
出演/ジャン・デュジャルダン/ヴィルジニー・エフィラ/セドリック・カーン/ステファニー・パパニアン
フランス女性として普通に背の高い弁護士と136cmと40cm背が低いだけのフランス人のりっぱな男性との恋物語。他人の見る目がいかに差別的なのかを目の当たりにして、ちょっとばかり考えさせられる。それにしても、自分のことを差しおいて他人に対する心の闇は酷いもんだと嘆くことが出来るようになってきた。
『世界にひとつのロマンティック』(Accidental Love)
2015年・アメリカ 監督/デヴィッド・O・ラッセル
出演/ジェイク・ギレンホール/ジェシカ・ビール/ジェームズ・マースデン/キャサリン・キーナー
こんな陳腐な邦題を付ける配給会社はどこなのだろうか。欧米のコメディは楽しい。意味のないことを叫んで笑わそうとするだけの日本のお笑いは、ホントにお笑い草だ。
『ガラスの城の約束』(The Glass Castle)
2017年・アメリカ 監督/デスティン・ダニエル・クレットン
出演/ブリー・ラーソン/ウディ・ハレルソン/ナオミ・ワッツ/マックス・グリーンフィールド
子供の成長は心も身体も親や環境によって大きく左右されるはずだが、どんなにひどい環境でも逞しくまた優しく大人になっていく人たちもたくさんいるらしい。
『キャッシュトラック』(Wrath of Man)
2021年・アメリカ/イギリス 監督/ガイ・リッチー
出演/ジェイソン・ステイサム/ホルト・マッキャラニー/ジェフリー・ドノヴァン/ジョシュ・ハートネット
めちゃめちゃ強い奴が目の前で子供を殺されてしまったら、もう復讐の鬼と化するしか生きる理由はない。
『ジュディ 虹の彼方に』(Judy)
2019年・イギリス/アメリカ 監督/ルパート・グールド
出演/レネー・ゼルウィガー/ルーファス・シーウェル/マイケル・ガンボン/フィン・ウィットロック
最晩年のジュディ・ガーランド、彼女の知られざる苦悩、子供たちへの深い愛情、1968年ジュディはロンドンで5週間にも及ぶ連続ライブを敢行した。半年後47歳の若さで死んでしまった歌姫だった。ちょうど昨夜神田沙也加が急逝したという報が駆け巡った。有名人の2世ながら期待に応える活躍をしていたと思われるが、人知れず深い苦悩があったのだろうか。
『マイル22』(Mile 22)
2018年・アメリカ 監督/ピーター・バーグ
出演/マーク・ウォールバーグ/イコ・ウワイス/ジョン・マルコヴィッチ/ローレン・コーハン
展開が激し過ぎてついていけない。ひとつの筋書きに余計な紆余曲線を追加して観客をわざと理解不能にしているように見える。邪道な描き方だ。
『レッド・ドーン』(RED DAWN)
2012年・アメリカ 監督/ダン・ブラッドリー
出演/クリス・ヘムズワース/ジョシュ・ペック/ジョシュ・ハッチャーソン/エイドリアンヌ・パリッキ
空一面に戦闘機とパラシュートが襲来した。北朝鮮がアメリカを攻撃してきたらしい。四流映画はそこそこに行かない。いっそ五流映画に成り下がってしまえば、そこそこ面白いのに。
『正しい距離』(La giusta distanza/The Right Distance)
2007年・イタリア 監督/カルロ・マッツァクラティ
出演/ドリアーナ・レオンデフ/クラウディオ・ピエルサンティ/カルロ・マッツァクラティ/マルコ・パテネッロ
イタリアの小さな村、事件が起こるまでが長過ぎて、それまでの話が本筋だったのか、事件が本筋だったのかが分からない。イタリアのペーソスが残ってはいるが、アフリカ、アラブからの移民が多くなった昨今、文化も風習も世界規模で変革を遂げつつある。
『アンディ・ガルシア 沈黙の行方』(THE UNSAID)
2001年・アメリカ 監督/トム・マクローリン
出演/アンディ・ガルシア/ヴィンセント・カーシーザー/リンダ・カーデリーニ/オーガスト・シェレンバーグ
心理学では救えない人間の心のはずなのに、幻想に紛れて助かる人も少しはいるのかもしれない。
『モデル・シチズン 忍び寄る魔の手』(Model Citizen)
2019年・アメリカ 監督/マーク・ギャント
出演/キャシー・ハワース/ショーン・パイフロム/ケビン・フォンテイン/マリー・ワゲンマン
今日は、2021年12月13日(月曜日)。誘拐事件の三流映画の典型。三流映画には三流映画の原因があるんだよと言われてもねぇ~。
『パパが遺した物語』(Fathers and Daughters)
2015年・アメリカ/イタリア 監督/ガブリエレ・ムッチーノ
出演/ラッセル・クロウ/アマンダ・セイフライド/アーロン・ポール/ダイアン・クルーガー
交通事故で母を亡くし、それ以来著名な作家の父と過ごした幼少期のトラウマが厳しい。同乗者だった妻を失った作家の父の苦悩が幼い少女の心の中に棲みついてしまったのだろうか。この映画を観た人同士なら、人生を語り合うことが出来るかもしれない。
『アメイジング・ジャーニー 神の小屋より』(The Shack)
2017年・アメリカ 監督/スチュアート・ヘイゼルダイン
出演/サム・ワーシントン/オクタヴィア・スペンサー/グラハム・グリーン/ラダ・ミッチェル/すみれ
少女誘拐事件かと思いきや「神との対話」「禅問答」といった内容だった。結構重いがなかなか。キリスト教の布教映画と見る人もいるかもしれない。
『フランス外人部隊 アルジェリアの戦狼たち』(Simon: An English Legionnaire)
2002年・イギリス 脚本/ウィリアム・M・エイカーズ
出演/ポール・フォックス/トム・ハーディ/ケイト・メイバリー/アイトール・メリノ
フランス外人部隊に入ったイギリス人が主人公。日本の二等兵物語のような教官や先輩のいじめが不思議に映った。軍隊生活なんて、とてもじゃないけど耐えられないだろうな~。
『スクランブル』(Overdrive)
2017年・フランス 監督/アントニオ・ネグレ
出演/アナ・デ・アルマス/スコット・イーストウッド/ゲイア・ウェイス/フレディー・ソープ
「アル・カポネが銃撃用に改造した車」などの高級クラシックカー専門の窃盗団アクション映画。今どきは車になんかちっとも興味のない若者ばかりでは、こんな映画も流行らないだろう。それにしても酷い邦題にあきれ返る。
『パーフェクト・センス』(Perfect Sense)
2011年・イギリス 監督/デヴィッド・マッケンジー
出演/ユアン・マクレガー/エヴァ・グリーン/ユエン・ブレムナー/スティーヴン・ディレイン
観始まって半分くらいになってからやめてしまうのは極偶にしかない。5分もしないで観終わってしまうのは年がら年中。情報がない分、確率が悪い。今の時代を醸し出すような感染病の話だった。臭覚から味覚もなくなって世界は荒れていった。気持ち悪くなるような映像にちょっと。
『ヴェノム』(Venom)
2018年・アメリカ 監督/ルーベン・フライシャー
出演/トム・ハーディ/ミシェル・ウィリアムズ/リズ・アーメッド/スコット・ヘイズ
世界的な流行病は歴史の繰り返しなのか、未来への序章なのか? 映画で繰り返される異星人の来襲は、予告編なのかもう現実の一端なのか? アメリカの漫画とは馬鹿に出来ない末恐ろしさがある。
『アメリカン・バーニング』(American Pastoral)
2016年・アメリカ/香港 監督/ユアン・マクレガー
出演/ユアン・マクレガー/ジェニファー・コネリー/ダコタ・ファニング/ピーター・リーガート
「反戦」「革命」とかいう文字がはびこっていた時代、そんな活動に傾倒していった若者の両親は、本人以上の苦悩ある人生と向き合わなければなかった。ひとつの人生と言ってしまえない、人間の本質を問われる状態に誰が耐えられるだろうか。
『デンジャー・クロース 極限着弾』(Danger Close: The Battle of Long Tan)
2019年・オーストラリア 監督/クリフ・ステンダーズ
出演/トラヴィス・フィメル/リチャード・ロクスバーグ/ルーク・ブレイシー/ダニエル・ウェバー
ベトナム戦争時の1966年8月、南ベトナムの農園地帯・ロングタンでオーストラリア軍108人が南ベトナム解放民族戦線の2000人と対峙した「ロングタンの戦い」を描いた作品。
『ザ・クーリエ』(The Courier)
2020年・イギリス/アメリカ 監督/ザカリー・アドラー
出演/オルガ・キュリレンコ/ゲイリー・オールドマン/アミット・シャー/ウィリアム・モーズリー
配達人は元女兵士。それにしても強過ぎる主人公にはもう笑うしかない。ちょっと乱暴なアクション映画。
『戦う翼』(The War Lover)
1962年・イギリス/アメリカ 監督/フィリップ・リーコック
出演/スティーヴ・マックィーン/ロバート・ワグナー/シャーリー・アン・フィールド/マイケル・クロフォード
1943年イギリス、アメリカの戦闘機乗りたちのものがたり。戦争ものは、もうコメントを書く気力がわいてこなくなった。恋物語があることが救われる。
『クリスマス・カンパニー』(Santa & Cie/Christmas & Co.)
2017年・フランス/ベルギー 監督/アラン・シャバ
出演/アラン・シャバ/ゴルシフテ・ファラハニ/ピオ・マルマイ/オドレイ・トトゥ
引き続き早目のクリスマス気分。フランス風の独特なエスプリ溢れるサンタクロース物語に苦笑しながら。外国人は素直にクリスマス・ストーリーを描くことが本質なんだ、と。
『サンタクロースになった少年』(Christmas Story)
2007年・フィンランド 監督/ヨハ・ウリオキ
出演/ハヌ・ペッカ・ビョルクマン/カリ・ヴァーナネン/ミナ・ハップキラ/ミッコ・レッピランピ
1985年スーパーマン・チームが作った『サンタクロース』をヘラルドが配給した。ようやく出来上がった作品を誰かがいち早く観なければならないと、ロンドンに一人旅した記憶が蘇る。内容的には今回の映画の方がはるかに素敵だ。絵本を観ているような気にさせられる。日本語版にして大きなスクリーンで親子に観てもらいたい映画だ。
『アンハサウェイ 裸の天使』(HAVOC)
2005年・アメリカ 監督/バーバラ・コップル
出演/アン・ハサウェイ/ビジュー・フィリップス/フレディ・ロドリゲス/シリ・アップルビー
「HAVOC」とは、(自然力・暴動などの)(めちゃめちゃな)破壊、大荒れ、大混乱 という意味らしい。アン・ハサウェイがプリンセスのイメージが定着し、理想の役が得られずに低迷していた時代の大失敗作だろう。
『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』(Les traducteurs/The Translators)
2019年・フランス 監督/レジス・ロワンサル
出演/ランベール・ウィルソン/オルガ・キュリレンコ/アレックス・ロウザー/シセ・バベット・クヌッセン
映画らしくて映画らしい映画を観た。『9人の翻訳家』だけで充分な邦題。こんなつまらない副題を付ける配給会社はくそくらえだ。
『バイス』(Vice)
2018年・アメリカ 監督/アダム・マッケイ
出演/クリスチャン・ベール/エイミー・アダムス/スティーヴ・カレル/サム・ロックウェル
第43代アメリカ合衆国大統領ジョージ・W・ブッシュの下で副大統領を務め、「史上最強の副大統領」「影の大統領」と評され、「史上最悪の副大統領」とも呼ばれたディック・チェイニーを描いている。ダイナミックなアメリカ合衆国の政治舞台は日本なんか足下にも及ばない。
『プライベート・ウォー』(A Private War)
2018年・アメリカ 監督/マシュー・ハイネマン
出演/マリー・ブレナー/リー・ブロダ/ベス・コノ/ジェイソン・レズニック
2012年にシリアで取材中に死亡した戦場記者メリー・コルヴィンを描いている。ヘラヘラとテレビに出ている軟弱従軍記者もどきとは雲泥の差がある。久しぶりにハードな内容に圧倒された。
『ナイト・ガーディアンズ』(Nochnye strazhi/Guardians of the Night/Night Guards)
2016年・ロシア 監督/エミリス・ベリビス
出演/イワン・ヤンコフスキー/レオニド・ヤルモルニク/ルボフ・アクショノーヴァ
ロシア製偽物アクション・魔王伝説的ストーリー。こういう映画を観終わるには時間がかかるけれど、満足感は一切なく疲労だけが蓄積される。
『ルビイ』(キング・ヴィダー)
1952年・アメリカ 監督/キング・ヴィダー
出演/ジェニファー・ジョーンズ/チャールトン・ヘストン/カール・マルデン/ジョセフィン・ハッチンソン
恋多きジャジャウマ娘が周りの人の誤解を受けながらも健気に生きていく姿が哀しい。
『Mr.&Ms.スティーラー』(Lying and Stealing)
2019年・アメリカ 監督/マット・アセルトン
出演/テオ・ジェームズ/エミリー・ラタコウスキー/フレッド・メラメッド/エボン・モス=バクラック
途中でかなりの時間を眠ってしまった。泥棒成金の超出来損ないのような映画みたいな気がした。ほとんど観ていないけど。
『リズム・セクション』(The Rhythm Section)
22019年・イギリス/アメリカ/スペイン 監督/リード・モラノ
出演/ブレイク・ライヴリー/ジュード・ロウ/スターリング・K・ブラウン/リチャード・ブレイク
ど素人が殺し屋になっても面白くない。ちょっと無理があると、映画に惹かれなくなってくる。
『メリッサ・マッカーシーinザ・ボス 世界で一番お金が好き!』(The Boss)
2016年・アメリカ 監督/ベン・ファルコーン
出演/メリッサ・マッカーシー/クリステン・ベル/ピーター・ディンクレイジ/エラ・アンダーソン
こんなハチャメチャな映画を観ていると、自分の小ささが馬鹿らしくて仕方がなくなる。
『5パーセントの奇跡 嘘から始まる素敵な人生』(My Blind Date with Life)
2017年・ドイツ 監督/マルク・ローテムント
出演/コスティア・ウルマン/ヤコブ・マッチェンツ/アンナ・マリア・ミューエ/ニラム・ファルーク
嘘から始まっても、最後には嘘を明らかにしなければ人生は始まらない。
『ジョン・ウィック:チャプター2』(John Wick: Chapter 2)
2017年・アメリカ 監督/チャド・スタエルスキ
出演/キアヌ・リーブス/コモン/ローレンス・フィッシュバーン/リッカルド・スカマルチョ
ジョン・ウィックはすご~くつよ~い。
『エントラップメント』(Entrapment)
1999年・アメリカ/イギリス/ドイツ 監督/ジョン・アミエル
出演/ショーン・コネリー/キャサリン・ゼタ=ジョーンズ/ウィル・パットン/モーリー・チェイキン
ショーン・コネリーは昨年(2020年)10月に90歳で亡くなった。ある日、ヘラルドの社長と副社長が、彼が日本を離れる日に成田空港に近いゴルフ場で一緒にゴルフをするということを聞いたことがあった。懐かしい現役時代。
『パリの家族たち』(La fete des meres)
2018年・フランス 監督/マリー=カスティーユ・マンシオン=シャール
出演/オドレイ・フルーロ/クロチルド・クロ/オリヴィア・コート/パスカル・アルビロ/ジャンヌ・ローザ
フランスの女性大統領からパリの立ちんぼまで、パリに暮らす数組の女性たちの今の姿が映し出される。女性同士の喧嘩言葉を聞いて戦慄におののく日本人男性老人。
『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』(Les Heritiers)
2014年・フランス 監督/マリー=カスティーユ・マンシオン=シャール
出演/アリアンヌ・アスカリッド/アハメッド・ドゥラメ/ノエミ・メルラン/ジュヌヴィエーヴ・ムニシュ
屁でもない高校生たちが、「アウシュヴィッツ」という難しいテーマを突きつけられて、収容所から生き残った老人の生の話を聞いた時から人生が変わったように目の前が開けていった。
『フランシスコの2人の息子』(O'RIA DE ZEZE' DI CAMARGO & LUCIANO)
2005年・ブラジル 監督/ブレノ・シルべイラ
出演/アンジェロ・アントニオ/ジラ・パエス/ダブリオ・モレイラ/マルコス・エンヒケ
実話に基づく音楽成功物語。ちょっとかったるいけれど、成功物語は観ていて嬉しい。音楽がブラジルのカントリーなのが新鮮。
『パリに見出されたピアニスト』(Au bout des doigts)
2018年・フランス/ベルギー 監督/ルドヴィク・バーナード
出演/ジュール・ベンシェトリ/ランベール・ウィルソン/クリスティン・スコット・トーマス
実話に基づく。原題は「指先で(未来をつかむ)」。せめて「パリが見つけたピアニスト」としゃれてみないか宣伝部さんよ。
『ローマの教室で 我らの佳き日々』(IL ROSSO E IL BLU)
2012年・イタリア 監督/ジュゼッペ・ピッチョーニ
出演/マルゲリータ・ブイ/リッカルド・スカマルチョ/ロベルト・ヘルリッカ
イタリアの高校・学園もの。変わった先生が3人、一向に話の進まないストーリー。人生のある時期はこんなものだという示唆に富んだ話なのかもしれない。
『未来よ こんにちは』(L'avenir/Things to Come)
2016年・ドイツ/フランス 監督/ミア・ハンセン=ラヴ
出演/イザベル・ユペール/アンドレ・マルコン/ローマン・コリンカ/エディット・スコブ
字幕に寺尾次郎というヘラルドの後輩の名前が出ていた。才能のあった奴だったがもう亡くなってしまった。こうやって私のように世の中に必要ない人間は生き残り、必要な輩は早々と世をあとにしている。
『ジゴロ・イン・ニューヨーク』(Fading Gigolo)
2013年・アメリカ 監督/ジョン・タトゥーロ
出演/ジョン・タトゥーロ/ウディ・アレン/ヴァネッサ・パラディ/リーヴ・シュレイバー
ウディ・アレンの映画はイマイチ笑いがわいてこない。不思議な感覚は続く。
『X-ミッション』(Point Break)
2015年・アメリカ/ 監督/エリクソン・コア
出演/エドガー・ラミレス/ルーク・ブレイシー/テリーサ・パーマー/デルロイ・リンドー
1991年公開の『ハートブルー』のリメイク/リ・イマジネーション作品である、という。その作品はヘラルドの配給だった。
『永遠の門 ゴッホの見た未来』(At Eternity's Gate)
2018年・アメリカ/フランス 監督/ジュリアン・シュナーベル
出演/ウィレム・デフォー/オスカー・アイザック/マッツ・ミケルセン/マチュー・アマルリック
狂気は最高の藝術だ、とフィンセント・ファン・ゴッホは言った。
『偽りの忠誠 ナチスが愛した女』(The Exception)
2016年・イギリス/アメリカ 監督/デヴィッド・ルボー
出演/リリー・ジェームズ/ジェイ・コートニー/クリストファー・プラマー/エディ・マーサン
ナチスの軍人にもいい奴がいたんだと。
『レッド・エージェント 愛の亡命』(Despite the Falling Snow)
2016年・イギリス/カナダ 監督/シャミン・サリフ
出演/レベッカ・ファーガソン/チャールズ・ダンス/サム・リー/ドアンチュ・トラウェ/ベン・バット
冷戦時代のアメリカとソ連のスパイ活動がイマイチ。そう少し何とかなったろうと思わざるを得ない。
『キル・ウィットネス』(The Pineville Heist)
2016年・カナダ/オーストラリア 監督/Lee Chambers
出演/ベイジル・ホフマン/ジェイコブ・ブラウン/プレスリー・マッサーラCarl Bailey
ちょっと乱暴なストーリーと映像。
『伝説の白い馬』(The Silver Brumby)
1993年・オーストラリア 監督/ジョン・タトゥリス
出演/キャロライン・グッドオール/ラッセル・クロウ/アミ・デイミオン/ジョニー・ラーエン
ちょっとかったるいつくり話の映像化。
『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(Knives Out)
2019年・アメリカ 監督/ライアン・ジョンソン
出演/ダニエル・クレイグ/クリス・エヴァンス/アナ・デ・アルマス/ジェイミー・リー・カーティス
『ラブ・アット・サンセットテラス』(Love at Sunset Terrace)
2020年・カナダ 監督/ヘザー・ホウソーン・ドイル
出演/エレン・ウォグロム/カーロ・マークス/エリカ・トレンブレイ/メイガン・ヘファーン
『ジャスト・フォー・ザ・サマー』に似た雰囲気の映画だった。同じような景色と同じような環境がカナダへの憧れの一因になっているのだろう。
『ジャスト・フォー・ザ・サマー 夏の間だけ』(Just for the Summer)
2020年・カナダ 監督/デイビット・I・シュトラッサー
出演/ブラント・ドーハティ/ヘイレイ・セールス/リンダ・ダーロウ/ターシャ・シムズ/エマ・ジョンソン
ほのぼのとした周りの人たちに助けられて、人生はすこしばかり潤った空気を吸えるのかもしれない。
『オール・マイ・ライフ』(All My Life)
2020年・アメリカ 監督/マーク・メイヤーズ
出演/ジェシカ・ローテ/ハリー・シャム・Jr/エヴァー・キャラダイン/キアラ・セトル
結婚をすることを決断した二人だったが、彼氏に不治の病が見つかり、結婚式後になくなってしまう。何かが起こるのが映画だが、何も起こらない素直なストーリー、実話に基づくとはいえ今どきこの程度が映画化されるのが不思議だ。
『楽園』
2019年(令和3年)・日本 監督/瀬々敬久(鈴木俊久)
出演/綾野剛/杉咲花/佐藤浩市/柄本明/村上虹郎/片岡礼子/黒沢あすか/根岸季衣/石橋静河
重い、暗い映画。日本映画の伝統を受け継ぐようなちんたらした進行に辟易する。こういう映画を好きな人はいるのだろう。それとは真反対の域に生きている自分の人生を感じる。
『ファイナル・スコア』(Final Score)
2018年・イギリス/アメリカ 監督/スコット・マン
出演/デイヴ・バウティスタ/ピアース・ブロスナン/レイ・スティーヴンソン/ラルフ・ブラウン
サッカー場と大観衆を使ったアクション映画。相変わらず悪者の親玉はなかなか死なない。現実味からどんどん離れていくシーンに飽きが来る。ハラハラ、ドキドキの要素が遠のいていくのが最大の欠点。
『ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋』(Long Shot)
2019年・アメリカ 監督/ジョナサン・レヴィン
出演/シャーリーズ・セロン/セス・ローゲン/オシェア・ジャクソン・Jr/アンディ・サーキス
現役の米国務長官とベビーシッターされていた男の偶然の出逢いは、ありえないシチュエーションを作り出した。軽いコメディでありながら、言っていることはいちいちごもっとも。このあたりが、おちゃらけしか表現できない日本映画のコメディと徹底的に違うところ。
『デイライト』(Daylight)
1996年・アメリカ 監督/ロブ・コーエン
出演/シルヴェスター・スタローン/エイミー・ブレネマン/スタン・ショウ/ヴィゴ・モーテンセン
大パニック、大アクション映画。ニューヨークとニュージャージー州を結ぶホランドトンネルでの大事故。パニック映画はさほど好きではないが、観始まっていしまえば。スタローン50歳の時の映画、まだ若い。
『ネクスト・ドリーム/ふたりで叶える夢』(The High Note)
2020年・アメリカ 監督/ニーシャ・ガナトラ
出演/ダコタ・ジョンソン/トレイシー・エリス・ロス/ケルビン・ハリソン・ジュニア/アイス・キューブ
歌手の成功物語はいつも観ていて楽しい。今回は、歌手をプロデュースする若い女性の物語。ほんの小さな穴からしか入れない世界に入るには、どうしたらよいかを教えてくれるようなストーリー。涙が出るほど嬉しい。
『ベン・イズ・バック』(Ben is Back)
2018年・アメリカ 監督/ピーター・ヘッジズ
出演/ジュリア・ロバーツ/ルーカス・ヘッジズ/キャスリン・ニュートン/コートニー・B・ヴァンス
19歳のベンが薬物依存症の治療施設を抜け出し帰ってきた。若くして施設に入らなければならないほどに病的になってしまった者は、本人の意志とは関わりなく世間から矯正の姿が見えなくなっている。悲劇だが本当だろう。
『ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像』(Tuntematon mestari/ONE LAST DEAL)
2018年・フィンランド 監督/クラウス・ハロ
出演/ヘイッキ・ノウシアイネン/ピルヨ・ロンカ/アモス・ブロテルス/ステファン・サウク
しがない美術商のおじいちゃんが死ぬ前に大ごとを成し遂げようと奮闘する。高値で取引される名画と称される絵画も、買い手が付かなければ一銭の価値もない。
『恐竜が教えてくれたこと』(My Extraordinary Summer with Tess)
2019年・オランダ/ドイツ 監督/ステフェン・ワウテルロウト
出演/Sonny Coops Van Utteren/ジョゼフィーン・アレンドセン/Tjebbo Gerritsma
一週間のサマーバカンスを楽しむため、家族とともにオランダ北部の島にやってきたサムは11歳の男の子。恐竜は何も教えてくれないけど、なんか変な映画のたぐい。
『ロード・ジム』(LORD JIM)
1965年・イギリス 監督/リチャード・ブルックス
出演/ピーター・オトゥール/ジェームズ・メイソン/クルト・ユルゲンス/ジャック・ホーキンス/伊丹十三
原作者が「地獄の黙示録」と同じ人(ジョセフ・コンラッド)だという。船乗りの下士官になりたての時に犯してしまった罪を、一生の傷として潔く生きてゆく男らしさに惚れる。
『ストリート ファイターを継ぐ男』(Street)
2015年・アメリカ 監督/ブラッドフォード・メイ
出演/クインシー・ブラウン/ミンディ・ロビンソン/マーク・ライアン/ケイト・マイナー
ロシア系マフィアのやり口が酷い。勝手にいちゃもんを付けておいて、落とし前を付けると言い出すあたりは、日本の敗戦に便乗してやりたい放題の国のあり方によく似ている。
『クライムダウン』(A LONELY PLACE TO DIE)
2011年・イギリス 監督/ジュリアン・ギルビー
出演/メリッサ・ジョージ/エド・スペリーアス/イーモン・ウォーカー/ショーン・ハリス
ミステリーに登山の要素が加わっている。ネタ晴らしになってしまうが、主人公たち5人のうち4人は死んでしまう。恐ろしい誘拐事件、罪が重いのが分かる。
『インターセクション』(INTERSECTIONS)
2013年・フランス 監督/デヴィッド・マルコーニ
出演/ジェイミー・アレクサンダー/フランク・グリロ/ロシュディ・ゼム/マリ=ジョゼ・クローズ
リュックベッソン製作、乾いたアクション映画。モロッコの砂漠で車が事故る。3組の登場人物が複雑に絡み合って、映画をわざわざ混乱させている。モロッコか~!、一度訪れておきたかった場所だ。
『コルト45 孤高の天才スナイパー』(Colt 45)
2015年・フランス 監督/ファブリス・ドゥ・ヴェルツ
出演/ジェラール・ランヴァン/アリス・タグリオーニ/ジョーイ・スタール/イマノル・ペルセ
孤高の天才スナイパーとは酷い邦題だ。銃オタクの警察官の物語。国家機密以上の国家機密があるようだが、ここはフランス。警察権が信用できないのは日本も同じ。ワクチンの嘘が蔓延るのも、こういう風潮が蔓延しているからだろう。
『メカニック・ラブ』(The Mechanics of Love)
2017年・アメリカ 監督/デヴィッド・ウィーヴァー
出演/シェネイ・グライムス/タイラー・ハインズ/ロックリン・マンロー/エミリー・テナント/ブレア・ペナー
いい加減な邦題を付けて気取っているのはどこの配給会社だろうか。英語が良く分からない自分にも違和感のある日本語題名。恋は機械的に操作できるものではない。
『米軍極秘部隊ウォー・ピッグス』(War Pigs)
2015年・アメリカ 監督/ライアン・リトル
出演/ルーク・ゴス/ドルフ・ラングレン/ミッキー・ローク/チャック・リデル/スティーヴン・ルーク
大掛かりな戦争映画ではなくテレビ映画の戦闘は、ちょっとおとなしくて観易い。兵隊さんの基本姿勢を表現しているようなストーリーとシーン。
『タイムリミット 見知らぬ影』(Steig. Nicht. Aus!)
2018年・ドイツ 監督/クリスティアン・アルヴァルト
出演/ヴォータン・ヴィルケ・メーリング/ハンナー・ヘルツシュプルンク/クリスティアーネ・パウル
ドイツ映画を観ることはなかなかない。偏見を承知で云うなら、ドイツ映画らしく濃くて、しつこくて、休まる暇がない。緻密な割には辻褄の合わないシーンも。
『アナザー・タイム』(Another Time)
2018年・アメリカ 監督/トーマス・ヘネシー
出演/ジャスティン・ハートリー/アリエル・ケベル/ジェームズ・カイソン・リー/クリシェル・スタウス
ちょっと変わったタイムスリップもの。好きな分野だけに興味がわく。巡り合った女性に会うために5年前にタイムスリップしたけれど・・・。なんとも微笑ましい。
『ロマンス・リトリート 恋のスクープ』(Romance Retreat)
2019年・カナダ 監督/スティーヴ・ディマルコ
出演/アマンダ・シュル/モーガン・デイビット・ジョーンズ/エリック・ヒックス/パトリス・グッドマン
アメリカの若いジャーナリストが正義に燃えて記事を書いても、編集長に購読者うけする内容に変えられてしまうなんて。ワクチンにまつわる嘘の噂をいとも簡単に信じてしまう輩が結構いることには驚きしかない。
『Something Borrowed/幸せのジンクス』(SOMETHING BORROWED)
2011年・アメリカ 監督/ルーク・グリーンフィールド
出演/ジニファー・グッドウィン/ケイト・ハドソン/コリン・エッグレスフィールド/ジョン・クラシンスキー
同性の親友は子供の頃からいつまで続くのだろうか。しかもその親友に結婚の相手まで紹介するかたちになってしまった。でも本当に好きだったのは・・・・。そんな恋が多いのかも。
『ピース・オブ・ケイク グランマのレシピ』(Love is a Piece of Cake)
2020年・アメリカ 監督/デイビット・I・シュトラッサー
出演/リンジー・ゴート/グレイストン・ホルト/ジュリア・ベンソン/リンゼイ・ウィンチ
主人公は女性、祖母のレシピとケーキ作りの思いをケーキ店に注いでいる。恋の相手はシングルファーザー、いつもの設定とは男と女が逆転している。シングルファーザーが5歳くらいの女の子を育てられる社会環境がアメリカにはあるのだ、きっと。
『セカンド・チャンス 甘くほろ苦い初恋』(Advance & Retreat)
2016年・アメリカ 監督/スティーヴン・R・モンロー
出演/ライリー・フォルケル/ケイシー・デドリック/ブランドン・ジョーンズ/ダーク・ブロッカー
軽いTV映画でテーマも軽い。初恋とキャリアを天秤にかけて、引き戻る勇気が彼女にはあった。甘酸っぱい恋の記憶は一体どれだけあるだろうか。
『午後3時の女たち』(Afternoon Delight)
2013年・アメリカ 監督/ジル・ソロウェイ
出演/キャスリン・ハーン/ジュノー・テンプル/ジョシュ・ラドナー/ジェーン・リンチ
とてもじゃないけどアメリカ社会の一員として定住するのはまず無理だな、という印象が襲ってきた。だから、日本村やチャイナタウンとして群れるのが普通になっているのだろう。
『美しすぎる裸婦』(Strangers of Patience)
2018年・ロシア 監督/ブラディミール・アレニコフ
出演/コンスタンチン・ラヴロネンコ/マジャ・ゾパ
絵画のタイトルに使われる「裸婦」。少々エクセントリックな写真家が一目惚れして撮り始まった。可愛いロシア女性と狂気の写真家、終わり方がよく分からない。
『ライフ』(Life)
2017年・アメリカ 監督/ダニエル・エスピノーサ
出演/ジェイク・ジレンホール/レベッカ・ファーガソン/ライアン・レイノルズ/真田広之
近未来宇宙船ストーリー。真田広之は日本人の乗組員。問題ない英語を喋っていたような気がするが、緊急事態に冷静な態度を見せているのは彼だけ。本当に冷静なのか演技が追いつかないのか分からなかった。
『フェイク・クライム』(Henry's Crime)
2011年・アメリカ 監督/マルコム・ヴェンヴィル
出演/キアヌ・リーブス/ヴェラ・ファーミガ/ジェームズ・カーン/ピーター・ストーメア
キアヌ・リーブスは一風変わった映画に出演する傾向にあるような気がしてならない。一貫性のない不思議な映画。ジャンル分けが出来ない。
『ホステージ』(Hostage)
2005年・アメリカ 監督/フローラン・シリ
出演/ブルース・ウィリス/ケヴィン・ポラック/ベン・フォスター/ジョナサン・タッカー
日本にはいない交渉人、ロサンゼルス市警の敏腕交渉人がこの映画の主人公。故あって小さな町の警察署長に転身したが、また大きな事件を担当する羽目に。警察ものというよりはブルース・ウィリスのアクション映画という感じ。
『デス・ウィッシュ』(Death Wish)
2018年・アメリカ 監督/イーライ・ロス
出演/ブルース・ウィリス/ヴィンセント・ドノフリオ/エリザベス・シュー/ディーン・ノリス
妻と娘を守れなかった主人公は、アメリカ人らしく銃の力を借りて復讐と犯人探しに奔走する。世直し奉行のような存在は悪くない。
『ウォールフラワー』(The Perks of Being a Wallflower)
2012年・アメリカ 監督/スティーブン・チョボスキー
出演/ローガン・ラーマン/エマ・ワトソン/エズラ・ミラー/メイ・ホイットマン
青春っていいなぁ~。73歳になったって、少年のような心が生き生きしていたい。
『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(Little Women)
2019年・アメリカ 監督/グレタ・ガーウィグ
出演/シアーシャ・ローナン/エマ・ワトソン/フローレンス・ピュー/エリザ・スカンレン/ローラ・ダーン/ティモシー・シャラメ/メリル・ストリープ
この物語の4姉妹のように、わが3姉妹には、心豊かに、波乱に富んだ人生を送ってほしい。
『THE GUILTY/ギルティ』(Den skyldige)
2018年・デンマーク 監督/グスタフ・モーラー
出演/ヤコブ・セーダーグレン/イェシカ・ディナウエ/ヨハン・オルセン/オマール・シャガウィー
緊急通報指令室という日本の110番の究極形は、見えない人と、事件を解決するために奮闘する警察官のはなしだった。暗くて嫌な映画に見えたけれど・・・・。
『アメリカン・ドリーマー 理想の代償』(A Most Violent Year)
2014年・アメリカ 監督/J・C・チャンダー
出演/オスカー・アイザック/ジェシカ・チャステイン/アレッサンドロ・ニヴォラ/デヴィッド・オイェロウォ
清く正しく商売を全うしようとする人間が、清く正しくない業界、社会に立ち向かうには、並大抵のことではないことがよく分かった。
『パリ、憎しみという名の罠』(Carbone)
2017年・フランス/ベルギー 監督/オリヴィエ・マルシャル
出演/ブノワ・マジメル/ジェラール・ドパルデュー/ローラ・スメット/グリンジェ
権力、金、逆境を跳ね返す力、この3つが人間には必要らしい。昔の映画みたいに煙草をいつも吸っている主人公が煙たい。
『狼たちの報酬』(The Air I Breathe)
2007年・メキシコ/アメリカ 監督/ジェホ・リー
出演/フォレスト・ウィテカー/ブレンダン・フレイザー/サラ・ミシェル・ゲラー/ケヴィン・ベーコン/アンディ・ガルシア
少し先が見えてしまう特殊能力も、その過程に絡むことが出来なければ、見えていた結果だけが自分の身の回りに起こってしまう。
『夜に生きる』(Live by Night)
2016年・アメリカ 監督/ベン・アフレック
出演/ベン・アフレック/エル・ファニング/ブレンダン・グリーソン/クリス・メッシーナ
初めて恰好良いギャングの生き方を見た。
『ハングオーバー!!! 最後の反省会』(The Hangover Part III)
2013年・アメリカ 監督/トッド・フィリップス
出演/ブラッドリー・クーパー/エド・ヘルムズ/ザック・ガリフィアナキス/ケン・チョン/ヘザー・グラハム
ハチャメチャな物語もこの篇では少しまともに見えたからおもしろい。
『42 ~世界を変えた男~』(42)
2013年・アメリカ 監督/ブライアン・ヘルゲランド
出演/チャドウィック・ボーズマン/ハリソン・フォード/ニコール・ベハーリー/クリストファー・メローニ
二刀流の大谷を皆が見つめる光景は、白人の中に初めて入った一人だけの黒人選手と似通っているような気がした。
『カフカ「変身」』(Metamorphosis)
2019年・イギリス 監督/クリス・スワントン
出演/エイリーク・バー/ロバート・パフ/モーリン・リップマン/ローラ・リース
カミュの「ペスト」は不条理が集団を襲ったことを描いたが、カフカの「変身」は不条理が個人を襲ったことを描いた。ということらしいが、凡人には入り込めない領域に感じる。
『赤ずきん』(Red Riding Hood)
2011年・アメリカ/カナダ 監督/キャサリン・ハードウィック
出演/アマンダ・セイフライド/ゲイリー・オールドマン/ビリー・バーク/シャイロー・フェルナンデス
童話ではないミステリーなサスペンス、ファンタジー。
『ブラッドショット』(Bloodshot)
2020年・アメリカ 監督/デヴィッド・S・F・ウィルソン
出演/ヴィン・ディーゼル/エイザ・ゴンザレス/サム・ヒューアン/トビー・ケベル
久々のアクション映画は近未来的。なかなかおもしろかったが、いつの間にか眠りについていた。
『インクハート/魔法の声』(Inkheart)
2008年・アメリカ/イギリス/ドイツ 監督/イアン・ソフトリー
出演/ブレンダン・フレイザー/ヘレン・ミレン/ポール・ベタニー/イライザ・ベネット
活字のファンタジー世界を映像化するのは夢がある。おとぎの国のはなしが目の前に現れたら云うことない。
『ブラック・スマイル』(A Stranger with My Kids)
2017年・カナダ 監督/チャド・クロウチャク
出演/アシュレイ・スコット/ミッチ・ライアン/ウディ・ジェフリーズ/ディラン・キングウェル
前味も、中味も、後味も悪い映画だった。
『パーフェクト・リベンジ』(Matar el tiempo)
2015年・スペイン/アメリカ 監督/アントニオ・エルナンデス
出演/ベン・テンプル/ヨン・ゴンサレス/アイトール・ルナ/フランク・フェイス
やらせ、美人局かなと思っていたら、機転の利く優秀なサラリーマンの勇気ある行動だった。途中で止めないで良かった、とまで言えるかなぁ。
『アンドレア・ボチェッリ 奇跡のテノール』(La musica del silenzio/The Music of Silence)
2018年・イタリア 監督/マイケル・ラドフォード
出演/トビー・セバスチャン/ルイーザ・ラニエリ/ジョルディ・モリャ/アントニオ・バンデラス
イタリア語版ではなかったことが残念。英語版が吹き替えに感じてしまった。遅咲きのオペラ歌手の実話が気持ちいいい。成功物語に涙する自分がいる。ようやく自分が毎回涙を流す映画が分かってきた。
『ガレージセール・ミステリー2 友人の転落死』(Garage Sale Mysteries)
2013年・アメリカ 監督/
出演/ロリ・ロックリン/リック・ラヴァネロ/サラ・カニング/アンドリュー・ダンバー
引き続き2作目も観てしまった。もともとはテレビ映画シリーズなのはよく分かる。
『ガレージセール・ミステリー 探偵ジェニファー』(Garage Sale Mysteries)
2016年・アメリカ 監督/ニール・ファーンリー
出演/ロリ・ロックリン/サラ・ストレンジ/スティーヴ・ベーシック/ケビン・オグラディ
気楽な推理ものは観ていて疲れない。
『遥かなる大地へ』(Far and Away)
1992年・アメリカ 監督/ロン・ハワード
出演/トム・クルーズ/ニコール・キッドマン/トーマス・ギブソン/ロバート・プロスキー
アイルランドからアメリカに移民した青年とアイルランドではお嬢様として階級社会の頂点にいた女性との物語。一度観ていた気がしたが、最後半の早い者勝ち土地獲得レースのところばかり記憶に残っていたようだ。日本なら明治20年頃の話。まだまだ地球上の文明は開花していなかった。
『グランド・プロミス 23年後の再会』(La Gran Promesa)
2017年・メキシコ 監督/ホルヘ・ラミレス・スアレス
出演/フアン・マヌエル・ベルナル/イリティア・マンサニージャ/サム・トラメル/ソフィア・エスピノーサ
同じストーリでもアメリカ映画とどことなく違う匂いがして嬉しい。ひとつひとつの挙動に国民性みたいなものを感じるのは偏見かもしれない。DNAとやらは千年にもわたる人間性の証なのだから、違って当たり前のことなのだろう。
『エスケープ ナチスからの逃亡』(The Birdcatcher)
2019年・イギリス 監督/ロス・クラーク
出演/アウグスト・ディール/サラ・ソフィー・ボウスニーナ/アルトゥル・ハカラフティ/ヤコブ・セーダーグレン
ナチス・ドイツ占領下のノルウェーが舞台。オーストリアやフランスだけではなく北欧にまでナチスの愚行が及んでいたことは、驚きをもって私の生きているうちの記憶となっていくだろう。映画でしか知ろうとしないナチス、それ以上の事実を知ることの方がショックであろう。
『エジソンズ・ゲーム』(The Current War)
2017年・アメリカ 監督/アルフォンソ・ゴメス=レホン
出演/ベネディクト・カンバーバッチ/マイケル・シャノン/キャサリン・ウォーターストン/トム・ホランド
傑出した発明家として知られ、生涯におよそ1,300もの発明と技術革新を行ったエジソン、蓄音器、白熱電球、活動写真などが有名なところだろうか。電流戦争では直流にこだわり過ぎて交流を採用したニコラ・テスラおよびウェスティングハウスに敗れているという。様々な汚い行為もあったらしく、人格的には問題だったようだ。才能あり過ぎる人間の陥りやすい欠陥だろうか。
『男はつらいよ お帰り 寅さん』
2019年(令和元年)・日本 監督/山田洋次
出演/渥美清/倍賞千恵子/吉岡秀隆/後藤久美子/前田吟/池脇千鶴/夏木マリ/浅丘ルリ子
まったく寅さんに反応を示さなかった若い頃が懐かしい。その間に歴史的なシリーズとなっていったこの映画。ホッとする時間が堪らなくなっている。歳をとったのだろう。フラッシュバック的に映し出されるマドンナたちの姿に、自分の生きて来た時代を重ねていた。
『バッド・ダディ 史上最悪のツアーガイド』(THE CHAPERONE)
2011年・アメリカ 監督/スティーヴン・ヘレク
出演/トリプルH/ケヴィン・コリガン/アリエル・ウィンター/ホセ・ズニーガ
なんてことはない。
『ボーダー 二つの世界』(Grans)
2018年・スウェーデン/デンマーク 監督/アリ・アッバシ
出演/エヴァ・メランデル/エーロ・ミロノフ/ヨルゲン・トーソン/アン・ペトレン
不気味な映画に見えた。トロル信仰というものを知っていれば、もっと深く映画に関われたのかもしれない。肝心な要素である肉体的な特徴を、日本の無粋な検閲はぼかしという手法で映画の真髄を台無しにしている。映画世界に限ったことではないけれど、日本の未熟性はまだまだ続きそうだ。
『ファイナル・デスティネーション』(Final Destination)
2000年・アメリカ 監督/ジェームズ・ウォン
出演/デヴォン・サワ/アリ・ラーター/ショーン・ウィリアム・スコット/カー・スミス
人間の死の筋書きは決まっているらしい。
『ピエロがお前を嘲笑う』(Who Am I - Kein System ist sicher)
2014年・ドイツ 監督/バラン・ボー・オダー
出演/トム・シリング/エリアス・ムバレク/ヴォータン・ヴィルケ・メーリング/アントニオ・モノー・ジュニア
「アノニマス」という言葉が蔓延るようになってからサイバー世界は危険地帯になってきた。どこまでIT化されていくのだろうと不安な将来が見えないけれど、結局は人間がコントロールしなければ、何事も始まらないし何事も終わらない。
ピエロがお前を嘲笑う(Who Am I - Kein System ist sicher)
2014年・ドイツ 監督/バラン・ボー・オダー
出演/トム・シリング/エリアス・ムバレク/ヴォータン・ヴィルケ・メーリング/アントニオ・モノー・Jr
10年前の映画ですでにハッキングを詳しく映像化している。今やもう、この世界では素人が頭も手も出せない状態になっているのだろうと思う。それでもまだまだ「穴」は数多く存在するのだろう。馬鹿なアメリカ人は大谷の口座にどうやって他人がアクセス出来るんだろうとまったく素人集団ばかりの意見を吐いていた。そんなもの本人が知らない間になんでも可能なのだよ。もちろん、こっちとらだって素人、他人のパソコンを乗っ取ることすら出来るわけがない。
『ブラッド&トレジャー』(Blood & Treasure Season1)
2019年・アメリカ 監督/マシュー・フェダーマン
出演/マット・バー/ソフィア・パーナス/ジェームズ・キャリス/カティア・ウィンター/オデッド・フェール
テレビ映画。1話40分ちょい、一気に観なければ最後まで行き着けない最近のテレビ映画シリーズ。シーズン1・エピソード1からエピソード13まで一気に観てしまった。満足感は感じるけれど、壮大な劇場映画を観た時のような気持ちにはなれない。
『ファーストラヴ』
2021年(令和3年)・日本 監督/堤幸彦
出演/北川景子/中村倫也/芳根京子/板尾創路/石田法嗣/清原翔/高岡早紀/木村佳乃/窪塚洋介
『MEG ザ・モンスター』(The Meg)
2018年・アメリカ/中国 監督/ジョン・タートルトーブ
出演/ジェイソン・ステイサム/リー・ビンビン/レイン・ウィルソン/ルビー・ローズ/ウィンストン・チャオ
『素晴らしきかな、人生』(Collateral Beauty)
2016年・アメリカ 監督/デヴィッド・フランケル
出演/ウィル・スミス/エドワード・ノートン/キーラ・ナイトレイ/マイケル・ペーニャ/ナオミ・ハリス
『スカイスクレイパー』(Skyscraper)
2018年・アメリカ/中国 監督/ローソン・マーシャル・サーバー
出演/ドウェイン・ジョンソン/ネーヴ・キャンベル/チン・ハン/ローランド・ムーラー/ノア・テイラー
『ジーサンズ はじめての強盗』(Going in Style)
2017年・アメリカ 監督/ザック・ブラフ
出演/モーガン・フリーマン/マイケル・ケイン/アラン・アーキン/アン=マーグレット
『ラブ・レターズ 綴られた想い』(Sincerely, Yours, Truly)
2020年・カナダ 監督/アニー・ブラッドリー
出演/ナタリー・ホール/マーシャル・ウィリアムズ/ニッキー・ホワイトリー/シェリー・ミラー
『ブリミング・ウィズ・ラブ 幸せを呼ぶカフェ』(Brimming with Love)
2018年・アメリカ 監督/W・D・ホーガン
出演/ケルシー・チャウ/ジョナサン・ケルツ/ジョージ・ニューバーン/バリー・コービン
『NICE 2 MEET U ナイス・トゥ・ミート・ユー』(Nice 2 Meet U)
2013年・イギリス 監督/ナウ゛ィーン・メタ゛ラム
出演/アヒ゛シ゛ート・ フ゜ント゛ラ/レイチェル・ロホラン/ニティン・ハ゜ラシャル/シャム・ハ゛ット
『セクシャリティ』(Lime Salted Love)
2006年・アメリカ 監督/ダニエル・アグネロ/ジョー・ホール
出演/クリスタナ・ローケン/ダニエル・アグネロ/ジョー・ホール/デヴィッド・J・オドネル
『めぐり逢わせのお弁当』(Dabba、The Lunchbox)
2013年・インド/アメリカ/ドイツ 監督/リテーシュ・バトラ
出演/イルファーン・カーン/ニムラト・カウル/ナワーズッディーン・シッディーキー
『コッホ先生と僕らの革命』(Der ganz grose Traum)
2011年・ドイツ 監督/セバスチャン・グロブラー
出演/ダニエル・ブリュール/ブルクハルト・クラウスナー/ユストゥス・フォン・ドホナーニ/テオ・トレブス
『ビリーブ 未来への大逆転』(On the Basis of Sex)
2018年・アメリカ 監督/ミミ・レダー
出演/フェリシティ・ジョーンズ/アーミー・ハマー/ジャスティン・セロー/キャシー・ベイツ
2024/7月再び観たので記す
『ビリーブ 未来への大逆転』(On the Basis of Sex)
2018年・アメリカ 監督/ミミ・レダー
出演/フェリシティ・ジョーンズ/アーミー・ハマー/ジャスティン・セロー/キャシー・ベイツ
ハーバード大学の法科大学院から移ってコロンビア大学を首席で卒業したって、「女だから」「ユダヤ人だから」と門前払いの法律事務所が1970年のアメリカにもあったというのが驚く。もうとっくに先へ進んでいたと勝手に思っていたアメリカ社会が相当な差別社会だった。人種だけではなく男女差別がこんなに酷いとは。真似をすることに徹する国はある意味楽だ。まだまだ終わらないアメリカでの差別体質は、トランプなどという超差別主義者を生み出しそれを喜んでいる馬鹿な国民の集合体になり下がってしまった。
『マイ・プレシャス・リスト』(Carrie Pilby)
2016年・アメリカ 監督/スーザン・ジョンソン
出演/ベル・パウリー/ネイサン・レイン/ガブリエル・バーン/ヴァネッサ・ベイヤー
『ベスト・バディ』(Just Getting Started)
2017年・アメリカ 監督/ロン・シェルトン
出演/モーガン・フリーマン/トミー・リー・ジョーンズ/クインズ - レネ・ルッソ/ジョー・パントリアーノ
『欲望のバージニア』(Lawless)
2012年・アメリカ 監督/ジョン・ヒルコート
出演/シャイア・ラブーフ/トム・ハーディ/ゲイリー・オールドマン/ミア・ワシコウスカ
『つぐない』(Atonement)
2007年・イギリス/フランス/アメリカ 監督/ジョー・ライト
出演/ジェームズ・マカヴォイ/キーラ・ナイトレイ/シアーシャ・ローナン/ヴァネッサ・レッドグレイヴ
『ノクターナル・アニマルズ』(Nocturnal Animals)
2016年・アメリカ 監督/トム・フォード
出演/エイミー・アダムス/ジェイク・ジレンホール/マイケル・シャノン/アーロン・テイラー=ジョンソン
『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』(Demolition)
2016年・アメリカ 監督/ ジャン=マルク・ヴァレ
出演/ジェイク・ジレンホール/ナオミ・ワッツ/クリス・クーパー/ジュダ・ルイス
『奇跡が降る街』(29TH STREET)
1991年・アメリカ 監督/ジョージ・ギャロ
出演/ダニー・アイエロ/アンソニー・ラパリア/レイニー・カザン/フランク・ペシ
『ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー』(Rebel in the Rye)
2017年・アメリカ 監督/ダニー・ストロング
出演/ニコラス・ホルト/ゾーイ・ドゥイッチ/ケヴィン・スペイシー/サラ・ポールソン
『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』
2016年(平成28年)・日本 監督/三木康一郎
出演/岩田剛典/高畑充希/今井華/谷澤恵里香/相島一之/酒井敏也/木下隆行/ダンカン/大和田伸也/宮崎美子
『空に住む』
2020年(令和3年)・日本カ 監督/青山真治
出演/多部未華子/岸井ゆきの/美村里江(ミムラ)/岩田剛典/鶴見辰吾/岩下尚史/髙橋洋/大森南朋/永瀬正敏/柄本明
『クリード チャンプを継ぐ男』(Creed)
2015年・アメリカ 監督/ライアン・クーグラー
出演/マイケル・B・ジョーダン/シルヴェスター・スタローン/テッサ・トンプソン/フィリシア・ラシャド
『リリーのすべて』(The Danish Girl)
2015年・イギリス/アメリカ/ドイツ 監督/トム・フーパー
出演/エディ・レッドメイン/アリシア・ヴィキャンデル/マティアス・スーナールツ/ベン・ウィショー
『ディーン、君がいた瞬間』(Life)
2015年・アメリカ 監督/アントン・コービン
出演/ロバート・パティンソン/デイン・デハーン/ジョエル・エドガートン/ベン・キングズレー
『ダークサイド』(Looking Glass)
2018年・アメリカ 監督/ティム・ハンター
出演/レイ - ニコラス・ケイジ/マギー - ロビン・タニー/ハワード - マーク・ブルカス/トミー - アーニー・ライヴリー
『エリカ&パトリック事件簿 踊る骸』(Tyskungen/The Hidden Child)
2013年・ドイツ/スウェーデン 監督/ペール・ハネフョード
出演/クラウディア・ガリ/リチャード・ウルフセーテル/イーヴァ・フリショフソン/エドヴィン・エンドル
『運び屋』(The Mule)
2018年・アメリカ 監督/クリント・イーストウッド
出演/クリント・イーストウッド/ブラッドリー・クーパー/ローレンス・フィッシュバーン/マイケル・ペーニャ
『イフ・アイ・ステイ』(If I Stay)
2014年・アメリカ 監督/ R・J・カトラー
出演/クロエ・グレース・モレッツ/ミレイユ・イーノス/ジェイミー・ブラックリー/ジョシュア・レナード
2023年11月再び観たので記す
『イフ・アイ・ステイ 愛が還る場所』(If I Stay)
2014年・アメリカ 監督/R・J・カトラー
出演/クロエ・グレース・モレッツ/ミレイユ・イーノス/ジェイミー・ブラックリー/ジョシュア・レナード
好きな女優クロエ・グレース・モレッツが主演だった。最近はあの独特だった顔の雰囲気が、少し丸くなって普通になってきたようだ。単なる恋愛ものではないところがいい。チェロに魅せられた少女がジュリアード音楽院に合格する直前に家族全員が車の事故で・・・。本人は自分の臨終の姿を見ている。そんなこともありそうだと、4年前の心臓手術の時のことをかすかに想い出した。
『トゥームレイダー ファースト・ミッション』(Tomb Raider)
2018年・アメリカ 監督/ローアル・ユートハウグ
出演/アリシア・ヴィキャンデル/ドミニク・ウェスト/ウォルトン・ゴギンズ/ダニエル・ウー
今日は、2021年5月5日(祝・水)。
『シャザム! 』(Shazam!)
2019年・アメリカ 監督/デヴィッド・F・サンドバーグ
出演/ザッカリー・リーヴァイ/マーク・ストロング/アッシャー・エンジェル/ジャック・ディラン・グレイザー
『アリー/ スター誕生』(A Star Is Born)
2018年・アメリカ 監督/ブラッドリー・クーパー
出演/ブラッドリー・クーパー/レディー・ガガ/アンドリュー・ダイス・クレイ/デイヴ・シャペル
『ドライブ・ハード』(Drive Hard)
2014年・アメリカ/オーストラリア 監督/ブライアン・トレンチャード=スミス
出演/ジョン・キューザック/トーマス・ジェーン/ゾーイ・ヴェントゥーラ/クリストファー・モリス
『ロックアウト 20年目の真実』(Kill for Me/Lockout/No Beast So Fierce)
2016年・アメリカ 監督/ティム・マッキャン
出演/ベイリー・チェイス/キャスリン・アーブ/ディラン・ベイカー/エイミー・スパンガー
『Man on Fire』(Man on Fire)
1987年・フランス/イタリア 監督/エリ・シュラキ
出演/スコット・グレン/ジェイド・マル/ジョー・ペシ/ブルック・アダムス
『マックス2: ホワイトハウス・ヒーロー』(Max 2: White House Hero)
2018年・アメリカ 監督/ブライアン・レヴァント
出演/ゼイン・オースティン/フランチェスカ・カパルディ/ロックリン・マンロー/アンドリュー・カヴァダス
『ブルー・ダイヤモンド』(Siberia)
2018年・アメリ/カナダ 監督/マシュー・ロス
出演/キアヌ・リーヴス/アナ・ウラル/パシャ・D・リチニコフ/ユージン・リピンスキ
『ガーンジー島の読書会の秘密』(The Guernsey Literary and Potato Peel Pie Society)
2018年・イギリス/フランス 監督/マイク・ニューウェル
出演/リリー・ジェームズ/ミキール・ハースマン/グレン・パウエル/ジェシカ・ブラウン・フィンドレイ
『ビューティフル・ボーイ』(Beautiful Boy)
2018年・アメリカ 監督/フェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン
出演/スティーヴ・カレル/ティモシー・シャラメ/モーラ・ティアニー/エイミー・ライアン
『スパイの妻』
2020年(令和2年)・日本 監督/黒沢清
出演/蒼井優/高橋一生/東出昌大/坂東龍汰/恒松祐里/みのすけ/笹野高史/玄理(玄里)
『透明人間』(The Invisible Man)
2020年・アメリカ/オーストラリア 監督/リー・ワネル
出演/エリザベス・モス/オルディス・ホッジ/ストーム・リード/ハリエット・ダイアー
『ダイアナ』(Diana)
2013年・イギリアスカ 監督/オリヴァー・ヒルシュビーゲル
出演/ナオミ・ワッツ/ナヴィーン・アンドリュース/ダグラス・ホッジ/ジェラルディン・ジェームズ
『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』(Grace of Monaco)
2014年・フランス/アメリカ/ベルギー/イタリア 監督/オリヴィエ・ダアン
出演/ニコール・キッドマン/ティム・ロス/フランク・ランジェラ/パス・ベガ
『大統領の料理人』(Les Saveurs du palais)
2012年・フランス 監督/クリスチャン・ヴァンサン
出演/カトリーヌ・フロ/ジャン・ドルメッソン/イポリット・ジラルド/アルチュール・デュポン
『最高の人生のつくり方』(And So It Goes)
2014年・アメリカ 監督/ロブ・ライナー
出演/マイケル・ダグラス/ダイアン・キートン/スターリング・ジェリンズ/ロブ・ライナー
『ハリエット』(Harriet)
2019年・アメリカ 監督/ケイシー・レモンズ
出演/シンシア・エリボ/ジャネール・モネイ/ジョー・アルウィン/クラーク・ピータース
『明日への地図を探して』(The Map of Tiny Perfect Things)
2020年・アメリカ 監督/イアン・サミュエルズ
出演/キャスリン・ニュートン/ジョシュ・ハミルトン/カイル・アレン/アル・マドリガル
『ジョン・ウィック:パラベラム』(John Wick: Chapter 3 - Parabellum )
2019年・アメリカ 監督/チャド・スタエルスキ
出演/キアヌ・リーヴス/ハル・ベリー/ローレンス・フィッシュバーン/マーク・ダカスコス
『ミス・マープル パディントン発4時50分』(4: 50 FROM PADDINGTON)
1986年・アメリカ 監督/マーティン・フレンド
出演/ジョアン・ヒクソン/ デヴィッド・ホロヴィッチ/ジル・ミーガー/イアン・ブリンブル
『パリ、嘘つきな恋』(Tout le monde debout/Rolling to you)
2018年・フランス 監督/フランク・デュボスク
出演/フランク・デュボスク/アレクサンドラ・ラミー/エルザ・ジルベルスタイン/ジェラール・ダルモン
小さな嘘を平気でつきまくる欧米人というイメージは、映画の中で教えられてしまった勘違いかもしれない。ちょっとしたことでどうしてあーも簡単にバレル嘘をつくのだろうと、映画を観ながらいつも憂いていた。もしかするとそんなことはないのだろうと思ってみたところで、それ以上に小さな嘘でまみれた友達関係、恋人関係などを何度も観る羽目に陥っていた。
この映画はその小さな嘘を平気でつきまくっていた男の顛末を揶揄するようなストーリーで、ちょっと溜飲がさがった。もっとも相手の車椅子に乗った女性は、最初に会った時から彼が歩けない人だとは思わなかったと知っていたらしい。健常者でない人は、健常者ではない人の振りをする人のことをすぐに気づけるらしい。
最後にはハッピーエンドで終わることになるけれど、こんな嘘つきな男は幸せを得る資格がないと断言してしまう。それにしても小さな嘘をつく人がなんと多いことか。大きな嘘なら詐欺の類になってしまうから、小さな嘘をそんなに責めるものではないよ、とお叱りを受けそうだが。保身なのだろうか、真実を知られるのが怖いのだろうか、両方とも持ち合わせていない者にとっては、小さな嘘は身を亡ぼす入口だと大袈裟に思い込んでいる自分が異常なのか。
『オンネリとアンネリのおうち』(Onneli ja Anneli/Jill and Joy)
2014年・フィンランド 監督/サーラ・カンテル
出演/アーウ゛ァ・メリカント/リリャ・レフト/エイヤ・アフウ゛ォ/ヤッコ・サアリルアマ
1960年代に発表され、フィンランドで長く愛され続けるマリヤッタ・クレンニエミの児童文学「オンネリとアンネリ」シリーズを実写映画化。ある日、バラ通りで封筒を拾った仲良しのオンネリとアンネリ。封筒にはお金と「正直者にあげます」と書かれた手紙が入っていた。2人はそのお金でバラの木夫人というおばあさんから水色のおうちを買い、気難しそうなお隣さん、魔法が使える陽気なおばさん姉妹などご近所さんたちと交流しながら楽しいふたり暮らしをスタートさせる。(映画.comより)
夢のようなおはなし、世界が汚れた精神を洗ってくれる。みんないい人ばかりでコソ泥をやってしまった青年にも暖かい言葉が掛けられる。こんな風に地球上の国々も優しくなれたらなぁ~、などと夢想するのはいくら何でもいい歳をした老人の志向ではない、と厳しく自分を叱るしかない。
class="in1e"こういう童話がそんなに昔話的でなく生まれる時代性と社会性はどこから生まれてくるのだろうか。日本ではとうていあり得ない。いい人がいるのだったら必ず悪い人もいる、と教えるのが日本の社会だ。どうして悪い奴がいるのかは、その社会が持っている邪悪性によるところが多い。そういう意味ではフィンランドには無駄な邪悪はないのだろうと、憧れを持つ。ちなみにフィンランド語でタクシーは「Taksi」だった。
『500ページの夢の束』(Please Stand By)
2017年・アメリカ 監督/ベン・リューイン
出演/ダコタ・ファニング/トニ・コレット/アリス・イヴ/リヴァー・アレクサンダー
『スター・トレック』が大好きで、その知識では誰にも負けないウェンディの趣味は、自分なりの『スター・トレック』の脚本を書くこと。自閉症を抱える彼女は、ワケあって唯一の肉親である姉と離れて暮らしている。ある日、『スター・トレック』脚本コンテストが開催されることを知った彼女は、渾身の作を書き上げるが、もう郵送では締切に間に合わないと気付き、愛犬ピートと一緒にハリウッドまで数百キロの旅に出ることを決意する。(Filmarksより)
ただ単に自閉症の、と書いたところでその現実を体現する術がない。それを支援する個人、組織は到底アメリカの足下にも及ばない。姿を見るだけで涙が流れてくる。それは、自閉症の人たちを悲しむものではない。のほほんと何もしない、何も出来ない自分の不甲斐なさが悲しいのだ。せめて五体満足で生まれてきた自分が、ほんのちょっとでも何かが出来れば、少しは世の中が変わるのではないかと、本気に思っている。
脚本のコンクールに優勝したというハッピーエンドに終わらないこの映画、素敵なシーンが随所にあって、いつもながら心を洗われる。それにしても、それにしても、と自分を無理に責めてみたところでどうしようもない。せめてもし天国にいけるようなことがあったら、そこでは思いっきり社会貢献をしようと思う。そうなることを願いたい。キノフィルムズ/木下グループはいつもいい映画を配給している。
『アマンダと僕』(Amanda)
2018年・フランス 監督/ミカエル・アース
出演/ヴァンサン・ラコスト/イゾール・ミュルトゥリエ/ステイシー・マーティン/オフェリア・コルブ
全編フランス語だった。淡々とした物語に、肝心な事件が突如勃発する。その事件のあらましを映画は詳しく語らないが、一人のシングルマザーが突然亡くなってしまったという事実だけを伝えるのだった。残されたのは7歳の娘と近くに住んで交流の深い母親の弟だった。誰が親権を持つかというこの映画にとって些細なこともさらりとすり抜けていく。
7歳のアマンダと一緒に遊ぶ叔父さんは定職があるようなないような、アパートの管理人をしながら街灯の木を伐採して生計を立てている。そんなことはどうでもいい。誰がこの7歳の子供と一緒に暮らすのかだけが最大の関心ごとだった。叔父さん姉弟にはけ結構とんでいる母親が現在ロンドンに住んでいる。簡単にこういうシチュエーションを作れるヨーロッパ事情がうらやましい。
あまりにも淡々と進んでいく映画ストーリーと映像に飽きが来るのはいつもの如く。ちょっと苦手なんだよね~。アクション映画のドンパチには別の意味で飽きが来るけれど、話が進まない物語にはもっと飽きが激しくなる。悪い映画ではないし、どちらかというといい映画の部類に入るんだろうけれど、フランスのエスプリを充分に感じられるほどこちらの感覚が繊細ではなかった。
『アクシデント すべてを失った女』(Secrets at the Lake)
2019年・アメリカ 監督/ティム・クルーズ
出演/ニッキー・ウェラン/アンナ・ハッチソン/アリー・デベリ/ーカラ・ロイスター
メーガンは子供を乗せて運転していたところ、酔っ払い運転車とニアミスして事故を起こしてしまう。酔っ払い運転車が救助してくれれば助かったのにそのまま逃走され、子供たちは亡くなってしまう。その後空いた家で民泊サービスを始めたメーガンだったが、ある日見覚えのある車に乗った家族が泊まりにやって来て…(Webより)
すべてを失った女とは誰のことなのだろうか?観終わってから考えたけれど分からない。該当する女性は3人か4人、でもこういうタイトルが付けられるに相応しい女性は見つからなかった。欧米の信仰に深い人たちは、自分が起こした事故やたまたま見つけた事故に対する態度が極めて人間的だ。日本人はといえば、見て見ぬふりをする例えのごとく、なるべく事件にはかかわりあいたくないと思っている節がある。だからからではないだろうが、国会で何かを責められても知らぬ存ぜぬで押し通してしまう。万が一に音声や映像の証拠を突きつけられて、初めてその非を認めるといったあんばいだ。
いくらしらを切ったとしても、神様に嘘はつけないのだろう。いい意味で宗教心のある国民とそうでない国民との差が浮き彫りになる。いさぎよく罪を認めるなんて言うことは、日本人には無縁に見えてきた昨今の事件の顛末。上級国民と揶揄されながらも裁判で車の故障を主張しまくっている人間を観ていると、その人間よりもそういう証言を平然とさせてしまう弁護士先生の非人間さを憂うるしかない。
『ロスト・フロア』(Septimo)
2013年・スペイン/アルゼンチン 監督/パトクシ・アメズカ
出演/リカルド・ダリン/ベレン・ルエダ/オズヴァルド・サントロ/ホルヘ・デリア
いかにも日本人スタッフが考えた陳腐な邦題。精一杯不慣れな英語にも意味を持たせようとしている姿がしのばれる。原題は「7階」という意味で付けてあるようだ。行方不明になったまだ小学生の子供たちの住んでいるところがマンションの7階だったことから来ている。舞台はアルゼンチンのブエノスアイレス、いつものように別居中の夫婦がいた。
妻はスペインの実家に帰りたいと、出来るだけ早く夫に離婚の書類にサインをさせようとしている。そんななか、ある日の朝学校に行くために7階のマンションから下に降りるとき、下で待つ夫のもとに子供たちの姿は現れなかった。さて誘拐か、と子供たち探しが始まる。マンションの住人を巻き込んで、映画の誘拐事件のような様相を呈してくる。
どことなくローカル色豊かな映像となっているのに気づく。アメリカ映画ならこんな風には展開しないし、もっとスピーディーに物事が進行し、観客を飽きさせない。じーっと観ているしかない観客には、結末の楽しみしか残っていない。なるほど、と思わせる事件の顛末だが、なんかすっきりしない気分だけが遺ったようだ。
『タイム・チェイサー』(I'll Follow You Down)
2015年・カナダ 監督/リッチー・メタ
出演/ハーレイ・ジョエル・オスメント/ジリアン・アンダーソン/ルーファス・シーウェル/ヴィクター・ガーバー
行方不明になった父と再会するべくタイムトラベルに挑む科学者役を演じたSFサスペンス。幼い息子エロルや愛する妻と暮らす物理学者ゲイブが、突如として謎の失踪を遂げた。数年後、成長して科学者となった息子エロルは、父にまつわる衝撃的な事実を発見し、家族の絆を取り戻すべく奔走する。(映画.comより)
SF好きの私には堪らない映画のはずだったが。タイムトラベルして父親と再開するシーンに至るまでの時間が長過ぎて飽きてしまった。何度も何度もこういうタイムトラベルシーンを観ていると、最初からずーっと思い込んでいた現実感が薄れていく。やっぱりそんなことは無理なのかもしれない、という方向に自分の志向が傾きかけていくのがさみしい。
夢はあくまでも夢。夢が現実になってしまったら夢がなくなってしまう。手の届かない夢に向かって精進努力する姿が美しいのであって、名を成し功を遂げてしまった愚鈍な人間が権力の座にいることのほうがはるかに不幸だ。小さな目標が目の前にあるからこそ、人間は精を使い果たすのであって、満足した食欲を・・・・。
『サン・オブ・ゴッド』(Son of God)
2014年・アメリカ 監督/クリストファー・スペンサー
出演/ディオゴ・モルガド/アンバー・ローズ・レヴァ/セバスチャン・ナップ/デヴィッド・リントール
イエス・キリストの誕生から復活までを聖書に忠実に描き、話題を呼んだテレビシリーズ「ザ・バイブル」を基にしたドラマ。イエスの十二使徒のひとり、ヨハネを語り手に、イエスがたどる波乱の生涯を歴史と政治の側面から解明し、その知られざる一面にも迫る。イエスを演じるのは、ポルトガル出身の新鋭ディオゴ・モルガド。聖母マリアから生まれ、東方の三賢者から将来、王になると予言されたイエス。数々の苦難を乗り越えて育った彼はやがて、ガリラヤで宣教活動を始める。そして、12人の弟子とエルサレムへ向かったイエスは、人々に数々の奇跡的な行いをするが、時の権力者であるローマ政府から危険人物とみなされ、十字架にはりつけにされてしまう。(MOVIE WALKER より)
よくもこの映画を制作する気になれたなぁ~、というのが正直な気持ち。相手が大き過ぎて、とてもじゃないけど太刀打ちできないと思われる。数多くの新興宗教はあるけれど、それが2千年も続いて、しかも蔓延り続けている現実を鑑みれば、その祖となる物語をどう語っても説明しようのない焦燥感にとらわれるに違いない。
誰が何を信じようが自由であることだけは確かだ。人間は間違いなく死んでいく存在だからこそ、その死後や生きているうちの信仰の的を探しているに違いない。死んでしまえばせいぜい1か月くらいがせいのやまで忘れられてしまう。それで十分だし、それでいいのだが、なんとはかない人間の一生なのだろうと思わざるを得ない。時々思い出したって、出てくるものは涙だけで、その魂や身体に触れることさえ許されないのが人生なのだ。
『イップ・マン 葉問』(葉問2:Ip Man 2 )
2010年・アメリカ 監督/ウィルソン・イップ
出演/ドニー・イェン/サモ・ハン・キンポー/ホァン・シャオミン/リン・ホン
前作『イップ・マン 序章』のヒットを受けて制作された、実在の武術家、葉問(イップ・マン)を主人公とするカンフー映画。1作目を観ないでいきなり2作目に行くのはダメだ。それでも、大した違和感もなく観る事が出来るというのは、アクション映画に属する映画のいいところかもしれない。
1作目は1935年、この2作目は1949年の香港が舞台。武術家のイップ・マンが主人公だ。ブルース・リーの師として紹介されているこの主人公の中国拳と当時イギリス領であった香港でイギリス人ボクサーとの死闘がアクションの内容。最初は面白味を感じるが、そうそう最後まで飽きずに観ていられるほどこちらの心は揺さぶられない、残念ながら。
東洋の神秘とか言って持て囃されるアジアの武術だが、異種格闘技戦で日本の武術が優位に立つことはまずない。それは技術や心を超えた体力の差が如何ともしがたい事実を物語っている。欧米人の食べる質と量を見れば、戦争に勝てるわけがないと納得するのは必定だ。さぁ、今日もお茶づけサラサラで夕飯を済ませよう。
『小説の神様 君としか描けない物語』
2020年(平成2年)・日本 監督/久保茂昭
出演/佐藤大樹/橋本環奈/佐藤流司/杏花(柴田杏花)/莉子/坂口涼太郎/山本未來/片岡愛之助/和久井映見
2016年6月21日に、講談社の講談社タイガより、書き下ろし作品として刊行された。2018年、シリーズ続刊として上下二分冊で『小説の神様 あなたを読む物語』が講談社(講談社タイガ)より刊行された。2019年から2020年にかけて手名町紗帆の作画で漫画化。2020年4月22日に『小説の神様 わたしたちの物語 小説の神様アンソロジー』が講談社(講談社タイガ)より刊行、同年10月2日に実写映画が公開された。(Wikipediaより)
高校生にしてプロの作家男女の二人が同じ教室にいるという設定が漫画的。これだけ数多くのプロ作家が登場してくる世の中、たまに本屋の棚を眺めてみても、読みたいと思える本が心に入ってこないのは、もともと活字に疎い、弱い自分のせいなのだと理解はしている。中古の本を売っているお店を歩いていても、なぜこんなに本が棚に並んでいるのだろうと、不思議な思いで見ているだけだ。
年に2回も「芥川賞」「直木賞」と世間をあおっている。最近では「本屋大賞」と銘打った新しい図書販売方法まで生み出している。それでも、何の興味も示さない自分の意識はどうなっているのだろう。一度、会社の旅行でオーストラリアに行ったときに、どうせ暇だろうからとその年のどちらかの賞をとった本を持って行って読んだことがあった。その本の詰まらなさにあきれ返った記憶がある。それも一種のトラウマとして、今に至っているのだろうか。
『ラブ & ドラッグ』(Love and Other Drugs)
2010年・アメリカ 監督/エドワード・ズウィック
出演/ジェイク・ジレンホール/アン・ハサウェイ/オリヴァー・プラット/ハンク・アザリア
火遊びが過ぎて仕事をクビになったジェイミーは、医薬品大手のファイザー製薬(Pfizer)で営業マンの職を得た。得意の話術で大病院に攻勢をかける彼だったが、強力なライバルのせいでなかなか結果を出せない。そんなとき、彼は若年性パーキンソン病を患う女性マギーと知り合う。持病のため恋愛関係を避ける彼女と、体だけという約束で交際を始めるジェイミー。やがて新薬バイアグラを扱い始めた彼はトップセールスマンとなっていくが・・・。(Wikipediaより)
トップ女優のアン・ハサウェイが惜しみなく女優としての肉体を誇示している。一度ならずも何度もそういうシーンが現れて、さすがアメリカと感心することしきり。医者の前でさりげなく乳房の下にあざがあるという仕草をするのも、う~んとうなってしまうようなシーンだった。日本の大女優ではとても考えられない。
今を時めくファイザー製薬が舞台になっているところもすごい。ここまで実名で映画に出てくるとは。世界2位の会社だからこそ出来る堂々とした立ち回りなのだろう。映画は最初からお茶らけて見えたが、いつものアメリカ映画らしく深刻な男と女の話になる時の真面目さとのギャップについていけないくらいだった。さばさばとした欧米の男女関係に憧れたりするのは当たり前だが、熱意と持続性がなければ、そんな社会には生きていけないだろうと懸念するしかない。
『マチルダ 禁断の恋』(Матильда/Mathilde)
2017年・ロシア 監督/アレクセイ・ウチーチェリ
出演/ラース・アイディンガー/ミハリーナ・オルシャンスカ/ダニーラ・コズロフスキー/ルイーゼ・ヴォルフラム
ロシア帝国最後の皇帝ニコライ2世と伝説のバレリーナとの許されぬ恋を描いた恋愛ドラマ。1800年代後半のロシア・サンクトペテルブルク。ロマノフ朝ロシア皇帝アレクサンドル3世の息子で、ロシア王位継承者であるニコライ2世は、マリインスキー・バレエ団の世界的なプリマ、マチルダ・クシェシンスカヤに一目ぼれし、恋に落ちる。しかし、賛否両論を巻き起こしたこの一大ロマンスは、父の崩御のよるニコライの王位継承、ニコライとアレクサンドラの政略結婚によって引き裂かれてしまう。そしてロシア帝国もまた、外国勢力の隆盛によって終焉を迎えようとしていた。(映画.comより)
ロマノフ家の処刑とは、ロシア帝国のロマノフ家(皇帝ニコライ2世や妻のアレクサンドラ・フョードロヴナ、二人の5人の子供オリガ、タチアナ、マリヤ、アナスタシア、アレクセイ)と幽閉先に同行することを選んだ人すべて(有名なところではエフゲニー・ボトキンやアンナ・デミドヴァ、アレクセイ・トルップ、イヴァン・ハリトーノフ)が、1918年7月17日にエカテリンブルクのイパチェフ館で射殺・銃剣突き・銃床で殴るなどによって殺害された事件である。
ニコライ2世とその家族は、ウラル地区ソビエトの命令により、ヤコフ・ユロフスキーが指揮するボリシェビキ軍により殺された。その際遺体は切り裂かれ、焼かれ、コプチャキ街道沿いの森の中にあるガニナ・ヤマと呼ばれる野原に埋められた。埋葬地はアマチュア探偵のアレクサンドル・アヴドーニンとボリシェヴィキ出身の両親を持つ映画監督のゲリー・リャボフによって1979年に明らかにされたが、一家の遺体はグラスノスチ時代の1989年まで公開されることはなかった。遺体がニコライ2世らのものであることは、法医学的調査やDNA調査により確認された。殺害から80年後の1998年、遺体はサンクトペテルブルクの首座使徒ペトル・パウェル大聖堂に再埋葬されたが、その際に行われた葬儀には遺体が本物であることを疑問視するロシア正教会の幹部は出席しなかった。2007年、アマチュア考古学者により第二の埋葬地が発見され、一家の埋葬地から発見されていなかったロマノフ家の二人の子供の遺体がそこから見つかった。しかし、二人の遺体は更なるDNA検査の間、国営納骨堂に保管されている。2008年、長期にわたる膨大な法的論争の後で、ロシア連邦検事総長局は、「政治的抑圧の犠牲者」としてロマノフ家の名誉を回復した。(Wikipediaより)
『With Baby ウィズ・ベイビー 赤ちゃんとともに』(WITH CHILD)
2014年・アメリカ 監督/タイタス・ヘッケル
出演/ケリー・ファン・デル・グレンド/ レスリー・ルイス/ ロリ・ココ
またまた日本の劇場未公開映画だった。映画人だってそんなに馬鹿ではないから、劇場未公開にはそれなり以上の理由がある。一体誰が観るんだ、誰が喜ぶんだ、誰がこの映画を観て泣くんだろうかという設問に答えられない映画は、劇場未公開となる運命にある。
with baby という言葉があるらしい。そんなことをこの映画を観終わった後に調べていて聞くことになったが、今はちょうどというか with コロナ というこれからの社会生活の言葉が大きくクローズアップされている。3か月の子供を抱いて、持ち歩いて、大工の仕事を続けるんだという主人公の涙ぐましさが、画面から響いてこない。難病に侵された妻を助けるために子供を作ったというこの映画の主人公夫婦だったという。その甲斐もなく妻は子供を産んで死んでしまったという悲劇の主人公なのだ。
話が進まない。堂々巡りの典型映画。同情も愛情も感じないと映画が詰まらない。妹の子供を引き取ろうと執拗に助けを申し出る義理姉の言葉を無視し続ける主人公が理解できない。素直になれば、もっと素直な人生が待っているのだろうに。そうなったら、こんな映画も出来ないか! その程度の詰まらない映画だった。子供が可哀そうだと。
『盗聴者』(La mecanique de l'ombre)
2016年・フランス/ベルギー 監督/トマス・クライトフ
出演/フランソワ・クリュゼ/ドゥニ・ポダリデス/シモン・アブカリアン/アルバ・ロルヴァケル
冴えない失業したおっさんが秘密めいた仕事を紹介されて始まったことは、どこかのアパートの一室に毎日通って、1室で一人だけでタイプを打つ仕事だった。渡されたカセットテープをイヤホンで聞きながら、その内容を文字に起こすのだ。その内容を聞いて、最初は驚きの表情をする主人公だった。
誰がいつ、何処で採取した会話なのかは分からないが、だんだんと国家的な規模にもなってくるこの仕事に危険が襲ってくるというあらすじ。日本の劇場未公開だけあって、低予算をアイディアだけで補おうとする映画作りの苦労がしのばれる。
アメリカ映画ではないところがいいような悪いような。面白くないわけではないが、徐々に飽き飽き感が。映画作りは難しい。万人に受ける映画を作りたいと思う反面、一人でもいいから絶対的に支持を受ける映画を作りたいというのが本音だろう。今時の日本の映画作りのように漫画が大いに売れて、それを映画化、しかもアニメ化するという王道だけが当たる道だなんて、不健全な映画の末路が見えるようで堪らない。
『スパイ・アプリケーション』(PRIVACY)
2012年・アメリカ 監督/ヨルグ・イーレ
出演/ジョン・シェパード/ジーナ・ブッシュ/ブレントン・デュープレッシー/クレイトン・マイヤーズ
ニューヨークの大学生・マーク(ジョン・シェパード)は、一攫千金を狙う親友のトビー(クレイトン・マイヤーズ)と共に、世界に衝撃を与えるようなアプリを作るべく日々開発に取り組んでいた。あるとき、トビーの何気ない一言からヒントを得たマークは、『プライバシーアプリ』を開発する。それは、遠隔操作でニューヨーク市民の携帯電話をハッキングして、それぞれの会話を盗聴し、カメラ機能を通してニューヨーク市内中を覗く…(Filmarksより)
映画で想像された未来はほとんどが具現化している。遅かれ早かれといった按配で実現する社会を観てくると、さすが映画と思えるものだ。その頂点にあるのが「2001年宇宙の旅」(2001: A Space Odyssey・1968年)だと思う。今や民間個人が宇宙旅行に行ける時代になって、50年前以上にあの映像を創り出した人たちに畏敬の念を覚える。
今ですら若者たちの間では、恋人のスマホにGPSを入れて楽しんでいるようだが、それが見も知らぬ誰かが国民を監視するために実行しているとしたら。独裁国家なら当たり前の話なのかもしれない。スマホだけならまだしも、身体に埋め込まれた発信機が個人をコントロールする時代が来るかもしれない。そう簡単には来ないだろうと思いたいが、意外と簡単にそんな時代がやってくるかも。もっとも、そこまで生きているとは思えないから考えるだけ無駄な気がするが。
『タクシードライバー 奔放な女』(Taxi)
2015年・ドイツ 監督/ケルスティン・アールリヒス
出演/ピーター・ディンクレイジ/アントニオ・モノー・ジュニア/スタイプ・エルツェッグ/ロザリー・トマス
なんとなく題名から来る面白さが期待を持たせるが、いつまで経っても同じような毎日の繰り返しで、一向にタクシードライバーの奔放な出来事は起こらない。奔放なのは主人公の女性タクシードライバーの精神構造で、誰とでも簡単に寝てしまうドイツ女性が映し出されているだけだ。もっとも、ドイツ女性ばかりではなく、日本に比べたらはるかに奔放な男女のあられもない姿は、数多くの映画で見ることになる。
それにしてもドイツのタクシードライバーの生態は悲惨に見える。お客を乗せるのは普通だが、非番や客待ち時の生活態度は、日本では考えられないいい加減さに見える。日本人が几帳面だからだろうか。運転手が制服を着用していることが、見た目にもきちんとしているように見えるメリットは大であろう。
現役時代のほとんど毎日でタクシーを利用していた時期がある。月曜日から金曜日まで6時になると雀荘に駆け込んでいた。社内では毎日1卓、多い時では3卓くらいの麻雀組が出来ていた。お酒を毎日飲んでいる輩と何も違うところはない。酒か麻雀かというのがヘラルドだった。その帰りはほとんどがタクシーと相成って、あ~ぁ無駄遣いをしたなぁ~と今更悔やんでも遅過ぎるというもんだ。
『カットバンク』(Cut Bank)
2015年・アメリカ 監督/マット・シャックマン
出演/リアム・ヘムズワース/テリーサ・パーマー/ビリー・ボブ・ソーントン/ブルース・ダーン
モンタナ州カットバンク。ドウェイン・マクラレンは恋人のカサンドラと一緒に都会に打って出ることを夢見ていたが、病気の父親を介護する必要があったため、計画を実行に移せずにいた。そんなある日、ドウェインは郵便配達人のジョージーが射殺される現場に出くわした。そのとき、ドウェインは恋人をビデオカメラで撮影しており、偶然にも犯行の瞬間が映り込んだ。ドウェインはすぐさま警察に証拠となる動画を持ち込んだ。ところが、警察が捜査に乗り出した頃には、ジョージーの死体が現場から消え失せていた。実は、ジョージーの射殺事件はドウェインが仕掛けたものだった。ドウェインは「証拠動画」を警察に提出し、その報奨金で都会に出ようと企んだのである。ドウェインの計画は上手く行くかに見えたが、予期せぬ人物が介入したばかりに、事態は想定外の方向へ転がっていった。(Wikipediaより)
カットバンクという題名が地名だとは思わなかった。なにか英語の意味があるのだろうと思わせるところが・・・。日本では劇場未公開、ミニ・シアターでやる問題作でもないし、かといって一般ピープルが好んで劇場に行こうという映画ではないことは確実なので、やっぱり日本の映画館で興行するのは全く難しいなぁ~。
嘘を嘘で固めていく人生の行く末を描いているようにも見える。嘘が好きな人も結構存在するけれど、どうして小さな嘘を並べるのだろうと、不思議に思うことが時々ある。そんなに他人から自分が見られる姿を偽装したいのだろうか。本人が一番知らない自分の姿、誰から見たって同じように見えているのに、本人だけがそう思いたくないのに違いない。人間の性とか言うけれど、もう死んでしまったような思考と思想で生きてきた人間には、なにも怖いことはない。
『ブロークンシティ』(Broken City)
2012年・アメリカ 監督/アレン・ヒューズ
出演/マーク・ウォールバーグ/ラッセル・クロウ/キャサリン・ゼタ=ジョーンズ/ジェフリー・ライト
クライム・サスペンス映画。市長選挙を目前に控えたニューヨーク。元ニューヨーク市警察刑事の探偵ビリー・タガートは、現職市長のホステラーに呼び出され、妻キャサリンの浮気調査を依頼される。実はビリーは、7年前に刑事を辞める原因となったある事件についてホステラーに秘密を握られており、ビリーもまた、それに関するホステラーの秘密を握っていた。調査の結果、キャサリンの浮気相手は、ホステラーの対立候補ヴァリアントの選挙参謀を務めるアンドリュースである事が判明する。キャサリンはビリーに単なる浮気調査依頼のはずがないと忠告するが、ビリーはホステラーに結果を報告して調査を終える。ところが数日後、そのアンドリュースが何者かに殺され、ビリーは窮地に立たされてしまう。すべてはホステラーの仕組んだ陰謀である事を知ったビリーは、反撃に立ち上がる。(Wikipediaより)
ラッセル・クロウのニューヨーク市長が似合わない。雰囲気はぴったんこのように見えるのだが、声の質と喋り方がどうも。グラディエーター(Gladiator・2000年)のイメージが強烈過ぎて、その後の映画で彼を見るたびにその映画に入り込めないでいる自分を見つけることになる。それって私だけなのだろうか。
致命的な弱みを握られてしまっては、人は生きていくことに齷齪しなければならない。この映画の主人公のようにその弱みが社会に曝されれば、じぶんの罪が罰に変わることが明確な場合は、どうやって生きて行けというのか。大概の場合は、そんなに致命的な弱みがあるはずもなく、勘違いして弱みと思ってしまっていることがあったとしても、一瞬の不利益を覚悟すれば御破算に出来る事柄ばかりだと思えばいいのだが。
『インターンシップ』(The Internship)
2013年・アメリカ 監督/ショーン・レヴィ
出演/ヴィンス・ヴォーン/オーウェン・ウィルソン/ローズ・バーン/アーシフ・マンドヴィ
ビリーとニックは、時計販売会社のやり手中年セールスマンコンビ。だが、ある日突然、二人は上司から会社が倒産したことを告げられる。その原因はスマートフォンが普及したことで、わざわざ時計を買う人が少なくなったためだった。デジタル時代に取り残され、突然職を失った二人は途方に暮れるが、ある日ビリーが驚くべき提案をニックに持ちかけてくる。それは、デジタル時代の代名詞である巨大企業「Google」が募集しているインターンシップに自分たちも参加しようというものだった。専門的な知識がない自分たちでは、まず無理だと反対するニックだったが、ビリーの熱い説得に渋々了承し、二人はインターンシップへの参加を決意する。しかし、一流企業「Google」のインターンシップに参加する学生たちは、ほとんどが天才や秀才ばかりで、時代遅れの中年コンビじゃ到底敵うわけがなかった。だが、ビリーとニックは同じ落ちこぼれのインターンたちと協力し合い、独自のアイデアを用いて勝負をかけるのだった。(Wikipediaより)
この映画は、日本では劇場公開されず、ビデオスルーとなった。こういう言い方は今風でいい。これからはこの表現を遣おう。2013年の「Google」という会社の雰囲気を伝えているのだろうか。それにしても8年前の会社にしても凄すぎる。2人の主人公が初めてGoogle社に入ったときに、目の前にある食べ物や飲み物が全部タダとは、観ている方もニュースでは聞いていたが映像になると真実度が違う。
Googleの宣伝のような映画だったが、今や日本のテレビ番組なんて、やらせのオンパレードで反吐が出るくらいだ。どれだけ宣伝費を払っているのか定かではないが、自社の製品のランキングをテレビ番組で流せるほどテレビ局は番組作りに苦労するし、スポンサー会社は金で番組を買ってしまう時代になった。何も知らない視聴者だけが本気になってその会社の製品を眺めている。価値観を押し付けられているとは気が付いていない。最近の若者は、妙に頭がよくて物分かりがいいが、ものを斜めから見たり批判的な見方をすることさえ出来ないでいる。ノー天気な社会が生まれ始まっている。(今日は2021年2月3日、節分は1日前)
『サイド・エフェクト』(Side Effects )
2013年・アメリカ 監督/スティーブン・ソダーバーグ
出演/ジュード・ロウ/ルーニー・マーラ/キャサリン・ゼタ=ジョーンズ/チャニング・テイタム
この監督名を聞くと「セックスと嘘とビデオテープ」( Sex, Lies, and Videotape・1989)という作品を想い出す。ヘラルドが配給した映画。いわくについてはどこかで書いているので探して欲しい。私はこの作品は観たような観ないような、自信がない。そもそもの映画好きでないことを証明するような自分の歴史だ。
抗うつ薬を処方された若い女性に襲いかかる副作用(サイド・エフェクト)がテーマだ。「鬱は未来を築く力の欠如」とか「刑事曰く、彼女は殺人犯か薬の被害者」や「私は状況と薬の被害者」といった難しい展開が頭を悩ませたが、映画らしい映画の展開に久しぶりに喜んだ。精神科医と患者の話で、鬱病のための新薬を処方されて、夢遊病者の状態で夫を刺し殺してしまった、というのが事件。という話に気を取られていたら、実はそこには新薬をめぐる既成担当医、新薬の評判を落とすことによるライバル製薬会社の株の急騰など、想像しなかった複雑な展開を見せ始めるのだった。
患者の主人公は、嘘をつき通して薬による副作用を装っていた。そんなことはつゆも感じられない映画ストーリーにはちょっとズルが感じられるが、映画のおもしろさのひとつだろう。元担当女医と患者とのレズビアン状態なども飛び出してきて、この映画の焦点は一体何処なのだろうと戸惑ってしまう。それにしても薬の副作用は怖い。毎日体験している薬のことをあれこれと考えても仕方がない。生きているだけでもラッキーと想えば、薬の副作用なんて大したことではない、と思うことが重要なのだろう。
『ヒットマン:ラスト・ミッション』(Absolution)
2015年・イギリス 監督/ヴェルナー・シューマン
出演/トーマス・スペンサー/デニス・ライオンズ/ノラ・ヒューツ/ヤーサー・セティン
同じような映画が3本も続くと、頭の中で混乱が始まる。殺人を平気で出来る人は、罪と罰に値する人なんだろうけれど、尊敬にも値するなんて言うと、webなら炎上必至。でも人を殺すなんて気持ちいいだろうね、なんていうことは禁句中の禁句。
殺し屋を主人公にしたクライムサスペンスということらしい。この3本の中では、これが一番面白かった。と言っても、ながら観に適当な映画だった。もっと静かでジーンとくる映画に巡り会いたいのだが、なかなか涙を誘う映画に出会うことは出来ないでいる。
主人公のように非情に徹することは絶対必要な人間の要素だ。ふと、お金の問題ではなく、社会に不必要な人間を殺せるとしたら、それを実行するだろうかなどという馬鹿げたことを考えてしまった。ふ~む、殺人を断るほど確かな精神力を持っていないことだけは間違いなさそうだ。
『バッド・トラップ』(Abstraction)
2013年・アメリカ 監督/プリンス・バグダサリアン
出演/ハンター・アイヴス/エリック・ロバーツ/コリーナ・リコ/リチャード・マンリケス
観終わったばかりの映画に引き続き、裏切りと忠誠のような映画だった。こちらの方が迫力があった分だけおもしろく観られたけれど、ちょっと訳の分からないストーリー展開に嫌気がさしてきたことも確か。こういう殺人を平気でするする映画に、余計な屁理屈は要らない。
それにしてもアメリカの拳銃というのは、もう罪でしかない、という思い。日本のように簡単には拳銃が手に入らない国でさえも、ヤクザの抗争には拳銃が登場するのは必至。誰でもが簡単に拳銃が手に入る国には、秩序という最も崇高な尊厳が存在しなくなるのかもしれない。国会議事堂の中で警察官に銃で撃たれて死亡するという結果事故が発生するのも、自己主張の強すぎる顛末に他ならない。
邦題のような詰まらないストーリーだが、いとも簡単に女に騙されて犯罪を犯してしまうなんて、映画にもなりやしない、と思わせる。よく分からない結末をぐちゃぐちゃと文句しても始まらない。少しでも楽しめればいいとしよう、と思いたいとこだが、おもしろくないことには文句しか浮かんで来ない。
『ヒロシマへの誓い』(the VOW from HIROSHIMA)
2020年・アメリカ 監督/スーザン・ストリクラー
出演/サーロー節子
ヘラルドOBのメンバーにこの映画の配給の話を引き受けた人がいて、そこからホームページを作ってくれませんか、という依頼が来た。この頃は率直に言って頭がすっからかんで、どうしたものかと心の中ではかなり躊躇した。頭が回らない苦しみは本人にしか分からない。それでも、安価でスピーディーにこの仕事を引き受けてくれる人はいないだろうから、まぁやってみるかと思って作り始まった。本編は関係者の特権としてネットで観ることが出来た。想像以上に美しい映像だったことが印象的だ。
速いことしか能がない、と宣言している言葉に嘘はなかった。自分でも驚くくらいの速さでホームページは出来上がっていった。簡易的に画像を多く使って、対応できないでいるタブレットやスマホへのことをなんとか胡麻化しながらクリアした。1週間も経たないでとりあえず完成したのは偉い、と自分だけは褒めてあげよう。https://hiroshimaenochikai.com/
この手の内容でドキュメンタリーというジャンルの映画には弱い。観る前から心が折れているようになってしまう。ただ、この映画はなかなか観易かった。良いことを言っている、なんて上から目線の発言は決して出来ない。誰でも分かる原爆なんてなくなればいいんだ、という素直な心を素直に表現するサーロー節子さんの行動が素晴らしい。胡散臭い左翼運動のように見えてしまうこの手の主張が、もっと素直に受け入れられる国、時代が恨めしい。
『ブラッド・イン・ザ・ウォーター』(Pacific Standard Time)
2016年・アメリカ 監督/ベンジャミン・カミングス/オーソン・カミングス
出演/ウィラ・ホランド/アレックス・ラッセル/チャールビ・ディーン・クリーク/ミゲル・ゴメス
つまらない映画だった。何度も「休止」を繰り返してようやく観終わったという感じ。そんなことまでして観続けることはないだろうに、と思うかもしれないが、そうしなければ途中でやめてしまう映画が多くなりすぎてしまって、この欄が成り立たなくなってしまう。
つまらない映画はつまらない邦題からも窺える。陳腐なストーリーと、貧弱な映画進行に苛立ってばかりでは生きていけない。自分の言い分や行動が正しいと信じている人々は、自分の思い通りの社会でない事柄をもって苛立つ傾向にある。そういう人間が大半かもしれない。
人間が他人を裏切ってまで守ろうとすることは一体何なのだろう。たかが100年も生きることのない個人が何をもって人間であることを死守しようとするのだろうか。こんなつまらない映画を観ながら、全く別のことを考えてしまう特典があるのかもしれない。
『イーストサイド・寿司』(East Side Sushi)
2014年・アメリカ 監督/アンソニー・ルセロ
出演/ダイアナ・エリザベス・トレス/竹内豊/ロドリコ・デュエート・クラーク
日本食レストランで働き始め、最初はキッチンで皿洗いや下ごしらえを担当していたが、料理人としての腕を見込まれ、和食の調理や、最終的にはすし作りまで任せられるようになる。次第にすし職人になるという夢を膨らませる主人公でしたが、アジア系でなくメキシコ系、男性でなく女性であるという人種とジェンダーの2つの壁が立ちはだかる。そんなストーリーだが、物語も映像も甘い。
学生の卒業制作8m/mフィルムのような全体にちょっと。途中でやめてしまおうと何度も思ったのだが、何故か最後まで観ることになった。こういっちゃなんだが、最初の5分で観終わってしまう映画も数多くある。はたまた、せっかく30分以上観ているのに、やっぱりやめようと観るのを終わってしまう映画も結構ある。そんな中で、最初からちょっとと思える映画を観続けた意味が分からない。
出来が悪いからこその理由があったのかもしれない。日本の文化がアメリカ、欧米でどのように扱われているのかに興味があったのかもしれない。他人の目なんてどうでもいいのに、他人の目を気にする自分の不甲斐なさに辟易する。そうやって人生を生きてきた自分が情けない。情けない以上の誉め言葉は見つからない。
『夜の来訪者』(An Inspector Calls)
2015年・イギリス 監督/アシュリング・ウォルシュ
出演/ソフィー・ランドル/ルーシー・チャペル/ミランダ・リチャードソン/ケン・ストット
イギリスの劇作家プリーストリーの代表作でもあり、何度も映画やドラマ化されているという。そんな基本的な知識もなく観る映画は新鮮だ。1912年のある夜、バーリング家では長女シーラと、バーリング家とライバル関係にあるクロフト家の息子ジェラルドの婚約を祝う食事会が行われていた。地方出身だが事業で成功した父アーサー、上流階級出身で特権意識の強い母シビル、そして酒飲みで頼りない弟エリックも、2人の婚約を心から祝福していた。
祝宴中、グールという警部が屋敷に現れ、ある1人の女性の自殺を告げる。女性の自殺には、バーリング家の全員が関わっていた。それぞれの人物が何らかの形で自殺した女性と関係していた。というあたりがこの物語のキモ。警部はそれぞれの人物に自殺した女性の写真を見せるが、一緒に見せるのではなく、それぞれの人物に一人ずつ見せていく。説明しても分かり難い。
思い当たる節があるそれぞれの人物の狼狽ぶりがこの映画のキモ。脛に瑕を持つという表現が全員に当てはまるような。もしかすると誰もが抱く傷のようにも見える。探偵ものでは群を抜くイギリスのストーリーは、こういう映画にも発揮されている。なかなかとおもしろい映画を観て満足に眠りに付けそうだ。
『目撃者 彼女が見たもの』(Eyewitness)
2017年・カナダ 監督/アンドリュー・C・エリン
出演/リンディ・ブース/クレイグ・オレジニク/ジョン・マクラーレン/アレクシス・メイトランド
5年前、自宅豪邸のガレージで起きた殺人事件。ダイアナは、実業家の父親と婚約者ブライアンを失う。殺人犯で服役中だった庭師のルイスが脱獄。警察はルイスがダイアナを狙ってこの豪邸に来るのではないかと心配する。というのも、無実を主張するルイスの有罪判決を決定づけたのはダイアナの目撃証言だったからで・・・。
冤罪という奴で殺人犯に仕立て上げられてしまっては、人生が台無しどころかマイナス要素しかない。そんな人生なら、神も存在しない。神のみぞ知るという台詞は、誰にも侵すことの出来ない普遍的な事実があればこそ。殺人じゃなくても、誰も知らない事実をどう主張したらいいのか、人生とはそんなにもはかないものなのだろう。
人間とは間違いを侵す動物なれど、何かをすれば何かを破ることになる人間社会、その破られたものが誰をも傷つけなければ何も起こらず、何もなかったように地球は回って行くのだが。物理的にも肉体的にも何もないくせに、心理的なものだけで他の誰かを傷つけてしまっていることに、何も気づかず一生を終える人のなんと多いことか。神は知らずともいい。確かな真実だけが独りで歩いている。
『パークランド ケネディ暗殺、真実の4日間』(Parkland)
2013年・アメリカ 監督/ピーター・ランデズマン
出演/ジェームズ・バッジ・デール/ザック・エフロン/ジャッキー・アール・ヘイリー/コリン・ハンクス
キャッチコピーは「あの事件に関わる、4人の証言者。歴史が変わる瞬間を、目撃せよ。」ケネディ暗殺に纏わる映画はそれなりに観ている。パークランド記念病院の医師と看護師たちは大統領を懸命に手当の処置を行い、ダラスのシークレット・サービスの支局長であるフォレスト・ソレルズはたまたまパレード中に8mmフィルムで撮影していたアマチュア・カメラマンのエイブラハム・ザプルーダーへ映像の受け渡しを掛け合っていた。というあたりがこの映画のメイン。
トランプ大統領2019年10月、多くの文書公開を許可した一方、情報源や外国政府に関する機密が含まれているとして一部文書の機密を維持。1963年のジョン・F・ケネディ大統領暗殺に関する機密文書の全面公開を先送りし、2021年10月までに改めて公開の是非を検討するよう関係省庁に指示した。
どの程度の新しい情報が公開されるのかは分からない。リー・ハーヴェイ・オズワルド容疑者による単独犯行と結論。でも同容疑者の動機や背後関係が明らかになっていないことや逮捕2日後に暗殺されたこともあり、今もなお陰謀説が根強く残ってい、ことは周知の事実。証拠物件の公開が政府によって、2029年(下院暗殺調査委員会)もしくは2039年まで不自然にも制限されている。資料はアメリカ公文書図書館に保管されているが公開されるのは2039年とされている。しかし、現在でも資料の多くが紛失しているため、2039年に公開されても完全に真実が明らかになるかどうかは未知数である、とされている。ここまで生きていたいという目標にはなる。絶対無理だが。
『ダブル・フェイス』(Shelter)
2017年・フランス/ドイツ/イスラエル 監督/エラン・リクリス
出演/ネタ・リスキン/ゴルシフテ・ファラハニ/ハルク・ビルギナー/リオル・ルイ・アシュケナージ
イスラエル諜報特務庁=モサドの工作員ナオミは、ある人物を保護する任務を命じられる。その人物とは武装集団ヒズボラ幹部の元愛人モナ。彼女は秘密を知りすぎたとして組織に命を狙われていた。助けを求められたモサドは、貴重な情報提供者でもあるモナを匿うと、整形で顔を変えさせ、傷が癒えるまでの二週間、ナオミに保護を命じたのだ。モサドが用意した隠れ家で始まった共同生活。しかし、誰も知らないはずの隠れ家には、不審な電話や謎の来客が押し寄せ、次々と奇妙な出来事がナオミの任務を脅かし始める。そして、彼女は次第にモナがヒズボラの二重スパイなのではないかと疑心暗鬼に陥っていく…。誰が敵で、誰が味方なのか――。命を賭けた極秘ミッションの行方に待つ、衝撃の結末とは! ?(Amazonより)
ストーリーを活字で見た方がおもしろく感じる映画。実際の映画はちょっと飽きが来る。匿っているアパートの一室で、女二人の会話と制限された行動が映画向きではない。監督の力があれば、もう少し見せる映画になっていたかもしれない。一度諦めたけれど、もう一度見直して最後に辿り着いた経緯がある。
中東の紛争にかかわる話はイマイチよく理解できないのが困る。単なる映画だけの話なら別だが、現実社会を映し出すこういう映画には、歴史的な背景を平然と知っている常識が求められる。そうでなければ、話がおもしろく伝わってこない。何事にも先達はあらまほしけれ、とはちょっと違うが似たような意味合いがあるような。
『持たざるものが全てを奪う HACKER』(Hacker)
2016年・アメリカ/香港/カナダ/タイ/カザフスタン 監督/アカン・サタイェフ
出演/カラン・マッコーリフ/ロレイン・ニコルソン/ダニエル・エリック・ゴールド/クリフトン・コリンズ・Jr
何という邦題なんだろう。日本語の意味が分からない。この頃はwebで説明を読んでも理解できないことが多く、歳、ボケのせいかなぁと悩んでいるのだが、昔から日本人の書いた日本人のための取扱説明書は分かり難いと結構有名だったことを記憶している。単なるハッカーではいけないのだろうか、と思う。まぁ、映画館で公開するにはギリギリのところの映画なので、ビデオやパソコン用にだけ題名を考える悪い癖が付いているのかもしれない。
配給会社の作った映画のコピーは、「若き天才詐欺集団と黒きカリスマが腐った社会に復讐する・・・」と大見えを切っているのが滑稽だが。この程度のことを大声で言わなければ、誰も見向いてくれない映画かもしれない。これは実話から生まれた物語。幼いアレックスを連れたダニリュク夫妻は、東欧からカナダのロンドンへ移住して来た。ロンドン訛りという言い方があるが、カナダのロンドンという場所の出身だと言って、ロンドン訛りがないじゃないかという言葉を受けるあたりにしかユーモアは感じられない。
Windows95時代からパソコンに馴染んできた主人公は、結構才能があったのだろう。親の貧乏を見かねて、子供のうちからパソコンを通してお金を稼ぐことが出来たようだ。今から考えると可愛いものだった。知り合いにパソコンを作って分けてあげたら、小河さんのお陰でビールだったりいろいろなものを貰っているよ、とその夫婦が喜んで報告してくれたのは、もう何年前のことだろうか。
『蛇のひと』
2010年(平成22年)・日本 監督/森淳一
出演/永作博美/西島秀俊/板尾創路/劇団ひとり/田中圭/勝村政信/國村隼/石野真子
2009年3月に受賞した『第2回WOWOWシナリオ大賞』受賞作品を映像化。ある日、ベテランの独身OLの三辺陽子が会社に行くと、会社では伊東部長が自殺をし、また今西課長が失踪していた。今西には1億円横領の疑いがかかっており部下であった陽子に彼の行方を捜すよう会社に命令されたが、彼の過去を追い彼に人生を狂わせられた人たちの話を聞くうちに、「いい人」と思われていた今西がいったいどんな人物であったのか判らなくなっていく。(Wikipediaより)
10本か20本に1本日本映画を観ている。意図的ではないが、どの映画を観ようかとアマゾン・プライムの見出しを眺めているうちに、偶には日本映画にしようと思える時だけに、選択する。観始まるといかに日本語の方が楽かということが実感されるこの頃であることは、悔しいけど認めなくてはならない。映画のセリフを聞きながら、ほんの時々、こういう英語の表現をするんだ、と妙に納得することはあっても、すぐにその英語を忘れてしまうのは、ご愛敬では済まされない現実をみる。
ストーリーは事件を追っかけているが、中身は、実は人間模様を描きたかったようだ。少なくとも映画に登場する何人かの人生を辿って行くだけで、さまざまな人間模様が映し出されて、あぁ!なんて人間は悩み多き動物なのだろう、とあらためて感心したりする。百人いれば百人の違った人生が営まれていることは、うすうす知ってはいるが、あくまでも他人にはなれない心のうちがもどかしい。
『ロッテルダム・ブリッツ ナチス電撃空爆作戦』(THE BLITZ)
2012年・オランダ 監督/エイト・デ・ジョン
出演/ジャン・スミット/ルース・ヴァン・エルケル/モニク・ヘンドリクス/マイク・ウェルツ
1940年5月、オランダのロッテルダムをドイツが空爆した。たった15分間の爆撃で800人も亡くなったという。中立だからドイツが攻めて来る訳はない、というセリフがあった。そんな中、ドイツ人の女性とオランダ人男性とのラブストーリーが。映画はどんな状況でも男と女の心のうちを描くのが好きらしい。
映画が映し出す現在のロッテルダムは高層ビルが立ち並ぶ近代都市に見える。そしてドイツ軍が空爆した後の焼野原は、まさしく東京はじめ日本の各地で見られたガレキの都市という感じだった。どこまであの当時のヒトラー・ドイツが異常な国だったのかを後世までとどめている。戦争を知らない人間しか生きていなくなっても、その事実は永遠に語り継がれることだろう。
人種偏見というのはいつの時代にもある。この映画の主人公のひとりである女性はオランダに住むドイツ人、それだけでオランダ人から白い目で見られる存在だった。それが当たり前のようにまかり通る社会は普通だったのだろうが、普通のはずの現代でもただ肌の色が違うからと毛嫌いする人々が多いことに唖然とする。
『バッド・ディシジョン 終わりなき悪夢のはじまり』(Bad Samaritan)
2018年・アメリカ 監督/ディーン・デヴリン
出演/デヴィッド・テナント/ロバート・シーハン/カーリト・オリヴェロ/ケリー・コンドン
レストランで働くショーン・ファルコは職務上知り得た情報を利用して、顧客の家に窃盗に入っていた。ある夜、いつものように盗みに入ったファルコは思わぬものを目撃することになった。そこには、ケイティと名乗る女性がおり、「頭のおかしい家主に監禁されているから助けてくれ」と言ってきた。自らの犯行を目撃されてしまった焦りから、ファルコは直ちにその家から逃走したが、家主のケイルはその一部始終をじっと見ていた。その結果、ファルコはケイルに命を狙われることになってしまった。(Wikipediaより)
あるレストランのバレーパーキングで働いている主人公は同じ仕事をしている友だちと、お客さんが食事をしている間にその車に乗って、その車の持ち主の家に入り込んで窃盗を繰り返していた。そんな悪さも出来るよなぁ、と日本には滅多にない駐車方法を疎ましく見つめるしかなかった。その挙句に極めて危険な目にあうことになるのがこの映画、怖い!、怖い!。
善きサマリア人の法(Good Samaritan laws、良きサマリア人法、よきサマリア人法とも)は、「災難に遭ったり急病になったりした人など(窮地の人)を救うために無償で善意の行動をとった場合、良識的かつ誠実にその人ができることをしたのなら、たとえ失敗してもその結果につき責任を問われない」という趣旨の法である。アメリカやカナダ、オーストラリアなどで施行されていおり、近年、日本でも立法化すべきか否かという議論がなされているという。原題にはこんな背景があったとは知らなかった。
『トンビルオ! 密林覇王伝説』(Tombiruo)
2019年・マレーシア 監督/セス・ラー二―
出演/ゾル・アリフィン/ファリッド・カミ/ナビラ・フダ/ファイザル・フセイン
極めて珍しいマレーシア映画。マレーシアの山奥で素顔と超能力を隠し密かに暮らしていた青年。愛する 者を奪われ、彼は密林の守護者・トンビルオとして覚醒、環境保護のため 壮絶な戦いを始めるのだった! 弱き者や自然を守る超肉体派の熱いヒーロー・トンビルオだった。
人間同士の戦いがカンフーなのには、ちょっと。別に悪くはないが、殴っても、殴っても、どちらも平気の平左で戦い続ける姿がリアルからかけ離れ過ぎている。醜い顔で生まれたヒーロー、大人になっても仮面をつけている。このあたりがこの映画のキモなのだろうか。シリーズものにでもしようとする意図が感じられるが。
スーパーマンというヒーローに憧れていた子供の頃。そんな人間は絶対いないよ、と言われなくても分かっていたのか、もしかするとこんなスーパーヒーローが実現するんじゃないかと、本気で思っていた田舎者だったかもしれない。「世直し」という言葉に敏感に反応する性格は、子供の頃に形作られたのかもしれない。翻って、世の中を悪くする者たちに対する憎悪は並大抵ではない。嘘をつく政治屋や無知な金持ちなんかを見ると腹の底から反吐が出るような。
『わたしは、ダニエル・ブレイク』(I, Daniel Blake)
2016年・イギリス/フランス/ベルギー 監督/ケン・ローチ
出演/デイヴ・ジョーンズ/ヘイリー・スクワイアーズ/ディラン・マキアナン/ブリアナ・シャン
第69回カンヌ国際映画祭でパルム・ドール、第69回ロカルノ国際映画祭で観客賞を獲得している。老齢を迎えたベテラン大工であったダニエルは、あるとき心臓発作が原因で倒れてしまう。職を失い、医師からは休職を命じられたため、役所に行き、失業給付金申請の為カウンセラーと面談をするものの、職務可能と判断されてしまい、給付金は下りずにいた。
舞台はニューカッスル、北アイルランドのニューカッスルだろうと想定する。お役所仕事はどこの国でも変わらないらしい。こういう非人間的な行動を平気でするイギリス人を見ていると、日本人の役人なんてまだ可愛いものだよと叫びたくなる。私と同じような年頃の主人公は、私と同じように心臓病を患っている。審査官の質問に正直に答えていくと、あなたは働けますと言われてしまう。医者には働くのは無理だと言われているのに。
訳の分からない年寄り集団は同じような考えと行動をするようだ。審査官や警備員に毒づいてみたところで、一向に生活の先は見えてこない。それでも、隣に引っ越してきたシングルマザーを見ると、手助けしないではいられない。自分の生活が立ち行かなくなり、家財道具を一切売り払わなければならない状況になっても隣人を助けようと奮闘している。哀しいかな老人。同じような光景が世界のあっちこっちで見られるのかもしれない。
『長いお別れ』(A Long Goodbye)
2019年(令和元年)・日本 監督/中野量太
出演/蒼井優/竹内結子/松原智恵子/山﨑努/北村有起哉/中村倫也/杉田雷麟/蒲田優惟人
今日は、2020年(令和2年)12月31日。アルツハイマー型認知症を患った父が徐々に父でも夫でもなくなっていく家族の10年を追った連作短編集。フィクションではあるが、著者の中島京子自身が、2004年にアルツハイマー型の認知症と診断され2013年に亡くなった父、中島昭和を見送った経験がもとになっている。テレビ東京開局55周年記念作品として製作された。
主人公が70歳の時から映画は始まる。主人公は中学校の国語教師(のちに校長先生となる)であったことから、漢字は得意で、デイサービスに通うようになった時には、難しい漢字をただ一人満点で読むことが出来た。このあたりまではボケもかわいいものだったが、2年ごとに変わる映像と共に、主人公のアルツハイマーは容赦なく進行して行くのだった。
妻は健在で終始主人公の父を援護している。二人の娘のうちの長女は夫のアメリカ勤務に伴ってアメリカ生活、その長男は不登校という問題を抱えていた。次女は喫茶店でアルバイトしながら自分で食堂を経営したいという夢を持ち乍ら、結婚にも踏み切れず母とも父ともの微妙な距離の中に葛藤している。こんな複雑な心理状況は、人間生活ではある意味普通だ。父親は予定通り亡くなってしまうが、特に激しい嗚咽が聞こえる訳ではない。むしろ、長女が竹内結子だったことの方が、無性に寂しい映画となってしまっていた。
『ヒプノティスト-催眠-』(Hypnotisoren)
2012年・スウェーデン 監督/ラッセ・ハルストレム
出演/トビアス・ジリアクス/ミカエル・パーシュブラント/レナ・オリン
ラーシュ・ケプレルの小説『催眠』を原作としている。催眠を使って殺人事件の犯人を探し出す糸口を掴みだすとするのが元々の題名の発端。ただ、この医師が経歴上でスキャンダラス的な犯人特定をしてマスコミに叩かれて、医師として催眠を使うことを禁止されている人物だった。わざわざ複雑な環境を作って、事件を複雑にしようとしている。
犯人を洗い出す手法の中には想像も出来ないほどの苦労があるが、映画的には、突然現れて来た犯人像をクローズアップする、という狡い方法がある。今迄なんの影響もなかったはずの人が急に犯人の線上に躍り出て来たって、観客はとてもついていけるものではない。暗くて、長い、お奨めできない映画。警察ものではアメリカ映画に圧倒的なおもしろさがある。
催眠術をかけて欲しい。自分が催眠術にかかる姿を想像、想定できない。どうしたらそんなことができるのだろうか、と疑いの心しか持っていない。「今日の運勢は」なんていう子供騙しが、テレビだろうが新聞だろうが、はたまた週刊誌にまで載っている日本のマスゴミ(塵)環境。こんなところにも日本の未成熟な社会構造と成熟しようもない教育構造の一端が見られる。
『ラスト・クライム 華麗なる復讐』(FAMILY HEIST)
2017年・フランス 監督/パスカル・ブルデュー
出演/ジャン・レノ/リーム・ケリシ/カミーユ・シャムー/パスカル・ドゥモロン
根っからの詐欺、窃盗、大泥棒を稼業としてきた主人公が、ストラディヴァリウスを盗むところから映画は始まる。昔は1億円、2億円という値段が付いていたバイオリンが今や15億円だとは驚きを通り越している。やすいものはどんどんやすくなっていき、高いものはうなぎ上りに高価になって行く。人間社会のいびつな構造がいたるところに。
コメディだが笑えない。ジャン・レノは嫌いな俳優のうちのひとり。演技がわざとらしいのと、濃い顔が馴染まない。美しくない腹違いの二人の娘を使って最後の大博打を打というのがストーリーだが、飽き飽きするような映像の繰り返しに、無駄遣いの典型を観るようだ。
最後は我慢できずに寝てしまった。この頃は、寝る機会が少なくなったと喜んでいたのもつかの間、映画を観ながら知らず知らずのうちに眠ってしまうのは、至極の時間だ。外に出ることが極端に少なくなって、映画を観られるのは楽しい。自分でおもしろそうな映画を探す苦労は、結構面倒くさいが、そんな贅沢なことを考えるのも罰が当たる。
『プレッピー・コネクション』(The Preppie Connection)
2016年・アメリカ 監督/ジョセフ・カステロ
出演/トーマス・マン/ルーシー・フライ/サラ・ペイジ/ジェシカ・ローテ
1980年代初頭。労働者階級の家庭で育ったトビアス・ハメルは奨学金を得て名門私立学校に入学した。ほどなくして、トビアスは友人の依頼で校内にコカインを持ち込む役割を引き受けるようになった。トビアスはかつての友人たちのコネを駆使してコカインを調達していたが、ついにはコロンビアの麻薬カルテルと直接取引するようになり、学校を中心としたコカインの売買網を構築するに至った。有頂天になるトビアスだったが、彼が歩んだ道は破滅に通じる道でしかなかった。1984年に大学進学予備校の学生、デレク・オーティスが30万ドル相当のコカインを密輸した容疑で逮捕された事件を題材としている。(Wikipediaより)
金持ちの高校生が通う学校が舞台。アメリカの高校生の実生活を知る由もないが、どの映画の高校生を見たって日本の高校生では100年経っても追いつかないだろう考え、行動をしている。勿論、アメリカの制度そのものが日本なんか目じゃない先に行っていると思わざるを得ない。車で高校まで通学するなんて、日本じゃ永久にあり得ないだろう。
マリファナだって常識と思われるアメリカの高校生、ようやく18歳の選挙権が与えられた日本なんかじゃ、とてもじゃないけど比較にならない。悪の道に行くのは簡単だけれど、引き返すのは大変だ。それは世界中のどこの国でも変わらないことだろう。神に導かれて、まっとうな人生を歩めることは仕合わせの第一歩であり、最終点でもあるかもしれない。
『特捜部Q キジ殺し』(Fasandraeberne/The Absent One)
2014年・デンマーク/スイス/スウェーデン 監督/ミケル・ノガール
出演/ニコライ・リー・コス/ファレス・ファレス/ピルー・アスベック/デヴィッド・デンシック
なんか観たことがあるなぁという刑事ものだった。英語ではないし、英語だってまったく分からないけれど、慣れない言語を2時間も聞くというのは結構疲れる。1作目は割合最近観た「特捜部Q カルテ番号64」事件簿のように映画シリーズを展開して行くのだろう。2作目の方がさらに暗く、迫力もあった。仕事一筋の主人公刑事の職業意識が凄い。恐れ入る。
キジ殺しというのは、キジ狩りのように意味なく残虐な行いという意味があるということを初めて知った。悪役主人公たちがグループとなって狩猟に精出す様が副題になっているようだ。主人公刑事がボロボロになりながらも容疑者であり被害者の女性を守ろうとする姿は学ばなければいけない。たいした自分でもないのに、自分一番と思っている現代人ばかりになってしまった社会には、こういう人間が必ず必要だ。
それにしても、映画は小さなことを大きくクローズアップしてはしまうけれど、陰で悪いことをしながら金儲けをして一見優雅な生活をする人種がなんと多いことか。せっかく生まれてきたのだから一所懸命金をためて贅沢に暮らすんだという考えが如何に愚かかということを分かっていない。あなたの周りの人間や累々およぶ子孫に無言の神の鉄槌が降りることを知らないだろう。
『ハンターキラー 潜航せよ』(Hunter Killer)
2018年・アメリカ 監督/ドノヴァン・マーシュ
出演/ジェラルド・バトラー/ゲイリー・オールドマン/コモン/ゼイン・ホルツ
潜水艦ものはおもしろい。閉ざされた空間でのバトルが繰り広げられる状況は、広々とした荒野の決闘よりは迫力が増す。『U・ボート』(Das Boot、The Boat・1981年・日本ヘラルド映画)は潜水艦映画の中でも映画ファンなら題名くらい覚えてくれているだろう映画としてちょっと有名。
映画が完成するまでにはそれなり以上の労力と年月がかかる。2015年11月12日、オリジナル・フィルムが新作映画の製作に着手したと報じられた。2016年3月3日、ドノヴァン・マーシュが監督に起用され、ジェラルド・バトラーとゲイリー・オールドマンの出演が決まったとの報道があった。6月23日、テイラー・ジョン・スミスの出演が決定した。7月6日、ガブリエル・チャバリアがキャスト入りした。7日、ゼイン・ホルツが本作に出演すると報じられた。13日、マイケル・トルッコとライアン・マクパートリンの出演が決まった。19日、ミカエル・ニクヴィストの起用が発表された。21日、デヴィッド・ギャーシーがキャスト入りしたとの報道があった。8月4日、リンダ・カーデリーニが本作に出演すると報じられた。(Wikipediaより)
一触即発の危険性は今でも続いているのだろうか。そう簡単にドンパチとやり合う戦いが、すぐに起こるとは考えられないが、どんどん独裁政権のような国が勃発している現状を鑑みれば、人間は自分たちの手で地球を終わらそうとする運命にあるのかもしれない。地球が自然に無くなる前に、人間が自ら地球を破壊することになる、という多くの映画の予言は正しいのかも。
『ロスト・イン・マンハッタン 人生をもう一度』(Time Out of Mind)
2015年・アメリカ 監督/オーレン・ムーヴァーマン
出演/リチャード・ギア/ベン・ヴェリーン/ジェナ・マローン/キーラ・セジウィック
大都会ニューヨーク。ジョージはアパートを追い出される羽目になった。その事実を認めたくないジョージは「財布を盗まれたせいでこうなった」などと強がってみたものの、結局はホームレス状態に陥ってしまった。ジョージは思いつく限りの手段を駆使して金を集めたが、日々の生活費・酒代以上を稼ぐことはできなかった。やがて、冬の寒さが厳しくなってきたため、ジョージは市が運営するホームレス用のシェルターに向かった。そこで、彼はディクソンに出会った。ディクソンは精神的に不安定な状態にあったが、ジョージには親身になって接してくれた。福祉課の職員と面談した後、ジョージは長らく疎遠だった娘のマギーに助けを求めることにした。しかし、マギーは父親に対する遺恨をすんなりと捨てることができなかった。(Wikipediaより)
日本の劇場では未公開だっというのは観てみれば至極納得できる事実。リチャード・ギアが2時間、ひたすらニューヨークでのホームレス生活を実践して見せてくれるだけの、飽き飽きするストーリー展開。もういいよ、と声を掛けたくなる。
日本よりは、はるかに社会がホームレスに対して優しい。宗教から来る心の在り方が原因だろうと、いつも自分勝手に理解しているが、それにしてもなんとも優しくない日本社会制度は永久に変わることはないのであろうか。お金を無心するホームレスとそれに対応する普通の人々が、日本とアメリカでは違い過ぎる。あんたの努力が足りないから、そんな生活しか出来ないんだよと、心のうちで罵る日本人、神の恵みでたまたま利のある私たちの力を使ってくださいと奉仕する心の豊かなアメリカ人、この分野においては明らかにアメリカ人、アメリカ社会の方が一歩も二歩も神に近づいている。
『ドント・ハングアップ』(Don’t Hang Up)
2016年・イギリス 監督/ダミアン・マセ
出演/グレッグ・サルキン/ジャック・ブレット・アンダーソン/ギャレット・クレイトン/ベラ・デイン
悪質なイタズラ電話を繰り返すブレイディやサムたちの元に、ある日、イタズラ電話を掛けた相手から折返しの電話が掛かってくる。その相手の男は、何故か2人の住所を知っており、ブレイディの両親を監禁していることを告げる..、というホラー映画。
他人を陥れるようないたずら電話をする馬鹿者(ワカモノ)を見ているだけでも気持ちが悪くなる。たかが映画と思っていても許せないのは、私の何がそうさせているのだろうか。そこまで清廉潔白で美しい心をいつも持っている訳ではない。それなのに他人を馬鹿にするような行動を平気でする人たちを激しく罵る。
そんな奴らがどんな報復を受けようがいい気味だと思えて仕方がない。なんと心の狭い自分なのだろうと、嘆いてみたって仕方がない。それが自分なのだし、それ以上のものではない。せめてそういう狭い心は封印して決して他人には見せないように慎ましやかに生きることだけが、私の生きる道かもしれないと。
『インビジブル・スクワッド 悪の部隊と光の戦士』(Il ragazzo invisibile)
2014年・イタリア/フランス 監督/ガブリエレ・サルバトレス
出演/ルドヴィコ・ジラルデッロ/ヴァレリア・ゴリノ/ファブリッツィオ・ベンティヴォリオ
イタリアもののヒーロー映画。発端は、好きな子に近付く勇気もないいじめられっ子の少年が、ある日突然透明になる力を手に入れて、町で起きている誘拐事件を解決していく。子供たちの間で起こる出来事を解決していく冒険アクションのようなもの。
観たばっかりの「ミラクル・ニール!」や「アレックス・ライダー」に通じる全体の流れ。比べてしまえばお茶らけている分だけ、この映画の屁たれ感が半端ないが、気楽に観られる映画という点ではさすがイタリア映画と称賛しなければならない。
シリーズものになりそうな雰囲気はあるものの、スパーマンのようにスーツを来て透明人間になって人助けをするというストーリーには限界があるような。遠山の金さん好きの日本人には向いているシリーズになるだろうが、大した力もない”スーパー・ヒーロー”では選挙に出ても勝てそうもない。
『レプリカズ』(Replicas)
2018年・アメリカ 監督/ジェフリー・ナックマノフ
出演/キアヌ・リーブス/アリス・イヴ/トーマス・ミドルディッチ/ジョン・オーティス
医療系のバイオ企業で働く神経科学者のウィリアム・フォスターは上司からせかされたり失敗を繰り返したりしつつ、亡くなった人間の意識を人工脳に移す研究に没頭していた。家族との生活は幸福なものであったが、家族と一緒の休暇初日に起きてしまった自動車事故で妻子を失ってしまう。あまりの悲しみから、ウィリアムは妻や子どもたちの意識や記憶を保存するという自らの研究を利用することを思いつき、すぐさま同僚のエドに機材を運んでもらう。また、同時に、ウィリアムはクローン技術を使って妻子を蘇らせるというアイデアを考え、実行に移す。クローン人間の作成は法律で禁止されていたが、暴走するウィリアムは研究所から機材を盗んでまでクローン人間の作製を行った。(Wikipediaより)
神の領域に行ってしまう生命に関する研究は、それでも留まることなく進歩、進化していくのだろう。それを恐ろしいと思うのか、素晴らしいと思うのかは人それぞれなのだと思う。どうやって地球が出来て、人間はどこから生まれて来たのかの根本的なことを解明できていないのが人間社会。そこはそのままにして、違うことだけで先に進むということにはならないのが人間の知力なのだろうか。
地球がどんな風に出来たかを見事に解明したところで、一体人間は何が変われるのだろうか。人間がどんな風に進化したかを正確に知ったとして、一体人間はどう変われるのだろうか。情報ばかりが蔓延る社会では、情報に振り回されて、何が嘘で何が真実かさえ不確かになっている。天才的な人間集団がかなりの複数で世界をリードして行かなければ、烏合の衆の人間地球が出来上がってしまうだろう。宇宙戦争がおきたら、真っ先に潰れるのが地球でなければいいのだが。
『ブラック・スキャンダル』(Black Mass)
2015年・アメリカ 監督/スコット・クーパー
出演/ジョニー・デップ/ジョエル・エドガートン/ベネディクト・カンバーバッチ/ロリー・コクレーン
原作はディック・レイアとジェラード・オニールのノンフィクション『Black Mass: The True Story of an Unholy Alliance Between the FBI and the Irish Mob』(2001年出版)。マサチューセッツ州ボストン南部で活動していた犯罪組織のリーダー、ジェームズ・ジョセフ・バルジャー(ホワイティ・バルジャー)を主人公としている。
最初のうちはジョニー・デップが分からなかった。どこかで聞いた声と、どこかで見たことのあるような顔だとだけ思っていた。アメリカの役者は相変わらず凄い。実話に基づく映画ならではのメイクが生々しい。額が禿げ上がった顔を平気で演じられるのは特技だろう。この映画は、1970年代後半から1980年代のジェームズに焦点を当て、彼がアイルランド系アメリカ人によって構成される「ウィンター・ヒル・ギャング」のリーダーの座に上り詰める様子をいている。
この時代のボストンの北部はイタリア系、南部はアイルランド系のマフィア・ギャングが牛耳っていたという。日本でも新宿歌舞伎町に中国系ヤクザが殴りこんできたとだいぶ前に聞いたことがあるが、今やその勢力図はどうなっているのだろうか。日本人同士だって、同じ組が3つに別れて血の抗争をおっぱじめている現状をみると、人間の権力欲は永久に無くなるものではないと思い知らされる。
『アレックス・ライダー』(Stormbreaker:Alex Rider: Operation Stormbreaker)
2006年・イギリアウ/アメリカ/ドイツ 監督/ジェフリー・サックス
出演/アレックス・ペティファー/アリシア・シルヴァーストーン/ミッキー・ローク/ソフィー・オコネドー
幼い頃両親を亡くした主人公アレックス・ライダーは銀行員の叔父と、家政婦)とともに暮らす14歳の少年。ある日、叔父が不慮の事故死を遂げ、その死に疑問を抱いたアレックスは彼の周辺を探り自分を育ててくれた叔父が実は英国諜報部員であったことを知ることになる。秘密情報部に乗りこんだ彼に、上司だった人物は叔父が過去アレックスに教えてきた数カ国の語学や射撃、武道、スカイ・ダイビングやスキューバ・ダイビングなどすべて実はスパイに必要なレッスンだったのだと告げ、彼をMI6にスカウトする。(Wikipediaより)
ショーン・コネリーの後継者を育てようとしているのか、とさえ思えるようなイギリスお得意の諜報ものの誕生だ。主人公はまだ14歳と若い、この若さにする必然性がどこにあったのかと、ちょっとばかりいらぬ想像を巡らしたが、何も分からなかった。若いからいいのだろうか。それなら、キックアス(Kick-Ass・2010年)の少女ヒット・ガールのような世直しスーパー・ヒーローで充分なのではなかろうかと。
ストーリやアクションはかなり今風で、007が出来たころの秘密兵器に比べれば雲泥の差はあるものの、その当時の雰囲気を踏襲する映像は懐かしさを覚える。もしかするとシリーズものになって、これからのスパイ映画を牽引して行くようになるのかなぁ。主人公役も実年齢は16歳らしいから、かなり主人公役をやり続けることになったりして。
『ミラクル・ニール!』(Absolutely Anything)
2015年・アメリカ 監督/テリー・ジョーンズ
出演/サイモン・ペグ/ケイト・ベッキンセイル/サンジーヴ・バスカー/ロブ・リグル
サイモン・ペグ主演のSF・コメディ映画。モンティ・パイソンのテリー・ジョーンズが監督を務め、他のメンバーも声優として出演している。パイソンズが揃って映画に出演するのは、1983年に公開された『人生狂騒曲』以来のことであった。またこの作品は、ロビン・ウィリアムズの最後の出演作品となった。(Wikipediaより)
ロビン・ウィリアムズの出演シーンが分からなかった。地球外生命体を求めて打ち上げられた探査船が、遠い宇宙の果てにいるエイリアンたちの「評議会」)へ届く。彼らは地球人の無能さに呆れ、これまでの星と同じように地球を消滅させることにするが、1度は機会を与えるべきだとする銀河法の規定により、適当に1人の地球人を選んで「ほとんど何でも」("Absolutely Anything") 叶えることのできる力を授けると決める。その力を与えられたのが冴えない中学校教師であるこの映画の主人公。
軽く観られるだけがいいい映画だろう。なんでも叶えられる力を持つと人間が何をするのかという命題は、多くの映画で描かれ、語られてきた。かわいい望みを実現するくらいならいいが、大きな野望を叶えてしまうと人間はどうしようもない価値観に苛まれるのがオチのようだ。これを書いていて最後になって、ロビン・ウィリアムズは、主人公の愛犬デニスの声役だったということが分かった。
『1917 命をかけた伝令』(1917)
2019年・イギリス/アメリカ 監督/サム・メンデス
出演/ジョージ・マッケイ/ディーン=チャールズ・チャップマン/マーク・ストロング/アンドリュー・スコット
第一次世界大戦( World War I、略称:WWI)は、1914年7月28日から1918年11月11日にかけて、連合国対中央同盟国の戦闘により繰り広げられた世界大戦である。この映画の舞台は1917年4月、ヨーロッパは第一次世界大戦の真っ只中にあった頃の物語。
その頃、西部戦線にいたドイツ軍は後退していた。しかし、その後退はアルベリッヒ作戦に基づく戦略的なものであり、連合国軍をヒンデンブルク線(英語版)にまで誘引しようとしたのであった。イギリス陸軍はその事実を航空偵察によって把握した。エリンモア将軍は2人の兵士、トムとウィルを呼び出し、このままでは明朝に突撃する予定のデヴォンシャー連隊、第2大隊が壊滅的な被害を受けてしまうが、彼らに情報を伝えるための電話線は切れてしまったため、現地へ行って連隊に作戦中止の情報を伝えることを命じられた。第2大隊には1,600名もの将兵が所属しており、その中にはトムの兄・ジョセフもいた。(Wikipediaより)
舞台劇にでもなりそうな光景、風景の戦争映画。時々はドカ~ン、バチ~ンと戦争の火花が現実味を帯びるけれど、どちらかというと伝令を届けるために奮闘する2人の兵士が大主人公になっている。途中からはそれが1人になってしまったから、余計静かな戦争映画となっている。悪くはない。が、何かが足りない。実際にあった悲惨な戦争の焼け跡が伝わってこないからかもしれない。それにしてもこの時代の戦争はかわいい、などと言っていると誰かに舌の根を抜かれてしまいそうだ。
『キャッツ』(Cats)
2019年・アメリカ 監督/トム・フーパー
出演/ジェームズ・コーデ/ンジュディ・デンチ/ジェイソン・デルーロ/イドリス・エルバ
T・S・エリオットによる詩集『キャッツ - ポッサムおじさんの猫とつき合う法』(The Old Possum's Book of Practical Cats)を元にした、アンドルー・ロイド・ウェバーが作曲を手掛けたミュージカル作品である。マンカストラップ、ラム・タム・タガーといった個性的な猫たちが都会のごみ捨て場を舞台に、踊りと歌を繰り広げる。人間が一切出てこない演出と振付が特徴となっている。ニューヨークでの連続上演回数は、2006年1月9日に『オペラ座の怪人』に抜かれるまでブロードウェイでのロングラン公演記録であった。世界で興行が最も成功したミュージカル作品のひとつである。2019年時点で、全世界での観客動員数は7300万人を上回るという。
この映画は、公開直後から酷評レビューの嵐が吹きまわっているらしく、第40回ゴールデンラズベリー賞では、最低作品賞をはじめ、最低監督賞、最低助演男優賞(ジェームズ・コーデン)、最低助演女優賞(レベル・ウィルソン)、最低スクリーンコンボ賞(半人半猫の毛玉たちのコンビ全て)、最低脚本賞の最多6部門で受賞を果たしている、
私が昔偶然手に入れたイギリスの舞台をDVD化した映像は素晴らしい。イギリスのミュージカル歌手エレイン・ペイジ(Elaine Paige,1948年3月5日-)版であったことも幸いしている。そのオリジナルはどこかへ行ってしまったが、歴代のパソコンのハードディスクに保存されていることがラッキーだ。時々、他人のハードディスクにも勝手にコピーして楽しんでもらっている。その映像を何度も眺めているので、この酷評の映画の意味がよく分かる。出来過ぎた猫の化粧が、何故か気持ち悪くなってきてしまう。もっとも感動的な「メモリー」の歌のシーンでは、え!ちょっと待ってよ!違い過ぎるよ印象が、と言葉にならない嘆き節を。
『ラッキー』(Lucky)
2017年・アメリカ 監督/ジョン・キャロル・リンチ
出演/ハリー・ディーン・スタントン/デヴィッド・リンチ/ロン・リビングストン/エド・ベグリー・ジュニア
一匹狼の偏屈老人ラッキーが、風変わりな町の人々ととりとめのない日々を過ごしながら、静かに死と向き合っていく姿をユーモアを織り交ぜて描く。主演のハリー・ディーン・スタントンの遺作(1926年7月14日 - 2017年9月15)。アメリカでの公開が2017年9月29日だったので、その直前に亡くなっている。
神など信じずに生きてきた一匹狼の偏屈老人ラッキーは今年で90歳。目を覚ますとコーヒーを飲んでタバコを吸い、なじみのバーに出かけて常連客たちと無駄話をしながら酒を飲むという毎日を過ごしていた。そんなある日、ラッキーは突然倒れたことをきっかけに、自らの人生の終わりを意識し始める。彼は自身がこれまでに体験してきたことに思いを巡らせながら、「死」を悟っていく。迫真の演技というより、まさしく人生の最後の姿を馴染んだスクリーンに晒したという感じだろうか。
『イレイザーヘッド』(Eraserhead・1977年)、『エレファント・マン』(The Elephant Man・1980年)の監督で有名なデヴィッド・リンチが結構頻度の高い出演者としてこの映画に出ている。取り留めない毎日の生活が人生。嫌味を言ったり、嫌われることも平気で喋れる。いつ死ぬか分からないことは想像できても、健康体で毎日の煙草を医者から止められることもないあたりがユーモア。考えられないほど肺にも異常が見られないんだから、生活のリズムを殺してまで煙草を止める必要はないよ、と医者が言うんだ。
『パリよ、永遠に』(Diplomatie)
2014年・フランス/ドイツ 監督/フォルカー・シュレンドルフ
出演/アンドレ・デュソリエ/ニエル・アレストリュプ
1944年8月25日未明。パリの中心部に位置するホテル ル・ムーリスにコルティッツ将軍率いるドイツ軍が駐留していた。ヒトラーからの命を受け、コルティッツはパリ壊滅作戦を進めている。それは、セーヌ川に架かる橋の数々、ノートルダム大聖堂、ルーヴル美術館、オペラ座、エッフェル塔…パリの象徴でもあり、世界に誇る美しき建造物すべてを爆破するというものだった。(Filmarksより)
ヨーロッパ戦線ではドイツの敗色が濃厚となっていた。8月7日にディートリヒ・フォン・コルティッツ歩兵大将をパリ防衛司令官に任命したヒトラーは、パリに架かる橋をすべて爆破した上で、最後の一兵まで戦うよう命令を出した。パリ生まれパリ育ちのスウェーデン総領事ノルドリンクが、パリの破壊を食い止めようと説得にやってくる。将軍の考えを変え、何としてでもパリの街を守りたい総領事。一方、妻子を人質に取られ作戦を実行せざるを得ない将軍。長い一夜の駆け引きが始まった。
二人の会話がほとんどの物語なので、出演者もこの二名しか記されていない。実際にこの二人がどういう会話をしたのかの問題ではなく、歴史の流れの中でこういうことであろうとするストーリー展開は、きっと映画でも描き切れないものがあったに違いない。終わってしまえば何とでも言える、が、戦争の最中しかも終結まじか戦局の中での激論は想像に絶するものだったろう。戦争でなければあり得ない究極の選択を課せられた軍人たちも最大の被害者と呼べるだろう。
『ザ・アウトロー』(Den of Thieves)
2018年・アメリカ 監督/クリスチャン・グーデカスト
出演/ジェラルド・バトラー/オシェア・ジャクソン・Jr/50セント/パブロ・シュレイバー
2作続いた警察もの、しかもこの映画はなんと2時間20分もあった。大作は長くなる傾向にあるが、この程度のアクション映画でこの長さは珍しい。何分に1回、1か月に何回、1年にこれだけの銀行強盗事件が発生するのがアメリカ、ロサンゼルスだと冒頭にテロップが流れる。
この映画の見せ所は、カーアクションではなく銃撃戦。高速道路の出口で渋滞にはまった犯人グループとそれを追う警察官のあたりかまわずの銃撃戦は、さすがアメリカと思わざるを得ない。銀行強盗が頻繁に起こるのも銃という武器が巷に溢れているからに他ならない。単発銃ではなく機関銃が主な武器となって銃撃戦が挙行されるに至っては、コメントのしようがない。自分の身を守るためには「銃」は絶対必要なものだと主張するアメリカ人に賛同することは出来ない。
圧倒的に警備が厳しい連邦準備銀行を襲うシーンを観ていると、世の中に絶対はあり得ないんだということが。どんなにセキュリティーを強化したって、穴のないセキュリティーも考えられない。人間がシステムを運用し、人間がシステムの中で動いている限りは、絶対に守れるものはない。しかも、ハンバーグのデリバリーを建物の中まで入れてしまうというちょっと考えられないようなセキュリティーの甘さが、映画のほころびに通じているような気もする。
『ザ・スクワッド』(ANTIGANG/THE SQUAD)
2015年・フランス/イギリス 監督/バンジャマン・ロシェ
出演/ジャン・レノ/アルバン・ルノワール/カテリーナ・ムリーノ/ティエリー・ヌーヴィック
ジャン・レノが犯罪者からも恐れられる伝説の刑事を演じたアクション映画。パリ警視庁の特殊捜査チーム率いる伝説の刑事セルジュは、その過激で暴力的な捜査で犯罪者からも恐れられていた。宝石店で発生した強盗殺人事件の主犯を、かつて自ら逮捕したことのある因縁の男アルミン・カスペールであるとにらんだセルジュは、カスペールとその仲間たちを強引なやり方で連行したが、決定的な証拠が出ずにカスペールは釈放された。
日頃から上層部に目をつけられ、誤認逮捕の責任を問われたセルジュは、チームとともに強盗事件の捜査を外されてしまう。そんな中、同一犯とみられる強盗事件が発生。命令を無視し、事件現場へと向かったセルジュたちに、犯人たちは銃を乱射。パリ市街で市民を巻き込んだ銃撃戦へと発展してしまう。往年の人気ドラマを映画化したイギリス映画「ロンドン・ヒート」のリメイク。(映画.comより)
フランスの警察もの。警察ものといえばアメリカと決まっているが、なかなか悪くはない。と、思っていたが、次作で観ることになる「ザ・アウトロー」がアメリカ・ロサンゼルスの警察もので比べてしまったら、圧倒的にアメリカに軍配があがった。やさグレ刑事の度合いも半端ないアメリカの警察官、いくら頑張ってみたところで、勝てないものは勝てないと悟るしかない。
『サイバー・リベンジャー』(I.T.)
2016年・アメリカ 監督/ジョン・ムーア
出演/ピアース・ブロスナン/ジェームズ・フレッシュヴィル/アンナ・フリエル/ステファニー・スコット
ピアース・ブロスナン演じるビジネスジェット機専門の航空会社を経営する社長マイク・リーガンが、高校生の娘に近づいたことを理由に解雇した部下のITエンジニアから逆恨みされ、会社や関連機関へのハッキングで破滅させられる恐怖を描く。(Wikipediaより)
I.Tを「イット」と読んだ日本の森首相の話は有名だが、巷に氾濫する和製英語や本物の英語の短縮形が甚だ過ぎて、日本人の賢明さが顕著。カタカナ、ひらがな、漢字、アルファベットを駆使して生きている日本人てホントに凄いと思う。一方では元々の日本語が乱れてしまって、敬語や尊敬語が極めて不適切に遣われている現代社会は、おそらく日本語の運命を決める岐路に立っているんではなかろうか。
ネットワークの難しさはオタク族と呼ばれる人種の助けを借りなければにっちもさっちも行かないのも現実。全ての通信が無線に向かっている。便利ではあるが、有線ではないもどかしさがある。それを嫌って有線でなければ嫌だという年寄りもたくさんいるが、無線の便利さを享受した方がなにかと都合の良い世の中になって来た。そういう世界でも100年後が見てみたいと、また同じことを言う。
『女と男の観覧車』(Wonder Wheel)
2017年・アメリカ 監督/ウディ・アレン
出演/ケイト・ウィンスレット/ジャスティン・ティンバーレイク/ジュノー・テンプル/ジム・ベルーシ
冒頭、監督がウディ・アレンだと知って、ちょっと観る気が削がれた。彼の作品というより、彼の作った映画との相性が悪いと思い込んでいる節がある。そんな風に思ってしまったら、もう仕方がない。何度も書いていることだが、どこでこのボタンの掛け違いみたいな雰囲気になってしまったのかは分からない。
1950年代のコニー・アイランド(Coney Island・アメリカ合衆国ニューヨーク市ブルックリン区の南端にある半島および地区である。ニューヨークの近郊型リゾート地、観光地として知られる。)が舞台。子連れで再婚した元女優の遊園地のウェイトレスとメリー・ゴーランドの管理人である夫、そこに疎遠になっていた夫の娘が転がり込んできた。しかもその娘は現役のマフィアの夫から命からがら逃れて来た、というストーリー。
「女と男のいる舗道」(Vivre sa vie: Film en douze tableaux・1962年)は、ヘラルド配給。その題名を頂いて付けた題名『女と男の名誉』(Prizzi's Honor・1985年)は私が日本ヘラルド映画の宣伝部にいた時に付けた題名。そんなことを想い出したこの映画の邦題。そんなことを知らなければ知らないでなんていうことはないのだが、映画というのは監督も役者も、はたまた原作にも曰く因縁みたいなものが結構あって、そこんところを知ると映画がもっとおもしろくなるという側面を持っている。
『コンプリート・アンノウン ~私の知らない彼女~』(Complete Unknown)
2016年・アメリカ/イギリス 監督/ジョシュア・マーストン
出演/レイチェル・ワイズ/マイケル・シャノン/キャシー・ベイツ/ダニー・グローヴァー
ニューヨーク。クライドはアリス・マニングと名乗る女性とカフェで歓談していた。アリスはカエルの研究をしており、タスマニア島の調査を終えて帰ってきたのだという。アリスが「新しい友達が欲しい」と言ったので、クライドは彼女を同僚のトムが主催するパーティーに連れて行くことにした。アリスの姿を見たトムは仰天した。アリスの風貌が大学生時代の彼女、ジェニーに瓜二つだったからである。しかも、ジェニーは失踪していたのである。パーティーの後、トムがアリスを問いただすと、アリスは自分がジェニーであったことをあっさり白状した。アリスはかつての自分を知る唯一の人間であるトムに会いに来たのだという。予期せぬ事態に困惑するトムに対し、アリスは自分のように生きることの素晴らしさを説くのだった。そして、場の勢いに流されるまま、トムも別人として振る舞うことの快感を味わってしまった。その結果、トムは「今まで通り家族に縛られた生き方をするべきなのか、それともアリスのように自由な生き方をするべきなのか」という問題に直面し、頭を抱えることになった。(Wikipediaより)
アマゾン・スタジオが製作した映画。日本の劇場未公開も頷けるかったるさは久しぶり。暗いし、テンポは遅いし、アメリカ映画とは言えない雰囲気。たぶん、イギリスでの製作ということなのだろう。一人の女性の、人間の生き方を切り取って見せてくれてはいるが、何処にも共感できない。何を知って欲しいのかが分からない。
誰にも邪魔されずに独りで生きていけるのなら、誰しもそういうことを望むかもしれない。いや、独りで生きていくなんてとても出来る事じゃないと、最初からそんなことは頭にない人の方が多いかもしれない。いずれにしたって、人間100年、どんな風に好き勝手に生きようが残る人生の短さを考えれば、余計な心配など無用という人生。
『ザ・サークル』(The Circle)
2017年・アメリカ 監督/ジェームズ・ポンソルト
出演/エマ・ワトソン/トム・ハンクス/ジョン・ボイエガ/カレン・ギラン
SNSの会社になんとか就職できた主人公だったが、この会社はSNSの最先端を行く会社で、その神髄に触れていくたびに人間の恐ろしさを知ることになる。自分の生活を全てオープンにし、身の回りには無数の小型カメラが張り付いている。トイレや暗くなった寝室以外では、世界中の眼が自分の一挙手一投足を見ることが出来、多言語でコメントが寄せられる。
そんな生活が来るのだろうかと、疑問に持つことになるが、意外と映画の未来図は現実にやってくることが多いのが普通だ。こういう映画を見るたびに、3年や5年後ではなく、100年後の世界が見てみたいという欲求がさらに強くなる。そんなことは不可能なのだけれど、どうしても100年後のこの場所に居たい。
そんな夢にも出来ないことが私の夢なのだ。こんなことを考えるのは普通ではないのだろうか。目の前の出来そうなことを「夢」として語った方が、世間的には可愛く映るのかもしれない。そんな夢なんて、自分の小さな満足を満たすだけでしかない。自分なんていう存在は宇宙の塵にも成れはしないと常々思っている自分にとっては、夢は壮大でなければ意味がない。壮大であればあるほど、気が狂っているとしか見られないのが普通の世界。それでいいのだ。
『アウトランダー』(Outlander)
2008年・アメリカ 監督/ハワード・マケイン
出演/ジム・カビーゼル/ソフィア・マイルズ/ジョン・ハート/ロン・パールマン
『アウトランダー』(Outlander)は、アメリカ人作家ダイアナ・ガバルドンによる歴史ロマンSF小説シリーズである。 1980年代後半にシリーズ第1巻『時の旅人クレア』を描き始め、1991年に出版された。 計画された10巻のうち8巻を出版しているということらしい。
テレビ・シリーズが放映されたのが2014年、原作は世界中で3000万部になるほど読まれているという。一種のタイムスリップものなのに、主人公が落下した時代が8世紀で場所が北欧、バイキングたちが闊歩する風景と相まって独特なストーリー展開が興味を湧かせる。
「ホビット」「ロード・オブ・ザ・リング」のようなファンタジー、冒険ものを久しぶりに楽しんだ。細かいところでは、よそ者と土着の王位継承予定者との二人の争いになって、「王」はどっちだという争いになるだろうと思わせられたのは昔のことで、今やもっとすんなりと王女の愛を受けながらも、正当路線の若者が結構いい奴だったというオチがついていた。エイリアンのお化けのような怪獣が出てくるのはいただけなかったが、普通の人間の形をした悪魔が出てきても冒険ものにははまらないから、仕方のない怪物の登場だと納得するしかなかった。
『特捜部Q カルテ番号64』(Journal 64)
2018年・デンマーク/ドイツ 監督/クリストファー・ボー
出演/ニコライ・リー・カース/ファレス・ファレス/ヨハン・ルイズ・シュミット/ソーレン・ピルマーク
デンマークの人気ミステリー作家、ユッシ・エーズラ・オールスンの大ヒットミステリー小説で、累計1600万部の売上を突破した人気シリーズの「特捜部Q」で、その映画化第4弾が『特捜部Q カルテ番号64』。本国デンマークでは、国内映画で歴代No.1の興行成績を記録したという。
警察ものでは一日の長があるアメリカ映画と比べてはいけないかもしれない。結構面白い物語になっているが、監督の力が弱いためにその肝心のおもしろさが直球で伝わってこない。妊娠中絶が普通に行われていない国の悲惨さが見えてくる。また、優生保護法のような間違った価値観のもとに不妊手術を行ってしまう社会の異常さがあぶり出されている。
それにしても神は種の保存という大テーマのために、なんていうことを生きとし生きる者に課しているのだろうか。セックスの快楽に溺れて望まない子供を虐待し、死にまでも陥れる親、人間の存在がただ社会の一環だと見ることは出来ない。もっと、規律ある人間性の教育がきちんと為されなければ、共同体として社会を担っている一人一人の人間の生き様を・・・・・。
『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』(Maudie)
2016年・カナダ・アイルランド 監督/アシュリング・ウォルシュ
出演/サリー・ホーキンス/イーサン・ホーク/ガブリエル・ローズ/ザカリー・ベネット
モード・ルイス(Maud Lewis、1903年3月7日-1970年7月30日)はカナダのフォークアートの画家である。田舎の風景、動物、草花をモチーフに、明るい色彩とシンプルなタッチで温かみと幸福感のある絵を描いた。カナダで愛された画家の一人である。と、紹介されている実話に基づいた映画。
若年性関節リウマチを患い、生涯に亘って手足が不自由で体も小さかった。身体障害者に対する差別もあり、途中で学校教育を中退してホームスクールに切り換えたほか、同世代の子供と遊ぶよりも一人で過ごす時間が多かった。1935年には父ジョンが、1937年には母アグネスが亡くなる。当時の慣習により住居は兄が継ぐが、兄夫婦は離婚し兄が家を出る。モードは叔母と暮らすこととなった。が、その叔母からも見放され、独り暮らしのために魚の小売業を営むエヴェレット・ルイスと出会い、1938年に結婚した。このあたりの生活はかなり貧祖過ぎて涙が出る。男の慰み者になっていると小さな村では噂になっていた。綺麗な海とおもちゃ箱のような小さな村の家並みが印象的。
その後、彼女の書いた絵が認められて大成功した、という物語になるわけではなかった。でも、彼女を見捨てた叔母の言葉によれば、一族で一番幸せになったのはあなただけよ!、と。
『記者たち 衝撃と畏怖の真実』(Shock and Awe)
2018年・アメリカ 監督/ロブ・ライナー
出演/ウディ・ハレルソン/ジェームズ・マースデン/ロブ・ライナー/ジェシカ・ビール
イラク開戦をめぐる「大量破壊兵器」捏造問題を実話を元に描く。字幕監修は池上彰が担当したらしい。ブッシュ元大統領を始め、多くの政治家たちのテレビでの発言が引用され、その背後で新聞記者たちがどのように考え行動していたのかを描き出している。さすがアメリカ、アメリカ映画という感が強い。日本のマスゴミ(塵)や映画界がこれほどの硬派な切り口を映画化するなんていうことは、あと何十年経っても実現することはないであろう。
実話、2002年1月29日、ジョージ・W・ブッシュ米大統領は一般教書演説で、北朝鮮、イラン、イラクを悪の枢軸であると糾弾し、イラクが大量破壊兵器を保有しテロを支援していると非難した。マスメディアもイラクへの軍事介入を肯定する論調が支配的となり、ナイト・リッダ―(今回の新聞社)の記者たちによる懐疑的な記事は紙面に載らなくようになる。事実がどうであれ、120%の確信があったとしても、政府発表を忖度して記事が構成されるのは、この時代のアメリカにとっても不思議なことではなかった。今でさえ、トランプに忖度した記事が大手を振ってまかり通る現実を見れば、何の違和感もないことだろう。
それでも、ひとつの真実を求めて行動する「記者たち」の姿は神々しい。数年後に政府発表をそのまま記事にしたことを謝罪した新聞社があったとしても、今生きる現実には何の慰みにもならない。そういう時の流れを利用した政府権力の濫用は、世界中のどの国でも行われているようだ。
『天才作家の妻 40年目の真実』(The Wife)
2018年・スウェーデン/イギリス/アメリカ 監督/ビョルン・ルンゲ
出演/グレン・クローズ/ジョナサン・プライス/クリスチャン・スレーター/マックス・アイアンズ
著名な作家、ジョゼフ・キャッスルマン宅に、「あなたが今回のノーベル文学賞に選ばれました」という国際電話がかかってくる。嬉しい報せに、電話を終えると思わず妻ジョーンと手を取り合って、家の中でダンスしてしまうほど有頂天になるジョゼフ。だが、この夫婦にはシリアスな問題があった。
オリジナルタイトル「Wife」をもう少し尊重して欲しい。せめて原題通り「妻」でもいいし、さもなければ「ノーベル賞作家の妻」または「小説家の妻」くらいに留めて欲しかった。肝心の真実があることを匂わせてしまっては、観る人の興味を半分削いでしまうことが分からないのだろうか。ノーベル賞作家の妻を演じるのは、グレン・クローズ。彼女がスウェーデン出身の監督、ビョルン・ルンゲを指名したことが伝えられているように、本作はクローズが主導する、彼女のための作品である。そして若い頃の自分を、実の娘のアニー・スタークが演じている。
実話に基づく映画ストーリーではないとの事だが、もしかすると同じような話は存在するのかもしれない。才能のない夫の陰になって本当の天才だった妻の存在は、一種の皮肉にも見える。話がそうなるだろうという通りになることはおもしろい映画の条件なれど、あまりにもその切り口や振る舞いが平坦過ぎるきらいがある。もっとおもしろくなるような気がする。監督の力なのかもしれない。
『ウイスキーと2人の花嫁』(Whisky Galore!)
2016年・イギリス 監督/ギリーズ・マッキノン
出演/グレゴール・フィッシャー/エディ・イザード/ショーン・ビガースタッフ/ナオミ・バトリック
第二次世界大戦中にスコットランドのエリスケイ島沖で大量のウイスキーを積んだ貨物船SSポリティシャン号が座礁した事件をもとにしたコンプトン・マッケンジーの1947年の小説『Whisky Galore』をマッケンジー自らが脚本、アレクサンダー・マッケンドリックが監督を務めて映像化した1949年の映画『Whisky Galore!』のリメイク作品。少年時代からオリジナル版のリメイクを夢見てきた1人の映画プロデューサーの熱意により、当時貨物船に乗船していた士官候補生や座礁した船をいち早く発見した人物など、事件を直接知る人々への入念な取材を繰り返し、10年の歳月をかけて製作されたという。
戦況悪化のあおりを受けてウイスキーの配給が止められたトディー島の住民たちは、すっかり無気力に陥っていた。島の郵便局長ジョセフの長女ペギーと次女カトリーナはそれぞれ恋人との結婚を望んでいたが、周囲からウイスキーなしの結婚式はあり得ないと反対されてしまう。そんな中、輸出用に5万ケースものウイスキーを積んだニューヨーク行きの貨物船が島の近くで座礁する事件が発生。これを神様からの贈り物だと捉えた島民たちは、禁制品のウイスキーを「救出」するべく立ち上がるというコメディ。
スコットランドのバグパイプが雰囲気を醸し出す。この島の西側にはもう陸地はなく大西洋のさらに西にはアメリカ大陸があるだけだった。ウイスキーを島民全員が楽しそうに飲んでいる。ロンドンでは空爆があるけれど、この島には空爆よりもウイスキーの方が大切なようだ。思い出すのはスコットランドが発祥のゴルフ、その聖地と言えるセントアンドリュース、行っておいて本当に良かった。あの時、ヘラルドの副社長だったサム・難波さんが「小河君、今度は何処へ行きたいかね?」と聞いてくれなかったら、カンヌ映画祭の帰りにスコットランド出張は実現していなかった。合掌、難波さん。
『ケルベロス 紅の狼』(O Doutrinador/The Awakener)
2018年・ブラジル 監督/グスタヴォ・ボナフェ
出演/キコ・ピソラート/タイナ・メディナ/サミュエル・デ・アシス/マリリア・ガブリエラ
漫画原作。ケルベロスは"地獄の番犬" 。"紅の狼" とは違うでしょう。映画の内容ともズレてる。まさか 押井守版と差別化するための日本独自のサブタイトル? という書き込みがあった。ブラジル映画は珍しいが、アクション映画を作るとなると最先端を行くアメリカ映画を気にしなければ、視聴者を満足させることはなかなか難しいだろう。
世直し奉行みたいなものだけれど、正義という大上段に振りかざした錦の御旗のもとに行動することは、結局一人の人間のエゴでしかない、てなことを言われそうだ。それでも、正義を振りかざさないで見て見ぬふりをする現代人の大多数をいくら責めたって世の中は良くならない。犠牲的精神と肉体で世の中に向かっていく人が現れないと、世の中は急速に改善することはないであろう。
正しいことが正しいと認められる世の中なんて、そんなに簡単に存在すらする訳もない。「フェイク・ニュース」と自らのフェイク主張を平然と主張しまくる大統領が、身分を保証されているうちは国民の上に君臨できるんだから、いくら人間が作った規律とは言いながらも、納得できない現実が目の前にある。
『プロジェクト・ブルーブック』(Project Blue Book)
2019年・アメリカ 監督/ロバート・ストロンバーグ
出演/エイダン・ギレン/マイケル・マラーキー/ローラ・メネル/クセニア・ソロ
1952年から1969年まて゛、アメリカで謎の飛行物体や光が次々と目撃される。空軍と政府は、12,000以上の情報を極秘裏に捜査することにする。その調査のコードネームこそが「プロジェクト・ブルーブック(Project Blue Book)」である。調査資料は、2015年に開示され、政府だけが知っていた驚くべき事実が明らかにされる。そこには、歴史を揺るがす謎と陰謀が隠されていた。ドラマ「プロジェクト・ブルーブック」は、極秘調査に基づき、巨匠ロバート・ゼメキスの総指揮のもと制作された壮大なミステリーである。
ロバート・ゼメキ(『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985年)、トム・ハンクス主演の『フォレスト・ガンプ/一期一会』(1994年)などを監督)。実は、上記2作品を既に観終わっているのだが、この欄を書く前にこの映画を観始まってしまった。この映画は、最近では主流のテレビ映画シリーズで、とりあえずシーズン1のエピソード1からエピソード10までが次から次へと閲覧しなさい状態になって、1話43分程度がこれだけ続くともう頭の中はこの映画一色になってしまった。
実話に基づくから怖い話に見えてくる。UFOらしきものを見たと証言する庶民の声は政府や軍の意向で勝手に目くらましにされ人心が乱れないようにとこれまた勝手な思惑で事実が曲げられて報道される。もしかすると、日本にだって同じようなことが頻繁に起こっているのではなかろうか、とさえ思えてくる。トランプ大統領の「フェイク・ニュース」発言はまさしくそういう流れの延長にあるに違いない。「GO to ・・・」やらで明らかに感染者が増えているのにもかかわらず、このキャンペーンで増えた人数は微々たるものだという発表なんか、この映画の政府発表となんら変わるものがない。知らず知らずのうちに何か大きな力で押し込まれてしまっている現実に居ると、はやくあの世とやらに行った方がお利口さんだと思わざるを得ない。シーズン2ももうアップされているようなので、続きを観なければならない。
『スーパーノヴァ 孤独な少女』(MORE THAN ENOUGH)
2017年・アメリカ 監督/アン・マリー・ヘス
出演/マディー・ハッソン/ダビア/メローラ・ウォルターズ/リス・ウォード
同級生からのいじめを受け孤立している女子高生シェリー。そんな彼女に優しく声をかけてくれたのは、黒人でゲイのグレッグだった。嫌なヤツと無理して友達になるよりも、自分の趣味で人生を豊かにしたいという彼に共感したシェリーはすぐさま意気投合。だが一方で、シェリーに対するいじめは加速していった。その原因は、薬物中毒のシェリーの母にもあった。母に手を焼くシェリーを心配した学生たちの後見人で富豪のウェスは、何かあったら相談するようにと声をかける。そんな折、母が家に入り浸っていた恋人と婚約し、仕事を辞めて引っ越すと一方的に言い出したことで、たまらず家を飛び出したシェリー。彼女は一時的にウェスと同居することになるのだが…。(楽天TVより)
ちょっと風変わりな映画だった。アメリカの女子高校生のほんの一端だけでも観ることが出来たかなぁ、という感想。この映画の主人公は周りの同級生とは交じり合わない孤独な学生生活をしているから、一端にも程遠い光景なのかもしれない。高校生の間にだって「クスリ」は蔓延していて、これこそアメリカの一端を垣間見る思い。
ちょうど、往生際の悪いトランプ大統領の悪あがきをテレビで見る羽目に陥っている時期だったが、かつての憧れのアメリカが地に堕ちて行く様を見ているような気がする。日本の政治は幼稚園のもののようだったが、これでは日本よりも遥かに劣る幼児性なアメリカになってしまう。もっとしっかりしてくれ、と声を掛けたくなる。どこからこういうアメリカになって行ってしまったのだろうか。
『アフターマス』(Aftermath)
2017年・アメリカ 監督/エリオット・レスター
出演/アーノルド・シュワルツェネッガー/スクート・マクネイリー/マギー・グレイス
2002年7月に起きたユーバーリンゲン空中衝突事故(2002年7月1日の21時35分バシキール航空2937便とDHL611便が、ドイツ南部の都市ユーバーリンゲンの上空で衝突した事故。両機に搭乗していた71人全員が死亡した。)後に発生した殺人事件を題材にした作品。
シュワルツェネッガーが武器も持たず筋肉を誇張することもない映画だった。妻と娘を飛行機事故で失ったその辺にいる一介の労働者を演じている。事実であることが痛ましい。映画は真実を映すことは出来ないけれど、この事故の原因が管制官にあるとの映像は、一種の潜入感を植え付ける要素になり、その後の物語の進行の妨げになっている。
日本も航空機事故では大きな傷を抱えている。毎年8月になるとそのニュースはテレビで流されるのが常だが、もうあれから何年と時の経つ速さが人間生活の儚さを助長する。生きていてなんぼ、という言い方があるが、生きているからこそ喜びも苦しみも感じられるのが現実。惜しい人を失くした、と懐かしがられることしか空の上からは眺められない。
『エルヴィスとニクソン ~写真に隠された真実~』
2016年・アメリカ 監督/リザ・ジョンソン
出演/マイケル・シャノン/ケヴィン・スペイシー/アレックス・ペティファー/ジョニー・ノックスビル
1970年12月21日に行われたホワイトハウスでの二人の会合を描いているが、コメディドラマ映画。この二人が映った写真は有名らしい。映画の中で語られていることの何パーセントくらいが本当のことなのだろうか。プレスリーが本人に似ていないのがずーっと気になって仕方がなかった。アメリカ映画のいいところは、実話を描く時にはその本人に極めて似ている役者を配していることだと理解していたから。
もっともニクソンだって微妙な容姿で、違和感ありの二人の登場はそれだけでコメディなのだろう。日本の芸能人なんかは簡単に時の総理大臣に逢うことは出来そうな気がする。アメリカの大統領がホワイトハウスで芸能人に会うことは困難なような感じで映画はストーリー化されている。片や大統領でも、片やそれこそ老若男女のアメリカ人が知っている「王様」とまで言われた歌手であり映画スターが、大統領に会う前に緊張している姿は意外だった。
プレスリーは自分の音楽史上ではほんのちょっと前の人だった。そういうこともあり自分では熱狂的になれる要素はなかった。それ以上にあの派手やかな衣装と歌い方は自分の趣味には合わないと思っていた。その直後に出て来たビートルズには夢中になったのに、個人の趣味というのは千差万別だと。
『人間失格 太宰治と3人の女たち』
2019年(令和元年)・日本 監督/蜷川実花
出演/小栗旬/宮沢りえ/沢尻エリカ/二階堂ふみ/成田凌/千葉雄大/瀬戸康史/高良健吾/藤原竜也
太宰治の小説『人間失格』を原作としたものではなく、太宰治と3人の女性との関係を基に描いたフィクション作品となっている。太宰治が死の直前に発表し遺作となった「人間失格」の誕生秘話を、太宰自身と彼を愛した3人の女たちの目線から、事実を基にしたフィクションとして初めて映画化した作品。
配給は松竹とアスミック・エース。このアスミック・エースはもともとヘラルドの子会社だったヘラルド・エースが母体になっている。日本映画製作の窓口になったり、日本ヘラルド映画ではなくヘラルド・エースの名前で良質な単館系の映画を安く買おうという魂胆から出来た会社だった。かなり評判の高い映画を配給しているし、「戦場のメリークリスマス」の制作宣伝をやったりと数え上げればキリのないくらいの作品に関与していた。
才能は有っても、我儘で横柄で女にだらしなく生活にも締まりのないのが芸術家だと相場は決まっている。そんな人生を描いた映画はたくさんあるので、どこをどうやっておもしろくしてくれるのかと興味はあった。この監督のこだわりはいろいろな情報で知ってはいたが、ここまで色に拘る監督も珍しい。お金がかかるよね~、と制作会社に同情してしまう。所詮映画はストーリーが最も大切な要素で、いくら映像が美しくてもそれはそれだけのことでしかない。ストーリーの面白さとセリフの良さがなければ単なる凡々とした映画として評価される道しかない。そんな気がする。
『マスカレード・ホテル』
2019年(平成31年)・日本 監督/鈴木雅之
出演/木村拓哉/長澤まさみ/小日向文世/前田敦子/笹野高史/松たか子/石橋凌/渡部篤郎
原作は、東野圭吾の長編ミステリ小説で「マスカレード」シリーズの第1作目だという。2008年12月から2010年9月まで集英社の月刊誌『小説すばる』に掲載されのち、2011年9月10日に集英社より単行本が発刊された。舞台となった架空のホテルは、巻末に取材協力団体として紹介されている日本橋の「ロイヤルパークホテル」がモデルになったと推察されるらしい。2020年1月に、宝塚歌劇団花組により梅田芸術劇場シアタードラマシティと日本青年館ホールで舞台化された。
ホテルでは巷の縮図のように種々雑多な出来事が起こる。もともとは警察もので、連続殺人犯を捕獲しようとする内容なのだが、ホテルで起こる様々な出来事がおもしろ過ぎて事件の顛末が矮小化されてしまっているのが残念。それゆえ、肝心の犯人逮捕劇がちょっとお粗末に見えてしまった。
たくさんとまでは行かないが、それなりにいろいろなホテルに宿泊した経験があるが、酒が飲めないホテルでの夜の生活は味気ないものだった。どこの地に行っても毎回、酒が飲めたらもっとその土地の夜の散策を楽しめただろうな、と後悔の念が。酒が飲めなくたって夜の一人歩きぐらい出来るはずなのだが、元来のビビリーの性格が部屋に籠って満足している自分を創り出してしまっていた。
『シャンハイ』(Shanghai)
2010年・アメリカ/中国 監督/ミカエル・ハフストローム
出演/ジョン・キューザック/コン・リー/チョウ・ユンファ/菊地凛子/渡辺謙
1941年、上海。その街は、誰のものでもなかった。日本、ドイツ、アメリカ、中国がお互いの腹を探り合いながら、睨み合っていたのだ。米国諜報員のポールは、同僚で親友だったコナーの死の真相を突き止めるために、この街に降り立つ。捜査線上に浮かび上がったのは、いずれも謎に包まれた者たちばかりだ。執拗にポールをつけ狙う日本軍の大佐タナカ、忽然と姿を消したコナーの恋人・純子、中国裏社会のドン・アンソニーと、彼の美しき妻アンナ。やがてポールは革命家というアンナの裏の顔を知り、理想に活きる彼女に強く惹かれ始める。ついにポールは殺人事件の真相に迫るが、そこに暴き出されたのは、全世界をも揺るがす恐るべき陰謀だった。もはや誰も止められない歴史の波は彼らに、守るべきものは何かという、究極の問いを突き付ける。国家への忠誠か、己の命か、それとも生涯の愛か・・・。果たして最後に、彼らが貫いたものとは?(Wikipediaより)
上海には行き損ねてしまった。上海といえば「ジャズ」というイメージがあったが、ニューヨークのように人種のルツボのような街だったらしい。それこそ世界中の国からシャンハイに集まって来た人たちは、1941年12月8日の真珠湾攻撃まで間もないこの時期に濃密な時を過ごしていたに違いない。
おもしろいはずの映画なのに、何故か肩透かしを食ったように味気ない映画だった。監督の力なのか、脚本が詰まらなさ過ぎたのか、散漫な映像がやけにひっかかって気になった。渡辺謙の英語はかなり上手くなったが、どんな映画でも同じようなセリフ回しには、ちょっと。何かが足りないこの映画、味の素のような調味料が必要なのかもしれない。
『ニュースの真相』(Truth)
2015年・アメリカ/オーストラリア 監督/ジェームズ・ヴァンダービルト
出演/ケイト・ブランシェット/ロバート・レッドフォード/トファー・グレイス/エリザベス・モス
2004年アメリカ大統領選の数ヶ月前、CBSの人気番組『60 Minutes II』のプロデューサを務めるメアリー・メイプス(英語版)は部下たちと共に、ジョージ・W・ブッシュ大統領が従軍中に有利な扱いを受けていたという疑惑を追っていた。ブッシュに関する記録が処分されたり書き換えられたに違いないという声が多数上がっていたが、チャールズ中佐は軍がそのような不始末をするわけがないと確信していた。ブッシュが空軍入隊時に受けた試験の成績が思わしくなかったことも、彼の軍歴にまつわる疑惑を強めることとなった。そんなある日、メイプスたちは疑惑に関する証拠を持っていると主張する男(バーケット)に辿り着くことができた。バーケットが持っているメモ書きにはブッシュが軍で優遇されていた事実が記述されているのだという。メイプスは疑惑を報道に踏み切る決断を下し、ダン・ラザーらと共に検証チームを発足させた。(Wikipediaより)
ちょうど今トランプとバイデンとの一騎打ちが火花を散らせている。あと一週間もすれば新しいアメリカ大統領が決まり、また新しい世界情勢が始まるのかもしれない。この映画に描かれている「60ミニッツ」は、アメリカ・CBSのニュース番組として今も健在らしい。トランプがつい最近この番組からインタビューを受けたが、何か気にくわないことがあって録画の途中で帰ってしまった、との報道があった。
アメリカの政治はダイナミックだ。日本の陰湿なジメジメした裏工作の世界とは一線を画しているように見える。それでも、大きな波に逆らうことが出来ず、その波に飲まれてしまう姿は、アメリカといえども抗しがたい大きな力が働いているようにも見える。所詮は人間のやること、権力闘争の構図は人間が存在し始まった時から、何にも変わらず延々と続いていることなのだろう。
『LBJ ケネディの意志を継いだ男』(LBJ)
2017年・アメリカ 監督/ロブ・ライナー
出演/ウディ・ハレルソン/マイケル・スタール=デヴィッド/リチャード・ジェンキンス/ビル・プルマン
リンドン・B・ジョンソンはケネディ政権下で副大統領の座についていたが、その存在感の希薄さ故に政界では軽んじられる始末であった。不遇を託つ日々を送るジョンソンだったが、転機は突然訪れた。1963年11月22日、ケネディが演説中のダラスで凶弾に倒れたのである。ジョンソンは副大統領から大統領に昇格することとなった。大統領の暗殺という事態に国内は混乱したが、ジョンソンは巧みな手腕で事態を収束させていった。しかし、ジョンソンにはケネディ以来の懸案が残っていた。それは公民権法の制定であった。人種差別の解消を願っていたジョンソンは公民権法の早期制定を目指していたが、議会では南部選出の議員を中心に壮絶な反対運動が繰り広げられていた。本作は公民権法の制定に尽力したジョンソンの姿を描き出していく。(Wikipediaより)
リンドン・ベインズ・ジョンソンというフルネームはこれまで知らなかった。ジョン・フィッチジェラルド・ケネディというフルネームは50年前から知っていたが。アメリカからの初中継で飛び込んできたのはケネディ暗殺の事件だった。第二次大戦後の世界情勢を揺るがすキーマンだったケネディ家の悲劇はここに始まった。ジョンソン副大統領が大統領になっても、日本人にはさほど興味がないことだった。少なくとも高校生の世代にとっては。
ほとんどの日本人が知らないだろうケネディ大統領の就任演説を歌にした当時のレコードを、たまたまレコード屋も始めていた実家のお陰で知ることが出来た。リズミカルな彼の演説が楽曲になるとは大したものだ。就任演説を英語で言えるようになっていたが、それ以上の英語会話の進歩もせずに今に至ったことは痛恨の極みだ。
『女神の見えざる手』(Miss Sloane)
2016年・アメリカ/フランス 監督/ジョン・マッデン
出演/ジェシカ・チャステイン/マーク・ストロング/ググ・バサ=ロー/アリソン・ピル
天才的な戦略を駆使して政治を影で動かすロビイストの知られざる実態に迫った社会派サスペンス。原題のスローンは主人公の女性の名前。恐ろしいほどの謀略と策略が横行する。横行するのは政治世界の日常だが、そこに仕事として潮流を起こすロビイストと言われる軍団の行動は、政治家の行動に輪をかけた想像を超えた存在だ。
あまりにもセリフが多くて速いのでついていくのが精一杯。超がいくつも付くような主人公の女性は自分を晒しものにしてまでも、目的を達成しようと暗躍するのだ。最後にはスカッとするような結末が待っているが、それまではハラハラドキドキ、女神の見えざる手とはちと言い過ぎだと思うが、映画を宣伝する立場からすればせめてここまで言いたいというのは分かる。
この映画の配給もキノフィルムズだった。現役時代の日本ヘラルド映画のように良質な映画をうまく買い付けているようだ。どういう宣伝をしたのかに凄く興味があるが、この映画を日本でヒットさせるのは至難の業だろう。ここまでの人間性を追求しないのが日本人、「この映画の良さが分からない人は馬鹿だ」とか言って煽らない限り、日本人の心が動くとは思えない。ただ、こんなことを言ったらすぐに大炎上してしまうのが現実社会。住み難い社会になってしまった。
『英国総督 最後の家』(Viceroy's House)
2017年・イギリス/インド 監督/グリンダ・チャーダ
出演/ヒュー・ボネヴィル/ジリアン・アンダーソン/マニシュ・ダヤル/フマー・クレイシー
1947年、第二次世界大戦で疲弊したイギリスは300年間支配してきたインドの主権移譲を決定し、独立を円滑に行う使命を帯びたルイス・マウントバッテンが最後のインド総督として着任する。彼が居住する総督官邸では500人の使用人が総督一家の世話を行っていた。最後の総督とインド独立、パキスタン分離独立をテーマにした歴史上の物語が緊張感をもって描かれる。
パキスタンは、19世紀には英領インドとしてインドと同一の政府の下に置かれており、独立運動も本来は同一のものであった。しかし、独立運動の中でイスラム教徒とヒンドゥー教徒との対立が深まり、イスラム教徒地域を「パキスタン」として独立させる構想が浮上した。これを避けるための努力は独立寸前までなされたものの、最終的にはヒンドゥー教徒地域がインド、イスラム教徒地域がパキスタンとして分離独立をすることとなった。しかしこのとき、インド東部がイスラム多数派地域の東ベンガル州としてパキスタンに組み込まれ、1955年に東パキスタンとなったものの、遠く離れた両地域を宗教のみで統一しておくことは困難であり、やがて東パキスタンはバングラデシュとして分離独立の道を歩むこととなった。
歴史は冷徹だ。この時人口3億人(ヒンドゥー教徒)だったインドは今や14億人に膨れ上がっている。独立劇の一端を映画で見ることになるが、インドとパキスタンの国境を新たに線引きすることの不合理さがそこに暮らす人間の生活そのものを左右する。江戸時代から明治時代に移行するプロセスは、他の世界の国々に勃発した独立、革命から比べれば極めて穏やかだったのだと思う。人類という大きな枠でとらえれば、小さな争いから大きな革命までを含めて、人民の戦いが今の世界を形成した源になっていることに間違いはない。
『ダウントン・アビー』(Downton Abbey)
2019年・イギリス/アメリカ 監督/マイケル・エングラー
出演/ヒュー・ボネビル/ジム・カーター/ミシェル・ドッカリー/エリザベス・マクガバン
元々はテレビドラマ、それが映画版となったのがこれらしい。テレビ映画時代の邦題は、『ダウントン・アビー ~貴族とメイドと相続人~』だったり、『ダウントン・アビー 華麗なる英国貴族の館』だったりしている。このふたつの邦題でも雰囲気は伝わってくる。
イギリスでは2010年9月26日からシーズン1の放送が開始され、2015年12月25日にシーズン6をもって終了した。通常回の他、シーズンごとの最終回となるクリスマススペシャルを含め、全部で52エピソードが放送された。ドラマの舞台は1912年から1925年のイギリス、ヨークシャーの架空のカントリー・ハウスである「ダウントン・アビー(Downton Abbey)」で、当時の史実や社会情勢を背景に物語は進む。エドワード朝時代以降の貴族、グランサム伯爵クローリー家とそこで働く使用人たちの生活を描いており、歴史上の出来事が彼らの生活やイギリス社会階層に影響を与えるとある。
この映画は、1927年、イギリス国王ジョージ5世とメアリー王妃夫妻のダウントン・アビー訪問を描いた内容。国王(女王ではない)が来るというので大騒ぎになるさまをコミカルに描いている。が、国王、上級貴族の世界ゆえ、ずっこけるほどのドタバタ騒ぎにはならない。偶然に国王、王女、貴族として生まれて来た人間と、発展途上国の食糧難の地域に生まれてきてしまった人間との間にはどこに違いがあるのだろうか。同じ人間ながらその生涯は天と地と程の差が生じる。神はどういうつもりでこういう差別を地球上に・・・・。
『タイムシャッフル』(Time Lapse)
2014年・アメリカ 監督/ブラッドリー・キング
出演/ダニエル・パナベイカー/マット・オリアリー/ジョージ・フィン
2作続けて「タイム」という邦題が付いている。この映画は原題にもtimeが付いていて、タイム・トラベル的な内容だと題名が知らせてくれる。主人公はしがない3人の若者、ルームシェアをしながら住宅の管理人をして暮らしている。善良そうな3人だが映画の終わりには一人の女だけが生き残り、やっぱり女は強いなという現実を見せつけられる。
今回のタイムトラベルは、住宅に住んでいた科学者?らしき人が発明したらしい明日の風景を映すカメラだった。このカメラの毎日映し出す写真に翻弄されて3人の若者たちは人生を右往左往している。話がなかなか進まなくてイライラするのは3流作品の特徴かもしれない。
明日のことが分かったら、こんな楽しいことはないだろう。と思えるのだが、実際にそうなったらそこまで冷静にいられる自信はない。映画の中でも一人の若者が明日のドッグレースの賭け事にこの写真を応用していたが、まずは目の前の金に圧し潰されてしまうことになるだろう。それでなくとも、人間をダメにする最大の原因が金に纏わる話、ユメユメそんなことに陥ることがない人生であることを願うばかりだ。
『タイム・ハンターズ 19世紀の海賊と謎の古文書』(Fort Ross)
2014年・ロシア 監督/ユーリー・モロズ
出演/マクシム・マトヴェーエフ/ミハイル・ゴアヴォイ/ラモン・ランガ/アンナ・スタシェンバウム
19世紀アメリカに実在したロシア領ロス砦を舞台に、現代からタイムスリップしたジャーナリストが繰り広げる冒険を描いたロシア製SFアドベンチャー。モスクワで暮らすジャーナリストのディミトリは、ロス砦にまつわる機密文書の中から、自分に酷似した似顔絵を発見する。真相を求めてアメリカへ渡った彼は、現地スタッフのマルゴらとロス砦の跡地を訪れる。自分の携帯電話に見覚えのないアプリがインストールされていることに気づいたディミトリが起動してみると、次の瞬間、19世紀にタイムスリップしていた。(映画.COMより)
携帯電話のアプリからタイムスリップが出来てしまうなんていう他愛ないストーリーが笑わせる。全編ロシア語にかなりの違和感を感じるのはアメリカ映画にかなり毒されてしまっているのかも。ロシア領アメリカは、ロシア帝国が1733年から1867年まで北米地域に領有していた領土を指し、首府はノヴォ・アルハンゲリスク(現在のアメリカ合衆国アラスカ州シトカ)に置かれていたという。現在は主にアメリカ合衆国アラスカ州となっている地域とハワイ州となる地区の3つの砦に及んでいる。
歴史は実におもしろい。ロシア帝国が公式に植民地として成立させたのは、独占権を持つ露米会社の設立を宣言するとともにロシア正教会に一部土地の所有権を認めた1799年勅令だった。19世紀にはそれらの所有権の多くは放棄されたが、1867年にロシア帝国は残りの所有権をアメリカ合衆国に720万USドル(現在の価値で1億3,200万USドル)にて売却(アラスカ購入)した。そんな話は初めて知った。
『フラワーショー』(Dare to Be Wild)
2015年・アメリカ 監督/ヴィヴィアン・デ・コルシィ
出演/エマ・グリーンウェル/トム・ヒューズ/クリスティン・マルツァーノ
チェルシー・フラワー・ショー(RHS Chelsea Flower Show): 最初のグレート・スプリング・ショーは1862年、ケンジントンのRHSガーデンで開催された。1913年からチェルシーのチェルシー王立病院に会場が移された。1937年、ジョージ6世と王妃エリザベスの戴冠年を記念し、すばらしい帝国展が開催された。オーストラリアからアカシアが、カナダからマツが、東アフリカから色鮮やかなグラジオラスが、パレスチナからも大きなウチワサボテンが持ち込まれた。第二次世界大戦中には、チェルシー王立病院の土地が対空対策のため戦時局に必要とされたため、ショーは行われなかった。1947年より再開された。現エリザベス2世が即位した1953年は国のお祝いムードを反映したショーとなった。イギリス王室のほとんどのメンバーがこの年のショーに出席したが、他に公務があったため、唯一出席できなかった王族は女王自身だった。ショーは20世紀後半を通じてその人気を増加させることとなった。現在は毎年157,000人が観覧に訪れる(11エーカーの敷地面積に入れる制限された人数)。そして入場用のチケットは全て事前に購入する必要がある。2005年からショーの開催期間を4日から5日に延長し、最初の2日間はRHSの会員のみが入場できる。ショーは広範囲においてBBCが放映する。RHSへの王室による後援の一環として、イギリス王室のメンバー数人がショーの下見に訪れる。ショーは各部門ごとにゴールド、シルバー・ギルト、シルバー、ブロンズの各賞が設けられている。
日本人の石原和幸氏が3年連続で「ゴールド」を受賞(2006年 - 2008年)したというニュースをテレビで見たことがある。初挑戦の2004年には「シルバー・ギルト」も受賞しているというから大したものだ。イングリッシュ・ガーデンと呼ばれる庭園が日本にはあっちこっちにある。日本人から見ればあまりにもなんていうことはないのだけれど、イギリス人にとっては自尊心を満足させる誉れ高い趣向が埋まっている環境なのかもしれない。
盆栽に代表されるように日本の芸術は、結構人工的に人間の手を加えたものが多い。花は野にあるようにと言いながら、技術を凝らして小さな器に花を盛り込む。意図的に枝を枯らせて、針金を巻いて枝をこれでもかと曲げて形を作ってしまう。そんな「芸術」が世界的に人気があることが不思議だが、精巧な形づくりに対する緻密さは、日本人の得意とするところなのだろう。
『ロンドン、人生はじめます』(Hampstead)
2017年・イギリス 監督/ジョエル・ホプキンス
出演/ダイアン・キートン/ブレンダン・グリーソン/レスリー・マンヴィル/ジェイソン・ワトキンス
原題は「Hampstead」。ハムステッドは、学者、アーティスト、メディア関係者から長年にわたり愛されてきた高級住宅街。ハムステッド ヒースには、草地、森林、水泳用の池のほか、街並みを一望できるパーラメント ヒル展望台も。一般に公開されているケンウッド ハウスは、古典派の巨匠の名高い作品の数々を収蔵する新古典主義建築の邸宅です。古風な趣のあるハムステッド ヴィレッジの通りには、ジョージア王朝様式の建物を利用したブティックや高級レストランが並んでいます。(Wikipediaより)
夫亡きあとに発覚した浮気や借金、徐々に減っていく貯蓄、うわべばかりの近所付き合い・・・様々な問題から現実逃避している未亡人エミリー(ダイアン・キートン)。ある日、自宅の屋根裏部屋から双眼鏡で外を眺めていると自然に囲まれてはいるが小さな家で暮らすドナルド(ブレンダン・グリーソン)を見つける。庭でのディナー、気ままな読書、森のピクニック・・・余計なものを持たずDIY暮らしで幸福なドナルドと知り合い、エミリーは頑固だけど温かい人柄に惹かれていく。そんな中、世間を巻き込む事件がドナルドに降りかかり、二人の恋の行方は予測不可能な展開に―。(Amazon Prime video より)
もともとイタリア駐在だったヘラルドの海外担当がイタリア映画の衰退後ロンドンに移り住んだ。ハムステッドに家を買ったということを聞いたのは、そのだいぶ後のことだった。何度かロンドンに行ったが彼女の家に行く機会に恵まれず、どういうところに住んでいるかを想像すらしないでいたが、あれから何十年後にこうやって、なるほどそういう場所だったのかと感慨深げに土地柄を映画で見る事になった。あの頃まだ小学校にも行っていなかった彼女のひとり息子は、今頃はいっぱしの青年実業家にでもなっているかしら。
『偉大なるマルグリット』(Marguerite)
2016年・フランス 監督/グザヴィエ・ジャノリ
出演/カトリーヌ・フロ/アンドレ・マルコン/クリスタ・テレ/
1920年、パリからそう遠くない貴族の邸宅ではサロン音楽会が開かれていた。参加した新聞記者のボーモンは主役のマルグリット夫人の歌声に唖然とする。彼女は絶望的なほど音痴だったのだ!しかし、儀礼的な貴族たちの拍手喝采を受け、本人だけが気付いていなかった―。(Filmarksより)
あなたは音痴ですね、聞くに堪えられません、などと本人の目の前で大声で喋れるほど社会は寛容ではない。いつの時代もほとんどの人は音痴に「目」をつむり、さもうまい歌を聞いているが如く振る舞う。それが大人社会のマナーであると全員が思っている節がある。誰もそのことに関して確かめようとしない事柄であることは確かで、まちがいなくそう思っていることも確率が高い。
何度か音痴についてはこの欄に書いたことがある。ヘラルドの先輩で見事な音痴な人がいて、宴会の席ではその人の歌を聞くことが楽しみだった。おおらかなヘラルド社会では、笑いを堪えることなく、大声で笑いながらその人の歌を聞くのが習わしだった。歌っている本人はと言えば、音痴であることを見事に自覚しているからさらにおもしろかったのだ。まぁ、実に摩訶不思議な人だったけれど、その人が集める映画館の招待券が、いつの間にか飛行機の搭乗券に変わっていたことなど枚挙にいとまない。その人の実兄がプロの声楽家で、大学で教えていたなんていう尾鰭も付いて、人生の楽しさを味わった時代だったのです。
『鑑定士と顔のない依頼人』(The Best Offer、La migliore offerta)
2013年・イタリア 監督/ジュゼッペ・トルナトーレ
出演/ジェフリー・ラッシュ/ジム・スタージェス/シルヴィア・フークス/ドナルド・サザーランド
ヴァージルは美術鑑定士として成功を収めていた。だが、女性と接するのが非常に苦手で、女性を目の前にすると気分が悪くなる為隠し部屋に大量の女性の肖像画を飾り鑑賞するという奇妙な性癖を持っていた。ヴァージルは女性の肖像画は自身が開催するオークションでビリーと共謀し、格安で落札していたのだった。ビリーはかつては画家を目指していたのだが、ヴァージルに才能がないと一蹴され、諦めていた。ある日ヴァージルのもとに、電話を通じて依頼が入る。依頼内容は両親が死去したので、両親が収集していた美術品を競売にかけて欲しいというものだった。依頼人の邸宅には確かに様々な美術品が置いてあったが、当の依頼人であるクレア自身は姿を表さなかった。何度か足を運ぶと依頼人のクレアは隠し部屋に引きこもっていることが分かった。(Wikipediaより)
邦題がまさしく内容を現わしていて、何という題名を付けるのかと元映画会社宣伝部長は憤る。ちょっとそそる題名には聞こえるが、やっぱり味わいのないゲスな題名だと。主人公は女にもほとんど縁もなく過ごしてきたらしく、美人局のような依頼人の振る舞いにさえも心を奪われてしまう。男は情けないものなのだと、改めて恐れ入る。
日本の古い役者たちは芸の肥やしだと毎日のように夜遊びをする話が芸能ニュースになっていた。今や、文春砲とか新潮砲のせいで、巷の芸人たちでさえも大手を振って銀座に繰り出すことも少なくなったに違いない。まったく違う世界に生きている芸人でさえもそうなのだから、一般人でも気を確かに持って毎日を確実に生きて欲しいと、おじいさんは心から願う。(今日は令和2年<2020>10月1日)
『7 WISH/セブン・ウィッシュ』(Wish Upon)
2017年・アメリカ 監督/ジョン・R・レオネッティ
出演/ジョーイ・キング/キー・ホン・リー/ジョセフィン・ラングフォード/シドニー・パーク
他愛もない話過ぎちゃって物語を引用する気にもなれない。アラジンの魔法のランプのように願い事が叶う壺みたいなものにめぐり合って、主人公の女子高校生が人生の機微を味わうことになる。7つの願い事が叶ってしまったら、地球規模で欲しいものがなんでも手に入ってしまい、こんな嬉しいことはないだろう。
ところがどっこい、こんなつまらない話の中でも、願いが叶ってしまうことの悲劇が多く語られる。それどころか、この映画の願いは叶う毎に悲劇が必ず付いてくるというおまけつきだったから始末に負えない。自分の欲しいもの、願い事のせいで、身近な他人に大きな迷惑又は死さえも降り掛かってきては、さすがの主人公もこのツボを手放したくなってしまうのだ。
よく宝くじで大金を手にした人の不幸の物語が語られるけれど、不幸が来たっていいから宝くじに当たった方がいいと考える人は多いに違いない。そうやって、あれも欲しい、これも欲しいと欲望をむき出しにして人生を生きたって、結局は100年も生きられずに宇宙の塵にもならない存在になってしまうのが普通の人々の人生なのだから、はかないものだ。
『依頼人』(The Client)
1994年・アメリカ 監督/ジョエル・シュマッカー
出演/スーザン・サランドン/トミー・リー・ジョーンズ/ブラッド・レンフロ/メアリー=ルイーズ・パーカー
2作続けて少年が主人公のような映画だった。ジョン・グリシャムの小説『依頼人』を映画化したもので、原作者のグリシャムはこの映画の出来に大変満足し、『評決のとき』(A Time to Kill・1996年)の映画化に当たっては同じワーナー・ブラザース製作でジョエル・シュマッカー監督、スタッフもほぼ同じ面々を希望したという。アマゾン・プライムでの現在の邦題は特になく、「The Client」というタイトルだけで勝負している。
アメリカ独特の法規範が随所に現れて、日本の法律すらよく知らない観客を惑わせる。地方検事が手柄を立てて州知事に立候補するという構図は何度も目にする。証人保護システムという極く当たり前のようなことですら、日本ではきいたことがないなぁ、といつも感心させられる。建前と本音を使い分ける日本の社会構造は、当たり前に良いと思われることですら何十年もしないとシステムとして実現しない。
訴訟大国と言われるアメリカでは、正義についての解釈もだいぶ違うようだ。とりあえず訴えを起こしてから物事を解決しようとするアメリカ型、話し合いをして解決しようとするも上手く行かないと分かったら訴えを起こす日本型。当然、日本型は示談が成立し難い。アメリカ型は示談の確率が圧倒的に多くなる。勝訴の場合の金額の多寡もまったく違い過ぎる。弁護士費用すら出せないような判決金では裁判を起こす人も圧倒的に少なくなるのが日本型である。
『依頼人』(The Client)
1994年・アメリカ 監督/ジョエル・シュマッカー
出演/スーザン・サランドン/トミー・リー・ジョーンズ/ブラッド・レンフロ/メアリー=ルイーズ・パーカー
アマゾン・ビデオの映画紹介題名は「Client」だけだった。観始まってすぐに1度観たことがあると気が付いたけれど、おもしろい展開に最後まで一気に観てしまった。ここでも証人保護制度が出て来た。権利を激しく主張するけれど、建前上は法律を遵守し決して逸脱しないように努力する姿はアメリカらしい。往生際の悪い日本の政治屋集団の言動には辟易するしかない。どうしてここまでも腐ってしまうことになるのだろうか、日本の人間社会のシステム。
『マーキュリー・ライジング』 (Mercury Rising)
1998年・アメリカ 監督/ハロルド・ベッカー
出演/ブルース・ウィリス/アレック・ボールドウィン/ミコ・ヒューズ/シャイ・マクブライド
FBIシカゴ支局のアート・ジェフリーズ特別捜査官は潜入捜査のベテランである。自ら潜入していた過激な民兵の一味が銀行にて人質立てこもり事件を起こした際、アートの警告を無視してFBIが強行突入をした結果、銃撃戦が起こったためメンバーの一員だった少年が射殺される。アートは怒りから強行突入を命令した上司を殴ってしまい、罰としてポジションを外され、一般事件の捜査に配置換えされる。
所轄警察署の要請で、アートは無理心中事件に臨場する。だが、アートは無理心中ではなく何者かによる殺人事件と断定。殺された夫婦の息子で、押入れから発見された自閉症児のサイモンを入院させ、所轄署に保護を命じた。しかし、アートが病院を訪れると、所轄署は引き上げていた。異変を察知したアートはサイモンを連れて病院を出ようとするが、医師に扮した暗殺要員ピーターが二人を追いかけてくる。銃撃戦の末に病院から脱出したアートとサイモンは、パズルの本を開く。そのパズルは、「マーキュリー」というNSAのニコラス・クドロー率いる開発チームが作り出した暗号システムで、本来なら誰も解くことのできないものだった。それを最終チェックとして、クドローの部下レオとディーンが無断で一般雑誌に掲載したところ、サイモンが解読してしまっていた。解読されたということは暗号システム開発プロジェクトの失敗を意味するため、出世を目指すクドローはそれを隠蔽しようとし、サイモンはクドロー配下の暗殺要員から命を狙われていたのだった。
アートは同僚のトミーに協力を依頼して、サイモンを連れて彼の自宅に戻る。サイモンは自宅の電話からレオとディーンの元に電話をかけ、二人はアートにマーキュリーを用いた伝言を残す。アートはサイモンが解読したマーキュリーからディーンとの接触場所に向かい、彼からクドローの策謀を伝えられる。しかし、そこにピーターが現れディーンを射殺する。アートは街で出会ったステイシーにサイモンの保護を頼み、トミーに証人保護プログラムをサイモンに適用して安全を確保するように依頼する。一方、レオは恋人のエミリーの協力を得てクドローを上院監視委員会に告発しようとするが、告発文を作成した直後にピーターに射殺される。(全て Wikipedia より引用)
『日々と雲行き』(Giorni e nuvole)
2007年・イタリア/スイス/フランス 監督/シルビオ・ソルディーニ
出演/マルゲリータ・ブイ/アントニオ・アルバネーゼ/ジュゼッペ・バッティストン/アルバ・ロルバケル
夫の突然の失業によって危機に陥った中年夫婦を描いたストーリー。製作国は3か国になっているけれど、舞台はイタリアだからノー天気な人生物語かなと思っていたら、結構深刻な内容だった。どうにかなるさ、というイタリア人気質はとくひつされるものだけれど、いい歳になって経営していた会社を追われた身の主人公にとっては、そんな悠長なことを言っていられないようだった。
42歳で後先を考えずにヘラルドを辞めた自分の過去に照らし合わせると、主人公や家族の状況が手に取るように理解できて複雑な気持ちになった。今まで送って来た生活のレベルを落とすのはそれなり以上の苦労がある。慣れてしまえば年収が半分になったとしても、なんとかやっていけるものだが、最初の半年をどう乗り切れるかが問題だ。
働かなくても食っていけるならこんな幸せなことはないだろうと思うが、やらなければいけないことがないというのはそれなり以上に辛いことだ。ただ時間をつぶして人生を生きているのなら、そんな人間は死んでしまった方が世の中にとっても。他人や世間のためになることが出来なくなった時を考えるとお先真っ暗・・・・・。
『恋の法律』(LAWS OF ATTRACTION)
2004年・アイルランド/イギリス/ドイツ 監督/ピーター・ハウイット
出演/ピアース・ブロスナン/ジュリアン・ムーア/マイケル・シーン/フランシス・フィッシャー
離婚訴訟弁護士の二人、一度も敗れたことのない弁護士と勝ち続けている弁護士が法廷で争ったらどうなるのだろう。一見面白そうな話だが、掘り下げが浅く、二人の言っていることも頭の中に入ってこない。字幕スーパーの露出時間が短く、最後まで読めないのに次のセリフが現れてくるので往生した。
いい男といい女がおもしろい話を演じているのに、何故か映画はおもしろくない。日本での劇場未公開らしいが、映画関係者は見る目があるのだろう。みすみす公開して損を抱えることもない。それにしても弁護士とは不思議な職業だ。手練手管を繰り出して、無いことを平然とのたまう。口の達者な人が言うことが正義なのだから始末に負えない。
神は真実を見ているのに、どうして平気で嘘を認めてしまうのだろうか。法と証拠に基づいて人間が人間を裁くのが裁判だが、これに神の眼が加わることが出来たら、どれだけ人間生活は安寧になるだろうか。そうでもしなければ、冤罪と言われる事柄もなくならないだろうだろうに。
『ムービング・ロマンス』(A Moving Romance)
2017年・アメリカ 監督/W・D・ホーガン
出演/アンビル・チルダーズ/キーガン・アレン/ジム・オヘア/ロミー・ローズモント
テレビドラマで充分な軽い映画。こう書くとテレビドラマを下に見ているようだがその通り。予算や、準備規模、どれをとったって映画製作に勝てるわけがない。おもしろければ、ちゃっちさは気にならないが、残念ながらテレビ映画のちゃっちさは、出来の悪さ以上に気になる。お茶らけたバラエティー番組で馬鹿なことをやっている直後にシリアスな内容を凝視できない。テレビドラマの途中で入るCMに主人公と同じ人物が同じ顔をして同じ声でコマーシャルをしていることが赦せない。
デザイナーとして華々しく活躍していたはずが突如解雇されてしまった女性。故郷に帰った彼女を待っていたのは、父が経営する会社の買収話だった。次々とライバル会社に顧客が奪われていく中、果たして起死回生できるのか?挫折しながらも前に進む姿を描く感動のサクセス・ストーリー!(Filmarks 映画より)
娘が働いていたのはニューヨーク、帰って来た実家はロサンゼルス、このあたりにもアメリカでの二つの都市の立ち位置が微妙に脳裏の笑いを誘っているに違いない。感動のと書くほどの映画ではない。軽い軽いストーリーで、3時のおやつを食べているような軽さが、逆に売りだと思えるのは映画人の眼だからかもしれない。
『アンダーカバー・エンジェル 守護天使』(Undercover Angel)
2017年・アメリカ 監督/スティーヴン・モンロー
出演/ジュリアン・クリストファー/マット・エリス/ライラ・フィッツジェラルド/ブリトニー・アーヴィン
天使物語だった。さすがにキリスト教国アメリカ、天使にまつわる映画は結構つくられている。天使は生きている人間に優しい。それが相場となっている。時には意地悪をすることがあるが、総じて一人一人の人間を見守っているというのが天使の役割のようだ。
この映画の天使はちょっとどじな男。彼に指令を伝える天使の部長みたいな天使も、髭の生えたむつけき男なのがおかしい。ストーリーは超三流、どんなに頑張ったってお涙頂戴のいい話になるわけがない。ご愛敬に天使が望んでいた人間に成ることが赦されて、めでたしめでたし。
死後の世界もそうだが、天使がいるかどうかは分からない。おそらく何かしらの女神はきっといるに違いないが、人間の眼には見えないだろう。そんな影が目の前にたくさん現れてしまったら、交通事故が多発してしまう。望みは美しい心にもたらされ、願いは清らかな思いにやってくると言っておこう。
『マイ・ブラザー 哀しみの銃弾』(Blood Ties)
2013年・フランス/アメリカ 監督/ギヨーム・カネ
出演/クライヴ・オーウェン/ビリー・クラダップ/マリオン・コティヤール/ミラ・クニス
最初のうちは邦題のサブタイトル「哀しみの銃弾」という文言が安っぽくて、どうにもやりきれない映画鑑賞だなぁという雰囲気が嫌だった。単なるギャング映画のように見えたのには参った。このサブタイトルがなければ、この映画のいいところが最初から見えたに違いない。なかなかいい映画だった。
犯罪を繰り返しながら大人になって今も服役中の兄貴と、品行優秀で今や刑事として警察署で評判の高い弟の物語だった。原題の「Blood Ties」は血のつながっている兄弟のどうしようもない絆を現わしている。そう思うと、この映画の見所が増えてくる。自分も男兄弟3人で育っているので、なんとも言い難い兄弟の思いがよく伝わって来た。
不思議だよね。血が繋がっているというだけで、十分な関係が構築される。血が繋がっていない人が多い社会では、生きていく中でそんなことがこれほど重要な要素になるとは、頭の中だけでは理解できない事柄だ。アメリカのように養子縁組が多い社会では、子供のころから一緒に育てられれば、それはファミリーという絆で結び付いているのだろう。そういう理屈が理解できていれば、もっと血のつながっていない他人にも優しく、寛容になれるはずなのだが、人間の心の在り方はそれ以上に複雑なものなのかもしれない。
『ミッション・ワイルド』(The Homesman)
2014年・アメリカ/フランス 監督/トミー・リー・ジョーンズ
出演/トミー・リー・ジョーンズ/ヒラリー・スワンク/ジェームズ・スペイダー/メリル・ストリープ
日本では劇場未公開。19世紀のアメリカ中西部の開拓地ネブラスカ。小さな集落で暮らす独身女性メアリーは、精神を病んだ3人の女性をアイオワの教会まで連れて行く役目「ホームズマン」に志願、約400マイル(650km)の長い旅に出発する。その途中、メアリーは1人の男が木に吊るされているのを見つける。その男はブリッグスという悪党で、まもなく処刑されることになっていた。メアリーは旅に同行することを条件に彼を助ける。こうして孤独な女と大悪党の長い旅が始まるが、その行く手には、地獄と例えられ生きて帰ることもままならない危険な荒野に、過酷な気候や凶暴な先住民、盗賊などの様々な試練が待ち受けていた。(Wikipediaより)
トミー・リー・ジョーンズは、2012年8月からは「BOSSコーヒー20周年」とソフトバンクモバイルの「プラチナバンド開始」の共同キャンペーンの一環として、「宇宙人ジョーンズ」と「白戸家」両シリーズのコラボレーションCMにも出演している。大した俳優だなんて日本の若い人は知らないだろう。アメリカの俳優は自国のコマーシャルに出ないと言われている。外国のCMならそんな顔をさらけ出さなくて済むから、せっかくの映画出演の時のために顔を温存できると知っている。そこらあたりが、プロの役者であるアメリカ人の考え方が凄い。もっとも、CMに出なくても映画ギャラだけで充分過ぎる金額を稼げていることが最大の理由かもしれない。
西部劇時代のストーリーではまず観たことのない物語。話はおもしろいけれど、所詮はそれ以上にはならない辛さがある。時々おもしろくなるけれど。メリル・ストリープが最後のシーンにちょい出している。友情出演だろうか。妙に肉の付いた顔立ちに時代性にはない違和感だけが残った。
『嘘を愛する女』
2018年(平成30年)・日本 監督/中江和仁
出演/長澤まさみ/高橋一生/吉田鋼太郎/DAIGO/川栄李奈/黒木瞳
TSUTAYA CREATERS'PROGRAM FILM 2015のグランプリ作品。監督は多くのCMを手掛けるCMディレクターの中江和仁。「夫は だれだった」という朝日新聞の記事から着想を得、実話を元にした物語。キャリアウーマンの主人公は、恋人と同棲して5年。そんなある日、恋人が倒れたと警察が知らせに来た。病院へ向かうとくも膜下出血で昏睡状態になった恋人がいた。すると警察は彼の免許証が偽造されたものだと言い出す。主人公は私立探偵を雇い、恋人の真実を探ろうとするが…。(Wikipediaより)
かったるい日本映画を久しぶりに観たという感じ。CMディレクターの作る映画映像は、妙に景色や構図が目障りなものだが、この作品はそこまで酷くない。それでも、アメリカ映画に比較してしまえば、ストーリーのテンポがあまりにも気怠い。テンポよく軽快にしてしまうと、今度はテレビドラマのような薄っぺらさが表に出てきてしまう。所詮、玄人一歩手前の製作物なのかもしれない。
テレビで見るお茶らけた役者が堂々と映画に出ている。興醒めの第一歩を自ら作っているのが赦せない。長澤まさみの顔立ちは好きだったのに、この頃顔立ちが違って見える。よくよく見るとおばさん顔だけれど、若いうちはこれでいいよね、年取ったらこのおばさん顔が顕著になって行くのだろうな。と思っていたのに、いつのまにかただ美しさを醸し出している顔立ちになってしまった。味が無くなっていて詰まらない。
『Viva!公務員』(Quo vado?)
2015年・イタリア 監督/ジェンナーロ・ヌンツィアンテ
出演/ケッコ・ザローネ/エレオノーラ・ジョバナルディ/ソニア・ベルガマスコ/マウリツィオ・ミケリ
昔のイタリア共和国を- 僕らは決して忘れない 昔のイタリア共和国を- 君は知ってるかい? 芝生で踊りまくる40歳の年金生活者 たったの10年空軍で働いただけ 足が悪いはずの守衛は跳びまわり 口が利けない用務員は歌い出す 職員が風をひけば アバノ温泉で4か月湯治休暇 爪が食い込んだ程度で 生涯貰える障害年金
主人公は映画の後半でこうやって歌を歌いイタリアの人生生活を大いに揶揄する。「俺はどこへ行く?」という原題は、公務員である主人公がリストラにあい、それでも退職することを拒否して転々と生活し難い場所に配置転換されていく様を言っている。公務員天国はラテン国の最大特徴かもしれない。お隣のギリシャの騒動はいつも世界のニュースを賑わしている。
それでも思う。一度っきりの人生を苦しみながら生きたって何の意味もない。ノー天気に人生を謳歌しているイタリア人が羨ましい。独特の笑いがあるイタリア・コメディの真骨頂。隣人がイタリア人だったら迷惑で滅茶苦茶になりそうだが、第三者的に眺めれれば天使のようにも見える。滑稽な人間の人生を苦虫を噛んでいきていきますか?と問いかけれれているのかもしれない。
『ラスト・クリスマス』(Last Christmas)
2019年・アメリカ 監督/ポール・フェイグ
出演/エミリア・クラーク/ヘンリー・ゴールディング/ミシェル・ヨー/エマ・トンプソン
ワム!が1984年に発表した同名の楽曲に触発された作品である、という。80年代の洋楽なら私でも聞いたことがある。心地良い音楽だ。ちょっと季節外れの映画みたいになってしまうが、この映画の中に出てくる店も一年中クリスマス商品を扱う店なので、敢えて季節をどうのこうのと言わなくてもいい時代なのかもしれない。
アメリカ映画であるが、舞台はロンドン、クリスマス・ショップの店主は中国人、主人公の前に現れる青年はマレーシア人とちょっと毛色の違う映画になっている。そうそう、主人公と妹、両親とも旧ユーゴスラビアから逃れて来たということになっていた。なんと国際色豊かに鏤めた人物たちだろうか。
最後の方まで主人公が心臓移植を受けていたという事実は明かされていない。それゆえ、ストーリー展開に読めない不可解な部分が多すぎて、この映画はいったい何?!と、突っ込みを入れてしまった。話の長い人の典型のようにも見える。肝心なことを一番最初に言ってしまえば、あとの物語をゆっくり聞こうという気になれるのに、だらだらと最初から物事を説明して行く人には自分の頭を整理してから喋り始めなさい、と忠告をしたくなる。
『イエスタデイ』(Yesterday)
2019年・イギリス 監督/ダニー・ボイル
出演/ヒメーシュ・パテル/リリー・ジェームズ/ケイト・マッキノン/エド・シーラン
ファンタジー・コメディ映画。ビートルズのあの「イエスタデイ」が題名だ。そればかりかビートルズの楽曲が次から次へと歌われる。世界規模で12秒間の停電が発生後、世界は史上最も有名なはずのバンド「ビートルズ」が存在しないことになってしまっていた。彼らの名曲を覚えているのは、世界で主人公唯一人だけであることに気づく。主人公はこれを利用して、ビートルズの曲を歌って成り上がろうとする、という他愛ない話。
高校1年生の頃だったろうか、ちょうど実家の電気屋さんにレコード・コーナーが出来ていた。ベンチャーズのレコードも全盛だった。それこそ擦り切れるほど聞きまくったビートルズのLP、電気屋さんでなかったとしてもあれほど熱中できるものに出逢っていただろうか。ジャズも少し聞くようになっていたが、ビートルズほど自分の音楽人生を豊かにしてくれたものはなかった。
ちょっときわどいビートルズの扱い方だが、なかなか軽いタッチでストーリーが展開してくれた。ほとんどの曲を知っているというのも嬉しい。今の若い人たちがどれほどビートルズに傾倒しているのかは分からない。10人のグループだってハモることもなく単一のメロディーを歌うことが一つの価値観になっている時代の人たちに、音楽の奥の深さの一端も理解できないだろうと馬鹿にしてしまう。軽くてちょうどいい、このクソ暑い毎日には。
『ドローン・オブ・ウォー』(Good Kill)
2014年・アメリカ 監督/アンドリュー・ニコル
出演/イーサン・ホーク/ジャニュアリー・ジョーンズ/ゾーイ・クラヴィッツ/ジェイク・アベル
2001年9.11以降 米軍は対テロ戦争に攻撃型無人機を使用 これは「標的殺人」が最も激化した2010年の物語である 事実に基づいている(BASED ON ACTUAL EVENTS.)アメリカから12,000キロ離れたアフガニスタンの上空3,000キロに無人攻撃機が。
ラスベガス近郊のアメリカ空軍基地に置かれた空調の効いたコンテナの中では、主人公が遥か一万キロ彼方のアフガニスタン上空を飛ぶMQ-9 リーパー無人攻撃機を操縦し、モニターに映るタリバン兵をヘルファイアミサイルで音も無く吹き飛ばしていた。戦闘機パイロットだった主人公は命の危険は無いが戦っている実感が伴わない任務や基地と自宅を日帰りで往復する日常に拭い切れない違和感を抱いていたが、彼の操縦の腕を買っている上司の意向もあって異動願いはなかなか受理されず、新たに配属された女性操縦士のCIAが主導する対アルカイダ極秘作戦への異議の言葉も加わって、次第に彼は精神的に追い詰められていくようになる... (Wikipediaより)
アメリカだって一枚岩ではないことは分かっているが、非戦闘員と認識しながらも上官の命令の名のもとに、一般人も含めた現地人が無残にも爆破されてしまう映像は、本当なのかと自分の眼を疑うようなシーンの連続だ。おそらくこれは真実なのだろう。主人公のやりきれない気持ちがこちらにも伝わってくる。今日は2020年9月1日。
『ナチス第三の男』(HHhH、The Man with the Iron Heart)
2017年・フランス/イギリス/ベルギー 監督/セドリック・ヒメネス
出演/ジェイソン・クラーク/ロザムンド・パイク/ジャック・オコンネル/ジャック・レイナー/ミア・ワシコウスカ
第二次世界大戦中、その冷徹極まりない手腕から「金髪の野獣」と呼ばれナチス親衛隊No.2となったラインハルト・ハイドリヒを描いた映画。国家保安本部(RSHA)の事実上の初代長官。ドイツの政治警察権力を一手に掌握し、ハインリヒ・ヒムラーに次ぐ親衛隊の実力者となった。ユダヤ人問題の最終的解決計画の実質的な推進者であった。
ホロコーストのことは何度聞いても調べても、おぞましさだけがおそってくる。平然とそれをやってのけたその時のドイツの政権は、やっぱり相当異常だったのだろう。それでも、国民は反対していたのかと言えば、ヒットラーの演説や姿に狂喜乱舞している映像が残っている。独裁者だと責任を押し付けられるほどの単純な社会的、歴史的背景でもなかった。
この映画はハイドリヒというドイツ人に照明が当てられているはずだが、それ以上に反対勢力であるレジスタンス活動に脚光が浴びせられている。どんなに極悪非道のことをしようとも、妻も子供もこの時代に優雅に過ごしている光景は、人間社会の光と影を目の当たりにするようだ。長いものには巻かれなければいけないのだろう、人間生活。
『名もなき塀の中の王』(Starred Up)
2013年・イギリス 監督/デヴィッド・マッケンジー
出演/ジャック・オコンネル/ベン・メンデルソーン/ルパート・フレンド/サム・スプルエル
19歳の少年がその暴力性を問題視されて、少年院から成人刑務所へと移送されてくる。そこで彼は、幼い頃に生き別れた父親と再会する。終身刑で収監されている父親は「ここで生き残りたければ目立つな」とエリックに助言するが、エリックは耳を貸そうとしない。ロンドンの刑務所で実際に囚人相手の心理療法士として働いた経験を持つジョナサン・アッセルの脚本をもとに、少年院から成人刑務所に移送された19歳の不良少年が刑務所内で再会した父親や心理療法士との対話を通じて成長していく姿を描いている。
結構衝撃的な内容だった。反抗期がどうのこうのと甘っちょろい論議をしている日本的な環境と、成熟しているがゆえに後から後から湧きおこるイギリスの犯罪社会や刑務所生活が、ちょっと馴染めないというか、観ていてあまりいい感じはしない。他人ごとなのだから、もっと単なる映画だと割り切れればいいのだろうが、そこはそれ、親子の情だったりが刑務所の中で発揮される異常さに驚きを隠せない。
親子って何なのだろうと改めて思う。子供が物心のつかない頃から一緒に暮らしていれば、敢えて告白しない限りたとえ親子でなくても家族としての意識をもって人生を全うすることさえ可能だろう。ホントの親子なのに、いがみあって嫌い合って、何の楽しみも見出せないで毎日を生活している人もいるだろう。だからこそ、それを司る人間社会の規範や個人主義の拠り所などを明確に確固たる自分自身に植え付けなければ、何のために神に遣わされた人間なのかを見失ってしまうに違いない。
『アサイラム 監禁病棟と顔のない患者たち』(Stonehearst Asylum)
2014年・アメリカ 監督/ブラッド・アンダーソン
出演/ケイト・ベッキンセイル/ジム・スタージェス/マイケル・ケイン/ベン・キングスレー
エドガー・アラン・ポーが1845年に発表した短編小説「タール博士とフェザー教授の療法」を原作としている。映画批評集積サイトのRotten Tomatoesには52件のレビューがあり、批評家支持率は54%、平均点は10点満点で5.5点となっている。サイト側による批評家の見解の要約は「熱烈なホラー映画ファンにとって、『アサイラム 監禁病棟と顔のない患者たち』は十二分以上に面白い作品である。しかし、そうではない人たちにとっては実につまらない作品であろう。」となっている。
確かにおもしろい題材だけれど、映画そのものの進行は詰まらない。ちょっと飽きがくる。精神病院を昔は気狂い病院と言った。少なくとも私が暮らしていた小さな田舎町ではそうだった。今や、放送禁止用語のように漢字変換すらされない気狂いという言葉、腫れ物に触らずといった風潮が日増しに大きくなっている。
もっとも、この精神病院のように患者が病院を乗っ取ってしまい、医師や看護師は地下室に幽閉されてしまっている状況では、新任医師がどちらが正常で誰が患者なのかさえ見分けが付かなくなってしまう。現実社会だってそうだ、いっぱしの紳士然ぶった輩が、実は社会不適合者で突然気が狂ったように世の中に迷惑をかけるなんていうことは日常茶飯事になっている。「あの人がとても・・・」なんていう褒め方は、いかに自分が他人を評価できていないかにしか他ならない。価値観の多様化ばかりではなく、社会そのものの大きな変化と共に、人間一人一人も大きく変わって行かなければ、社会から取り残された輩の集団になってしまいそうな日本である。
『ノア 約束の舟』(Noah)
2014年・アメリカ 監督/ダーレン・アロノフスキー
出演/ラッセル・クロウ/ジェニファー・コネリー/レイ・ウィンストン/ダグラス・ブース/エマ・ワトソン
ノアの方舟(ノアのはこぶね、英語: Noah's Ark)は、旧約聖書の『創世記』(6章-9章)に登場する、大洪水にまつわる、ノアの方舟物語の事。または、その物語中の主人公ノアとその家族、多種の動物を乗せた方舟自体を指す。「はこぶね」は「方舟」のほか、「箱舟」「箱船」などとも記される。北アメリカでは2014年3月28日に2D及びIMAXで封切られた。また一部の国々では変換(英語版)した3D及びIMAX 3Dでも上映された。2014年度(第35回)ラジー賞においては最低監督賞、最低スクリーンコンボ賞、最低脚本賞、最低リメイク・盗作・続編賞の4部門でノミネート候補リストに入った。(Wikipediaより)
この手の話は苦手だ。ノアの箱舟と聞いても、あくまでもイメージだけで、それを説明しなさいと試験に出ても一言も答案紙に書けない。どこかで映像らしきものを観たことがあるが、あれは映画の映像だったのか、それともいつか見た夢の話だったのか。
神の存在が際立っている話。宗教心のない自分にとっては、自分のための神は存在するが、人類のための神は何処にもいない。映画の主人公は神に選ばれし者、神に言われたことを頑なに実行しようと、人間であることを捨ててしまうところが凄い。どこまでも非情になれるその精神力は、ある意味現代に生きる人間に一番求められる要素の一つかもしれない。
『サムライせんせい』
2018年(平成30年)・日本 監督/渡辺一志
出演/市原隼人/忍成修吾/押田岳/武イリヤ/西村雄正/松川尚瑠輝/螢雪次朗/永澤俊矢/奥菜恵/橋爪功
原作は漫画作品。幕末から現代にタイムスリップした侍・武市半平太が、現代文明に困惑しながら、学習塾の先生として慕われるストーリー。なんか観たことがあるなぁ、と思いながら観ていた。どうも、2015年10月23日から12月12日までテレビ朝日系の金曜ナイトドラマ枠で放送されたテレビ・ドラマをちょっと見たのかもしれない。
タイム・スリップものは現代から過去や未来に跳ぶケースが多いが、この物語は江戸時代から現代にやってくるはなし。明治維新から150周年経ったことを記念して製作された作品だという。そう、まだ150年しか経っていないのだ。その前はちょんまげと刀の時代だったなんて、これから150年後の世界が見てみたいと。
坂本龍馬もタイム・スリップしていて彼は6年前に現代に現れて東京に住んでいるという。漫画らしい発想で、このあたりはおもしろい。6年も現代に住んでいると、もうスマホを使いこなし車さえ運転できる。こちらに来たばっかりの武市半平太は着物を着てまだちょんまげを結っている。タイム・スリップには夢がある。もしかすると、自分も何処からかのタイム・スリッパーかもしれないなどと考えたことはなかったが。
『トゥ・ヘル』(Between Worlds)
2018年・アメリカ 監督/マリア・プレラ
出演/ニコラス・ケイジ/フランカ・ポテンテ/ペネロープ・ミッチェル/リディア・ハースト
五流映画だった。今までもこの手の映画に出逢うと、五流映画は意外とおもしろいよということを書いてきたような気がする。ニコラス・ケイジはどこにでも顔を出すアメリカを代表する役者になったようだ。この邦題はどう考えても原題からとったものではなかろうと想定していた。なんといってもこんな言い方を題名とする英語圏の人はいないだろう。
一種のサイコ映画のようなものだった。他人に乗り移ってしまうやり方はずるい。気分のいい映画ではなかったので、五流映画のおもしろさを感じられなかったのが残念。最後まで観続けるのは苦しかったが。なんとか最後まで辿り着いたというのが正直なところ。
自分だけならまだしも、好きでもない他人の機嫌を考えながら生きていくなんて、とてもじゃないけど自分には出来るはずもない。生きているのがそんなにつらかったのかなぁ、三浦春馬、そんなことを急に考えてしまった。
『コード211』(211)
2018年・アメリカ 監督/ヨーク・アレック・シャクルトン
出演/ニコラス・ケイジ/コリー・ハードリクト/マイケル・レイニー・Jr./オリ・フェッファー
数多くの映画に出演しているニコラス・ケイジの映画は、なんていうことのない映画内容も多い。とってつけたような銀行強盗とそこに出くわしたパトロール・カーに乗る警察官二人、学校での暴力沙汰から謹慎処分として1日パトカー同乗という初めて聞いたアメリカのシステムが興味あった。
アメリカの大統領やその周りの取り巻きは全員黒いマスクを着けている。普段は悪者や強盗のイメージが強いから決して着用しないマスクを、いざしなければならなくなった時に、わざわざ強盗が使うような色のマスクを使用する背景にはアメリカ人の頑固さが見えてくる。
白いアジア人のしているようなマスクは嫌だと思っているのだろう。スカーフを首から口・鼻まで覆う強盗スタイルをMLBの全員が採用している。このあたりは教育ばかりではなく、昔から続いて引き継がれているDNAの為せる技かもしれない。世界の警察だと豪語していたアメリカ合衆国、今や新コロナウイルスのるつぼになってしまいそうな勢いが止まらない。
『メッセージマン』(Message Man)
2018年・インドネシア/オーストラリア 監督/コーリー・パーゾン
出演/ポール・オブライエン/ベルディ・ソライマン
三流作品。独りよがりで何が何だか分からずに進行する。平気で人を殺すし。舞台はインドネシア・ジャカルタ。東南アジアの匂いが漂ってくる映像が、なんとなく東洋人の脳を刺激する。もう少しアジアの国々を回っておけばよかったな、と思うけれど、優先度とすればヨーロッパ・アメリカとなり、せいぜい何度も行った香港での美味しいご飯だけが心の奥底に漂っている。
アクションもので一番気になるのは、あまりにも出来過ぎた設定の連続だということ。ザコは簡単に死んでいくけれど、主人公クラスは拳銃の弾が当たらないし、なかなか死ぬこともない。カンフーのような格闘技でさえ、殴られても殴られても倒されることはない。漫画の焼き直しのような映像が気になる。
テーマは悪を滅ぼすための無情な殺戮とでも言っていいだろう。世界共通の女・子供に対する愛情の深さが映像でも表現されている。他人に対する慈悲深い心根は、小さい頃からの教育の賜物かもしれない。薄っぺらな宗教心もない日本人の心の闇は、こういう世の中の非常事態のシーンで馬脚を露している。
『バックトレース』(Backtrace)
2018年・アメリカ 監督/ブライアン・A・ミラー
出演/ライアン・グスマン/シルヴェスター・スタローン/メドウ・ウィリアムズ/クリストファー・マクドナルド
シルヴェスター・スタローンの映画をきちんと見たのは1本か2本くらいだろうか。この映画の時はもう72歳、それでなくても聞きにくい彼のセリフ回し、たとえ英語がちゃんと喋れていたとしても、この活舌の悪さはどうしようもない。それこそ英語の字幕スーパーを欲する人が多いに違いない。
彼は地方の警察の警部、見た目にはどう見たってその反対側、極悪非道の悪人にしか見えないのは御愛嬌と言えるのだろうか。この頃の映画製作は、フィルムなんていうアナログは一切なく、いきなりハードディスクに撮ってそれを編集し、劇場でもそのデジタル映像を使って映写する方式が全てになってしまったようだ。現役時代のように映写室に入ってフィルムが映写される場面を見る事が無くなった今、どんな風に映画が映写されているのか観てみたい欲求にかられる。
銀行強盗のひとりだけが生き残って、その犯人も記憶喪失になってしまったというあたりがキモ。映像とセリフが陳腐でなかなか乗れない。最後まで観ていくと、ようやくほっとするシーンに出会うことが出来て、ようやく我慢をして観ていた甲斐があったと安堵する。それにしてもスタローンに昔の華やかなスターのイメージはない、と断言しておこう。
『逃走車』(Vehicle 19)
2013年・アメリカ/南アフリカ 監督/ムクンダ・マイケル・デュウィル
出演/ポール・ウォーカー/ナイマ・マクリーン/ジス・ドゥ・ヴィリエ/レイラ・エイドリアン
仮釈放中のアメリカ人のマイケルは、別れた妻アンジーとよりを戻したいため、南アフリカ共和国のヨハネスブルグまで逢いに来る。空港で予約と違う車が手配されていたが、取り替えに時間がかかると思い先を急ぐ事にした。途中マイケルは、車内で携帯電話と拳銃を発見する。その携帯に、とつぜん刑事を名乗る男から電話があり、手違いで車が入れ替わったので、すぐに交換してほしいと言う。マイケルは、指定された場所に向かう途中、後部座席の奥に縛られ気を失っている女を発見する。彼女はレイチェル検事と言い、組織的な人身売買の犯罪を警察所長のベンローズがやっている証拠をつかんだと言う・・・・・(Wikipediaより)
アクション映画というか、カーチェイス映画だろうか。Wikipediaに引き続きおもしろい情報が載っていた。---撮影は、全編がポール・ウォーカーが乗り込む車内搭載カメラで撮影されている。したがって車の中から見たアングルでストーリーが続き、場面もほとんどは車の中である。なを、この映画で初めてプロデューサーを務めた主演のポール・ウォーカーは、作品が公開された2013年に交通事故で死亡している。公式に制作に関わった映画はこの作品だけとなる。
途中寝てしまったがいつもの如く観直す気はなく、これでいいのだ、と楽しかった後半を味わった。最初のクレジットにアラビア語のような文字が見えたのでアメリカ映画だとは思わなかった。でも結局はアメリカ映画だよね、と感じていたらやっぱりアメリカ映画だったので、ちょっと妙な気持ち。
『シンクロニシティ』(Synchronicity)
2015年・アメリカ 監督/ジェイコブ・ジェントリー
出演/チャド・マックナイト/マイケル・アイアンサイド/ブリアンヌ・デイビス/AJ・ボーウェン
シンクロニシティ(synchronicity)とは、ユング(カール・グスタフ・ユング(Carl Gustav Jung、1875年7月26日 - 1961年6月6日)は、スイスの精神科医・心理学者。ブロイラーに師事し深層心理について研究、分析心理学(ユング心理学)を創始した。)が提唱した概念で「意味のある偶然の一致」を指し、日本語では「共時性」「同時性」「同時発生」と訳される。例えば、虫の知らせのようなもので因果関係がない2つの事象が、類似性と近接性を持つこと。ユングはこれを「非因果的連関の原理」と呼んだ。(Wikipediaより)
SF、近未来、タイム・マシーンを核に持つストーリー。題材は極めて興味があるしおもしろいものだが、現実の映像表現では、どうにも難し過ぎて理解するのが困難と思われる。この頃の映画映像は暗さが目立っており、風景や光景人物さえも明確に把握できない。製作費が抑えられるからと暗い画面ばかりでは反吐が出る。
デジャブのような映像の繰り返しは好ましくない。結局同じことの繰り返しにしか見えなくて、映画のおもしろさを削減している。シンクロニシティを調べていたら、乃木坂46のアルバムに「シンクロニシティ(2018年・J-POP)」があることが分かってちょっと複雑な心境。グループ自体の問題ではなく、芸能活動を作り上げていくスタッフたちの意識が高いのかもしれない。こんな難しい単語をよく使おうとした。アイドルに興味があれば、今回の映画鑑賞前に同題名だと気づくはずだ。
『ピクセル』(Pixels)
2015年・アメリカ 監督/クリス・コロンバス
出演/アダム・サンドラー/ケヴィン・ジェームズ/ミシェル・モナハン/ピーター・ディンクレイジ
久しぶりのアマゾン・プライムでの鑑賞だった。NASAは地球外生命体に向けて、1982年当時流行していたゲームの映像などを収録したメッセージを友好目的として宇宙へ打ち上げた。そして2015年。グアムのアンダーセン空軍基地が突如謎の攻撃を受け、あらゆる物質が立方体状のブロック(ピクセル)に変わりバラバラに分解、壊滅した。今回の攻撃は昔NASAが打ち上げたメッセージを見て“宣戦布告”と誤解した「ヴォルーラ星人」と名乗る異星人の仕業だということになるのだが、ちょっとオタク的な奇想天外な映画ストーリーだった。
テレビ・ゲームをこよなく愛している訳ではない私にとって、せいぜい「パックマン」というゲームくらいしか分からなかった。それでも一時代を築いたゲーム業界の産物は、想像以上に自分の頭の片隅に残っていることも感じられて、一人微笑んでいた。
アメリカ映画はどんなおちゃらけた物語でも一所懸命製作する。そこがいいところだろう。日本人は一定の割合で、ものごとを馬鹿にする傾向があったり、ある種の題材には蔑視しかしないことが珍しくない。ポルノ映画でさえアメリカ製作映画はすさまじい労力を感じ取ることが出来る。日本では全日本PTA連絡協議会のような圧力団体が大手を振って、この忌まわしい世界を無きものにしようと今だに齷齪しているのが現状なのだ。
『リスボン特急』(Un flic)
1972年・フランス 監督/ジャン=ピエール・メルヴィル
出演/アラン・ドロン/カトリーヌ・ドヌーヴ/リチャード・クレンナ/マイケル・コンラッド
シモンは表向きはパリのナイトクラブの経営者だが、実はギャングという裏の顔を持っている。ある時、シモンは仲間のルイ、マルク、ポールと大西洋に臨むある小さな町の銀行を襲撃、大金を強奪する。しかし、隙をつかれてマルクが撃たれ、負傷してしまう。一方、パリ警視庁のエドゥアール・コールマン刑事は、ある組織が税関とグルになって麻薬をリスボン行きの特急で運び出すという情報をキャッチする。そして午後7時59分、特急は運び屋を乗せてパリを出発した。シモンら3人はヘリコプターを使った作戦でその麻薬を横取りした。数日後、マルクの死体が発見される。シモンらに口封じされたのだ。コールマンはマルクの身元から犯人を割り出し、主犯がシモンであるとにらむ。仲間を次々と検挙したコールマンは、ついにシモンと対峙する。だが2人はかつて、堅い友情で結ばれた戦友同士だった…。(Wikipediaより)
映画の中で主人公の刑事が「警察署長」と呼ばれていた。ホントに署長なのだと思って観ていたがどうも違う。解説を読んで初めて確信が持てたが、署長というのは一種の綽名のようなものだったのだろう。さすがにアラン・ドロンと言えどもあの若さで署長はないだろうと。日本の上級国家公務員試験合格者は若くして税務署長や警察署長に就任して、ずーっと昔から続く悪しき風習を顔を顰めて国民がその報に接する。本人たちだって勘違いの人生をスタートさせているに違いない。
人間は、と大袈裟な表現をしてしまうが、所詮勘違いが得意な動物だ。それ以上に勘違いしなければ生きていけないような輩が結構存在することも事実だ。それで世の中がうまく収まるなら、勘違いなるものは大歓迎、ただその周りに暮らしている人たちの迷惑は夥しい。それもまた社会だとおおらかになれる人はいいが、普通の人々には容易ならぬ事態となってしまうのが辛いところだ。
『サムライマラソン』
2019年(平成31年)・日本 監督/バーナード・ローズ
出演/佐藤健/小松菜奈/森山未來/染谷将太/青木崇高/竹中直人/豊川悦司/長谷川博己
原作は土橋章宏による長編時代小説『幕末まらそん侍』、「日本のマラソンの発祥」とも称される史実「安政遠足」を舞台に、さまざまな事情を抱えて走る侍たちの悲喜こもごもが描かれている。話にちょっとだけ興味は惹かれるが、映画を観る限りはたいしておもしろい話ではない。映画もつまらない。
企画・プロデュースは、戦場のメリークリスマス Merry Christmas, Mr. Lawrence (1983年)、ラストエンペラー The Last Emperor (1987年)、を手掛けたジェレミー・トーマス、監督・脚本はバーナード・ローズ、音楽のフィリップ・グラス、衣装デザインのワダエミなど、アカデミー賞受賞歴を持つスタッフが名を連ねている。映画はおもしろくない。
登場人物も舞台も日本なのに外国人スタッフが主要人物というところが、おもしろくない原因の一番かもしれない。観ていて、監督が相当下手な奴だという印象が強くあった。日本人の心のうちを描かなければ、日本人の話にはならない。妙に淡々として、散漫な印象を受けてしまった。もともと話がおもしろくない物語をどうあがいたって面白く出来る訳はないか。
『影の軍隊』(L' ARMEE DES OMBRES)
1969年・フランス/イタリア 監督/ジャン=ピエール・メルヴィル
出演/リノ・ヴァンチュラ/ジャン=ピエール・カッセル/シモーヌ・シニョレ/ポール・ムーリス
時は1942年、第二次世界大戦が始まって3年あまり、この時誰もこの戦争が3年後の1945年に終結を迎えることを知る由もない。この映画はフランスのレジスタンスを描いたものだ。フランスのレジスタンスに関しては、多くの戦争映画で目にしてきたが、ここまで細かく描かれているものはないだろう。
邦題は原題のままの日本語訳になっているようだったが、どういう意味で影の軍隊という表現をしたのかが分からなかった。やっていることは敵であるドイツ軍と同じように、拉致、殺害、拷問、などなど、それこそ軍服を着ていないだけで闇にまぎれた行動は軍隊と全く何一つ変わらない、とでも言いたいのだろうか。
戦争映画を観ていつも思い出すのは、「夜と霧」という本である。滅多に本を読むことのない自分にとって、この本は人生を左右させるものだった。その時の筆者の心情を慮れば、胸が締め付けられる。ナチが何故あそこまでユダヤ人を排除したのか、何度調べても、聞いても理解できるものではなかった。そもそも戦争が悪いのだ、などと神のような言い草をする人がいたら殺してやりたい。戦争が悪いのではなく、それを行った人間が責められるべき事柄であることは明白である。
『まぼろしの市街戦』(Le Roi de Coeur)
1966年・フランセウ/イタリア 監督/フィリップ・ド・ブロカ
出演/アラン・ベイツ/ジュヌヴィエーヴ・ビジョルド/ピエール・ブラッスール/フランソワーズ・クリストフ
第一次世界大戦末期、1918年10月、ドイツ軍は敗走していたとき、解放を待つ北フランスの小さな町での出来事。おもしろくなかった。また眠ってしまった。フランスのエスプリとやらがいつも通じない。イタリアのいい加減さはもっと理解できない。
精神病院の患者たちが主人公になってタイトルのまぼろしの市街戦となる。「きちがい」とタイプしても、気狂いと変換されることが無くなった。言葉そのものを悪者にして差別しているこの世の中がおかしい。もっとも、嘘を訂正せず、謝りもしない日本の総理大臣の有様を見ていると、なにが狂っていて何が正常なのかの判断さえ危うくしている。
人間一人一人は、自分がまさか他の人と異常に違っているなんて思っている人はいない。どちらかというと自分は普通の人で、他の人の方がちょっと考えも行動も違うのではないかとうすうす考えている。実は、そう考えている人がほとんどの実社会では、誰もが少しずつおかしいに違いない。だからこそ、他人の声に耳を傾け、他人の言うことに尊敬の念を抱きながら生活しなければいけないのだと思う。
『いのちの紐』(The Slender Thread)
1965年・アメリカ 監督/シドニー・ポラック
出演/シドニー・ポワチエ/アン・バンクロフト/テリー・サバラス/スティーヴン・ヒル
映画を観終わってこの項目を書くために題名を読んでみたら、なんと「いのちのきずな」だと思っていたのが大間違いで、「いのちのひも」だったなんて。先入観というものではなく、単に先走り読みとでも言うんだろうか、いのちのの後にくる言葉は「きずな」だと思い込んでいた節がある。漢字をきちんと見ていない。手書きのDVD袋だったことも遠因だったような。
私でも知っている監督シドニー・ポラックの第一回監督映画。それまでは、テレビシリーズを手掛けていたらしい。シドニー・ポワチエは1927年生まれで現在93歳、黒人俳優としての先駆者的存在のひとりで、男優としては初めてアカデミー主演男優賞を受賞した。知らない人はいないだろう、知らなければもぐりだ。アン・バンクロフトは、1962年の『奇跡の人』でアカデミー主演女優賞を受賞、印象深い映画だった。
この映画は、ちょっと回りくどい場面ばかりで飽きが来た。シアトルの自殺防止協会で働くアルバイト学生と大量の睡眠薬を服用し朦朧とした状態の自殺願望者との電話会話シーンがほとんど。短い上映時間の割にはかなり長く感じたのは何故だろう。おもしろくないわけではないが、やはり同じことの繰り返しに見えてしまったのだろうと。
『おかしなおかしな大追跡』(What's Up,Doc?)
1972年・アメリカ 監督/ピーター・ボグダノヴィッチ
出演/バーブラ・ストライサンド/ライアン・オニール/マデリーン・カーン/ケネス・マース
ここまでドタバタどたばた映画も珍しい。どうしてこんな風にドタバタになってしまうんだろうと考える暇もなく、次から次へと話が展開して行く。日本のドタバタ喜劇と比べようもないほど気持ちのいい進行であることは間違いない。喋り言葉の英語と書き言葉の日本語の特徴の違いがそう感じさせているのだろうと思う。
バーブラ・ストライサンドはもう何をやらせても充分過ぎる才能を発揮する。せめて喜劇になんかでなくてもいいよ、とチャチを入れたくなってくる。歌手としても女優としても誉れが高い。1962年に歌手としてデビュー。代表曲は「ピープル」、「追憶」等。女優としても活躍し、自身の映画出演作の主題歌を歌ったり、楽曲の提供などもしている。アカデミー賞は、『ファニー・ガール』で主演女優賞を、『スター誕生』で作曲家としてアカデミー歌曲賞と2度受賞している。また、複数のエミー賞、グラミー賞、ゴールデングローブ賞、およびトニー賞を受賞している。
それにしてもおちゃらけた内容だった。このところ順調に映画鑑賞を出来ていたのに、この映画はなかなか見る事が進まず、ようやく観終わったという感じ。1時間30分くらいの短い映画なのに長く感じるのは、映画そのものに問題があるはずだ。アメリカ映画らしくハッピー・エンドでめでたし、めでたし。
『現金に体を張れ』(The Killing)
1956年・アメリカ 監督/スタンリー・キューブリック
出演/スターリング・ヘイドン/コリーン・グレイ/ヴィンス・エドワーズ/ジェイ・C・フリッペン
現金を「げんなま」と読むことは、昔から日本映画の題名に馴染のある人でなければ分からにだろう。今の若者にこの題名を読ませたら100%「げんきん」と言うに違いない。間違ったからと言って責められるものでもないが、慣用句とかいう奴は、小さい頃から馴染んでなければ分からない事。アメリカ映画を日本語字幕なしで理解できる人だって、最新のスラングには泣かされるらしい。
スタンリー・キューブリック、この映画の監督はちょっと変わった人。商業性が重視されるハリウッドの映画監督でありながら、多様なジャンルで芸術性の高い革新的な映画を作っている。『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』『2001年宇宙の旅』『時計じかけのオレンジ』『シャイニング』など。映画史における最も偉大で影響力のある映画製作者の一人として度々言及されている。
私は、若い時に偶然観た『時計じかけのオレンジ』に不思議と惹かれた。何故かはわからない。『2001年宇宙の旅』は今でも語り継がれるほどの代表作で評価も最高に近いが、私には高尚過ぎて理解できない部分が多かった。この映画は、彼のハリウッド映画第1作だというが、まだ理屈っぽい映画製作にはなっておらず、えらく分かり易い映画だった。久しぶりの古い映画、白黒画面。
『アラジン』(Aladdin)
2019年・アメリカ 監督/ガイ・リッチー
出演/メナ・マスード/ナオミ・スコット/ウィル・スミス/マーワン・ケンザリ
実写版のアラジンだったが、つまらなかった。また寝てしまった。起きてからも、どこがおもしろい話なのだろうかと頭を傾げるばかりで、全然乗れない自分がいた。映画としては、『千夜一夜物語』の『アラジンと魔法のランプ』に基づき1992年に制作されたディズニーの長編アニメーション映画作品『アラジン』の実写リメイク作品である、という。
子供騙しにもなれないようなストーリー展開は、育った環境で感じ方が大いに違うのかもしれない。日本の昔話だって、何かしら人間の基本的な倫理観やモラル的なことを教えようとしていると感じるが、この話にはそんなところが微塵も感じられない。
あるとすれば、魔法で国王にすら成れるということ。法律だって魔法で全くないものに出来るということ。それは、実は人間社会における真実なのだが、時の権力者がさらに権力を増大させて世の中を牛耳っている。それでも、時間や時代が解決する人間社会が現にあることが。なにしろ、どんなに望んだところで、一人の人間が人間であることをコントロールできないのがこの世の中だから。
『今日も嫌がらせ弁当』
2019年(平成元年)・日本 監督/塚本連平
出演/篠原涼子/芳根京子/松井玲奈/佐藤寛太/佐藤隆太
今回送られてきたDVDの中で日本映画の最後の作品だった。さすがにだんだん質が低下してきてはいたが、意外と最後までおもしろく観ることが出来たことに我ながら驚いてしまった。篠原涼子も昔からどちらかというと好きではなく嫌いなタイプなのに、もう母親役ではかなりキャピキャピ感が薄れて、もうどうでもいいやという気にならない存在になってきたようである。
2015年に出版されたKaori(ttkk)著のエッセイを原作としているという。月間約350万アクセスを記録するブログ『ttkkの嫌がらせのためだけのお弁当ブログ』から、特に反響の大きかった弁当と日記を抜粋して本にまとめたもの。著者の娘が高校入学と同時に反抗期となり、生意気な態度や無視を繰り返す。著者はそんな娘に対して卒業までの3年間にわたり、「嫌がらせ弁当」で反撃する。続編に『今日は"よろこばせ"弁当』 がある。そんな映画だった。
舞台は八丈島。遠い遠い昔、新婚旅行で行ったのが八丈島。もう46年前のはなし。新婚旅行のことなど考えずに結婚式が近づいていた。行ったことのない場所でちょっと変わったところということで八丈島にした。もっと違った動機があったかもしれないが覚えていない。ただ、帰りの飛行機は確保できたけれど行きは船旅だったことを鮮明に覚えている。何の情報もなく訪れた八丈島は、結局何処へ行くこともなく過ごしたような気がする。今ほど観光が人を呼ぶなんていう政策が流行っていなかった時代だからこその旅だったような気がする。もう遠い昔だなぁ~!?#$%&
『七つの会議』
2019年(平成31年)・日本 監督/福澤克雄
出演/野村萬斎/香川照之/及川光博/片岡愛之助/土屋太鳳/小泉孝太郎/溝端淳平/春風亭昇太/世良公則/鹿賀丈史/橋爪功/北大路欣也
池井戸潤原作の中堅電機メーカーで起こった不祥事に巻き込まれていく社員たちを描く群像劇。2011年5月から2012年5月まで『日本経済新聞電子版』に連載され、単行本化の際に1話を加筆し、8話構成の連作短編集として、2012年11月5日に刊行された。テレビドラマとして、NHK総合の「土曜ドラマ」枠で2013年7月13日から8月3日まで放送された。全4回。主演は東山紀之。こういう事実を全く知らない。その分、おもしろく観ることが出来たということになる。
香川照之の登場姿を見るたびに、あんた!!ちゃんと歌舞伎の鍛錬をしているかね、と声を掛けている。あの下手くそなセリフ回しがどの程度改善されているだろうか。テレビ界ではもう既にベテランの域と実力のある役者と喧伝される身となったが、肝心の歌舞伎役者としてはまだまだ未熟なんだろうな。
サラリーマンの世界は不条理にあふれた社会だとは、事実を含めて誰もが否定しない事柄だ。あっちこっちにそのネタの根源は蔓延っている。おそらく世界中のサラリーマンが経験しているどうにも解せない日常は、それ自体が物語のネタになるだろう。下手くそな役者でも話がおもしろければ、何とか最後まで飽きずに観ることが出来る。お茶らけテレビ・バラエティーのタレントを多く起用しなければならない現状の映画界が窺い知れる。
『アルキメデスの大戦』(The Great War of Archimedes)
2019年(平成元年)・日本 監督/山崎貴
出演/菅田将暉/柄本佑/浜辺美波/笑福亭鶴瓶/小林克也/小日向文世/國村隼/橋爪功/田中泯/舘ひろし
三田紀房による日本の漫画、およびそれを原作とした実写版映画。軍艦、戦闘機など旧日本海軍の兵器開発・製造について、当時の技術戦略と人間模様をテーマにしたフィクション作品となっている。ということらしいが、映画のエンド・クレジットの最終行には「これは、・・・・・インスパイアをうけたフィクションです。」と明記されていた。当時の日本軍の幹部が実名で出ていて、戦争も本当だったのにフィクション内容とは解せない。
眠ってしまった。その後の展開が結構面白かったので、小満足というところだが、見返す気にはなれない。箸もきちんと持てない落語家が出演していて興醒め。世間では結構評判のいい人物だが、いい歳になって箸を持てない落語家が存在していることが赦せない。何故かって? だって、直そうと思えば今までに間違いなく直せるはずの癖なのに、それをやらないというのは尊敬の念には値しない。
その他の役者もふ~ん!?$#% テレビドラマの焼き直ししのような顔ぶれで、しかもド素人のような演技では残念ながらおもしろいストーリーが色あせてしまう。山本五十六は貫禄なかったな~。若き天才将校も天才数学者には見えなかったな~。この頃の若い者は、とか、この頃の社会は、とかばかり言っている老人が多かった昔の人みたいに自分が思えてくる。題名は、アルキメデスの原理:アルキメデスが発見した物理学の法則で「流体(液体や気体)中の物体は、その物体が押しのけている流体の重さ(重量)と同じ大きさで上向きの浮力を受ける」というものと関係がありそうな。寝ていいる間にそんなことが解説されていたのかもしれない。
『半世界』(Another World)
2019年(平成31年)・日本 監督/阪本順治
出演/稲垣吾郎/長谷川博己/池脇千鶴/渋川清彦/竹内都子/杉田雷麟/牧口元美/信太昌之/堀部圭亮/小野武彦/石橋蓮司
題名の『半世界』は、写真家の小石清の写真展の題名からつけられているという。製作と配給をしているのが「キノフィルムズ」という会社で、もともと木下工務店が映画製作にお金を出し始めて発展してきた企業だ。この会社の絡んだ映画はいつも質が高くて感心させられる。映画人のひとりとしては、こういう会社で自分の役をおわりたかったかなあ~、と。
久しぶりの日本映画がこの作品で良かった。どうにも我慢のならない日本映画の稚拙性、幼児性を観たくないのが本音なのだ。この作品のほかにも何枚かの日本映画DVDを貰っているので、この後の鑑賞意欲が削がれることはなさそうだ。稲垣吾郎の名前を事前に見ているはずなのに、映画を観ている間に彼の名前が頭に浮かんでこなかった。そういう意味ではいい役者なのかもしれない。エンド・タイトルに彼の名前が真っ先に出てきて、あぁ!そうだったんだ、とちょっと驚きを隠せなかった。
なかなかといい映画だった。舞台は備長炭を焼く主人公とあと2人の幼馴染からの友人、妻、そして反抗期まっただ中の中学生の息子が織りなしている。ついつい涙が流れてしまうシーンがあって、ずーっと疲れ切っている自分の眼の栄養には打って付けの薬となってくれた。哀しい時に涙を流すことは珍しく、どちらかというと感動の極致で涙に溢れてしまうのが自分だと認識しているはずなのだが、寄る年波には勝てなくなったということなのだろう。
『ラン・オールナイト』(Run All Night)
2015年・アメリカ 監督/ジャウム・コレット=セラ
出演/リーアム・ニーソン/ジョエル・キナマン/ビンセント・ドノフリオ
ニューヨークのブルックリン。そこで長年マフィアのボスであり親友のショーンに仕えてきた殺し屋のジミーは、過去に犯した数々の行いに対する罪悪感からアルコールに溺れる毎日を送っていた。そんなジミーの息子であるマイクは、父親を嫌悪してリムジンの運転手をしながら妻子と共に慎ましく生きていた。ある夜、マイクがリムジン内で客の帰りを持っていると、その客が殺害される現場を目撃してしまう。客を殺害したのは、ショーンの息子ダニーだった。目撃されたことを知ったダニーからなんとか逃げ切り帰宅したマイクのもとにジミーが現れ、「今夜見たことは誰にも話すな」と忠告を受ける。だがしばらくすると、目撃者を始末するために銃を持ったダニーがマイクのもとに現れる。ダニーがマイクに向けて引き金を引こうとしたその時、ジミーの放った弾丸がダニーの命を奪った。ダニーがジミーによって殺害されたことを知ったショーンは、ジミーとマイクへの報復を決意する。こうしてショーンの部下や警察、そして殺し屋からも追われることになったジミーとマイクは、命がけの逃亡劇を開始する。()Wikipediaより
アクション映画のストーリーを陳列することを由としないが、こうやってどこかからか引用するのには抵抗はない。自分で映画の物語を解説したり説明するのは得意としていないので、偶にはこうやって引用を多用することに罪の意識は希薄である。
映画のいいところは、登場人物に自分を投影して映画の中で何かの役を演じられることかもしれない。結末がどんでん返しは観客にはショックでも、映画会社には常套手段。ハッピー・エンドならば映画館を出てくる観客の顔が全員微笑んでいることでその仕合わせ度が分かろうというもの。人間の人生だってある意味映画と同じようなものなのかもしれない。演じて・演じて、最後には寿命を全うするしかないのが人間の性、どうあがいたって舞台の上で死んでいくしかないのだ。
『マレフィセント2』(Maleficent: Mistress of Evil)
2019年・アメリカ 監督/ヨアヒム・ローニング
出演/アンジェリーナ・ジョリー/エル・ファニング/キウェテル・イジョフォー/サム・ライリー
「眠れる森の美女」の悪役マレフィセントを主人公にしたファンタジー映画『マレフィセント』の続編。へえ~!そうなんだー。そういう文化的な原作は題名だけ知っているだけで、どんな内容なのかをまったく知らない凡人の本性が見えてしまいそうで怖い、恐ろしい。もちろん、1作目を観ていない。
アンジェリーナ・ジョリーが出てくると、どうしても父親のジョン・ボイト(Jon Voight)を語らない訳にはいかない。彼は、1978年の『帰郷』でアカデミー主演男優賞を受賞しているが、ヘラルドが1983年に配給した5人のテーブル(Table for Five)は大ずっこけして社員をどん底に突き落としたのだった。当時の取締役営業部長がたまたま行った海外出張でえらく惚れてしまって購入した作品だった。そういえば、あの営業部長は英語なんて全然喋れなかったはずだ、ということを今思い出して笑っている。
アンジェリーナ・ジョリーの魔女は素晴らしかった。ここまではまる役者もなかなかいないだろう。エル・ファニング(Elle Fanning)の女王様も可愛くて観ていて楽しくなってきた。彼女は1998年4月生まれだというからこの映画を撮影していた頃は若干二十歳だったようだ。若いということは財産である。それは自分が若くなくなって初めて知る真理なのだから困ったものだ。もっと早くにそういう事実を知っていれば、誰しも後悔の念が少なくなる人生が送れるのだろうに。
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(Once Upon a Time in Hollywood)
2019年・アメリカ/イギリス 監督/クエンティン・タランティーノ
出演/レオナルド・ディカプリオ/ブラッド・ピット/マーゴット・ロビー/エミール・ハーシュ
昨年末の入院以来コンタクトレンズを外して、盲人と同じような境遇にあった。もう50年もコンタクトレンズ、しかもハードコンタクトレンズをしていたことが恐ろしいと思える期間だ。たぶん、自分の目にはこのハードコンタクトレンズが合うんだよ、と神様が決めていてくれたのかもしれない。ただ、27インチのデスクトップ・モニターさえはっきりと認識できないでいる現状にはどうにも腹立たしさだけしかなかった。思い立って本日眼鏡を作って来た。眼鏡を作る過程ではトラウマ的嫌な経験があって、そいつが頭から離れない。結果だけ言えば、さすがにメガネの効用は有り、と断言はできるが、残念ながらやっぱりコンタクトレンズの明瞭さには遠く及ばない無用の長物にならないことを願うばかり。眼鏡をしてもきちんと見えない道具は無しだ。ただ、これでテレビで観る映画が復活すればいいのだが。観始まったばかりのこの映画が2週間くらい停滞しているのは目のせい。なんとか、観ようとする意欲だけでも湧き出させてれると嬉しいのだが。
タランティーノの最新作はこれだったのか。レオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットが同じ映画に出ているのも珍しい。どっちが主演なんだろうというより、どっちの方がこの映画で多くのギャラを取っているのかに興味がある。アル・パチーノも時々顔を出して考えられないようなキャスティングになっている。時は1969年の頃、映画監督ロマン・ポランスキーと売り出し中の若手女優シャロン・テートの夫妻が隣に引っ越してきたりと、映画業界内の話が肝になっている。業界内を取り上げた映画はイマイチ詰まらないケースが多い。業界内なら知っている話題をさりげなく挿入して製作者だけが楽しんでいるようにみえて仕方がない。
2.5メートルの椅子に腰かけて50インチのテレビ画面で映画を観たかったけれど、いきなりの「見える」眼鏡は100%お勧めしないとその道のプロの人に諭されて、妙に納得してかなり見えない眼鏡で我慢することになった。椅子を一個分前に出して、約1.7メートルの距離から映画スクリーンを観た。今までよりは遥かにいいが、見え難いことは変わりなく、しばらくは慣れるまでの試練として受け止められれば。(2020年7月8日)
『スリー・ビルボード』(Three Billboards Outside Ebbing, Missouri)
2017年・アメリカ/イギリス 監督/マーティン・マクドナー
出演/フランシス・マクドーマンド/ウディ・ハレルソン/サム・ロックウェル/アビー・コーニッシュ
めずらしく、Wikipediaの原題の横に「ミズーリ州エビング郊外の三枚の広告看板」の意ということが書いてあった。おもしろい映画だと想像させるに十分な題名に見えたが、その通りなかなかおもしろい映画だった。2本続けておもしろいのは嬉しい。
アメリカ人の家族愛をまた見せつけられた。離婚も家族崩壊も多いのに、一人一人の家族に対する愛情は異常なほどだ。だからこそ、ギャップが生じるのかもしれない。レイプされ殺されてしまった娘の母親が取った行動は、いかにも映画的で面白いが、日本では到底考えられない展開。屋外看板がその大きな役割を果たすところが、いかにもアメリカ的だと知りもしないアメリカ事情を考察する。
右へ行くのか左へ行くのか、どっちに行くかは自分で考えてください、という結末を久しぶりに観た。日本映画の手を取り足を取りという幼稚なエンディングを馬鹿にしている。一度や二度映画に出演したからって、女優だの映画俳優だのともてはやされる日本での環境は苦々しく思える。つい最近だって、不倫をした男の相手方を大女優と紹介していた。何が大女優だよ、デクノボーの単なるいち出演者なのに。
『ラスト・ムービースター』(The Last Movie Star)
2017年・アメリカ 監督/アダム・リフキン
出演/バート・レイノルズ/アリエル・ウィンター/クラーク・デューク/エラー・コルトレーン
現役時代から助平ったらしいバート・レイノルズの顔が好きになれなかった。この映画が始まって、いきなり彼がどんと椅子に座って出てきたときから、もう気分が悪くなりはじまった。さてさて、最後まで平穏に観続けることが出来るのだろうか。予定通り、一歩も観進まなかった。
いやー!おもしろかった。言っていることが違うじゃないかとののしろられそうだが、ののしろられたっていい。彼の最後の作品だということも分かった。2018年に82歳でなくなっている。その最後の頃の姿は、若い頃とは全く違うおだやかな表情になっていた。自叙伝のようなストーリーが結構泣かせる。久しぶりに映画らしくて映画っぽい映画を観た満足感に浸れた。
この映画の中で彼は5回結婚したというが、実生活でもそうだったのだろう。娘を自殺で失ったことも、本当なのかもしれない。細かいことをweb検索では知りえなかった。一体自分の人生は何だったのだろうか、というようなことを思い浮かべる彼の姿は、大スターや絢爛たる世界の人間ではなく、普通のそのあたりにいる人間のひとりなのだと語っているような。
『さらば愛しきアウトロー』(The Old Man & the Gun)
2018年・アメリカ 監督/デヴィッド・ロウリー
出演/ロバート・レッドフォード/ケイシー・アフレック/ダニー・グローヴァー/チカ・サンプター/トム・ウェイツ
ロバート・レッドフォードの名前が一番最初に出ていて、えっ!いくつになったんだよ、と思いながら観始まった。前の作品を観終わるのに1か月もかかってしまったことを書いたのもだいぶ前のこと。実はこの映画は2日間で観終わっていたのだが、どうも昔ながらの書くことへの苦手感がこうやって活字の世界を遠ざけている。
この映画の主人公は子供のころから根っからの泥棒。万引きから始まった犯罪人生は、70歳になっても衰えることはなく銀行強盗を趣味のように楽しんでいる。拳銃を上着の裏側に忍ばせて脅しには使うが、他人を傷つけることはしない。毎回つかまっては脱走を繰り返している人生だったらしい。まったくの事実に基づいた映画だというから楽しい。
三つ子の魂百までもとは良く行ったものだ。なくて七癖と同じように、本人には自覚のないDNAとやらが頭の中から足の指先まで詰まっている。嘘を平気でつく奴が急に直るわっけがない。時間にルーズな奴が急に時間通りに現れることもない。悪いことばかりではない。几帳面な輩は歳をとってもその几帳面さに縛られて毎日を生きている。なんとか脱却して新しい人生を始めるには手遅れだ。もうだれも助けてはくれない。自分のことは自分でバンバンしなければ明日はやってこない。それが人生というものなのだろう。それでいいのだ。
『レディ・プレイヤー1』(Ready Player One)
2018年・アメリカ 監督/スティーヴン・スピルバーグ
出演/タイ・シェリダン/オリヴィア・クック/ベン・メンデルソーン/T・J・ミラー/サイモン・ペグ
スピルバーグが監督だなんて、こんな映画もつくるんだと素直に驚く。またゲーム!?、と観始まったときに嫌な顔をしたものだが、まさか巨匠がこういう題材を選ぶなんて、もうすでに自分は時代に遅れてしまったと痛感せざるを得ない。時は2045年という近未来の物語。誰もがバーチャル世界で人生を楽しむ時代となっていた。
邦題のレディが Lady ではなく、Ready だったことが続いて驚いたことだった。もう2週間になるのではなかろうか。一向に鑑賞意欲がわかないこの映画、スピルバーグと言えどゲーム性の映画には興味がないことが一番の原因。毎日1本以上観ていた時があったことが懐かしい。
3週間ぶりくらいに観始まったが、まだ半分にも到達していない。愕然とする。少しおもしろくなってきた。たぶん約1か月かけてようやく観終わった。手術の時からコンタクトレンズを外してしまって、そのままのド近眼状態で毎日を過ごしている。字幕版で大きな画面で映画を堪能するという贅沢から転落して、パソコンの27インチ画面で吹き替え版に日本語字幕を出して観ている。久しぶりに50インチテレビ画面に映して、吹き替え版で最後を観た。スピルバーグの天才ぶりが分かる映画で、内容は理解できなかった。たぶんもう1回観ても完璧な理解は出来ないだろう。それでいいのだ、庶民には庶民の生き方がある。
『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』(Fast & Furious Presents: Hobbs & Shaw)
2019年・アメリカ 監督/デヴィッド・リーチ
出演/ドウェイン・ジョンソン/ジェイソン・ステイサム/イドリス・エルバ/ヴァネッサ・カービー
いやぁ~、凄いですね~! この邦題は、どういうこと? 原題の最後にある Hobbs & Shaw はこの映画の中に登場する二人の主人公の名前だった。それにしても凄い。ノンストップ・アクションとか昔は粋がっていたけれど、この映画はそれどころではない。ついていくのが精一杯で、最初から最後までアクションばっかり。
こういう映画を映画館の大画面で見ていたら、おそらく最後まで行き着けないだろう。たぶん、途中で気持ち悪くなって席を離れてしまうに違いない。スクリーンにもまして音だってかなりのものだろうから、途中休憩してトイレにでも行って、それでもまた観直すだろうね、きっと。
去年1年間で映画館を訪れたことはない、たぶん。最近ではイオンのシネマ・コンプレックスなんて便利な場所があるけれど、ここから一番近いイオンへは歩いて10分もかからないけれど、残念ながら映画館は併設されていない。映画館があれば、おそらく足を運ぶことが多くなるに違いないが、そう考えると、便利なところに映画館があるというのはやっぱり必須なんだなぁ~。
『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』(Jumanji: Welcome to the Jungle)
2017年・アメリカ 監督/ジェイク・カスダン
出演/ドウェイン・ジョンソン/ジャック・ブラック/ケヴィン・ハート/カレン・ギラン/ニック・ジョナス
おちゃらけた笑いがまったく合わなかった1作目を観ているが、懲りずに2作目を観ることになった。アメリカン・ジョークは合わないと何処がおもしろいのか全然理解できず、身体が反応しなくなって、脳も停止してしまうが、さてさてこの映画はどうなのだろう。
途中経過でいえば、やっぱり響かない。ゲーム嫌いな自分にとっては、この映画そのものがゲームの中でプレイする人間を模造していること自体が理解しにくい。でも、とりあえず観ている。
内容がねぇ~。人間がゲームの中に入ってしまって、見知らぬジャングルで見知らぬキャラクターに変身して進行する映画なんて。目が見えないので「吹き替え版」に変更して垂れ流し的に観た。こういう状況を観たと表現するのはちょっとばかり抵抗があるが、とりあえず観たというには変わりないだろう。
『プーと大人になった僕』(Christopher Robin)
2018年・アメリカ 監督/マーク・フォースター
出演/ユアン・マクレガー/ヘイリー・アトウェル/ジム・カミングス/ブラッド・ギャレット
ディズニーの実写映画だ。もちろん、プーさんはお人形さんだがその違和感が嫌ではなくなるところが素晴らしい。こういうストーリーは大好きだし、不思議と吹き替え版を選択してもおかしくはなかった。日本語字幕も表示して、喋りと字幕の違いを見比べながらの鑑賞となった。
もらったDVDが1時間8分くらいからブロックノイズが出始まり、そのあとを観続けられていないのが残念だ。アマゾンプライムで調べたら、まだ299円という有料金額なので躊躇っている。もしもこの週末に100円セールがあるようなら続きを観ようと考えている。
あっ!週末だと気が付いたのが土曜日の夜、調べてみたら終末料金199円になっていた。微妙だなとおもいながら、すぐに見る訳ではないのが小河流。100円を惜しむ気持ちが自分でも説明がつかない。結局観ないで今日を過ごそうという気にはなれず、残り30分を堪能した。他愛もない話だけど、今の私にはちょうどいい。ストレスのないストーリーとキャラクターは、観ていて安心しかない。もともとこういう話は大好きだ。
『ジョーカー』(Joker)
2019年・アメリカ 監督/トッド・フィリップス
出演/ホアキン・フェニックス/ロバート・デ・ニーロ/ザジー・ビーツ/フランセス・コンロイ
DCコミックス「バットマン」に登場するスーパーヴィランであるジョーカーことアーサー・フレックが悪へ堕ちる経緯が描かれる。「グラディエーター」「ザ・マスター」などで個性派俳優として知られるホアキン・フェニックスがアーサーを演じ、「ハングオーバー!シリーズ」を成功させたトッド・フィリップスが監督を務める。映画は2019年10月4日より日米同日で劇場公開された。R15+指定。 ロケ地となったニューヨーク・ブロンクス地区にある階段が観光名所になった。劇場公開当時のキャッチコピーは「本当の悪は笑顔の中にある」。(Wikipediaより)
割合新し目の映画を観たくて仕方がなかった。アマゾン・プライムでは有料だったので二の足を踏んだが、こうやって奇特な人からDVDを入手できると凄く嬉しい。大きなスクリーンどころか、タブレットやパソコンで観るようになってしまった映画。不謹慎な観方だなぁと我ながら嫌になってくるが、字幕が上手く読めないから仕方がない。ここ頃の映画は全体的に暗い場面が多く、特にこの映画はバットマンの時もそうだったようにかなりダークな雰囲気が漂う。
「バットマン」におけるジョーカーの存在感を実感していない自分にとっては、奇妙な物語に思えて仕方がなかった。狂気となんとかが共存するなんたらかんたら、とか専門家は解説しそうだが、暗くて嫌な映画ストーリー及び映像とだけ記憶に残るだろう。あまり気持ちの良い映画ではない。ようやく観終わったという安堵感の方が遥かに気持ちを占めていた。
『ブラック・クランズマン』(BlacKkKlansman)
2018年・アメリカ 監督/スパイク・リー
出演/ジョン・デヴィッド・ワシントン/アダム・ドライバー/ローラ・ハリアー/トファー・グレイス
3作品連続の黒人クローズアップだった。今回の映画には具体的にKKKが登場して白人と黒人の対立構図を顕著にしている。アメリカ合衆国の潮流の中にあらたに大きな黒人問題が流れ始まったのだろうか。アメリカに住んでいなければ絶対見えてこない『何か』を教えてくれる人はいないだろうか。
なかなか進まない。何度も書いてきたことではあるが、映画を観るのにも体力がいる。健康な時にはそんなことを露とも知らずに過ごしてきていたが、いざこうやって手術2か月後のまだまだ不自由な身体には、体力だけではなく集中力という精神的な力も必要だということをつくずくと感じる。
1970年代のアメリカ・コロラド州コロラド・スプリングズで、アフリカ系アメリカ人(黒人)初の市警察巡査となったロンが、白人至上主義団体クー・クラックス・クランの地方支部への潜入捜査に着手し、活動内容や極秘計画を暴くまでを描く伝記犯罪映画。監督自身がアフリカ系アメリカ人で、発表する作品ごとに社会的・政治的な問題を扱い、論争を巻き起こす事でも有名である。映画の最後を見ると、当時の白人たちの酷い所業が白黒フィルムとして結構な時間流される。トランプの登場により、アメリカにおける人種差別は、一段も二段階も上のステージへと上がってしまったのかもしれない。
『グリーンブック』(Green Book)
2018年・アメリカ 監督/ピーター・ファレリー
出演/ヴィゴ・モーテンセン/マハーシャラ・アリ/リンダ・カーデリーニ
最初からおもしろい匂いはしていたけれど、かなり好きな映画だった。いつも通り何の情報もないところから観始まって、あれ!これはマフィア映画なのかなと思っていたら全くそんなものではなかった。1962年あたりのアメリカでの黒人差別問題は、現在からは想像も出来ないものだった。ケネディ大統領が黒人問題がどうのこうのということは知っていたが、これほどの現実があったとは。
終始おもしろかった。実在の人物を描いた映画は、ともすれば、その実在に左右されて、意外と映画としておもしろくないケースが多い。この映画の主人公はニューヨークに住む陽気なイタリア人だが、そのニューヨークに住む天才ドン"ドクター"シャーリーは黒人であるという対照的な人種環境に興味が惹かれる。
シャーリーの運転手兼ボディガードを務めたイタリア人は家族や仲間との交流が、日本人の私にも伝わるいかにもという雰囲気がおもしろい。ニューヨークで活動していれば3倍ものギャラを得ることが出来るのに、しかもわざわざ差別の激しいアメリカ深南部ツアーを敢行する心意気が、常人では理解できない域にある。徐々に良貨に駆逐されていくイタリア人の様子がとてもおかしくて。映画の最後はこの天才ピアニストと初めて会った主人公の若い美しい妻の一言が粋だった。
『アド・アストラ』(Ad Astra)
2019年・アメリカ 監督/ジェームズ・グレイ
出演/ブラッド・ピット/トミー・リー・ジョーンズ/ルース・ネッガ/リヴ・タイラー/ドナルド・サザーランド
人類は火星に宇宙基地を建造し、地球外生命体の探査に乗り出している。著名な宇宙飛行士クリフォード・マクブライドの息子であるロイ・マクブライド少佐は、優秀な宇宙飛行士となっていたが、16年前の父の事故死が切っ掛けとなり、他者と適切な関係を築くことができず、妻のイヴとも離婚していた。ある日、地球は大規模なサージ電流に覆われ、全世界で4万人超の犠牲者が発生する。サージによる軌道施設の爆発事故を生き延びたロイは、アメリカ宇宙軍上層部に極秘に招集される。宇宙軍は、16年前に連絡を絶ち、現在は海王星付近に留まっているらしい地球外生命体探査計画「リマ」で用いられていた反物質装置がサージを引き起こしたものと推定する。リマ計画のリーダーであったクリフォードも生存している可能性が強まり、息子であるロイをクリフォードへのメッセンジャーとする。ロイは監視役であるプルーイット大佐と共に、サージの影響を免れた宇宙軍火星地下基地で、海王星へのレーザー通信を試みることになる。(Wikipediaより)
ブラッド・ピットの容姿は実に俳優らしいが、残念ながら彼の作品でヒット作品を観たことがない。と言ってしまっては失礼だが、それなりにヒットしている映画はあるものの、これぞという彼でなければ演じられないような俳優魂を見つけられていないのだ。この映画だってまったく無名の俳優で充分なんじゃなかろうかと感じる。
月や火星に簡単に行ける時がやってくるのだろうけれど、そこまで生き延びている訳もなく、あくまでも夢物語の映像にしか見えないところが辛い。「地獄の黙示録」を観ているような錯覚に襲われたのは私だけだろうか。宇宙空間では動作が緩慢になる、そのために上映時間が長くなってしまったのではなかろうか。イマイチ。面白そうに始まるが、観ているうちに飽きが来るストーリーと映像だ。
『ブルックリン』(Brooklyn)
2015年・カナダ/アイルランド/イギリス 監督/ジョン・クローリー
出演/シアーシャ・ローナン/エモリー・コーエン/ドーナル・グリーソン/ジム・ブロードベント
アマゾン・プライムの見放題作品は便利だけれど、なかなか観たい作品に巡り合えない。5分や10分で見るのをやめてしまう映画が数多い。たまたま週末限定100円と表示された作品の中からこの映画を探し出した。もう5年前の映画だけれど、その存在も知らなかったが、ポスター表示と題名でいい映画だろうと匂いを感じた。
監督や俳優のことを論じるのは得意ではないが、この監督は観客を仕合わせにしてくれる。映画は軽快に進行してくれる。ちょっと涙が頬を伝わっても、これでもかこれでもかと追い打ちをかけることもない。心のうちをセリフで語らせることを由としない製作姿勢を強く感じた。なかなか珍しい部類の映画である。
アメリカが人種のるつぼだと言われるゆえんを見るような気がした。主人公はアイルランドからニューヨーク・ブルックリンに移り住んできた。一人のイタリア人の青年と恋に落ちる。言葉の訛りや国民性についてもっと知識があれば、この映画の細かいところがもう少し分かって、もっと面白く感じたことだろう。何事にも基礎的な知識と賢知をもっていなければならない。
『セブン・シスターズ』(What Happened to Mondays)
2017年・イギリス/アメリカ/フランス/ベルギー 監督/トミー・ウィルコラ
出演/ノオミ・ラパス/グレン・クローズ/ウィレム・デフォー/マーワン・ケンザリ
21世紀半ば。地球は異常気象と人口過剰によって資源が減少し、戦争や難民問題が繰り返されたことによって主要国はみな滅び去り、ヨーロッパ連邦が新たな超大国として君臨していた。さらに遺伝子組み換え作物の影響による多生児の増加により、保全生物学者のニコレット・ケイマンが提唱する理論に基づいた強制的な人口抑制が行われるようになっていた。それは2人目以降の子供が生まれた場合、児童分配局によって親から引き離され、枯渇した地球の資源が回復する日まで冷凍保存されるという一人っ子政策だった。そんな中、セットマン家で七つ子の姉妹が誕生した。月曜日から日曜日まで各曜日の名前を付けられた彼女たちは、それぞれが週1日だけ外出し、7人で1人の人格カレン・セットマンを演じることでケイマン率いる児童分配局を欺いてきた。しかし、2073年のある日、30歳になっていた彼女たち7姉妹の長女マンデーが外出したまま、夜になっても帰宅しないという事態が発生、これにより、7姉妹の日常が狂い始めていく。 (Wikipediaより)
近未来映画というジャンルがあるが、起こりそうもない近未来映画だろう。アイディアがおもしろい。破綻するきっかけは、男と女の愛だったなんて、ちょっとお笑い種だが、アクション映画のようなシーンがたくさんあり、ストーリー展開はなかなか読めない。
こういう話は活字向きだろう。入院中に本を2冊だけ読んだが、思いのほか期待外れだった。読んだ本の作者に依存するところがほとんどのはずだが、2冊とも同じことの繰り返しをくどくどと書いていて、こんな映画の場合堂々巡りで飽き飽きするとよく表現している類のものだ。映画は先へ先へと進んで行かないとおもしろいという訳にはいかない。今日は2020年2月7日。
『完全なるチェックメイト』(Pawn Sacrifice)
2014年・アメリカ 監督/エドワード・ズウィック
出演/トビー・マグワイア/ピーター・サースガード/リーヴ・シュレイバー/マイケル・スタールバーグ
500年に一人(映画中のセリフ)という天才少年がチェスの世界で奇想天外な行動と戦いをする映画だった。この話はどこかで聞いたか観たような気がする。もしかすると、同じ題材で別の映画があったのか、はたまたこの映画を既に観ていたのかは定かでない。情けないが。もう少し残りがある。
もう少し残っていると思って続きを観始まったら、まだ半分くらいしか進んでいなかった。狂気とも思える天才のやることを繰り返し繰り返し見せられても、事実ではあっても映画的にはイマイチに思えてきてかなり飽きが来ていた。ようやく本題のロシア人対アメリカ人の冷戦を彷彿とさせる戦いが始まって、観る気が戻って来た。
結局は主人公のアメリカ人が勝つことになるのだが、事実に基づく物語の欠点である大胆な切り口がなかなかできないという製作姿勢はそのままだった。映画は映画である。多少の嘘が際立ったとしても、それがおもしろければ許されるのではなかろうか。事実に基づく映画ではないのに「地獄の黙示録」はベトナムの真実を描いていないなどという身に覚えのない中傷をされたことを苦々しく思い出す。
『セルフレス/覚醒した記憶』(Self/less)
2015年・アメリカ 監督/ターセム・シン
出演/ライアン・レイノルズ/ナタリー・マルティネス/マシュー・グード/ヴィクター・ガーバー
これも入院前に観た映画。YAHOO!JAPAN映画より全文を引用する。
『デッドプール』などのライアン・レイノルズが主演を務め、『白雪姫と鏡の女王』などのターセム・シン監督がメガホンを取って放つSFアクション。余命半年と宣告された資産家が新たな肉体を得て復活したものの、思いがけないトラブルに巻き込まれる姿を活写する。復活前の主人公を、『ガンジー』などの名優ベン・キングズレーが好演。明晰な頭脳と高度な戦闘能力を持つハイブリッドの男が繰り広げる孤独な戦いに興奮。
ニューヨークの超セレブの建築家ダミアン(ベン・キングズレー)は、ある日余命半年を言い渡される。一人娘との関係もぎくしゃくしたままの彼は自らの運命を呪うが、天才科学者オルブライト(マシュー・グード)がダミアンにある提案をする。それは遺伝子操作で新たに創造した肉体に、68歳のダミアンの頭脳を転送するというものだったが……。
『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』(The Founder)
2017年・アメリカ 監督/ジョン・リー・ハンコック
出演/マイケル・キートン/ニック・オファーマン/ジョン・キャロル・リンチ/リンダ・カーデリーニ
この映画も入院前に観たが、あのマクドナルドの創業秘話で、なかなか興味深い内容だった。以下全文をWikipediaより抜粋引用した。
1954年、レイ・クロックは自分で開発したミルクシェイク用ミキサーを販売していたが、売り上げは今ひとつだった。そんな夫を献身的に支える妻エセルは、質素な生活に満足していたが、レイは現状に満足していなかった。そんな彼の元に、サンバーナーディーノのドライブインから、ミキサーの大量注文が来た。発注元がどんな店なのか気になったレイは、現地へと向かった。そこで彼が見たのは、食品と接客の質が極めて高く、それでいて家族層の懐にも優しいレストランであった。そこに商機を見出したレイは、経営者のマクドナルド兄弟(ディックとマック)に接近していった。
兄弟の案内で改めて店を視察したレイは、調理の効率の良さや従業員のモラルの高さに大いに感動した。兄弟が飲食店の経営に並々ならぬ情熱を注いでいることも知った。翌日、レイは兄弟に「レストランをフランチャイズ化してみないか」と提案した。以前、兄弟は独力でフランチャイズ化を試みたものの、サービスの質にムラが出たため、それを断念せざるを得なかった。そんな経験があったため、当初、兄弟はレイの提案に難色を示したが、レイの熱意に根負けして、もう一度フランチャイズ化に挑戦してみようという気になった。兄弟は「経営内容を変更する際には、必ず自分たちの許可を取ること」を条件に、レイにフランチャイズ展開を任せた。
『SPOOKS スプークス MI-5』(Spooks: The Greater Good)
2015年・イギリス 監督/バハラット・ナルルーリ
出演/キット・ハリントン/ピーター・ファース/タペンス・ミドルトン
入院前に観ているが、映画.comより下記を引用した。(2020年1月27日に記す)
英国諜報部MI-5の活躍を描いたBBC製テレビシリーズ「MI-5 英国機密諜報部」を原案に、キャスト&スタッフを一新して完全オリジナル作品として映画化。CIAが国際指名手配したテロリスト、カシムを護送中のMI-5テロ対策部門の諜報員たちが、武装グループに襲撃された。市民の巻き添えを懸念した責任者ハリーは容疑者を釈放するが、これが原因で解任されてしまう。MI-5からカシムの追跡を依頼された元諜報員ウィルは、局上層部に裏切り者がいると考えるハリーと合流し、カシム逃走にMI-5が関わっていることを突き止める。
やがて、ロンドン市内で爆破テロを企てるカシムがMI-5に奇襲を仕掛けてきて……。主人公ウィル役に、テレビシリーズ「ゲーム・オブ・スローンズ」のキット・ハリントン。共演にテレビ版オリジナルキャストのピーター・ファース、「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」のジェニファー・イーリー。ヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル梅田で開催の「未体験ゾーンの映画たち 2016」上映作品。
『アイ・フィール・プリティ! 人生最高のハプニング』(I Feel Pretty)
2018年・アメリカ 監督/アビー・コーン/マーク・シルヴァースタイン
出演/エイミー・シューマー/ミシェル・ウィリアムズ/ローリー・スコーヴェル/エミリー・ラタコウスキー
『ブリジット・ジョーンズの日記』(Bridget Jones's Diary・2001年)の登場人物と主役レネー・ゼルウィガーに似た役者が出てきた。ほんの一瞬見直してみたが、まだレネー・ゼルウィガーの方が痩せていたことが分かった。可愛さも彼女の方が上かな。
ちょっとした出来事の後で、自分の容姿や体形がまったく見えなくなり、鏡に映った自分の姿を見て美しい女性だと勘違いし始まった主人公、他の人から見れば何にも変わっていないのに不思議な彼女の行動だった。その勘違いが功を奏して、人生がいい方向に回転し始まった。不思議なものだ、分かっていないのはその本人だけのはずなのだが、妙に自信に満ちた人生を送っている人がいる。
その方が仕合わせに決まっている。死ぬまで勘違いし続ける人も多いに違いない。だからこそ人生、社会は平穏なのだろう。もしかして、自分が勘違いしていることを本気に悟ってしまった人は不幸にならざるを得ない。時々、東大卒の浮浪者などという稀なニュースを耳にするのも、そんなことが理由なのかもしれない。
『プリズナーズ』(Prisoners)
2013年・アメリカ 監督/ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演/ヒュー・ジャックマン/ジェイク・ギレンホール/ヴィオラ・デイヴィス/マリア・ベロ
プリズナーズ=囚人、かと思ってみていたらどうにも様子が違う。終わって調べてみれば、プリズナーズとは(囚われた者たち)という意味だそうな。それなら映画のストーリーが理解できる。かの如く、この映画にはもっとキリスト教的な暗喩に満ちた映画だという解説ページを見つけて、いろいろなことを教えてもらった。
神を信じる者、神を信じない者、異教徒の者、という人間構図が映画の背景にあるなんていうことを聞いて、映画の奥深さにあらためて感心する。なにしろ、何の情報もなく映画を観始めるのが絶対いいという派に属する私としては、あとからもっともらしい情報を得ることを由としていないのが本音なのだ。それでも、映画の持つメッセージ性を否定するわけではない。何かを学びたければ、そういう風に映画を観る人がいたって、それこそ映画の存在感が。
アメリカ人の異常なまでの家族愛が・・・・。この映画でも誘拐された?子供を探す父親の常軌を逸した行動がひとつのテーマであり、解説ページの曰くキリスト教的暗喩のひとつであった。それにしても謎解きが長過ぎる。結末がちょっと。「迷路」がひとつのキーワードにもなっている。なるほど、キリスト教的背景を知れば、この映画は飽きずに観られるのかもしれない。
『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』(Mary Queen of Scots)
2018年・アメリカ 監督/ジョージー・ルーク
出演/シアーシャ・ローナン/マーゴット・ロビー/ジャック・ロウデン/ジョー・アルウィン
全てはヘンリー8世(1491年6月28日 - 1547年1月28日)が発端。このイングランド王は、6度の結婚をしている。自分の離婚を正当化するためにローマ法王に逆らって離婚の認められないカトリック教を脱退し、イギリス国教会を創ってしまったというどうにもならない国王なのだ。映画「ブーリン家の姉妹」は、そんなことをもろに描いた映画として凄くおもしろかった。
アン・ブーリンはヘンリーと結婚し、その年にエリザベス王女をもうけた。この映画の片方の主人公である。最初の妻キャサリン・オブ・アラゴンは、以前にヘンリーの兄アーサーと結婚していたため、ヘンリーの意を受けたカンタベリー大司教トマス・クランマーによってヘンリーとの結婚は無効であるとされた。キャサリンは故王太子の未亡人の地位に落とされ、宮廷から追放された。エリザベス王女がヘンリーの世継ぎとされ、キャサリンの娘であるメアリー王女(この映画の主人公)は庶子の身分となり、王位継承順でエリザベスの次位に下げられ、エリザベスの侍女とされた。
映画としてはおもしろくない。同じ内容を描いた映画を観たことがある気がする。題名は分からない。有名人が配役されて、なかなか華々しい戦いが興味深かったような記憶が残っている。
『マックス・スティール』(Max Steel)
2016年・アメリカ 監督/スチュワート・ヘンドラー
出演/ベン・ウィンチェル/アンディ・ガルシア/マリア・ベロ/アナ・ビジャファーニェ
SFアクション映画と言うけれど、どうも幼稚な子供騙しの映画だった。1週間も観終わるのに時間が掛かったのは、そんな理由からだろうと他人事のように言ってしまう。アメリカの世界的玩具メーカーマテルが1997年に発売したアクション・フィギュアシリーズマックス・スティールの実写映画化だと聞いて納得。
父親が実はエイリアンだったなんて、ネタバレしたって何の影響もないような内容。よく分からないどころか、何が何だか分からないと言った方が正しいストーリーには頭が痛くなってくる。よく言う製作者のマスターベーションに終始する映画だと断言しよう。まぁ、そんなに目くじら立てて言い張るほどの映画でもないことは確か。
人間の将来を描いた映画は多いが、ほとんどが悲観的なストーリが多い。地球の未来も悲惨な状況しか描かれない。夢のような世界が見える時は、それは地球ではなく別の星だったりする。そこまで地球、人間の未来には夢がないのだろうか。自分の目で見えることはないけれど、心の目が継続的に観続けることが出来るような・・・。
『セットアップ』(Setup)
2012年・アメリカ 監督/マイク・ガンサー
出演/カーティス“50Cent”ジャクソン/ブルース・ウィリス/ライアン・フィリップ
本国アメリカでは劇場公開されずDVDスルーされたという。確かに三流映画だ。ブルース・ウィリスがこういう映画に出演するんだ、と驚く。ギャラが折り合えば、どんな映画に出演するわけでもないだろうが。彼の出演作品を見ていると、中身を吟味しないで手当たり次第という感が否めない。
三流映画には三流映画の良さがある。小さな辻褄の合わなさが気にならない。どんなアクションだろうとお金がかかっていない分、アナログ的でおもわず身を屈めてしまうほどだ。人間が人間を追いかけるシーンが最大のアクションシーンだとは驚くばかりだった。
ギャングやマフィアには掟がある。その様は普通の人々よりも情に溢れている。身内のことになると生半可ではない。それほどまでの情を他人にも施せば、マフィアたる所以がなくなる。逆に普通の人々の情の無さが気にかかる。一度でも知り合った人に対する敬愛の念の薄さが気になる。一生でそんなに会える人がいないということを分かっていないのだろう。
『ファースト・マン』(First Man)
2018年・アメリカ 監督/デイミアン・チャゼル
出演/ライアン・ゴズリング/クレア・フォイ/ジェイソン・クラーク/カイル・チャンドラー
1969年7月21日02:56(UTC)、アームストロングは次のように言った。これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である。(That's one small step for [a] man, one giant leap for mankind.) アポロ11号が人類史上初めて月面に着陸した。ニール・アームストロングの伝記『ファーストマン: ニール・アームストロングの人生』を原作としている。
丁度、今日、大相撲九州場所で第52代横綱北の富士が解説していた。50年前の北の富士(当時・大関)の話題を肴にアナウンサーと相撲談義をしている中で、名古屋場所の時にこのアポロ11号のことを覚えていると話していた。自分にとっては、大学4年の時のこの出来事をちーっとも覚えていない。もしかすると最後の長期旅行に行っていたのかもしれない。でも、記憶にないというのも不思議な話だ。
今から考えれば歴史のひとつの足跡にしか見えないが、当時の宇宙飛行士にとってはまさに命を懸けた冒険だったことが細やかに描かれていた。宇宙と言われても、自分とは遥かに遠いことだと体感していることが、自分の関心の薄さに繋がっているのだろう。身近に宇宙飛行士を実感できないし、とてもじゃないけど宇宙に行くことなんか、夢にすら見たことがない。それがどうだ、今や金さえあれば宇宙旅行が誰にでも可能な時代になって来た。金さえあれば・・・・か。
『レッドブル』((Red Heat))
1988年・アメリカ 監督/ウォルター・ヒル
出演/アーノルド・シュワルツェネッガー/ジェームズ・ベルーシ/ピーター・ボイル/エド・オロス
アメリカ映画として初めて、モスクワ市内および赤の広場でのロケを許可された作品である(ただし、アクション・シーンはブダペストやオーストリアで撮影されている)。(Wikipediaより)
シュワルツェネッガーはロシア市警、麻薬地元ギャング団を追ってアメリカ・シカゴへと乗り込む。たわいのないアクション警察ものだが、時代の背景を映すアメリカとロシアの様相は、歴史を生きてきた現代人にのみ認識されておもしろい。
時代がどんどん変わって行くのを感じる。一体世界はどっちの方向に向かっているのだろうか。アメリカばかりではない、南米の独裁国家にさえ影が差している。優等生のはずだったヨーロッパ各国にも右派の台頭が甚だしい。映画が描く近未来のように結局は人間同士の馬鹿な争いが地球を破滅に導くのかもしれない。
『ザ・シークレット・サービス』(In the Line of Fire)
1993年・アメリカ 監督/ウォルフガング・ペーターゼン
出演/クリント・イーストウッド/ジョン・マルコヴィッチ/レネ・ルッソ/ディラン・マクダーモット
かつてアメリカ合衆国大統領を守ることができなかった老練なシークレットサービス・エージェントと、大統領暗殺を目論む殺し屋との対決を描くサスペンス・アクション・スリラー。主人公は長年シークレットサービスを務めるベテラン警護官であり、ダラスでのケネディ大統領暗殺事件の際にも現場に配属されていたが、大統領を守ることが出来ず後悔に苛まれ酒に溺れるようになり、妻子も彼の元を去ってしまう。
クリント・イーストウッドはこの時63歳、年老いたシークレット・サービスとはという疑問を実践していて、笑える。大器晩成のようにずーっと活躍しているクリント・イーストウッドには頭が下がる。彼が亡くなった時にはハリウッドばかりではなくアメリカ国中から哀悼の意が表されるだろう。まだ、そんな兆候がある訳ではないが。
ジョン・F・ケネディーの暗殺の何が隠されていて何が公になるというのだろうか。そこまで生きていられないのは残念でたまらないが、人間社会は秘密を後生大事に守っている。秘密なんてその人本人にしか重要ではないはずだが、他人に知られることを異常に拒んでいるのが滑稽だ。俺は実は天才なんだよ、なんていう秘密を誰も信じないのと同じこと。その程度のことが秘密なんだよ、きっと。
『仮面の男』(The Man in the Iron Mask)
1998年・アメリカ 監督/ランダル・ウォレス
出演/レオナルド・ディカプリオ/ジョン・マルコヴィッチ/ジェレミー・アイアンズ/ジェラール・ドパルデュー
アレクサンドル・デュマの『ダルタニャン物語』をベースに、ルイ14世と鉄仮面伝説、老いた三銃士の復活と活躍、王妃とダルタニアンの秘めた恋を描いた歴史娯楽活劇。暴君ルイ14世には双子の弟がいた、というのが物語のキモ。その弟に鉄仮面を被せて地下牢に幽閉しているというのが物語の展開。そこに三銃士が絡むというストーリー。
将棋の駒のような角ばった顔していてちっともイケメンではないと規定している私の物差しも、このころの若いディカプリオを見ると、もしかするとイケメンと呼ばれても間違いではないかもしれないと思えてくる。ルイ14世とその双子の父親にはあっと驚く秘密があった。そんなところがおもしろさを。
それにしても栄華を極めたフランス王朝も、民衆の手で終焉を迎えることになろうとはその当時の人でさえ想像に絶したに違いない。民衆の力がそれだけ強いということをDNAのように受け継ぐフランス人には、一方では個人主義の最たるものとして鬱陶しがられている。もっとも、ことスポーツのフランス代表は既に黒人主流になっており、100年後にはフランス人の大半が黒人になっているのではないかと訝る。
『ジャッジ・ドレッド』(Dredd)
2012年・イギリス/南アフリカ共和国/アメリカ/インド 監督/ピート・トラヴィス
出演/カール・アーバン/オリヴィア・サールビー/レナ・ヘディ/ウッド・ハリス
西暦2139年。核戦争後の人類に残された「メガシティ・ワン」は、秩序が乱れた犯罪都市と化していた。そこで政府は街の秩序を立て直すために究極の法システムを導入する。それは「ジャッジ」といわれるエリート集団である。彼らは逮捕した犯罪者をその場で裁判、判決、刑執行を行える権限を持っていた。その集団の頂点に立つ男が、人々から恐れられている「ジャッジ・ドレッド」であった。ある日、ドレッドは身に覚えのない殺人罪で逮捕されるが、それはその後に明かされる陰謀の序章に過ぎなかった。イギリスの同名コミックの映画化作品。(Wikipediaより)
これから100年後の世界の風景はどうなっているのだろうか。長生きなんてまったく望まないけれど、この目で100年後を見てみたいという欲求は日に日に高まるばかりだ。それがとてつもない妄想だということは理解できても、もしかするとこの脳裏が映像を映し出すことがあるのではなかろうかと。
どう考えたって、悲惨な地球の未来があるようだ。現実的に起こる不定期的な世界各地での暴動が、100年後の毎日の暮らしになるのだろうか。いやそんなことはない、このまま健全に地球が発展していくだろうという楽観論者はもう何所にもいないだろうことを思い知らされるだけだ。
『ミルカ』(Bhaag Milkha Bhaag)
2013年・インド 監督/ラケーシュ・オームプラカーシュ・メーラ
出演/ファルハーン・アクタル/ソーナム・カプール/ディヴィヤ・ダッタ/メーシャ・シャフィ
久しぶりのインド映画。インド映画は概して面白いはずだが。1960年ローマオリンピックの陸上インド代表選手ミルカ・シンの半生を描いており、インド国内では「スーパーヒット」と判定されるなど興行的な成功を収め、海外でも高い興行収入を記録したという。映画はミルカ・シンと彼の娘ソニア・サンワルカの自伝『The Race of My Life』を原作としている。
インド映画はかなりおもしろいはずだったが、最後までおもしろさは感じなかった。ドキュメンタリーという分野での限界かもしれない。映画製作はドキュメンタリーを越えなければ、おもしろくなるはずがない。そんな事実はなかったよとクレームが出るくらいがちょうどよいのだろうと思う。インドとパキスタンの政争が、一人の世界的なランナーに大きな影を落としている。
事実は小説より奇なりと昔から言われるのも同じようなこと。世の中には奇特な人が結構いる。そこが人生のおもしろいところで、平々凡々と人生を終わってしまう自分の人生を振り返ったって誰にもその面白かった人生を伝えることもない。ただ生まれて、ただ死んでいく多くの人生の中に埋没している。それでいいのだ。
『アンキャニー 不気味の谷』(Uncanny Valley)
2019年・アメリカ 監督/マシュー・ルートワイラー
出演/マーク・ウェバー/ルーシー・グリフィス/デヴィッド・クレイトン・ロジャーズ
不気味の谷現象(ぶきみのたにげんしょう)とは、美学・芸術・心理学・生態学・ロボット工学その他多くの分野で主張される、美と心と創作に関わる心理現象である。外見的写実に主眼を置いて描写された人間の像(立体像、平面像、電影の像などで、動作も対象とする)を、実際の人間(ヒト)が目にするときに、写実の精度が高まっていく先のかなり高度なある一点において、好感とは正反対の違和感・恐怖感・嫌悪感・薄気味悪さ (uncanny) といった負の要素が観察者の感情に強く唐突に現れるというもので、共感度の理論上の放物線が断崖のように急降下する一点を谷に喩えて不気味の谷 (uncanny valley) という。不気味の谷理論とも。元は、ロボットの人間に似せた造形に対する人間の感情的反応に関して提唱された(原典を読めば誰でもわかるが(#詳細の節を参照)、方程式などで示されるような一般に「理論」と呼ばれるようなものにはあたらない)。
ロボット工学者の森政弘が1970年に提唱した。森は、人間のロボットに対する感情的反応について、ロボットがその外観や動作において、より人間らしく作られるようになるにつれ、より好感的、共感的になっていくが、ある時点で突然強い嫌悪感に変わると予想した。人間の外観や動作と見分けがつかなくなるとふたたびより強い好感に転じ、人間と同じような親近感を覚えるようになると考えた。外見と動作が「人間にきわめて近い」ロボットと「人間とまったく同じ」ロボットは、見る者の感情的反応に差がでるだろうと予想できる。この二つの感情的反応の差をグラフ化した際に現れる強い嫌悪感を表す谷を「不気味の谷」と呼ぶ。人間とロボットが生産的に共同作業を行うためには、人間がロボットに対して親近感を持ちうることが不可欠だが、「人間に近い」ロボットは、人間にとってひどく「奇妙」に感じられ、親近感を持てないことから名付けられた。 (Wikipediaより)
読んでもよく分からない。人間がAI人間を創り出す。そこに専門知識のある美人記者がインタビューに来る、という話。セックスまでしてしまった相手は、実はAI人間で、AI人間だと思っていた人が本物の人間だったなんて、しかもエンド・クレジット後のシーンで彼女はトイレで妊娠検査薬を覗き込んでいた。ミステリーな話がホントになるときが来るんだろう。
『ファイヤーフォックス』(Firefox)
1982年・アメリカ 監督/クリント・イーストウッド
出演/クリント・イーストウッド/フレディ・ジョーンズ/デイヴィッド・ハフマン/ウォーレン・クラーク
今年の5月で89歳になっているクリント・イーストウッド、まだ映画監督として映画を製作し続けている。恐れ入り谷の鬼子母神。30年前、59歳の時の監督・主演作品。これは彼の監督作品ではないだろうと予想しながら観ていた。近年の彼の映画作品のようなスピーディーな展開ではなかったのでそう思ったのだが、おそらく時代という大きな壁が映画ストーリーや映像に大きな作用があったのかもしれない。
Mozilla Firefox(モジラ ファイアフォックス)というインターンエット・ウェブブラウザがある。一時はこのブラウザをメインにしていたが、今やGoogleChrome(グーグル・クローム)の圧力に負けて、併用という感じで使っている。GoogleChromeの音声検索は凄く便利だ。映画の題名なんて簡単に表示してくれる。変換ではなくビッグデータからの候補選びの技術が相当進化した。
映画はおもしろいような、おもしろくないような。最新戦闘機をソビエトから盗むというような奇想天外なストーリーだが、ジェット戦闘機のシーンなんかは、なかなかどうして迫力のあるシーンで観ていて飽きがくることはなかった。ただ、その前のちんたらストーリーとアクション時に眠ってしまったのは言い訳もできない。
『メビウス』(Mobius)
2013年・フランス/ベルギー/ルクセンブルク 監督/エリック・ロシャン
出演/ジャン・デュジャルダン/セシル・ドゥ・フランス/ティム・ロス
メビウスの帯(Mobius strip, Mobius band)、またはメビウスの輪(Mobius loop)は、帯状の長方形の片方の端を180°ひねり、他方の端に貼り合わせた形状の図形(曲面)である。メービウスの帯ともいう。数学的には向き付け不可能性という特徴を持ち、その形状が化学や工学などに応用されているほか、芸術や文学において題材として取り上げられることもある。(Wikipediaより)
ロシアとアメリカの諜報合戦のど真ん中で暗躍する男と女、本人の職業意識をも飲み込む男女の愛情、愛欲がその人生を壊してしまう。なかなか見ごたえがあるスパイもの、アメリカ映画のような乾いた描き方ではないストーリーや映像に新鮮味を覚える。寝ころびながらタブレットでアマゾン・プライムを堪能した。二重スパイ、三重スパイの行き着くところがメビウスの帯だというのだろう。
目の前に本物のスパイがいたら楽しいだろうな。私はスパイだよ、なんて真実を言う人はいる訳ないから、そんなことになる確率はほとんどゼロパーセントだろう。日本人はのほほんとしているから、ほとんどの人はまさかスパイが日本にいるなんて信じていない人が多いだろう。けど、ちょっと調べてみると、日本はスパイ天国だという情報にぶつかる。いつか誰かのスパイ活動に協力したいなぁ。
『ベルファスト71』('71)
2014年・イギリス 監督/ヤン・ドマンジュ
出演/ジャック・オコンネル/ポール・アンダーソン/リチャード・ドーマー
北アイルランドを背景にしたストーリー。歴史的にも政治的にもこの北アイルランドに関しては疎過ぎてなんのコメントも出ない。プロテスタントとカトリックが政治的にも対立している。ある意味中世から続く人間の営みの戦いのようにも見える。軽々しく口に出来ない。年寄りから子供までが、毎日その戦争に翻弄されている姿が哀しい。
英国人新兵が戦闘の中で取り残された敵地から脱出するまでのサスペンスフルな逃走劇がメインストーリー。新兵は、この地に派遣されるときに、ここはイギリス領だと強く上司が厳命する。そのあたりがこの戦争のキモなのだろうか。土地柄も暗くこんな社会に生まれてきてしまった人間は自分の不幸をどう嘆いたらいいのだろうか。
「新兵さんはかわそうだねー、また寝て泣くのかよー!」、日本軍の就寝ラッパはそんな風に聞こえるのだよ、と大昔父親に聞いた記憶がある。もう少し軍隊時代の自慢を聞いてあげればよかったと、ずっと公開しているが我が娘たちはそれなりに聞かされていたらしいことを、本人から聞いたことがあった。オヤジもなかなかやるもんだ。ちなみに、起床ラッパは、「起きろよ起きろよみんな起きろ、起きないと曹長さんに怒られるー!」だったような。
『ディール・ブレイク』(Brave Men's Blood)
2014年・アイスランド 監督/オーラフ・デ・フルール
出演/ダリ・インゴルフソン/オーグスタ・エヴァ・アーレンドスドーティル
伝説的な名警察官を父に持つハンネスはアイスランド警察の特殊部隊「武装警察」に志願するが、試験代わりの訓練に落ち、内務調査室に配属されることになる。ある日、かつてはギャングのボスだったが今は落ちぶれて麻薬の密売人となっていたグンナーが、自分を破滅させたセルビア人ギャングのボスであるセルゲイを銃で襲撃しようとして失敗し、逮捕される事件が起きる。警察でグンナーは尋問相手としてハンネスを指名し、ハンネス以外には何も話さないと言い出す。呼び出されたハンネスは、グンナーから麻薬課のトップでハンネスの父親の古くからの友人であるマルゲールがかつてはグンナーと結託していたが今はセルゲイと癒着していると密告する。(Wikipediaより)
珍しいアイスランドもの。ところ変われば品替わる、と言われる人間社会、警察ものでは圧倒的にアメリカ映画が優位に映画界を席巻しているが、切れの悪さと誰が誰だか区別がつかないこの映画は、残念ながら二流といわれても仕方がない。それでも悪と立ち向かう青年の心情が手に取るようにわかり、映画に没入できる時間もある。
街を牛耳るボスの座に返り咲き、警察とギャングの癒着は続けられることになる。という結末は現実社会の生き写しのように見える。つい最近の日本社会に明るみになった原発マネーの例なんぞは、今に始まったことでもなく、自分の小さい頃からも同じようなスキャンダルが飽きもせずに社会に蔓延している。これをもって日本の後進性を嘆くわけではないが、欧米社会だって、ましてや独裁国家と言われる国々では当たり前のように汚い金まみれのに権力の座と経済までをも支配している。スウェーデン人の環境保護活動家のグレタ・トゥーンベリさん(16)の言葉は重い。彼女の言葉を世界中が賛美し、追随するするムーブメントが、新しい地球を生むきっかけになるといいのだが。
『羊の木』(The Scythian Lamb)
2018年・日本 監督/吉田大八
出演/錦戸亮/木村文乃/北村一輝/優香/市川実日子/水澤紳/田中泯/松田龍平
山上たつひこ原作、いがらしみきお作画の漫画作品が原作らしい。漫画作品には見えないシリアスな内容だった。話はユニークで興味深い。元受刑者を地方都市に移住させるという国の極秘更生プロジェクトで、過去に凶悪犯罪を犯した11人を受け入れることになった魚深市。元受刑者の情報は市民には一切知らされず、魚深市の中で計画を知るのは市長と課長と主人公の市役所職員の3人のみだった。映画では受け入れる元受刑者は6人。6人ともが元殺人犯だったことを知り、愕然とするのだったが、淡々と話が進んで行き、結末はどうなるのだろうかと久しぶりに心が騒めいた。
監督は吉田大八、これまでの過去作「美しい星」「パーマネント野ばら」同様、原作からの引用はコンセプトや基本設定にとどまり、吉田監督が考案した、ほぼオリジナルに近い脚本・ストーリーが展開されているという。力のある監督だという印象が強い。「霧島、部活やめるってよ」がこの監督だった。
元受刑者をどう社会は受け入れるのか。外国人をどうやってこれから移民として受け入れていくのだろうか、とちょっと違うが、それでもどこか似たような状況に追い込まれるはずの日本社会の一端を見せてくれる。ダイバーシティーと言いながら、自分の周りの環境には超保守的にしか振りまえない日本人の生活には、小さい頃からの人間教育問題が大きな課題として立ちはだかっているように思える。おもしろかった。
『聖の青春』(さとしのせいしゅん)
2016年(平成28年)・日本 監督/森義隆
出演/松山ケンイチ/東出昌大/リリー・フランキー/竹下景子/染谷将太/安田顕/柄本時生/北見敏之/筒井道隆
奨励会員時代から「終盤は村山に聞け」とまで言われたほどであった。その代表的なエピソードとして、村山を含む棋士達が、A級順位戦の対局を関西将棋会館の控え室で検討していた際、関西の大御所で詰将棋作家でもある内藤國雄が入室してきて「駒(持駒)はぎょうさんある。詰んどるやろ」と言った。そこでほとんどの棋士達が一斉に詰み手順を検討し始めたところ、「村山くんが詰まんと言っています」という声が上がった。後に内藤は「詰みを発見しようという雰囲気の中で『詰まない』と発言するというのは相当な実力と自信」と賞賛している。(Wikipediaより)
「東の羽生、西の村山」と称されていたという。将棋界にも多少なりとも興味をもって生きてきたはずだが、この程度のことを知らなかったというのは、どれだけ浅く物事の表面だけをさらっていたのだろうかと、自分自身の生き方にさえ疑問が持たれる。
将棋ばかりか囲碁世界だって、タイトルを保持するような人物はおそらくどこか奇人変人の類に違いない。そのあたりをうまく演じているのには感心させられる。もしも生きていたら、羽生棋士との争いはどうだったのだろうかと想像を書き立てられる。将棋界も時々その団体の運営でトラブルが起こっているが、将棋を心底よく知る第三者の手に委ねた方が団体運営には健全だろうと提言する素人のひとりだ。
『不良探偵ジャック・アイリッシュ 3度目の絶体絶命』(Jack Irish: Dead Point)
2014年・オーストラリア 監督/ジェフリー・ウォーカー
出演/ガイ・ピアース/マルタ・デュッセルドープ/アーロン・ペターゼン/ロイ・ビリング
昨日書いておいた『リターン・トゥー・マイ・ラヴ』(LONESOME JIM・2015年)は早々とやめてしまった。ラグビーに気持ちが向いているときなので、軽い題名を選んで観ようと思っているが、頭から7流作品の匂いがしたので、いつも通りの結果となってしまった。この映画は探偵ものらしいから大丈夫だろう。
オーストラリアのテレビ映画で3作目になるという。web上の評価を観ていると、おおむね好評なのであらためて現在の映画の評価ゾーンを意識することが出来た。大したことのない映画を観続けている若者層は可愛そうだ。100本に1本くらいしかこれぞ映画という作品には回り逢えないけれど、それにしても屁でもない映画が横行するこの頃には悲嘆にくれる。
全然強くない探偵と称する主人公、推理も検証もありきたりだし、どこが主人公の役なんだろうと訝る。信用も信頼もおけないけれど、仕方がなくて近くの人間に自分の意思をたくことがあるだろう。それこそ不幸だが、半分くらいは物事が成功するから、それ満足する人生が大半なのではなかろうか。
『グッド・オーメンズ (4K UHD)エピソード6』(Good Omens)
2019年配信・アメリカ/イギリス 監督/ダグラス・マッキノン
出演/マイケル・シーン/デヴィッド・テナント/アドリア・アルホナ/
だいぶ前からアマゾン・プライム4K映像なるものを観始まっている。こういうことのために新しいテレビにしたのだが、思いのほか美しくはなく、ちょっとがっかりしているところ。約1時間ものが6本、通常の映画を観るよりはるかにエネルギーがいる。今回は天使と悪魔とアルマゲドンの話、興味深いが・・・。
ようやくエピソード5の頭までやって来た。同じことの繰り返しでちょっとうんざりという気味だが、天使と悪魔が地球を崩壊させないために結託している姿が微笑ましい。変わり身の早い人は天使のようであり、悪魔のようであり、そんな人が身近にいる人は毎日心が休まらないに違いない。病気の100%がストレスが原因という噂は、おそらく本当のことなのだろう。
悪魔軍団から送り込まれた赤ん坊がいよいよ悪魔であることを自覚し始めた。いつも一緒に遊んでいる同じ年頃の子供たちを説得している。地球は破滅し、自分たちだけが生き残るそうだ。結末までにはもう少し。地球が終わるまで見届けることは叶わないけれど、同じことの繰り返しの人生の中に紆余曲折のある日本人の生活は、結構イケているのではなかろうかと改めて感じ入る。
『情婦』(Witness for the Prosecution)
1958年・アメリカ 監督/ビリー・ワイルダー
出演/タイロン・パワー/チャールズ・ロートン/マレーネ・ディートリヒ/エルザ・ランチェスター
きわめておもしろい映画だとだけ記憶している。観始まるとどこがおもしろかったのかを思い出すだろうと高をくくっていたが、どこがおもしろいのかのポイントを認識できないままに観進む。でもやっぱりおもしろかった。日本のテレビドラマを見る機会がほとんどないが、爪のあかを・・・と。
この映画の最後にクレジットがある。「この映画を観た方は、この映画の結末を他人に絶対喋らないでください。」と。現役時代にこの手の文言を宣伝文句で使うことは多かったが、もしかするとこの映画が初めて使った宣伝だったのかもしれない。
ということで、映画の内容には一切触れない。それはこの映画に限ったことではない。映画の内容が知りたければ、今やWeb上には雨後の筍のように情報が氾濫しているので、そちらをググれば済むこと。私の役目は、人生の遺言のように今迄生きてきた事象と照らし合わせて、おもしろおかしく過去を振り返っているに過ぎない。騙し騙され、人間は何処まで自分や他人に不誠実になれるのだろうか。一生に一度しかない人生なのに、末代まで禍根を残すような悪事を働き、神から見放された子孫の不幸を招かないようにしなければならない。
『ブレードランナー 2049』(Blade Runner 2049)
2017年・アメリカ 監督/ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演/ライアン・ゴズリング/ハリソン・フォード/アナ・デ・アルマス/シルヴィア・フークス
おもしろくなかった。観終わってからストーリーを読んで少し腑に落ちたが、なんの予備知識もなく観るには耐えがたい映画だ。前作を観ているが、これっポッチも覚えていないのが辛い。1982年制作の映画『ブレードランナー』の続編であり、前作の主演ハリソン・フォードが引き続きリック・デッカード役で出演し、前作の監督リドリー・スコットは製作総指揮を務めた。第90回アカデミー賞では5部門にノミネートされ、2部門を受賞したという。
地球の未来というか世界の将来を描いた映画は昔から数多く存在する。そのほとんどが、核戦争の勃発により地上に住むことが出来なくなった人間たちが、地中深く生きながらえるというものだった。ところがどうだ、最近の未来ものには、地球ではない星に移り住むというストーリーが横行している。夢は広がるが、あまりにもなんでもありの世界が展開されて、あり得ない人間社会が映し出されている。
いずれにしても、地球が無くなるときは来るのだろうけれど、そんな時が来ることを今生きている人々は誰も実感しない。その時になって今と同じような人間の姿をした動物が地球上にいたとしたら、どんな気持ちでその時を迎えるのだろうか。てなことを考える。ばかばかしいけどそんなことを考えることが好きだ。
『助太刀屋助六』
2002年(平成14年)・日本 監督/岡本喜八
出演/真田広之/鈴木京香/村田雄浩/鶴見辰吾/風間トオル/岸部一徳/岸田今日子/小林桂樹/仲代達矢/竹中直人
なんともはやおもしろくない映画だった。名将岡本喜八監督でこの配役なら絶対面白いだろうと期待できる映画のはずだが、なかなか映画は難しい。ここまでおもしろくない映画にになるとは誰も考えなかったろう。話がおもしろくない。落語のネタ落ちのようななんとも言いようのない倦怠感が。
仲代達也が出てくると映画が急に堅くなる。竹中直人が出てくると映画が急にお茶らけてくる。真田広之が出てきたって何にも起こらない。それが問題だろう。役者は人を驚かせてなんぼ、知人の真田広之マネージャーは苦労しているだろう。もう3段階くらい上に上がらなければ、左うちわでマネージャー稼業を続けていくことは困難なのではなかろうか。
ただ、役者は死ぬまで職業を続けられるのがいい。デビューが遅くたって、一度テレビ画面に出てしまえば、あとは何とかなってしまうのが日本の芸能界だから。デビューするまではどんな職業を経験したっていい。いろいろな仕事を経験すればするほど、役者という職業に寄与しないことは何一つない。問題なのは、売れる前まで、どうやって毎日のおまんまを食っていくことかだ。この人手不足の世の中、役者の卵には最高の生活条件が整っている。あとは成り上がろうとするする闘争心だけだろう。頑張れ!長谷川君!
『マネー・ピット』(The Money Pit)
1986年・アメリカ 監督/リチャード・ベンジャミン
出演/トム・ハンクス/シェリー・ロング/アレクサンドル・ゴドゥノフ/モーリン・ステイプルトン
スティーヴン・スピルバーグの名前がはじめのクレジットに見えたので、ちょっと期待してしまった。ということは反語的におもしろくなかったということだ。うとうとと寝てしまうのはおもしろくない時の症状、きちんと目を見開いて映画を観るという行為が困難になってきた。
ぜいたくな悩みだ。一生に数えられるほどの映画しか観ない人だって結構いるに違いないのだから。毎日1本観ようと思っていた決意は、もう予定は未定にして決定にあらずという状態になってしまった。せっかくテレビの環境を思い切って良くしたつもりだったが、なかなか上手くいかないものだ。
同じドタバタでも時代が変わるとその質が変わるのだろうか。だいぶ前にアメリカで大ヒットしたコメディ映画がちっとも刺さらなかったことがあった。そのときには日本とアメリカでは笑いも違うんだ、と思ったものだけれど、考えてみたら、自分の笑いのツボは通常ではないなぁと最近とみに感じるようになってきている。
『ヒンデンブルグ』(The Hindenburg)
1975年・アメリカ 監督/ロバート・ワイズ
出演/ジョージ・C・スコット/アン・バンクロフト/ウィリアム・アザートン/ロイ・シネス
マイケル・M・ムーニーの同名小説の映画化作品で、ヒンデンブルク号爆発事故を軸に、当時流行していたパニック映画の常道であるグランドホテル方式で人間模様も描いた作品である。現実の事故における原因には諸説あるが、本作では人為爆破説が採られている。カラー作品であるが、クライマックスでヒンデンブルグ号が爆発すると同時に画面がモノクロに切り替わり、実際の記録映像が編集で挿入され、当時のラジオ局のアナウンサー、ハーブ・モリスンのアナウンスも流される演出となっている。
1937年、飛行船ヒンデンブルグ号の爆破を警戒するため、ドイツ空軍のリッター大佐が乗り込んだ。飛行船には伯爵夫人のウルスラを初め、さまざまな乗客が乗り込んでおり、その中にはゲシュタポから送り込まれたフォーゲルもいて、独自に捜査を行っていた。やがて、乗員のベルトがドイツ人ながら反ナチスを喧伝するため、時限爆弾を仕掛けたことが判明する。爆弾は飛行船着陸後、乗員・乗客が降りてから爆発させる予定だったが、飛行船は天候不良のため着陸が大幅に遅れ、ついに悲劇の時を迎えてしまう。(Wikipediaより)
ヒンデンブルク号爆発事故は、1937年5月6日にアメリカ合衆国ニュージャージー州マンチェスター・タウンシップにあるレイクハースト海軍飛行場で発生した、ドイツの硬式飛行船・LZ129 ヒンデンブルク号の爆発・炎上事故を指す。この事故で、乗員・乗客35人と地上の作業員1名、合わせて36名が死亡、多くの乗客が重症を負った。映画、写真、ラジオなどの各メディアで広く報道されたことで、大型硬式飛行船の安全性に疑問が持たれ、飛行船時代に幕が降ろされるきっかけとなった。
『コードネーム:ストラットン』(Stratton)
2017年・イギリス 監督/サイモン・ウェスト
出演/ドミニク・クーパー/オースティン・ストウェル/トーマス・クレッチマン/ジェンマ・チャン
題名からして面白そうに見える。最近はこういう風な諜報ものやアクションものを好んで観るようになった。映画界現役から退いた時には、いい映画にかなり拘っていたが、そろそろ見飽きてきたなぁという時間と共に、痛快でスカッとするストーリーや映像に惹かれ始まった。諜報ものでは、裏切りやどんでん返しが必須でちょっとついていけないところも。
こういったストーリーで多いのが内部通報者の存在、この映画も例外ではなく秘密捜査官が毎回待ち伏せを受けるところから犯人を割り出している。実社会でも小さな会社ながら、陰でこそこそと動くやつがいた。本人はたいした策略士だと勘違いしていたのだろうが、他人から見れば笑止千万な姑息な奴としか認識されていなかった。
人間が死ぬまでにはそれなりの物語があるだろう。それは本人にしか語れない唯一無二の物語、どんな小さなことでも本人にとっては心に刻まれることがある。それが唯一の生きがいだったりすることだってある。いずれにしろ、大した足跡を残すことなく現世からおさらばしなければならない庶民にとって、毎日のひと時が貴重な人生の時間であることは間違いない。
『マッド・ダディ』(Mom and Dad)
2017年・アメリカ 監督/ブライアン・テイラー
出演/ニコラス・ケイジ/セルマ・ブレア/アナ・ウィンターズ/ザカリー・アーサー
邦題は父親だけが「マッド」と言っているが、原題にあるようにママもパパもマッドな奇想天外な映画だった。もう手は無くなったとばかりに、父親と母親が娘や息子を殺しにかかるという、どうしたらこんなストーリーが考えられるのだろうかと思えるものだった。まだ臍の緒の付いている取り上げられたばかりの子供を殺そうとするシーンさえある。
何が原因でこういう超常現象事件が勃発しているのかの説明は一切ない。あるのは主人公の家族の両親が長女と長男を殺そうと奔走するコメディ・タッチだけ。本気でホラー映画だと解説している訳ではないと思われるが、日頃のうっ憤を晴らすような親の振る舞いに拍手を贈る人種もいるかもしれない。
どうしてこうも近くの人を疎んじてしまうのだろうか。身近な人ほどもっと親身になって気を遣わなければいけないのに。他人だからこその礼儀だと思っている節がある。いあやそれは違う。いつも自分の家族のことを自慢しているのだから、そういう他人に見せる姿を自分の身内にも本気になって見せなければいけない。どうせ100年も一緒にいるわけではないのだから。
『はじめてのおもてなし』(Willkommen bei den Hartmanns)
2016年・ドイツ 監督/ジーモン・ファーフーフェン
出演/センタ・バーガー/ハイナー・ローターバッハ/フロリアン・ダーヴィト・フィッツ
カトリーヌ・ドヌーヴが出ている『ルージュの手紙』(Sage femme/The Midwife)を早々とやめてしまった。まただ。映画だけを観ることに集中できない環境が、こうやって中途半端な映画鑑賞活動となっている。パソコンの修理と新規自作機もそろそろひと段落しそうだ。適当に録画していたやりかたも終わりそうだから、おそらくひとつの作品に集中できるようになるだろう。
テレビ番組の題名のようなこの邦題、原題をGoogle翻訳機にかけたら「ハートマンズへようこそ」と出てきた。ドイツのどこかにある町の名前なのだろう。ニュースでしか知りようがないが「難民」がたくさん入り込んでいるドイツならではの社会情勢が興味深い。難民を初めて預かった主人公の家族の物語だった。
家族を全員失ってナイジェリアからやって来た難民青年が主人公。どれだけ真面目に生活したって何か悪いことを企てているのではないかと疑われてしまう。お隣のアパートには黒人大嫌いのおばぁちゃんも住んでいる。真面目で几帳面な国民と教えられているわれわれ世代のドイツに対する認識、そんなところがちょっと発見できるとついつい嬉しくなってしまう。アメリカ映画のようにハッピーエンド映画になっているところが救われる。難民問題には知らんぷりしている日本国という島国根性が、これから50年後にどうなっているのだろうかと訝る。
『スーパーマン リターンズ』(Superman Returns)
2006年・アメリカ 監督/ブライアン・シンガー
出演/ブランドン・ラウス/ケイト・ボスワース/ケヴィン・スペイシー/ジェームズ・マースデン
昨日観始まって書いた『アウトロー 咆哮』(Outlawed)を早々とやめてしまった。なんということ。この頃は同じような状況が何度もある。そこで観始まったのがこの映画。観ているはずだけれど、なんという新鮮さ。ヒーローものを子供騙しと馬鹿にしている自分が、子供の時からスーパーマンにだけはまっているのは不思議な感覚だ。
6月の20日頃から7月いっぱい間違って入会していたWOWOW、目一杯2つのハードディスクに録画したやつの備蓄が途絶えそうになってきた。この後は、またアマゾン・プライムをメインにし、数少なくなってしまったテレビでの映画放映録画をやって行くしかない。2年に1回くらいはWOWOWに入って、その時々の時代を映す映画を蓄積することにしよう。
『スーパーマン』(1978年)及び『スーパーマンII/冒険篇』(1980年)の続編となる内容であり、『スーパーマンIII』(1983年)及び『スーパーマンIV』(1987年)での出来事は反映されていないというあたりは複雑な関係だ。なんといってもスーパーマン、テレビ放送を毎週観ていた子供時代が懐かしい。スーパーマンの声だった大平透(おおひら とおる、1929年〈昭和4年〉~2016年(平成28年))がもっと懐かしい。
『関ヶ原』(せきがはら)
2017年(平成29年)・日本 監督/原田眞人
出演/岡田准一/有村架純/平岳大/東出昌大/滝藤賢一/中越典子/壇蜜/西岡徳馬/松山ケンイチ/役所広司
結局最後まで観たけれど、おもしろいはずの物語がよく分からず、面白みも半減といったところか。この映画を観る前に、2時間の講座を設けてもらいたい。そこで勉強してからこの映画を観れば、おそらく映画のおもしろさとともに、歴史ストーリーの醍醐味にも触れることになること請け合いだ。映画単体で完結しなければならないことだが、残念ながらこの映画は相当の歴史知識を持った人でなければ、その面白さを享受することは出来ない。
公開時期から楽しみにしていた作品だった。もう2年、まだ2年が経過した。いきなりのおもしろくない映像にかなりがっかりする。これは本当に司馬遼太郎の原作を基にしているのだろうか。いや違うだろう。力仕事が試される題材だけに、監督の力の無さが冒頭から如実に現れてしまっているのではなかろうか。司馬遼太郎のシーン・シーンでおもしろくないと思えるところは1か所もないはずだと確信していた。
セリフが聞き取りにくいかったのも一因かもしれない。天下取りでは最も有名な合戦を描けるなんて監督冥利に付ける。それが此の体たらくでは、頭を抱えてしまう。まだ途中の状態だが、最後まで観続ける自信が今のところない。石田三成と徳川家康にスポットを当てているが、誰に当てようと同じだろう。監督の力なくしては、せっかく集めたテレビ俳優が全員死んでしまう。
時間が短くて描き切れないという人もいるかもしれない。2時間前後でも語りを有効に入れて、歴史を紹介することを登場人物に語らせなければ、歴史事件のおもしろさが直接伝わってくるはずだ。そういうちょっとした工夫が必要な歴史上の大きな舞台。衣装や合戦シーンにお金をかけたって、映画の本当のおもしろさを観客に伝えられない。残念。
『蒼い衝動』(Les Exploits d'un jeune Don Juan)
1987年・フランス 監督/ジャンフランコ・ミンゴッツィ
出演/クローディーヌ・オージェ/セレーナ・グランディ/マリナ・ヴラディ/ファブリス・ジョッソ
1914年の夏、16歳の主人公は学校の寮生活を離れ、フランスの田園地方の“シャトー”と呼ばれる広大な屋敷に戻ってきた。ところが折からの戦争で、父を始めとする男たちが次々と出征してゆき、彼は女ばかりの屋敷にひとり取り残されることになる。そしてその日から主人公の年上の女性たちとの性の生活が始まった。
もう少し古い製作の映画かと思った。話には聞いているが江戸時代のおおらかな、開放的な性生活のフランス版のように見える。男も女も、年齢も特に気にせずひたすら男と女の営みを繰り広げる。言葉では愛していると言いながら、目的はお互いの肉欲だけでおおらかだ。フランスの艶笑小噺を観ているような気になってきた。少年が筆おろしからの初々しい体験だけが興味を沸かせるところか。
イギリスのドタバタ喜劇に比べれば、はるかに洗練されたエスプリがプンプンの喜劇という感じ。洒落てはいるが、やっていることは一緒。貴婦人の様相をまとう人種が、一皮むけば肉欲に溺れる姿は、日本のアダルトビデオの世界にも匹敵する。この時代なら仕方がないが、相変わらずのボカシ映像の氾濫で日本の文化程度を世界に知らしめている。
『青夏 きみに恋した30日』
2018年(平成30年)・日本 監督/古澤健
出演/葵わかな/佐野勇斗/古畑星夏/岐洲匠/久間田琳加/水石亜飛夢/秋田汐梨/志村玲於/霧島れいか/南出凌嘉/白川和子/橋本じゅん
昨日観始まった『ジョニー・イングリッシュ アナログの逆襲』(Johnny English Strikes Again)を早々に観終わった。終わったわけではなくやめた。MR.ビーンというイギリスのキャラクターが、どうにも好きになれなくて、観ていれば観ているほど、そのドタバタコメディーの仕草に腹が立ってきてしまう。イギリス人にどこがおもしろいのかをいつか教えてもらおう。
一転、日本の若者映画を観ることになった。時には青春のほとばしりを浴びながら、少しは若返った気分を味わいたい。そんな風に観る青春映画は、偶にだからいい。この映画の主人公は男も女も好みではなく、だから余計キュンとするシーンに巡り合えず、残念ながら1歳も歳は若返らなかった。
鳥だってさえずりながらコミニケションをとっている様子を見ることが出来る。もちろん鳥ばかりではなくあらゆる動物がコミニケションをとっているのだろうと思われる。神の技としか思えないこの地球上での生きとし生けるもの、今度生まれ変わるとしたら何になるのだろうか。などと、誰にも分からないようなことをさも知ったかぶりして教えて金にしている輩を見ると、人間の浅はかさだけが浮き彫りにされる。
『空飛ぶタイヤ』
2018年・日本 監督/本木克英
出演/長瀬智也/ディーン・フジオカ/高橋一生/深田恭子/寺脇康文/小池栄子/阿部顕嵐/ムロツヨシ/木下ほうか
この突飛な題名は何? 車の整備会社から少し大きくなって運送会社となった主人公の会社、なりたくはなかったが親の仕事を受け継いで何とか従業員の家族を食わせることが出来ていることが社長としてもモチベーションだった。そんなある日、大型車両が急ブレーキを掛けたとたん150キロもある大きなタイヤが外れて歩道を歩いていた親子連れを襲った。子供は助かったが母親は即死状態だった。小さな会社にとっては致命傷的な事故、主人公が調べていくうちに、その車は整備不良ではなくメーカーの根本的構造設計ミスであるらしいこと、リーコール隠しの行為ではないかということを突き止める。財閥系の大メーカーとの戦いが始まった。その財閥系会社にもサラリーマンとしての矜持を保ちながら内部告発をする者さえ現れ始めた。池井戸潤にとって初の映画化作品となるという。
そう、でかいタイヤが空を飛ぶさまを題名としてイメージして欲しかったのだろう、作者は。『月刊J-novel』に2005年4月号、2005年6月号から2006年9月号に連載され、第28回吉川英治文学新人賞、第136回直木三十五賞候補作となった池井戸潤の社会派小説が原作であった。2009年には、WOWOWの連続ドラマW枠でテレビドラマ化された。自動車会社が有力スポンサーの地上波では、作品の性質上、制作は難しいと思われたが、有料放送のWOWOWでは、地上波のようにスポンサーの影響を受けることなく番組制作を行えるため、ドラマ化が実現する運びとなったという。
巨大な壁に一人で戦いを挑んでも徒労に終わるというのは定番であろう。巨大な闇を突いても、全員不起訴相当となることは現実社会が示している。権力というものは恐ろしい。一度手に入れてしまえばその権力は次の権力を生み、新しい勢力なんぞ虫けらのように追い払われてしまう。人間社会の持つ最大にして最高の権力という奴。トランプやプーチン、金正恩、習近平、誰をとってみたって死に際が極めて悪そうに見えるが、生きていいるうちは栄華の極みを演じることに狂喜乱舞しているに違いない。
『マルクス・エンゲルス』(Le jeune Karl Marx)
2017年・ドイツ/フランス/ベルギー 監督/ラウル・ペック
出演/アウグスト・ディール/シュテファン・コナルスケ/ヴィッキー・クリープス/オリヴィエ・グルメ
1840年代のヨーロッパでは、産業革命により資本家の元、労働者たちは過酷な生活を強いられていた。1843年4月のケルンで、20代半ばだったカール・マルクスはドイツの小さな新聞社で記者として、鋭い政治批判を繰り返していたが、やがてプロイセン政府に追放される。一方、イギリスのマンチェスターでは、父親が紡績工場を所有する裕福な20代の男フリードリヒ・エンゲルスは、父の工場を首になったアイルランド系の女工・メアリー・バーンズと一緒に辞めたメアリーの妹のリディア・バーンズの後を追ってアイリッシュパブに行き、酔っ払いの労働者に殴られたのをきっかけに彼女と親しくなる。エンゲルスは、父親が経営する工場だけではなく他の工場においても、労働者たちは子供たちも含め、搾取され、過小評価されていると感じていて、本を書きたいと思っていたのだ。
1844年7月のパリでは、マルクスは貧乏だったが、妻のイェニー・フォン・ヴェストファーレンとは良好な関係を築き、幸せであった。ある時、共和派の集会で、ピエール・ジョゼフ・プルードンの演説を聞き、無政府主義者のミハイル・バクーニンなどと知合う。フランスの秘密結社でヴィルヘルム・ヴァイトリングが労働者の暴動を報告する中、エンゲルスがアーノルド・ルーゲ訪ねてきて、そこで偶然、マルクスと出会う。二人は再会ではあったがエンゲルスの経済論に着目したマルクスは意気投合し、そのまま朝まで飲み明かし、エンゲルスはマルクスの家で目覚める。妻のイェニーからは夫のマルクスは病弱で酒に強くないので気をつけてほしいと忠告される。マルクスとヴェストファーレンとエンゲルスは、労働者の為の集会を各地で開き、社会の変革を訴える。しかし政府に批判的な記事を書いたマルクスは今度はフランスを追放される。マルクスとの付き合いを父に窘められるエンゲルスは、メアリーや妹のリディアと再会、メアリーから正義者同盟の話を聞く。
1845年ブリュッセルで、マルクスは仕事に応募するがなかなか採用してもらえず、そんな中、2番目の娘が産まれる。文通を続けていたエンゲルスはマルクスの窮状を知って金銭的な援助をし、マルクスにロンドンの正義者同盟への参加を呼び掛ける。1846年2月のロンドンで、メアリーから紹介されてエンゲルスとマルクスは、正義者同盟の面接を受ける。面接には途中で、ヴァイトリングも参加する。マルクスは、プルードンと親しことを口に出して、利用価値を示す。1847年11月のロンドンのレッド・ライオンズ・ホテルでの、正義者同盟の総会にて、エンゲルスは招待である為、発言権はないとするのを、その場の投票で代表に選ばれ、エンゲルスはより過激な思想を提唱し、同盟を共産主義者同盟に改名して、共産主義を誕生させる。反対派は「クーデターだ」とその場を去る。1848年1月のオーステンデの海岸で、子供について話すイェニーとメアリー。共産党の綱領について話すマルクスとエンゲルスは、マルクスが本を書きたいと言い、やがて二人は永遠の名著『共産党宣言』を完成させるのである。 (全部 Wikipedia より)
『不能犯』
2018年(平成30年)・日本 監督/白石晃士
出演/松坂桃李/沢尻エリカ/新田真剣佑/間宮祥太朗/テット・ワダ/矢田亜希子/安田顕/小林稔侍
宮月新原作、神崎裕也作画による日本の漫画作品。『グランドジャンプ』(集英社)にて、2013年10号より連載を開始。やっぱり原作は漫画だったか。話の進展しない子供だましのストーリーでは玄人の映画観客人を騙すことは出来ない。催眠術のようなことを平気で映画化するのは気にくわない。絶対そんなものに引っ掛ることはないだろうけれど、他人が引っ掛るのを見るのも忍びない。
この映画に行き着くまでに5本の映画をスキップしてしまった。その中には1時間以上も観ていたものもあったが、そのほかはほんの5分や10分程度でおさらばする始末だった。『ハリケーンアワー』『ヒットラーに屈しなかった国王』『木曜日に抱かれる人妻』『グッバイ・ゴダール!』『ダリダ~甘い囁き~』。大巨匠ゴダールも興味がない。製作国ドミニカなんていう初物にも出会った。
「犯罪を意図した行為でも その実現が不可能であれば、罪に問われない。これを【不能犯】というーーーーー」 不能犯という言葉を知らなかった。いかにも学者が考えそうな名称だが、こういう言葉を作ることに酔ってしまう集団が法曹界をリードしているのかと思うと、いつもながらやりきれない。
『ダブル・ミッション 報復の銃弾』(LEGACY)
2018年・アメリカ 監督/デヴィッド・A・アームストロング
出演/ジャスティン・チャットウィン/マーク・トンプソン/ロビン・トーマス/ヤンシー・バトラー
警察が押収した大量の麻薬の原料が強奪される。実行犯は、中身も知らず盗み、売りさばこうとした。事件担当の新米刑事が捜査するが、関係者が次々と殺されて行き、黒幕の雇った殺し屋に自身も狙われる。B級サスペンスだけどおもしろかったです。登場人物が殺されていくので、わかりやすかったです。(Filmarks 映画 より)
こんな風に素直な感想文が書けるうちがいい。残念ながらB級作品では劇場公開には至らない。少なくとも劇場側から選ばれた作品しか映画館では見られなかった時代から、みそもくそ映画も見られる時になって観客の選択眼も試される時代となった。
父親の後を継ぐように警察官になった主人公だが、父親の殉職が汚名を着せられていたという耐えがたい過去があった。それが邦題のサブタイトルなのだろう。最初、戦争映画かと思っていたが、まさかこのタイトルがそんな意味を持っていたとは。最近の現役サラリーマンの宣伝感覚が伝わらない。
『エヴァ』(Eva)
2018年・フランス 監督/ブノワ・ジャコー
出演/イザベル・ユペール/ギャスパー・ウリエル/ジュリア・ロイ/マルク・バルベ
如何にも映画評論家うけする映画の雰囲気。それでも、賞という賞を獲っていないということは、私の眠りの原因となってしまったことは嘘ではなかったということか。これも如何にも、フランス映画らしい気怠いアンニュイな雰囲気、と使い慣れない古い言い回しを遣ってみる。話が先へ進まないという典型的な映画だった。
高級娼婦なのか、豪邸に一人住んでいるのがエヴァ。亭主らしき人物は刑務所の中。相当の売れっ子らしく、ある日の午前中に訪ねた主人公は、「もう3人とおわったのよ」と言われ、さすがに主人公も驚きの表情を見せる。そんな娼婦に心を惹かれる主人公の話のようだが、この主人公がどうしようもない奴。一瞬世話をしていた引退気味の作家をバスタブでの発作を助けることなく死に至らしめた。その作家の未発表作品を自分の作品の如く発表して、嘘の人生で固めていた。
娼婦のような人間に会ったのは3人かな。姿かたち、顔の記憶はまったくない。こういうのを人徳と言うのだろうか、いずれの場合も他人のお膳立てだった、しかも本人には予期もしないことだった。だからかもしれないが、どの機会も私の男は奮い立たなかった。そのあたりの具合は本人の精神意識の構造に因るところが大きいのだろうと想像する。
『アンロック/陰謀のコード』(Unlocked)
2017年・イギリス/アメリカ 監督/マイケル・アプテッド
出演/ノオミ・ラパス/オーランド・ブルーム/トニ・コレット/ジョン・マルコヴィッチ
陰謀という邦題が続いた。しかも製作国はどちらもイギリスが絡んでいる。こちらの映画の方が遥かに映画らしくおもしろかった。最大の欠点である出来過ぎ感は否めないが、出来過ぎなければ映画ストーリーが成り立たないのも事実。あまりにも裏切り者、内通者といった役割の人物が登場すると映画は詰まらなくなってくる。
映画製作者は、こういう映画を作ることによってただ単にテロの恐怖を警告するばかりではなく、政府や担当行政に対して今ある危機を、おそらく事前に察知してくれと訴えているのではなかろうか。日本のようにのほほんと毎日が過ぎていく国では考えられないようなことが世界各国で現実となっている。本気になって東京オリンピックが心配だ。ビビり症の私の杞憂で終わってくれることを心から願う。
この映画の主人公のような人間に出会うことは一生ないであろうが、そもそも自分の知っている人たちの数なんてたかが知れてる。友達が多いよ、なんて自分から言う奴に、本当の友達なんてほとんどいない、てなことを本人は知らない。いつも言うように、知らないからこそ生きていける人生なのだよ、きっと。それでいいのだ。
『スパイ・ミッション シリアの陰謀』(Damascus Cover)
2017年・イギリス 監督/ダニエル・ゼリック・バーク
出演/ジョナサン・リース=マイヤーズ/オリビア・サールビー/ユルゲン・プロフノウ/イガル・ノール
イギリス映画のお得意は探偵ものと諜報ものと相場が決まっている、と映画好きの後輩から教えられている。ちょっとしたことでは驚かなくなっている映画を観る力が邪魔をする。しかもこんなありきたりな進行では、あくびが出ることはあっても涙を流して喜ぶことはない。
舞台が中東になると余計距離が遠のく。なんでもありの国で勃発する事件にはまたかやどうでもいいやの感想しか湧き上がらない。ここまでいろいろな映画を集中的に観続けてくると、やはり心に残る、心を打ち砕くような劇的なストーリーと衝撃の展開が必要になってきている。
人生も同じかもしれない。同じことの毎日の中に、喜んだり、哀しんだり、時には怒ってみたり、喜怒哀楽に左右される時間の経過だけが人生になってしまう。もっと大宇宙的な普遍を揺るがすような事象の到来が望まれて仕方がない。一方では、平々凡々何もない毎日が人生の仕合わせかもしれないと、ことあるごとに言っていることが嘘のように聞こえてくる。
『ゴーゴリ 暗黒の騎士と生け贄の美女たち』(GOGOL. NACHALO、GOGOL. THE BEGINNING)
2017年・ロシア 監督/イゴール・バラノフ
出演/アレクサンドル・ペトロフ/ユリヤ・フランツ/オレグ・メンシコフ/アルチョム・トカチェンコ
ゴーゴリって? ニコライ・ヴァシーリエヴィチ・ゴーゴリ(ウクライナ語:Микола Васильович Гоголь / ロシア語: Николай Васильевич Гоголь; 1809年4月1日(ユリウス暦3月20日) - 1852年3月4日(ユリウス暦2月21日))は、ウクライナ生まれのロシア帝国の小説家、劇作家。ウクライナ人。戸籍上の姓は、ホーホリ=ヤノーウシクィイ(ロシア語:ゴーゴリ=ヤノフスキー)である。『ディカーニカ近郷夜話』、『ミルゴロド』、『検察官』、『外套』、『死せる魂』などの作品で知られる。(Wikipediaより)
記憶の片隅に残っていた名前。いつ、どこで、この名前を聞いたのだろう、知ったのだろう、もちろんテレビの番組内で何度もこの名前は喋られたに違いないから、たぶんそういう何気ない時間に接したのだろう、どう考えたって彼の本を読んだ記憶はない。
映画のジャンル:ファンタジー/犯罪/サスペンス、という記述があったが、予定調和のようなストーリーと、映画進行にはちょっとうんざり。WOWOW録画の名残には3作品連続でこの「ゴーゴリ・・・」が並んでいたが、この1本だけで大充分、残り2本は録画削除という運命しかない。残念。
『マイアミ・バイス』(Miami Vice)
2006年・アメリカ 監督/マイケル・マン
出演/コリン・ファレル/ジェイミー・フォックス/コン・リー/ナオミ・ハリス
メトロ・デイド警察(現在のマイアミ・デイド警察(英語版)の風俗取締班(風俗取締班をvice squadという。オフィスは「ゴールドコースト海運」という貿易会社に偽装)と、二人の潜入捜査官クロケットとタブス他、仲間達の活動を描く。 マイアミを舞台に、ヴェルサーチやアルマーニのスーツを着てフェラーリを乗り回し、毎回ビルボード上位にランクされるようなメジャーなナンバーが流れるというスタイリッシュな刑事ドラマとして話題になった。こと劇中に挿入される楽曲については、もともと企画段階において、音楽番組(放送していたCATVの局名でもある)「MTV」をヒントに“MTV Cops”といった側面も取り入れたいといったプロデューサーの意向もあったとのことで、ドラマに大きな方向性と彩りを与えている。テーマソングはヤン・ハマー。劇中挿入曲を集めたサントラも発売されヒットした。(Wikipediaより)
題名はよく覚えているがリアルタイムで毎回観ていた記憶はない。ほとんど観ていなかったかもしれない。特捜刑事ものなんて、当時のテレビ映画では断然面白い方だろう。このテレビ・ドラマ映画の変形版が今の水谷豊の「相棒」の原型になったんではなかろうかと、勝手に想像した。
実行力優先の警察力は観ていて気持ちいい。拳銃を発砲すれば、今回の発砲は正当でしたなんていちいち言い訳発言をしなければいけない日本の警察力とは雲泥の差。来年の東京オリンピックが心配でならない。頭のいい外国人の暴力集団が日本各地で騒動を起こせば、日本の警察権力もたじたじとなってしまいそうだ。
『スカイライン -奪還-』(Beyond Skyline)
2017年・アメリカ 監督/リアム・オドネル
出演/フランク・グリロ/ボヤナ・ノヴァコヴィッチ/イコ・ウワイス/カラン・マルヴェイ
くだらない映画だった。五流、六流というところだろうか。1作目が既にあってこんなつまらない映画になるということは、1作目はどれだけ詰まらないのだろうかと、思いをはせる。宇宙から地球に征服に来たらしい宇宙人が人間を青い光と共に吸い上げてその脳を取り出して改造ロボット化してしまうという子供騙しにもならない話だった。
宇宙人というのはどんな姿をしているのだろうか。今迄に数多くの宇宙人がスクリーンに登場して、観客を楽しませてくれた。もしもリアルな宇宙人が地球上のどこかに現れたら、それこそ地球上が大騒ぎになるだろう。そういうときが来ることがあるのだろうか? と、普通の人々は疑問符をもって感じているが、心から信じている人もいるだろうから、そういう人は早く実写写真を公開すべきだねぇ。
日産の往年の名車と同じ名前では食指も動かない。この題名を聞いただけで、おもしろくなかろう、ということになってしまう。そして観始まったら屁でもないストーリー、絵にかいたような面白くない映画に、たまにはこういう日もあるよと諦め顔。
『スカイライン -征服-』(Skyline)
2010年・アメリカ 監督/グレッグ・ストラウス
出演/エリック・バルフォー/スコッティ・トンプソン/ブリタニー・ダニエル/クリスタル・リード
あの糞詰まらなかった1作目だ。WOWOWに加入していた1か月の間、題名も分からず録画しまくっていた結果だから、これも仕方がない。久しぶりに早回しした。早回しというよりは新しいテレビのリモコンの使い方がイマイチで、チャプター送りしか出来ない状態で、相当早く観終わった。観終わったわけではないが。
さて、テレビの話。電気屋の息子は、誰よりも早くテレビを見ていた。父親が作った7インチのテレビを見たのが最初だろうか。伝説的な力道山のプルレス中継では、道路に向けたテレビ中継を見んがために車が通れなかった、という嘘みたいな話もあった。
高校生の時はイレブンPMに興奮した。毎日のようにテレビにかじりついていた。スーパーマンしかり、ララミー牧場、スパイ大作戦、アメリカからやってきたテレビ映画シリーズが満載だった。それとプロ野球中継で大半の視聴率を稼いでいたんじゃなかろうか。新聞社系のテレビ局ばかりで、活字屋さんが映像に移動することを由としていなかった時代だった。大学時代にはカラーテレビをもらうつもりもなかった。1日2時間のカラー放送を見たいとは思わなかったのだ。時代は大きく変わって行った。そして人間そのものも。
『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(Batman v Superman: Dawn of Justice)
2016年・アメリカ 監督/ザック・スナイダー
出演/ベン・アフレック/ヘンリー・カヴィル/エイミー・アダムス/ジェシー・アイゼンバーグ
スーパーマンが死んだのはこの映画でだった。バットマンがなぜスーパーマンと戦うことになったのかが、いまいち、全然分からなかった。一番肝心なことが分からないと、せっかくの映画も台無しである。また、眠ってしまった。本来なら、この映画を観てからジャスティス・リーグへとつながるシリーズを観るべきなのだが仕方がない。
アマゾン・プライムの会員になっているから観ようと思えばすぐに観ることが出来る。199円という有料料金も迷う金額ではないところがいい。もっとも、DVDレンタル・ショップならせいぜい100円で借りられるだろうが、隣にその店がなければ面倒さは問題だ。
スーパーマンを殺してしまわなければならないほどネタに尽きているアメリア映画業界なのだろうか。それでも、アメリカン・コミックが大復活してアメリカ人の心はざわついている。もしかするとトランプ大統領の存在も同じようなものなのかもしれない。アメリカ・アメリカと叫んでいれば、他は何を言っても許される風潮は自由の国アメリカを根底から覆すようで、世界の全ての倫理はまったく別の道を歩み始まったようだ。
『ジャスティス・リーグ』(Justice League)
2017年・アメリカ 監督/ザック・スナイダー
出演/ベン・アフレック/ヘンリー・カヴィル/ガル・ガドット/エズラ・ミラー
スーパーマンが死んでいた。えっ!知らないよ、そんなこと。スーパーマンが死んだならニュースでやってくれないと。と、本気でそう思った。小さい頃から大好きだったスーパーマン、日本テレビ映画の「月光仮面」を子供騙しと子供ながらに思い込んでいた。一度も観たことがなかった月光仮面をヘラルドが製作・配給した時は皮肉だった。まぁ映画は大ずっこけしたが。
バットマンは、常識を超えた脅威の出現とスーパーマンの死をきっかけに、それまでの盲目的な考えを改め、超人たちによるスーパーチームを結成しようとスカウトに奔走する。アメリカンコミックはどうにも理解できないところがあって、何が何だか分からない映像を観続けることになった。ワンダーウーマン、フラッシュ、アクアマン、サイボーグ、など聞いたことも見たこともないキャラクターが登場して、眠気も増した。
デイリープラネット社に勤めるロイス・レインは、子供のころからの憧れだった。この映画の彼女も魅力的な容姿で思い出を裏切らなかった。どうしてスーパーマンは死んでしまったのだろう、とそのことばかり頭から離れなくて困った。必死になって彼が死んでしまった映画を探して観よう。
『Love, サイモン 17歳の告白』(Love, Simon)
2018年・アメリカ 監督/グレッグ・バーランティ
出演/ニック・ロビンソン/ジョシュ・デュアメル/ジェニファー・ガーナー/キャサリン・ラングフォード
17歳の告白なんていう言い訳みたいなサブタイトルらしきものを題名の中に入れることを由としない。昔取った杵柄でどうしてもそういうところが気になって仕方がない。17歳までなら余韻をもって題名が生きる。告白という文字が問題だ。映画を観てしまうと、そこのところがやっぱりだめだなぁと思えてくる。
もっとも、ほとんど寝ていたと言っても過言じゃない。最初は何が起こるのだろうと、一所懸命観ていたつもりだったが、もういけません、一度眠り始まったら、目を開けているのが辛かった。何故か終わりに近くなると目が覚めるのはいつもの常。目が覚めて最初は戸惑うが、どうということなく途中経過が分かってしまうくらいの程度の映画だった。
17歳の告白とは? ゲイであることを誰にも言えず悩む話だった。LGBTとか言って人生が広がってきた最近の社会現象、気持ち悪いなんていう感情はいけないと言われても、困ってしまう。男の目から見れば、というか自分の目から見れば、女と女のキスシーンを特別嫌だとは思わない。だが、男と男のキスシーンには虫唾が走る。この映画の最後のシーンでは若い高校生の男二人のキスシーンが。
『オー・ルーシー!』(OH LUCY!)
2018年・日本/アメリカ 監督/平栁敦子
出演/寺島しのぶ/南果歩/忽那汐里/役所広司/ジョシュ・ハートネット/井上肇
日米合作映画。英会話教室の米国人講師に恋をした43歳のOLが彼を追って訪れたアメリカで巻き起こす騒動を、ユーモアとペーソスを交えつつ描く。平栁敦子監督が2014年に桃井かおり主演で製作した同名短編映画をもとに新たな物語を書き加えて長編化した脚本が2016年のサンダンス・NHK国際映像作家賞でNHK賞を受賞して製作された。2017年9月16日にNHK総合にてテレビ放送用に73分に再編集されたドラマ版が劇場公開に先立って放送されたという。
出来の悪い小噺の感が強い。登場する若い娘も、どうにもならない人物をこれでもかと性格の悪さを発揮させて、観客の反吐を誘うかのようだ。寺島しのぶが衒うことなく肉体をさらけ出していた。前作でもそんな感じだったので、偶然にしては? こういう演技をさらりと演じられる役者はなかなかいない。これからしばらくはこんな役がたくさん舞い込んで来そうな予感。
ルーシーは英会話学校での主人公の仮の名前。私も遊びで tony という名前を使っているが、これはNDF(日本フィルムディベロップメント・アンド・ファイナンス)という会社にいた時に使い始まったもの。決して遊びではなく、仕事上の手紙へ書くサインなんかの時に、こういう名前を持っていた方が便利だと諭されたのが始まり。
『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』(Valerian et la Cite des mille planetes)
2017年・フランス 監督/リュック・ベッソン
出演/デイン・デハーン/カーラ・デルヴィーニュ/クライヴ・オーウェン/リアーナ
フランス語原題をgoogle翻訳に掛けたら「バレリアンと千の惑星の街」と出てきた。邦題も結構近いじゃんと、珍しく。千と千尋・・・や千の風になって、と似通った題名がちょっと嫌だった。映画の邦題を付けるのは難しい。アニメ大ヒット作「君の名は。」を見た時、往年の有名な恋愛映画と同じ題名をアニメ映画に付ける神経が分からなかった。でも、大ヒットしてしまえば、もう往年の題名の方なんて若者には塵でしかなくなってしまったに違いない。
この監督の作品の印象が悪い。有名な監督なので自分にだけ当てはまる特殊性だと思わなければならない。SF映画。大好きなジャンルだが、この映画の描く未来は今から430年後あたりらしい。ちょっと遠すぎる。でも考えてみれば430年前を歴史の中で知っていることを思えば、先のことだって結局は同じことだと感覚的には思えるはず。
そのころになると題名にあるように、宇宙に存在している千の惑星からそれぞれの生物が集まって会議が行われているらしい。スターウォーズに出てくるようなキャラクターたちが登場するのを見ると、影響力の大き過ぎるスターウォーズからは大きく離れられないのだろうと、勝手に想像してしまう。あぁ~、400年後を生きてみたい。
『リミット・オブ・アサシン』(24 Hours to Live)
2017年・南アフリカ/中国/アメリカ 監督/ブライアン・スムルツ
出演/イーサン・ホーク/シュイ・チン/ポール・アンダーソン/リアム・カニンガム
ヒットマンのトラヴィス・コンラッドは、妻と息子の死後に引退した。 軍の請負業者であるレッドマウンテンは、組織の戦争犯罪を明らかにする可能性がある内部告発者であるキースを暗殺するために、高額の報酬を約束してコンラッドを復職させる。 キースを守るインターポールのエージェント、リンを誘惑した後、コンラッドは銃撃戦で殺害されてしまう。 レッドマウンテンはコンラッドの死体を回収して蘇生させ、24時間は生存し続けると説明する。 副作用として、コンラッドは自らの家庭生活への頻繁なフラッシュバックを経験し、己の悲しみに立ち向かうことを強いられる。 企てられた暗殺に対して悔い改めたコンラッドは、リンとキースをレッドマウンテンから守る決心をする。(Wikipediaより)
アジア系の女優が主役級のアクション・シーンを演じている。顔だけ見ればごくごく普通な顔立ちで、とてもじゃないけどアクション・シーンに相応しくない。製作国の不思議な組み合わせが配役に意味があるのだろう。今どき、まだまだカーチェイスをやっていたけど、さすがに長時間ではないところが己を知っているということなのだろう。
おもしろいような、おもしろくないような。アメリカ映画大好きな家族愛に満ち溢れた映画だった。簡単に引っ付いたり離れたりするくせに、子供への愛は異常と思えるほど凄まじい。片時も子供から目を離してはいけないと教えている。確かにそうだが、それに反して子供たちは日本人なんかよりはるかに早めに自立していく。このギャップはどうしてなのだろうか。
『ビハインド・エネミーライン 女たちの戦場』(HORE DIE STILLE)
2016年・ドイツ 監督/エド・エアレンベルク
出演/ラース・ドップラー/ジーモン・ハンガートナー/ドミニク・フェンスター/アンドレアス・ザーン
戦争 ドラマ。「 ミュンヘン映画アカデミー 」の学生による 卒業制作 作品らしい。1941年、ソ連のウクライナの小さな寒村をドイツ小隊が占領。その村は女性と老人と子供しかいなかった。興味深いのが、村民が18世紀から 19世紀にロシアに入植してきた「 民族ドイツ人 」(黒海ドイツ人またはウクライナ・ドイツ人 )なことだった。
村人の反応は三つに分かれた。ソ連赤軍に好意を寄せる者、いやいや私はイツ軍側よという者、中には「 強い方に付く」と、したたかな考えを持っている者もいたのは当然の構図。村人と小隊は友好な関係だったが、ちょっとしたことから不信感がつのりはじめ、ついには殺し合いという結末が。
引き続き暗い映画でちょっとめげるが、世の中にも楽しいことばかりがある訳ではないので、まぁ仕方のないことか。せめて映画の世界だけはたのしくありたいと願うのは正直な気持ち。どうせ短い人生、毎日笑顔で過ごしたい。
『ウインド・リバー』(Wind River)
2017年・アメリカ 監督/テイラー・シェリダン
出演/ジェレミー・レナー/エリザベス・オルセン/グラハム・グリーン/ケルシー・アスビル
ワイオミング州ウィンド・リバー保留地に住んでいるネイティブ・アメリカンの子孫たちの周囲には、自然環境の厳しさばかりではなく現実的な生活の糧という重大な問題が山積していた。そんな地域でのレイプ・殺人と思われる事件を解決していくのは地元出身のひとりの男、FWS(合衆国魚類野生生物局)の職員だった。
暗い警察ものも珍しい。トランプ大統領ばかりではなく歴史的にアメリカ合衆国とその征服者たちは、1492年アメリカ大陸発見以前から住んでいた先住民を蔑ろにしてきている。それが当たり前にように騎兵隊とインディアンの戦いは映画でも大いに喧伝されてアメリカ社会の礎となって行った。
今でもこの居留地の女性の行方不明者は多数でであるというテロップで締めくくられていた。事件は現場で起こっているんだという典型的な事件解決劇だった。地元に根差して生きてきた主人公の情報は適格、遠方からやってきたFBIの女子警察官なんて、子供だましのような操作能力しか発揮できなかった。暗い、けどおもしろかった。
『無伴奏』
2016年・日本 監督/矢崎仁司
出演/成海璃子/池松壮亮/斎藤工/遠藤新菜/光石研/藤田朋子/松本若菜
直木賞受賞作家・小池真理子の半自伝的小説。1969年、学生運動真っただ中の仙台を舞台に学園紛争や思想に当然のように左右された、当時の女子学生を中心に。映画の主人公よりもほんのちょっとだけ先輩だった自分の青春時代と重ね合わせてみることが出来る光景が懐かしい。
映画はさほどおもしろくないが、その当時のファッションや生活が滲み出ている映像に惹かれる。ミニスカートが今とは違う形で存在していた。その生々しい様子が手に取るように心をざわつかせる。何もないことを格好つけて「虚無的」と叫んでいた青い人間像が可愛い。自分にとっても、一番長くて印象的な時代だったような気がする。
新宿の地下通路にたむろする学生たちの姿が目に浮かぶ。やくざにさえ恐れられた全学連は、毎日のように機動隊と衝突を繰り返していた。そんな中、早稲田大学生花(いけばな)研究会の活動も学生運動と無縁ではいられなかった。映画の主人公が高校を卒業する1970年(昭和45年)、何の足跡も残せず卒業して、いつの間にか71才の爺になってしまった。というのが現実で、それ以上のことは何もない。
『ゲティ家の身代金』(All the Money in the World)
2017年・アメリカ/イタリア/イギリス 監督/リドリー・スコット
出演/ミシェル・ウィリアムズ/クリストファー・プラマー/マーク・ウォールバーグ/チャーリー・プラマー
「ゲティ家の身代金」という原作本が出版されているそうな。1973年に実際にローマで起きたゲティ3世誘拐事件が描かれている。なにこのゲティ家は? 当時フォーチュン誌によって”世界一の大富豪”に認定されたゲティオイル社社長の石油王のジャン・ポール・ゲティ、極端な吝嗇家としても知られていたらしい。
ケチだからこその邦題の原点なのだろう。この邦題は結論を言っていないからいいか。第75回ゴールデングローブ賞の監督賞(リドリー・スコット)、主演女優賞(ミシェル・ウィリアムズ)、助演男優賞(クリストファー・プラマー)にノミネート、第71回英国アカデミー賞の助演男優賞(クリストファー・プラマー)にノミネート、第90回アカデミー賞の助演男優賞(クリストファー・プラマー)にノミネートされた。プラマーはアカデミー賞演技部門での最年長ノミネート記録を更新した。
監督が著名だから、ノミネートされたのだろう。きっとこの監督はみんなに好かれているに違いない。映画はさほどおもしろくない。実話に基づきちょっとフィクションを付け加えたと最後のテロップは語っている。映画は事実に基づいて大きくその表現方法を付け加えなければ、おもしろさが倍増しない。淡々と肝心なところを変更できない呪縛が映画をつまらなくしている。
『イコライザー2』(The Equalizer 2)
2018年・アメリカ 監督/アントワーン・フークア
出演/デンゼル・ワシントン/ペドロ・パスカル/アシュトン・サンダーズ/ビル・プルマン
1作目がおもしろかったことを記憶していたので楽しみだった。観始まったら、あれ!これは違う、あれか?! と。それでもすぐに1作目の情景を思い出せたので良かった。なかなか主人公がスーパーマンのような人物で、自分の身の回りに起こった事件を一人で解決してしまう。勧善懲悪マン登場といった風情なのだ。
今回も前回同様小さな事件を解決しているのだが、かなり大きな事件に掛かりっきりになってしまった。それだとおもしろくない。市井のこまごまとした悪人をやっつけるのがおもしろいのに。ただスーパーマンのようなだけではなく、スマホ、パソコン、そういった類の機械類にめちゃめちゃ強いところが今風。腕力が強いだけではスーパー・ヒーローにはなれない時代となった。
あー言えばこういうろく、何を訊ねても適正な答えを返す御仁がいる。尊敬に値する。なかなかお目に掛かれない存在だが、時々そんな人に会うと憧れてしまう。おそらく自分の目を通過したことをすべて記憶出来ているのだろう。自分の耳を通過した言葉はもちろん、全部身となっている。そんな人間に成りたいと思ったことはあったが、そんな奇跡的なことは望むべきもない。凡人は凡人らしく、これからはただ死んでいくだけがオチだろう。
『ウォッチメン』(Watchmen)
2009年・アメリカ 監督/ザック・スナイダー
出演/マリン・アッカーマン/ビリー・クラダップ/マシュー・グッド/ジャッキー・アール・ヘイリー
1930年代、アメリカ合衆国の各地に、犯罪者を相手にマスクとコスチュームで身を隠して戦うヒーロー達が出没し始めた。彼らは自らと同じような仮面とコスチュームを身に着けた犯罪者(作中では身元を隠すためと説明されている)と闘っていくうち、いつしか一堂に集結して「ミニッツメン(Minutemen)」という組織を作り、第二次世界大戦など政治や戦争の世界にも大きく関与していくこととなる。しかし時と共に当初のメンバーたちは、戦闘や犯罪者の報復で命を落としたり、精神に異常を来したり、彼ら自身が法を破ったとして逮捕されたり、あるいは初代シルク・スペクターのように引退したりと、様々な事情で姿を消していく。(Wikipediaより)
アメリカン・ヒーローたちのことを描くアメリカン・コミックの映画化。おもしろいんだけど、同じようなことの繰り返しでだいぶ飽きが来る。アメリカン・ヒーローたちの本当の姿を暴露しているようなシーンが続くが、それはそれでおもしろい。アメリカ人は自分たちのコミックに大きな誇りを持っているのかもしれない。でなければ、2時間43分なんて長い劇場公開版を作るはずがない。
もう日本の漫画原作も映画化権を売りつくしてしまったなんていうニュースもあるくらいだから、アメリカ人が原点回帰して自国のコミックに注目を当てるのは時代が要求する必然なのだろう。なんといっても60年前からスーパーマンが好きだった子供が今や71歳になったのだから、日本がアメリカナイズされてしまっている、といっても過言ではなかろう。もっとも、相変わらず鋸だって、手招きし仕草だって全く反対の動きをするんだから、おもしろい世界だと。
『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』(IT(IT:chapter one))
2017年・アメリカ 監督/アンディ・ムスキエティ
出演/ビル・スカルスガルド/ジェイデン・リーバハー/ジャクソン・ロバート・スコット/ジェレミー・レイ・テイラー
原作は1986年に発表されたスティーヴン・キングのホラー小説『IT-イット-』。1990年、米国ではテレビミニシリーズとして2回に分けて放送されたという。そのリメイク作品だというが、スティーヴン・キングがこんな幼稚なホラーを書いたなんて信じられない。彼の作品は多く映画化されているが、どれも素晴らしいホラーに仕上がっていたと思っていた。
人間の弱さに付け込む不気味なピエロ、ペニーワイズに翻弄される人々を描く。物語前半は幼少時代、後半は大人になった現代のパートに分かれている。ペニーワイズは、特定の人物にしか姿を見せず、引き起こされる能力(物体を自在に操る、相手の恐怖心を覚える姿に擬態する、血を含んだ風船を飛ばすなど)も同じように一般の人間には見えない。このあたりが幼稚だと言わしめるところだ。これじゃ、くっだらない日本映画ホラーとちっとも変わらない。
他人に見えないものが見えるのは病気だ。それをさも心理現象、心霊現象のようにわめくのは間違っている。天才と気狂いは紙一重だと言うけれど、天才と気狂いとでは雲泥の差がある。その差は人間であることの証明でもある。もう少しで天才だからこの気狂いを許してください、と言われても、そんなもの誰が赦すものか。
『復讐のドレスコード』(The Dressmaker)
2015年・アメリカ 監督/ジョスリン・ムーアハウス
出演/ケイト・ウィンスレット/リアム・ヘムズワース/サラ・スヌーク/ヒューゴ・ウィーヴィング
1997年に大ヒットした『タイタニック』(Titanic)で一躍世界的な大スターとなったケイト・ウィンスレットはあの時22歳だった。あれから22年、放漫な肉体を惜しげもなくスクリーンに晒して、今やアカデミー賞女優としても円熟期に達している。この映画は日本での劇場公開はなかったようだ。劇場公開なしにいきなりDVD発売公開というのは寂しいものだ。
この頃の映画のストーリーは奇抜なものが多い。この映画もそのたぐい。よくよく考えてみると、それほど奇抜な展開でもないのだが、監督があれやこれやと味付けして、奇抜なものにしてしまっている観も免れない。サスペンスとかいうジャンルに収めているところもあるようだが、最初からコメディに見える。ストーリーがシリアスなものなので、コメディの方が相応しいと考えたのではなかろうか。
自分のことを一番よく知っているのが自分であるはずがない。周りの人からどう見えているのかを知ることはほとんど不可能に近い。それでも自分のことを最も見ているはずの自分の感覚を信じていくしかない。滑稽だが、それが現実だ。もしも、空から見えている自分に囁く自分がいれば、その人はラッキーと言うべきだろう。一方、自分で感じる痛みを他人に感じてもらうことは出来ない。絶対あり得ない。そんな両極端の感覚を持ちながらどの人間も生きている。同じことを繰り返して時間は過ぎていく。
『のみとり侍』
2018年(平成30年)・日本 監督/鶴橋康夫
出演/阿部寛/寺島しのぶ/豊川悦司/斎藤工/前田敦子/風間杜夫/大竹しのぶ/松重豊/桂文枝
ちょっとした失言が藩主の怒りを買い、女性に性的な奉仕をする裏稼業「猫ののみとり」にされてしまった生真面目なエリート侍が、様々な出会いを通じて新たな生き甲斐を見つけていく様をユーモラスに描いた時代劇コメディ。監督の鶴橋康夫自ら脚本を手掛け、小松重男原作の小説短編集『蚤とり侍』から「蚤とり侍」、「唐傘一本」、「代金百枚」等を再構成し一本のストーリーに仕上げた。(Wikipediaより)
落語のネタ噺かなと思いながら観ていたが、原作があったとは。寺島しのぶが脱いだって話題にはならないだろうに。大竹しのぶのちょっと鼻に付く演技とか、風間杜夫の仰々しいセリフ回しとか、突っ込みどころはたくさんある。前田敦子が乙女も恥じらうような演技をしているところがおかしかったり。
最後は勧善懲悪で一同笑い、という結末は、小学生の頃書いた脚本に似ていて恥ずかしい。あれはどんなシチュエーションだったのだろうか。今でも赤面ものなのだが、一件落着と言うオチを考えると、大岡越前守テレビ・ドラマの影響だったのではなかろうかと一人ほくそ笑む。
『M:i:III』(Mission: Impossible III)
2006年・アメリカ 監督/J・J・エイブラムス
出演/トム・クルーズ/フィリップ・シーモア・ホフマン/ヴィング・レイムス/ビリー・クラダップ
ミッション:インポッシブル(1996年)、M:I-2(2000年)、M:i:III(2006年)、ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル(2011年)、ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション(2015年)、ミッション:インポッシブル/フォールアウト(2018年)。どれを観てどれを観ていないのか、はっきりと覚えていない、いつもの通り。
この3作目の興行収入が一番低かったようだ。映画会社の現役だった時に一番不思議だったのが興行成績の妙。映画のプロたちがおもしろいと思ったところで、そんなに簡単に当たるわけではなかった。それどころか、宣伝すればするほど人気が落ちていくのが分かる作品があった。いずれも映画を観ていない人に宣伝するのに、不思議な現象だった。
よく言う口コミという奴がある。人の噂も七十五日と言うこともあるが、噂になれば映画は大成功、人の話にもならない映画は最悪、だからシャカリキになって題名だけでも連呼しようとする宣伝マンが横行する。この映画はおもしろいですよ、とテレビでタレントが喋ったら映画が当たるんだったら、こんな簡単な話はない。映画が当たるメカニズムを解き明かしたら、それこそ億万長者になれること絶対である。
『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』(Solo: A Star Wars Story)
2018年・アメリカ 監督/ロン・ハワード
出演/オールデン・エアエンライク/ウディ・ハレルソン/エミリア・クラーク/ドナルド・グローヴァー
『スター・ウォーズシリーズ』のスピンオフ作品「アンソロジー・シリーズ」の第2作で、時系列では『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』の13~10年前となる。映画のテーマはスペース・ウェスタンであり、過去のシリーズでハリソン・フォードが演じたアウトローな密輸業者ハン・ソロの若かりし頃が明らかになり、彼の愛機ミレニアム・ファルコンとその所有者ランド・カルリジアン、相棒チューバッカとの初めての出会いが描かれる。(Wikipediaより)
これまでのスター・ウォーズは全部観ているはずだが、あのワクワクとする感覚は何とも表現しにくい。ただ、作を重ねていくうちにどんどんゲーム化して行く映像に、こちらは逆に歳をとって行くから、どことなく気持ちが離れていくような気にさせられてちょっと不愉快な気分。
映画界にとってはこういうエポック的写真が何年かに1本出てくることが必要だった。この映画があるお陰で、別のしょうもない映画を地方の有力な映画館に売ることが出来た。それが、映画の営業なのだと知る人は少ない。そもそも映画配給業者の仕事って何?という人しかいないだろう。そんな小さな業界が映画の原点。映画業界全体で銀座三越の1年分の売り上げにかなわなかったなんて比較された時代があった。
『メイズ・ランナー』(The Maze Runner)
2014年・アメリカ 監督/ウェス・ボール
出演/ディラン・オブライエン/カヤ・スコデラリオ/トーマス・サングスター/キー・ホン・リー
アメリカの小説家ジェームズ・ダシュナーが2009年に発表したヤングアダルト向けSFスリラー小説で、記憶を失い、謎の巨大な迷路(maze=メイズ)に送りこまれた主人公たちが、脱出に挑む物語だということだ。1作目『メイズ・ランナー』、2作目『・・2 砂漠の迷宮』』、3作目『・・3 最期の迷宮』と映画シリーズが出来たらしいが、正直どれを観たのか分からない。
誰が味方で誰が敵なのかがよく分からん。この頃見る映画は、ストーリーさえもよく理解できない映画が結構多くて、自分の理解力不足がその大きな原因なのだろうと自分を責めることしか出来ない。もっと素直で単純なストーリー展開の映画はないものなのだろうか。もう余っている物語を見つけるのさえ大変な時代になってきたことは確か。
自分でも分からないうちに人生の迷宮に迷い込んでしまったことは間違いない。右へ行けばいいのか、それとも左なのか、はたまた後ろに戻るべきなのだろうか。もちろん、そんな詰まらないことは考えないで、今まで来た道の延長線上にしか自分の人生はないだろうことは分かっているだろう!!
『ラスト・リミット 孤独の反逆者』(Paralytic)
2016年・アメリカ 監督/ジョーイ・ジョンソン
出演/デビッド・S・ホーガン/アンジェラ・ディマルコ/ダーレン・セラーズ/ダンジェロ・ミディリ
おもしろいのかおもしろくないのか分からない映画、と聞いたら聞いた方が戸惑ってしまうだろう。一流映画になりそうで、実はあっちこっちが抜け落ちていて結局は4流映画に成り下がってしまったような。ストーリーが良く分からない。せっかくいろいろな要素を絡めて複雑にしているのに、それがかえって致命傷になっている。
人間にもそういう人がいるよね。訳が分かったようなことを吹聴しているくせに、自分でも何を言っているんだか分んないんじゃないの、と思えてくる人。大きな勘違いをしながら人生を歩んできた人に違いない。勘違いしないで真実を知ってしまったら、生きていくのが大変だろうから、そんな人生は大いに「あり」だと思える。
この映画の主人公は「殺し屋」。依頼人から殺害を頼まれて、プロフェッショナルな殺し方を得意としていた。いざ自分が消されると悟ったときに、惨い拷問をされないために自ら手りゅう弾で自爆しようともくろんでいたが、本人の希望通りにはいかずむごたらしい遺体となって発見されるのだった。死ぬ時ぐらいは、その状況を察知したいと思うのだが、無理だろうなぁ~。
『空海-KU-KAI- 美しき王妃の謎』(妖猫伝、Legend of the Demon Cat)
2017年(平成29年)・中国/日本 監督/チェン・カイコー
出演/染谷将太/ホアン・シュアン/チャン・ロンロン/阿部寛/火野正平/松坂慶子
留学のため唐に渡った若き日の空海が、詩人・白楽天とともに唐の都長安を揺るがす巨大な謎に迫る姿を描いた歴史スペクタクル大作。夢枕獏の小説『沙門空海唐の国にて鬼と宴す』が原作。中国語の原題「妖猫伝」にあるように、猫に乗り移った魂が物語を進行する。こういうことを含めて、中国から発する話、物事に興味が湧かない。先入観がある訳でもないのに。
途中で寝てしまったこともあるが、どういう話なのかが分からない。分かろうとしない。中国人のいうことなんかどうでもいいじゃん。空海という日本では超有名な人物が主人公のように扱われているが、映画での主人公は猫だった。この頃の映画はフィルムで撮影するのではなく、ハードディスクにデジタル撮影することがほとんどのような。実際の撮影現場に行くことがなくなって、現在映画界事情に疎くなってしまったのが、ちょっと寂しい。
テレビを替えたのは正解だった気がする。画面も大きくなったし、色合いも前の陳腐な発色よりはだいぶいい。そういう外的要素で毎日の気分が変わるんだから不思議なものだ。ただ生きているだけなら、誰だって同じようなもの、頭の中だけにでも生きた足跡を遺せればそれで充分な人生に思える。
『ザ・ハント ナチスに狙われた男』(Den 12. mand)
2017年・ノルウェー 監督/ハラルド・ズワルト
出演/トーマス・グルスタッド/ジョナサン・リース=マイヤーズ/マリー・ブロックス/ベガール・ホール
この長ったらしい邦題と同じように映画本編も只管長かった、上映時間2時間15分。ナチスドイツに占領されているノルウェーに、イギリスで訓練されたノルウェー兵12名が破壊工作要因として派遣される。上陸した時点で11名は捕まり、1名だけが逃れる。ノルウェーの住民がこの兵をいかにスウェーデンに逃がすかということになる。という流れだが、この1名が奇跡的に生き延びながらの逃亡劇。事実は小説よりも奇なり、という実話に基づいた映画。
ナチス・ドイツの悪行はどんな映画でも言い伝えられている。ノルウェーにまで蔓延っていたとは。ノルウェーの抵抗運動も激しかったようだ。戦後、ナチスの幹部クラスが次々と処刑されるのは当たり前のことだったのだろう。どうしてあそこまでナチス・ドイツが栄華を極めていたのかを探求してみたくなる。悪玉を中心として組織された軍団に、意識的、あるいは強制的に協力した人民がいたことが。
日本映画の長回しの退屈映像を思い出した。毎回違った状況ではあるが、ノルウェーからスウェーデンに脱出することがなかなか出来ない。それが事実だからと延々と苦行を見せられてもなぁ~。自分で自分の足の壊疽した指を切るシーンに至っては、一種のマゾ的映画に見えてきた。おしんのような映画に見えるが、おしんをきちんと観たことはない。
『プロヴァンスの贈りもの』(A Good Year)
2006年・アメリカ 監督/リドリー・スコット
出演/ラッセル・クロウ/アルバート・フィニー/マリオン・コティヤール/アビー・コーニッシュ
ロマンティック・コメディ映画というジャンルに属するらしい。まぁどうでもいいような内容だけどねぇ~。アメリカの金融業界で働くイギリス人の主人公が、フランス・プロヴァンスでワイン農場を経営していた叔父が死んだため、その遺産として受け継ぐ予定のワイン農場を売り飛ばしてしまおうと画策して、現地に乗り込んでからの他愛もないストーリー。
ラッセル・クロウは、どうしても『グラディエーター』(Gladiator・2000年)のイメージが強く残り過ぎてしまって、こういう軽い雰囲気が彼には似合わないと勝手に思い込んでしまっている。グラディエーターの後だって、かなりの数々の映画に出演しているのは分かっているが、ホントに困ったものだ。
その叔父の隠し子の女性が現れたり、主人公が子供の頃一緒に遊んだことのある女の子が現れたり。ロマンティック。コメディの内容には困らない。お酒好きの人たちは、あそこの酒が美味しい、ここのお酒が美味しいとウンチクを傾ける人が多いけれど、下戸に言わせれば、プロヴァンスのワインだって、カナダのワインだって、日本のワインだって、その他世界各国のワインを飲み比べる事なんて出来ないのが実情でしょう。
『エリジウム』(Elysium)
2013年・アメリカ 監督/
出演/マット・デイモン/ジョディ・フォスター/シャールト・コプリー/ヴァグネル・モーラ
2154年、超富裕層は、大気汚染や人口爆発により生活環境が悪化した地球から離れて、衛星軌道上に建造されたスタンフォード・トーラス型スペースコロニー「エリジウム」で暮らしている。映画の描く近未来もいよいよ2150年台に入ってきた。これから135年後だ。
今から135年前が1884年(明治17年)だということを考えれば、自分の目で見ることが出来なくとも、妙に現実に近い感じがする。40年前くらいに描かれている地球の近未来は、第三次世界大戦が勃発し、原爆の落とし合いで人間は地中深く住むというようなストーリー展開が多かった。そこまで人間は馬鹿ではなさそうな具合だということだけは、現実味を帯びてきている。
それでも、あのアメリカ合衆国でさえ変な大統領が出現する時代となってしまった。それに呼応するが如く、世界各国の政治体制が大きく変化しているのは気になるところだ。一庶民が何を悩もうが、現実は無慈悲に時を刻んでいくだけなのだろう。人生100年時代になったと日本の政治も言うけれど、たかが100年しか生きられないのだ。同じことの繰り返しをほくそ笑んで見ている神々たちの姿が目に浮かぶ。
『トレイン・ミッション』(The Commuter)
2018年・アメリカ/イギリス/フランス 監督/ジャウム・コレット=セラ
出演/リーアム・ニーソン/ヴェラ・ファーミガ/パトリック・ウィルソン/ジョナサン・バンクス
北アイルランド出身の主演リーアム・ニーソンは、この頃アメリカ映画のアクション部門で活躍している印象が強い。2015年、スパイクテレビ主催のガイズ・チョイス・アワードで「ビゲスト・アス・キッカー(最もタフな男)」賞を受賞しているというから頷ける。現在、ニューヨーク在住。
元警官のマイケル・マコーリーは保険のセールスマンとして働いており、仕事場へは毎日メトロノース鉄道ハドソン線の電車で通勤していた。ある日、マイケルがいつものように電車に乗ると、ジョアンナと名乗る女性から話しかけられた。彼女は「この電車が終着駅に着くまでに、乗客の中に紛れ込んでいる盗品を持ったある人物を発見できたなら、貴方に10万ドル(着手金2万5千ドルと成功報酬7万5千ドル)を渡す」と言ってきた。最初は適当に応対していたマイケルだったが、徐々に状況が切迫していき、ついには彼女の要求に応じなければならなくなった。図らずも陰謀に巻き込まれたマイケルは、自分と乗客の命を救うべく行動を開始した。(Wikipediaより)
緊急事態になったときに一体何が出来るのだろうか、というのが自分の人生のテーマになっている。その割にはちょっとしたことにすぐ動揺してビビっている姿を鏡で見ていると、緊急事態に遭遇したら一目散に逃走するのは自分だろうと、情けない結論になっている。先日のニュースで、自分の家の窓から見えた川に溺れている人を救助服を沈着冷静にまとって助けに行った主婦の話に涙した、と書いたのには、そういう事情があったのだ。
『ジョー・ブラックをよろしく』(Meet Joe Black)
1998年・アメリカ 監督/マーティン・ブレスト
出演/ブラッド・ピット/アンソニー・ホプキンス/クレア・フォーラニ/ジェイク・ウェバー
心地よい邦題だと感じたが、こういう柔さの題名とブラピだけではロードショーに耐えられないかも、と強く反省しながら思い返す。1934年の映画『明日なき抱擁(Death Takes a Holiday)』を元にしている。第19回ゴールデンラズベリー賞最低リメイク及び続編賞にノミネートされたという。
確かにちょっとかったる過ぎるところはあるけれど、ゴールデンラズベリー賞にノミネートされるほどではなかろう、と思えるのだが。アメリカ人のこういうところが好きだ。アカデミー賞という名誉を与える場を大々的に喧伝しながら、こんな風にその年の最低な映画を選出して見せるところが素晴らしい。政治の世界の2大政党方式だって同じような構図に見える。
日本人は、残念ながら心の広さが見えない。思いやりだと言いながら、陰口をたたくのが好きな国民らしいし、馬っ鹿みたいに執念深く追い越した車を追跡したり、と心の狭さを実証するような出来事が最近頻繁に起こっている。そのくせ、身内にはどうにも甘い態度をとるのが日本人のDNA特徴のような気がする。それでも、お隣の国のように泣き叫びながら訴える人はそうざらにはいないことが救いだろうか。
『レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語』(Lemony Snicket's A Series of Unfortunate Events)
2004年・アメリカ 監督/ブラッド・シルバーリング
出演/ジム・キャリー/エミリー・ブラウニング/リアム・エイケン/ティモシー・スポール
レモニー・スニケット著『世にも不幸なできごと』シリーズの3つの作品を取り混ぜて、一つの映画作品にしているという。第77回アカデミー賞では4部門にノミネートされ、メイクアップ賞を受賞したらしい。濃いおっさんが出演していたけれど、あれがジム・キャリーだったのか。メイクアップ賞の一端のような感じだ。
活字の世界を映像化するとそのギャップが堪らないことがある。本を読んでいない私にはこの映画がどの程度活字と映像にギャップがあるのか想像すらできない。あまりにも幼さ過ぎる物語にちょっと引いてしまった。こういう物語をおもしろいと思えるのは、小さい頃から童話や昔話的なストーリーに慣れている人に違いない。
新しい大きくなったテレビの1本目の映画としては、映像には文句のつけようがなかった。字幕スーパーがくっきりと大きく見えるようになったことは、凄く嬉しい。念願のSHARP製、4T-C50AJ1というのが型番。さんざん日にちを費やした結果のテレビだった、Amazonで5年保証を付けて73,500円。もう既にこれより安くなっている。仕方がない。
『シェイプ・オブ・ウォーター』(The Shape of Water)
2017年・アメリカ 監督/ギレルモ・デル・トロ
出演/サリー・ホーキンス/マイケル・シャノン/リチャード・ジェンキンス/ダグ・ジョーンズ
2017年8月に第74回ヴェネツィア国際映画祭のコンペティション部門で上映されて金獅子賞を受賞し、第42回トロント国際映画祭で上映される[7]。北アメリカで2017年12月8日に広く一般公開された。暴力描写や自慰行為、刺激の強い性描写があるため日本国内では、東京国際映画祭で公開されたオリジナルバージョンはR18+指定で公開され、2018年3月1日に公開された本作は1か所にぼかし修正を加え処理したR15+指定バージョンの作品である。第90回アカデミー賞では作品賞など4部門を受賞し、第75回ゴールデングローブ賞でも2部門を受賞した。(Wikipediaより)
摩訶不思議な映画である。性描写がどうのこうのと書かれていたが、別になんていうことないシーン。普通の人間の営みが猥褻だと表現されてしまう世の中の方が不思議でならない。主人公の女性はある研究所の掃除婦、ある時不思議な生物が研究所に運ばれてくるのを見てしまった。このあたりが摩訶不思議な話の根源。変な生物がきちんと登場するところがミソだろう。
主人公は話は聞こえるが自分では喋れない障碍者。この手の登場人物は観客を委縮させてしまいがちだが、この映画に限って言えば必要不可欠な条件を持った人間に見えた。そのあたりも不思議な感覚。世の中には飄々と生きている人がたまに居る。毎日食事をしているのだろうか、何を食べているのだろうか、想像できないような人が居るのだ。
『ハングマン』(HANGMAN)
2017年・アメリカ 監督/ジョニー・マーティン
出演/アル・パチーノ/カール・アーバン/ブリタニー・スノウ/ジョー・アンダーソン
名優アル・パチーノと「マイティ・ソー バトルロイヤル」のカール・アーバンが、連続殺人鬼を追う刑事役で共演したサイコスリラー。殺人課の敏腕刑事レイ・アーチャーと相棒ウィル・ルイニーは、子どもの遊び「ハングマン」に見立てて犯行を繰り返す連続殺人鬼を追っていた。殺人は24時間ごとに起き、犠牲者の遺体には次の殺人へのヒントとなる文字が刻まれる。そんな中、犯罪ジャーナリストのクリスティ・デイビスが、連続犯罪の取材をするためレイたちに同行することに。さらなる殺人を防ぐべく奔走する3人だったが……。クリスティ役に「ピッチ・パーフェクト」シリーズのブリタニー・スノウ。新宿シネマカリテの特集企画「カリコレ2018/カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2018」(18年7月14日~8月24日)上映作品。(映画.comより)
アル・パチーノの刑事役も食傷気味の感がする。なんて言ってしまうと、名優とまで書いてくれている人たちにどやされそうな気がする。何の抵抗もなく話が進行して行く。事件がどんどん起こっても、それが予定調和のように見えてしまっては魅力ある映画ではなくなってしまう。
日本の2時間ドラマをきちんと観た記憶がない。チャンネルを回している途中に見る刑事や警察官、検視官などの姿が嘘っぽくて目も当てられない。ましてや滅多に拳銃を発砲しない日本の警察官が、テレビの中では平気で銃を扱っている。やめてくれ~と言いたくなるような嘘っぱち映像を見ることを由としない。
『女は二度決断する』(Aus dem Nichts)
2017年・ドイツ/フランス 監督/ファティ・アキン
出演/ダイアン・クルーガー/デニス・モシットー /ヌーマン・アチャル/ヨハネス・クリシュ
トルコ人移民に対する連続殺人や爆弾テロを行っていたネオナチ組織、国家社会主義地下組織(NSU)の事件を下敷きとする。連続殺人事件がNSUの犯行であると判明するまで、警察もメディアもトルコ人同士の抗争という見方を取っており、トルコ人社会を治安悪化の主犯として責める報道が相次いでいた。この事件では監督の友人の家族が殺されており身近な事件でもあったが、それだけではなく排外主義一般をテーマにすることを長らく考えていたという。監督はネオナチから脱退した人たちへの取材を繰り返し、「人は暴力では変わることができないが対話などで変わることはできる」ということを確信したという。一方で、「暴力がいかに次の暴力を生み出し、ヘイトがいかに次のヘイトをもたらすか。今作は、そうした連鎖についての物語だ」とも述べている。人は変わりうる、ということを信じることができるか、それとも暴力による復讐に進むかがテーマになっている。(Wikipediaより)
スピードを要求されるこの手の映画にとって、ドイツ・フランス映画ではちょっとばかりかったるい。主人公は夫と息子をテロにより失ってしまう。自ら目撃者となり裁判に持ちこむが「疑わしきは罰せず」という大原則の前に、容疑者は無罪となってしまう。自分の手でこの容疑者を殺してしまおうと考えるのは普通のこと。思い直すことがあって、悲惨な結末に至る過程が。
親日国だとされるトルコのことを十分に知ることはない。イスラム教国家でありながら、欧米のような様式が社会に浸透している珍しい国だという思いしかない。ユセフ・トルコという力道山時代のプロレスのレフリーがトルコ人だと思い込んでいた。今更ながらに調べてみたらトルコ人の両親の間に横浜で生まれた、とあった。インチキ・プロレスを手に汗握り見ていた子供の頃は、純真無垢だったのだろうなぁ~。
『ネイビーシールズ ナチスの金塊を奪還せよ!』(Renegades)
2017年・フランス/ドイツ 監督/スティーヴン・クォーレ
出演/サリバン・ステイプルトン/チャーリー・ビューリー/シルヴィア・フークス/J・K・シモンズ
1992年から1995年まで続いたボスニア・ヘルツェゴビナ紛争末期サラエヴォでの話。コメディと言ってもいいのだろうが、アクション・コメディなどというジャンルがあるなら、それで行ってみよう。ここでもまたナチスの遺産がコメディの素、基。
湖に眠るナチスの金塊27トンを引き揚げるという壮大な物語。しかもネイビー・シールズ(アメリカ海軍の特殊部隊)は紛争の真っただ中で戦っている最中なのだ。アメリカ映画なら軽快に進行して行くのだろうが、残念ながらこの映画はフランスとドイツの映画。期待するほどには格好良く進まないのは仕方のないことか。
たわいもない話、映画と言ってしまえば元も子もない話だ。アメリカ軍だって軍隊のはずなのだが、日本映画に見る日本軍との違いははるかかなたという感じだ。上官が部下を平気で殴り倒して規律を保っていた日本軍の光景は、もしかすると映画で植え付けられてしまった幻影かもしれない。もしかすると本当に近かったのかもしれない。本物の日本軍の兵隊さんだった父の話をもう少し親身になって聞けばよかった。
『ワンダー 君は太陽』(Wonder)
2017年・アメリカ 監督/スティーブン・チョボスキー
出演/ジュリア・ロバーツ/オーウェン・ウィルソン/ジェイコブ・トレンブレイ/マンディ・パティンキン
「僕は普通じゃないから - 心の中がのぞけたら - みんなも普通じゃないと思う - 誰だって一生に一度は称賛されるべきだ 」 『エレファント・マン』(The Elephant Man・1980年)という宿敵東宝東和が配給して大ヒットさせた映画を強く思い出した。
主人公はトリーチャーコリンズ症候群が原因で顔の形が変形しており、長らく入退院を繰り返していた。容態が安定した主人公は学校に通うようになるが、クラスメートたちの差別によるいじめを受けふさぎこんでしまう。自分の顔が普通ではないことを嘆いたが、両親の励ましを受け立ち直り、学校生活に適応するため、家族に支えられながら懸命に行動を起こす。当初、顔の形がみんなと違うと囃し立てたクラスメートたちも、彼との交流を通して「人間の内面の価値には外見で推し量れないものがある」ということを学んでいき、相互理解を得るようになる。(Wikipediaより)
言葉で書いてしまえば、お涙頂戴のハッピーエンド映画の様相しか伝わらない。どうやってハッピーエンドになって行くかのプロセスが映画の仕事になる。結果だけで生きていくのなら、こんな味気のない人生はないであろう、一つ一つのことには、それこそ必然も偶然もあり、そこをどうやって歩んできたかが人生なのだということが分からない人が多い。目の前の事柄は、すべてが自らの思考と行動の結果にしか過ぎないと。
『ジオストーム』(Geostorm)
2017年・アメリカ 監督/ディーン・デヴリン
出演/ジェラルド・バトラー/ジム・スタージェス/アビー・コーニッシュ/アレクサンドラ・マリア・ララ
"geostorm" という言葉は英語の辞書に載っていません。 この映画のシナリオを書いた人が新しく造った言葉でしょう。"geostorm" はおそらく、「大地・地球」を意味する接頭辞 "geo-" と「嵐」を意味する名詞 "storm" とを組み合わせて造った言葉でしょう。"geo-" という接頭辞は、"geography(地理)" や "geology(地質学)" など地面関連の語に使用されています。映画「ジオストーム」において、"geostorm" は「世界的な大災害」という意味で用いられています。 ~ こんな解説を見つけた。
2019年。災害史に残るような規模の自然災害が多数発生した後、18の国が共同で、国際気象宇宙ステーション(ICSS)を中心とした人工衛星のネットワークにより気象をコントロールするシステムを構築し、ダッチボーイと名付けた。システムの総責任者である主人公は、緊急時に上司の承認なしに異常気象を防いだためにアメリカ合衆国上院の査問会に呼び出され、査問会の議長を務めるバージニア州知事を罵倒してしまう。主人公は更迭され、弟が後任となる。(Wikipediaより)
SF災害映画。こんなジャンルがあったのか。今や世界的な異常気象が現実に続いている。地球温暖化が為せる業だと、専門家は口をそろえて言うが、億年という地球の存在からすれば小さなうねりのひとつではないかと思える。人間が生きていけなくなる気象が、また新しい地球の生命を創り出すという仮説が正しいと、私も思っている。
『インクレディブル・ファミリー』(Incredibles 2)
2018年・アメリカ 監督/ブラッド・バード
出演(声)/ホリー・ハンター/クレイグ・T・ネルソン/サミュエル・L・ジャクソン/ビル・ワイズ
「アニメ映画はあまり観ない」「アニメはめったに観ない」「アニメ映画を観ることはほとんどない」「極く稀にしかアニメ映画を観ない」 どの言い方も合っている。時々は意図的に観ることもある。『アナと雪の女王』(Frozen・2013年)は、早く観たかった映画。どこがそこまで支持されたのだろうか、という1点が興味の対象だった。映画もおもしろかった。
この映画は1作目を観た時は偶然だったが、その面白さに驚いた。この2作目を録画出来て幸運だと思ったくらいだ。相変わらず前作の内容に関してはほとんど覚えていないのは御愛嬌と自分を擁護する。ミセス・インクレディブルが活躍する映画になっている。まだおしめの取れない赤ん坊にもスーパー・パワーが備わっているという設定が何ともおもしろい。
アメリカ人の考えることがやっぱり恐れ入る。日本人の考えることは、音楽と同じようにマイナー・コード、例えば幽霊や心霊のようなものがほとんどで、アメリカ人の考えるメジャー・コードとは正反対のテーストを感じる。おおらかでハチャメチャでやることなすことが奇想天外でおもしろい。絶対に追いつかないことだ。100年経っても差は詰まらないだろう。
『ガーディアン 偽りの守護天使』(The Guardian Angel)
2018年・フィンランド/デンマーク/クロアチア 監督/アルト・ハロネン
出演/ピルウ・アスベック/ジョシュ・ルーカス/ラデ・シェルベッジア/サラ・ソウリエ
第2次世界大戦が終わってから6年後のデンマーク。銀行強盗犯が自分に犯行を指示したという“守護天使”とは誰か。ショッキングな実話を再現したヨーロッパ産サスペンス。1951年、コペンハーゲン。銀行強盗犯のひとりは“守護天使”に命じられたと証言するが、“守護天使”とは何者か……。心理学に精通する黒幕が、催眠術で他人を操ったという衝撃的な実話を再現。黒幕はしかも、捜査を担当する刑事の妻に近づき、彼女の心までコントロールしようとする。1950年代が舞台ながら、現在でも起き得る“洗脳”が題材なのが恐ろしく、最後まで目が離せなくなる戦慄編。こうWOWOWの映画紹介ページに。WOWOWの放送が日本初公開だという。
刑事が主人公。アメリカの警察ものや刑事ものは圧倒的におもしろいが、ヨーロッパ産のデカものはやはりどこか匂いが違う。アメリカ映画の動きの速い、ストーリー展開の激しいものに慣れてしまっているので、どことなくゆったりとしたしかも同じ事の繰り返しを厭わない映像にはちょっと不満が。
催眠術で銀行強盗を実行させるというあたりはなかなかおもしろい。実話に基づいた映画だというが、ナチスの後遺症があっちこっちに埋まっていた。1951年という時代にはまだ第二次世界大戦の清算が出来ていない社会構造だったことは理解できる。お隣の国からは70年経っても責任追及されて、忘れっぽい日本人には不愉快なことばかりが聞こえてくる。
『モリーズ・ゲーム』(Molly's Game)
2017年・アメリカ 監督/アーロン・ソーキン
出演/ジェシカ・チャステイン/イドリス・エルバ/ケビン・コスナー/マイケル・セラ
今日は2019年(令和元年)5月25日(土)。真夏のように暑い1日だ。北向きの部屋で開け放てるような窓もない部屋では温度計は29.1度を示し、湿度は34%。ようやく少し汗をかけるようになってきた。老体に鞭うって最後の時間を快適に過ごす算段をすることだけが日課。手当たり次第にWOWOWを録画しているが、わりあい新しい映画なのに、全くこの存在を知る由もない。
アメリカの伝記映画。出だしはおもしろいが、途中から同じようなことの繰り返しで飽きが来る。また寝てしまった。2時間20分の上映時間と知って、あと30分短くしていたら、たぶんもう少しおもしろげな映画になったのではなかろうかと思った。伝記もの、実話もの映画の欠点特徴は、どうしてもその事実とかけ離れた表現が出来ずに面白みに欠けるというところ。
オリンピックに出場寸前まで行ったアスリートの主人公が、挫折の果てに掴んだ職業が私設カジノ経営者・運営者。アメリカの法律によりチップはもらうが手数料を取らなければ合法だという。世の中に知られた著名人や有名人、映画スター・プロ・スポーツマンが限定客として毎週博打に明け暮れる。負けても負けても毎週顔を出せるのも、知り合った億万長者たちに投資の話を持ち掛けて、ギャンブルで負けた何倍もの金額を扱えるからだ、という一つのからくりもあった。金があればあるように、金がなければないように、人間とは結構賢明な動物なのかもしれない。この映画の中で語られた「チャーチルは言った、成功とは失敗から失敗へ情熱を失わずに進むこと」が印象に残った。
『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』(THE KILLING OF A SACRED DEER)
2017年・アイルランド/イギリス 監督/ヨルゴス・ランティモス
出演/コリン・ファレル/ニコール・キッドマン/バリー・コーガン/ラフィー・キャシディ
思わせぶりな邦題『いい匂いのする女』(Oregon Pine・2016年)を20分くらい観ただけで録画を消してしまった。間違っただけだが、内容はさほどのものではなかったような。原題にあるようにオレゴン産の木材・松の匂いが発端になってこんな下品な映画題名になっというあたりが窺えた。先日のボクシングを見るために臨時加入してすぐやめるつもりだったWOWOWがその月には解約できず、1か月分は払わなければならないと分かり、録画体制を変更していて手間取ってしまった。
そして次に観始まった『スリー・キラーズ』(Reincarnation・2016年)は、ものの10分もしないうちに観るのを止めたくなって、そうした。なんと薄っぺらな映画なんだろう、という感想だけが。WOWOWの映画録画に対する傾向と対策がまだまだ出来ていない。
さてさて、この映画になって、ようやくまともな映画にぶち当たった、と思ったら、とんでもない、稀に見る変な映画だった。2017年のカンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞した、というが、このカンヌ映画祭での受賞というのは曲者だ。このタイトルからして怪しい。この監督が、『籠の中の乙女』では常軌を逸したルールのもとで暮らす家族の狂気を描き、『ロブスター』では独身者が動物に変えられてしまうという世界を描いた、不条理で奇想天外な映画を連発する奇才という評判があるらしい。観ていてまったく不愉快な気分になりイライラしていた。それが監督の狙いなら、私はまんまとはまってしまったというべき。いやー、気持ちの悪い気分にさせられた。
『万引き家族』
2018年(平成30年)・日本 監督/是枝裕和
出演/リリー・フランキー/安藤サクラ/松岡茉優/池松壮亮/城桧吏/佐々木みゆ/高良健吾/池脇千鶴/樹木希林
タイトルだけ書いておいた『ある殺し屋』(KILLER FRANK・2015年)は結局5分持たずに断念してしまった。よくあることなので、あらためて書くのも躊躇われるが。この映画は、脚本段階では子どもに「お父さん」「お母さん」と呼んでほしいと願う主人公の想いが重点的に描かれており、撮影中につけられていた映画のタイトルは『万引き家族』ではなく『声に出して呼んで』だったという。
そうこのタイトルが気にくわない。善良な市民に誤解を招くようなタイトルは良くない。内容を観れば、さほど万引きを勧めているようには見えないので、媒体の映画紹介にこのタイトルと万引きという犯罪が大手を振っている様子が我慢ならないのだ。映画は至極つまらない。ここまでおもしろくない映画だとは想像すらできなかった。2時間という時間がどれだけ長いものなのかを味わった。
どうしてこうも自分の価値観と映画祭の価値観が違うのだろうか。不思議なくらい反比例するこの二つの溝は埋まらない。耳が悪くなったのかと思われるくらいセリフが聞き取れなかった。普段のアンプを通したスピーカーの音がぼやけた。仕方がなくテレビのスピーカーだけで聞くようになって、ようやく言葉が判別できた。何から何まで独りよがりでおもしろくない映画だった。
『ミッション:インポッシブル フォールアウト』((Mission: Impossible ? Fallout))
2018年・アメリカ 監督/クリストファー・マッカリー
出演/トム・クルーズ/ヘンリー・カヴィル/ヴィング・レイムス/サイモン・ペッグ
『ミッション:インポッシブルシリーズ』の第6作目。どれを観て、どれを観ていないかまったく分からない。おそらくワン・シーンを観て作品名を答えよ、などと言われたら赤面しかないだろう。トム・クルーズのアクションがますます激しくなって、それが映画の売りになっているのだろうか。そこまで身体を張ってやってくれても、そんなに驚かなくなってしまった。映画館できちんとした大きなスクリーンで観なければいけな作品のひとつ。
このシリーズの元々のテレビ映画「スパイ大作戦」はおもしろかった。毎週必ず見ていたばかりか、何年後かに再放送されたシリーズも欠かさず見ていた記憶がある。3度目の再々放送の時も、そうだった。知能犯のような仕掛けがもの凄く新鮮で刺激的だった。
オートバイや車のアクション・シーンが満載だが、飽きが来る。逆転の連続でいい加減にして欲しいと願う心まで芽生えた。さほど美味しくないメニューがずらりと並んでいても、食指が動かない様子に似ている。過ぎたるは及ばざるがごとし、といった按配だろうか。
『DESTINY 鎌倉ものがたり』
2017年(平成29年)・日本 監督/山崎貴
出演/堺雅人/高畑充希/堤真一/安藤サクラ/田中泯/中村玉緒/市川実日子/ムロツヨシ/要潤/大倉孝二/神戸浩/國村隼
『まんがタウン』(双葉社発行)に連載されている西岸良平の漫画作品。2017年7月現在、コミックスは34巻まで発行している。第38回日本漫画家協会賞大賞受賞作品。だというが、活字どころか漫画世界に疎い自分には、これぽっちも情報が入ってこない。漫画を嫌いだなどと言うはずもないが、漫画を読んで楽しんでいた短い時間があったことは確か。でもそれは、だいぶ小さい頃の話で、少年ジャンプが800万部の発行を誇る頃に、電車の中で読んでいる若者を見た時期には、もういい加減にしたらという言葉を投げつけたい心境になっていた。
息抜きとしての娯楽には大賛成だが、娯楽が生きがいになってしまってはどうしようもない。娯楽は、提供する側は仕事として没頭しなければならないが、その娯楽を楽しむのは他にあるメインの仕事ややらなければいけないことのための息抜きにならなければいけない。今だって電車の中でスマホを弄って感心だなぁと思っていると、たかが携帯ゲームに夢中になってるだけじゃないかというケースも少なくなく、日本の未来が心配になる老人の心境也。
2時間9分もあるこの映画はつまらない。日本映画独特の子供だましの話では興味が失せる。それなりのお金はかかっているが、特撮分野ではアメリカ映画に圧倒的に遅れている映像がはなし同様子供っぽくてこっちまで馬鹿にされているよう。さすがにアメリカ映画は腐っても鯛、内容や撮影技術で勝負できた昔の日本映画の世界的地位は、残念ながらもうとっくの昔に地に堕ちてしまったと言わざるを得ない。
『ザ・レジェンド』(Outcast)
2014年・アメリカ/中国/カナダ 監督/ニコラス・パウエル
出演/ヘイデン・クリステンセン/ニコラス・ケイジ/リウ・イーフェイ/アンディ・オン
時は12世紀。十字軍で活躍していた歴戦の騎士ジェイコブとガレインは、虚しい戦いの日々に辟易し極東の中国へと旅立った。一方その中国では、皇帝が実子により暗殺され、国中に不穏な影が渦巻いていた。皇帝を暗殺した長男シンは、皇帝の座を継ぐのに邪魔な幼い弟を殺害するよう兵に命じるが、弟は兄弟の姉であるリアンと共にすでに逃げ去った後だった。こうしてリアンと弟は決死の逃避行を開始するが、とある酒場で二人はシンの兵に見つかってしまう。二人の絶体絶命の危機を救ったのはそこに居合わせたジェイコブだった。二人と出会ったことで再び戦う目的を見出したジャイコブは山中で盗賊の頭に身を落としていたガレインを説得し、たった数人で大多数を相手に戦う決意をするのだった。(Wikipediaより)
中国が入ってくると話が大袈裟になって観るのもつらくなる傾向が強い。仰々しいという表現が相応しいのだろう。大したことのない事柄をさも大きいことだと言い放つ性癖は古来4000年の歴史の積み重ねなのだろうか。
最初はヨーロッパで起こっていた戦いのはずだったのに、時が移って舞台は中国の様子。東へと流れついた白人二人が巻き起こす活動劇とでもいえるだろうか。つまらない。国王を継ぐ者が兄なのか弟なのか、単純な話が色付けされて別の話になって行く。おもしろくない。中国嫌いが頭を擡げる。
『英雄の証明』(Coriolanus)
2011年・イギリス 監督/レイフ・ファインズ
出演/レイフ・ファインズ/ジェラルド・バトラー/ヴァネッサ・レッドグレイヴ/ブライアン・コックス
シェイクスピア悲劇『コリオレイナス』の舞台を現代に置いた映画化で、レイフ・ファインズの監督デビュー作。ローマ時代の話を現代の戦争様式に例えているので違和感が拭えない。攻める都市が「ローマ」で銃を使っていたのでは、頭の整理が出来なくて困る。
頑なな司令官候補者が人民の賛同を得られずに逆恨みして母国を攻撃する。そのあたりの人間の心の変化は理解できるが、簡単に司令官候補者を死刑だとまで責め立てる民衆の総意が理解できない。半分分かるところがあって、半分分からないところがあるという不思議な映画だった。指揮官までも意思をまげて人民に阿ねなくてはならないのかと怒る主人公の気持ちが良く分かる。
いざとなれば母や妻、子供の訴えに耳を貸すことになる無慈悲な指揮官も形無し。女の涙は剣よりも強しか。折れないで自我を通して欲しかった、と珍しく映画ストーリーに難癖を付けたくなる。
『ビッグショット・ダディ』(World's Greatest Dad)
2009年・アメリカ 監督/ボブキャット・ゴールドスウェイト
出演/ロビン・ウィリアムズ/ダリル・サバラ/アレクシー・ギルモア/ジェフ・ピアソン
ロビン・ウィリアムズが主演だった。思いがけないところで再会できた。好きな俳優だ。最初に彼の死について触れない訳にはいかない。カリフォルニア州の自宅にて2014年8月11日に縊死。63歳没。検視されて「自殺」と断定される。関係者によると、ウィリアムズは数か月に渡ってうつ状態にあり、アルコール依存症専門のリハビリセンターに入院したこともあったという。病理報告では、初期のパーキンソン病ならびにレビー小体型認知症であったとも伝えられ、これらの罹患が自殺の一因になったと一部メディアで説明されたが、娘のゼルダはその後のインタビューで「憶測では原因を語れない」と断定できない立場を取った。
彼の映画はおもしろい。彼が他人を笑わせるからではない。その持っている雰囲気が大好きなのだ。『パッチ・アダムス トゥルー・ストーリー』(Patch Adams・1998年)の中での彼は、まさにその天性のものを周りの人々に確実に伝えていた。あーいう風に入院している子供たちを笑顔にさせられたら、どれだけ嬉しいことだろうか。この映画、WOWOW放送時のタイトルは『ディア・ダディ 嘘つき父さんの秘密』だったが、DVDレンタル開始時に邦題がこの題名に変更されている。当初はiTunesなどでのネット配信でのみ映画本編を視聴することが可能だったが、2014年10月にDVDが発売されたという。
この映画も無理やりのコメディではない。どういう風に映画が結末を迎えるのかが凄く気になった久しぶりの映画だった。映画の中のせりふ、「自殺は、一時的な問題の恒久的な解決策だ。」「孤独に死ぬことが最悪な人生だと思っていた。だが違う。孤独を感じさせる人に囲まれる方が最悪だ。」 この二つがえらく印象に残った。ロビン・ウィリアムズは稀有な才能に溢れた役者だった。
『シンデレラ 前編・後編』(Cenerentola)
2011年・イタリア 監督/クリスチャン・デュゲイ
出演/ヴァネッサ・ヘスラー/フラヴィオ・バレンティ/ナタリア・ヴォルナー/ルース・マリア・クビチェック
現代版シンデレラ、作ったのはイタリア映画界、チネチッタという映画人なら誰もが知っている撮影所が登場したりして楽しい。勿論、シンデレラという物語をきちんと読んだことはない。長年人間をやっていると、シンデレラという物語にはカボチャの馬車やガラスの靴、動物たちとのお喋り程度の「知識」が身に付いてくるから不思議だ。
どう考えたって、この程度の映画を全編・後編と日本の映画館で公開することは不可能だろう。いきなりDVD発売しか道はないと思われるが、観ている分には結構楽しめた。日本の代表的なテレビ・ドラマ「おしん」は東南アジアを中心に有名だと聞くが、いつのどこの世界でも意地悪な人種が善良な人間をいじめる話は興味が尽きない。
どうして意地悪な人が存在するのか疑問だった。そんな人がいる事すら信じられないことだが、現実社会には掃いて捨てるほどの意地悪人間が存在することはうすうすようやく分かってきた。意地悪されたとしても、そう感じないほど優秀だったのかもしれない若い私は。歳をとってから意地悪されると、もういけません。自分で恢復する力がなくなってしまったので、小さな傷でも致命傷になりかねない。惜しまれているうちに居なくなった方が賢明だと思うのは正しいことだと。
『バッド・ウェイヴ』(Once Upon a Time in Venice)
2017年・アメリカ 監督/マーク・カレン
出演/ブルース・ウィリス/ジェイソン・モモア/ジョン・グッドマン/トーマス・ミドルディッチ
悲惨な映画だった。ブルース・ウィリスが探偵でアクション・コメディを展開する、と聞いたら何それ!と全員が摩訶不思議な顔をするだろう。その通りなのだ。この探偵さん、自分の飼っているチンケな犬が大好きで、それをこれまた大好きな姪に預けて楽しんでいる。やることなすことがドジで間抜けで、というハチャメチャ・ストーリーなのだ。
アメリカ西海岸の物語。ロスにあるベニス・ビーチが頻繁に出てくる。アメリカの地名は世界各国の有名な地名が名付けられている。人間だって世界各国からアメリカン・ドリームを夢見てやってきた人たちが多いのと同じようなものか。スペイン語の地名・道路名が多いと感じていたが、このベニス・ビーチはイタリアからのものだろう。種馬イタリア人と揶揄されるイタリア系アメリカ人も数多く映画に登場する。
日本ヘラルド映画配給作品『女と男の名誉』で、東海岸のサラリーマンが西海岸に出張に行くシーン、スーツにネクタイでピシッと決めていた男が飛行機の中でアップになると、なんと黄色いアロハ・シャツを着ていた。その時に初めてアメリカの東と西の違いを覚えたのだった。
『ユージュアル・ネイバー』(THE HARVEST)
2013年・アメリカ 監督/ジョン・マクノートン
出演/サマンサ・モートン/マイケル・シャノン/メドウ・ウィリアムズ/チャーリー・ターハン
普通の人々ならぬ普通の隣人は普通ではなかった。ホラー映画というジャンルに属するのだろう。映画の面白味が発揮されているが、終始暗いムードに包まれていて私は好きではない。病気の息子がいつもベッドで寝ていると思わせて、実は彼は新生児の時に病院から誘拐してきた少年だった。実の息子に肝臓移植、心臓移植を秘かに行うためにさらってきた生贄だったのだ。母親は医者である。
てな感じなのだが、なんとまー見ていると嫌になってくるのが良く分かる。隣に越してきた家族の中に同じような年頃の好奇心旺盛な少女がいた。隣といっても、家と家の間に小さな森があり川も流れている。アメリカの田舎ではこんな光景もよくあることなのだろう。
向こう三軒両隣という組合組織が田舎にはある。たぶんというか勿論今でもあるだろう。葬式を出せば、必ずこの組合の人たちで助け合うのが普通だが、普通以上に面倒な存在であることも確か。そういう生活を子供の頃していた身にとっては、団地生活の付き合いは慣れなかった。今でも隣近所の付き合いをもっとしたいと思っていても、自分だけではどうにもならない。人間生活の一部だろう。
『人生の動かし方』(The Upside)
2019年・アメリカ 監督/ニール・バーガー
出演/ブライアン・クランストン/ケヴィン・ハート/ニコール・キッドマン/ジュヌヴィエーヴ・エンジェルソン
今日は平成31年4月30日、明日は令和元年5月1日だ。「AMAZON ORIGINAL」と書かれていて、絵柄は「最強のふたり」とほとんど同じようだったので観るきっかけが掴めなかった。調べてみたら、2011年に公開されたフランス映画『最強のふたり』をリメイクした作品であるとあった。なるほど。おもしろいと思っていた映画なので、今回も新鮮におもしろかった。
資産家の主人公は四肢の麻痺を抱えており、介護者なしでは生活できない状態にあった。主人公は気難しい性格であったため、雇われた介護者は早々に辞職してしまうありさまであった。新しい介護者を探していた主人公の下に、もう一人の主人公の若者がやって来た。主人公の周囲の人々はもう一人の主人公に前科があることに難色を示したが、主人公は何を思ったのか彼を介護者として採用することにした。というのが物語の始まり。
率直に意見を言ってくれる人がどれだけいるかがその人の人生をも決めかねない。面倒くさいことだから、余計なことだから、鬱陶しがられながら愚直に意見を述べてくれる他人は、そうざらにはいない。言う方だって疲れるのだ。それを言わなくなってしまったら、言われなくなった方の悲劇だろう。まさしく神様だけが知っていることに属する事柄だけど、誰だった気持ちよく時間を過ごしたいと願うばかりがおおすぎるから。
『パシフィック・ウォー』(USS Indianapolis: Men of Courage)
2016年・アメリカ 監督/マリオ・ヴァン・ピーブルズ
出演/ニコラス・ケイジ/トム・サイズモア/トーマス・ジェーン/マット・ランター
インディアナポリス(USS Indianapolis, CA-35)は、アメリカ海軍のポートランド級重巡洋艦。1945年7月26日にテニアン島へ原子爆弾を運んだ後、7月30日フィリピン海で日本の潜水艦伊58(回天特別攻撃隊・多聞隊)の雷撃により沈没した。第二次世界大戦で敵の攻撃により沈没した最後のアメリカ海軍水上艦艇であるという。
乗員1,199名のうち約300名が攻撃で死亡し、残り約900名は8月2日に哨戒機によって初めて発見されてから5日後に救助が完了するまで、救命ボートなしで海に浮かんでいたが、水、食料の欠乏、海上での体温の低下、これらからおこった幻覚症状、気力の消耗などで多数の乗組員が死亡した。それに加えサメによる襲撃が心理的圧迫を強くした。その後映画およびディスカバリーチャンネルの番組等で、サメの襲撃が演出として過剰に語られたため、大多数がサメの襲撃の犠牲者になったかのように思われているが、おもな原因は救助の遅れと体力的限界が死亡の原因といわれている。救助された生存者は わずか316名であった。
映画は酷くつまらなかった、と言ってしまえば誰に対しても失礼なような気がする。歴史的事実だから。原爆投下の正当性はアメリカではまだ半分くらいの確率らしい。第二次世界大戦は原爆を投下しなくても、間違いなく終わっていたという専門家の説が多いが、当事者にとっては未来のことなど誰にも分からないことと一笑にふすだろう。敗戦国となった日本には何の正当性もない。それが勝負事の原則だ。仕方がない。
『ボヘミアン・ラプソディ』(Bohemian Rhapsody)
年・イギリス/アメリカ 監督/ブライアン・シンガー
出演/ラミ・マレック/ルーシー・ボイントン/グウィリム・リー/ベン・ハーディ
日本での興行収入が100億円大台を突破しているらしい。どこにそこまでの魅力があるのだろうかというのが最大の関心事項だった。音楽物で成功物語は想像の付く範囲だが、この映画はちょっと予想とは違っていた。人間の才能が多くの人に認められて、成り上がって行く様は、外から眺めていても涙が出るほど気持ちのいいものだ。
伝説的ロックバンド「クイーン」のボーカリスト・フレディ・マーキュリーが主人公。第76回ゴールデングローブ賞では作品賞(ドラマ部門)と主演男優賞(ドラマ部門)を獲得。第91回アカデミー賞では、作品賞を含む5部門にノミネートされ、主演男優賞、編集賞、録音賞、音響編集賞の最多4冠を獲得した。興行収入は音楽伝記映画のジャンルで史上1位、日本では2018年公開の映画として最高となった。日本では『ボラプ』『ボヘラプ』という略称が用いられることがある(Wikipediaより)というけどホント?なんでも短くしてしまうのは凄いけれど。
ベット・ミドラーの『フォーエバー・フレンズ』(Beaches・1988年)という映画を思い出した。感動して涙を流す映画だと記憶しているが、今日の音楽映画とどこかが違う気がする。世の中が変われば人間の心の中も少しばかり変わってくるのは必然。どちらがよりいいということではないが、ボヘミアン・ラプソディがかなり評判がいいという話を聞いて、描き切れていない人間の心と映画的技法にちょっと疑問がある。
『陰謀のセオリー』(Conspiracy Theory)
1997年・アメリカ 監督/リチャード・ドナー
出演/メル・ギブソン/ジュリア・ロバーツ/パトリック・スチュワート/キルク・カザート
サスペンス映画というジャンルに入るこの映画だが、観ているとどうにもコメディに見えて仕方がなかった。それくらい奇妙な主人公と事件の数々、製作者の意図するところだろうか。もしかすると3度目の鑑賞になるかもしれないと思い始まったのは、だいぶ経ってから。前回にはコメディという感触はまったくなかったような気がするが相変わらずよく覚えていない。
ニューヨークでタクシー運転手をするジェリー・フレッチャー(メル・ギブソン)。陽気だが変人の彼は、夜な夜な乗客たちに様々な都市伝説的な陰謀論を語り聞かせていた。だが彼は、タクシー運転手になる以前の記憶が無い。ただ一つの記憶は、司法省ニューヨーク局の連邦検事であるアリス・サットン(ジュリア・ロバーツ)をストーキングし、その安全を毎日確認しなければならないと言うこと。そして彼のもう一つの顔は、陰謀論に基づいた時事解説を載せる月刊ニュースレター「陰謀のセオリー」を個人で編集・発行しているということ。(Wikipediaより)
ラストシーン近くになって改めて観た記憶が蘇った。それとラストシーンも確かに。途中のストーリーはいったい何だったのだろうか。確かにミステリーと言われれば、そうだねと答えられるかもしれない。アメリカの幅の広さを見る思い。FBIやCIAに属さないその上の国家最高秘密機関なるものが登場して、映画はおもしろくなるが、実際はどうなのだろう。コメディではなく本格サスペンスだと思い込んで観れば、かなりおもしろい映画になるだろう。
『アトミック・ブロンド』(Atomic Blonde)
2017年・アメリカ 監督/デヴィッド・リーチ
出演/シャーリーズ・セロン/ジェームズ・マカヴォイ/ジョン・グッドマン/ティル・シュヴァイガー
おもしろくないスパイ・アクション。外国映画の欠点は名前が明確に覚えられないこと。顔と名前が一致しなくては、諜報活動では致命傷だ。誰が味方で誰が敵なのかの見分けがつかなければ、物語はまったくおもしろいものではなくなってくる。その典型的な映画かもしれない。
なにしろ、ちょうどベルリンの壁が崩壊した1989年秋の話で、まだまだ冷戦が続いている最中、スパイのリストをめぐりイギリスのMI6、ソビエトのKGB、そしてどこにでも顔を出すアメリカのCIAの三つ巴のスパイ合戦が繰り広げられる。原題通り、逞しき女スパイが不死身の身体でストーリーに生き残る。主演のシャーリーズ・セロンの顔が分からない。同じことをどこかで書いた記憶がある。一発喰らえば死んでしまいそうな打撃を受けても戦い続けるスパイ連中は、あまりにも現実感から離れていて、観客の心も離れてしまう。
1989年はくしくも昭和が終わり平成が始まった年。同じ年にベルリンの壁が崩壊するなんて誰が予想できただろうか。専門家は「兆候はあった。」などと知ったかぶりをするのがおちだが、一瞬先を予測できる人なんて何処にもいない。毎日のように天気予報が外れたなんていう世界が、相変わらずの日常だ。ここまで人工衛星の情報をもとに予測する世界でも、所詮は前例の焼き直しを踏襲するだけ。神の領域に近づいたと思ってはいけない類の話しだろう。
『ナチスの愛したフェルメール』(Een echte Vermeer)
2016年・ オランダ/ベルギー/ルクセンブルク 監督/ルドルフ・バン・デン・ベルグ
出演/ユルン・スピッツエンベルハー/リゼ・フェリン/ルーラント・フェルンハウト
ヨハネス・フェルメール(Johannes Vermeer、1632年 - 1675年)は、ネーデルラント連邦共和国(オランダ)の画家で、バロック期を代表する画家の1人。映像のような写実的な手法と綿密な空間構成そして光による巧みな質感表現を特徴とする。フェルメール(Vermeer)の通称で広く知られる。ナチス・ドイツの高官ヘルマン・ゲーリングなどにフェルメールの絵画を売った罪で逮捕・起訴された主人公が予想外な告白をした。
主人公は、実在の天才贋作画家ハン・ファン・メーヘレン、名前が似ていて紛らわしい。観るという作業が進まない。同時にひとつのことしか出来なくなってしまったツケが日常生活に影を落としている。フェルメールの絵って?と調べてみたらひとつの絵だけを知っていた。おそらくこの絵はほとんどの人が知っているに違いない。タイトルを『真珠の耳飾りの少女』という絵画だった。映画はつまらなかった。進行が遅いのと同じことの繰り返し。なんとか最後まで行き着いたという感じ。
エンド・クレジットあたりにこんな言葉が書かれていた。「ファン・メーヘレンは6年かけ フェルメールの贋作を制作 彼の贋作技術は今も評価が高い 彼の『エマオの食事』はボイマース美術館に今も展示されている ポストモダンの視点から見ると ファン・メーヘルの作品は芸術である」。
『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』(Fantastic Beasts and Where to Find Them)
2016年・イギリス/アメリカ 監督/デヴィッド・イェーツ
出演/エディ・レッドメイン/キャサリン・ウォーターストン/ダン・フォグラー/アリソン・スドル
2013年9月に、「ハリー・ポッターシリーズ」の新作として映画化が発表され、全5部作予定になっているという。このニュースを聞いたことがあるような、ないような。この作品では、原作者のJ・K・ローリング自身が初めて脚本を手掛けることとなった。英語では同名となる著書『幻の動物とその生息地』(Fantastic Beasts and Where to Find Them)に触発された作品であるという。舞台は禁酒法時代1926年のニューヨーク、「ファンタスティック・ビースト」シリーズの第1作であり、ハリー・ポッターシリーズの映画で始まるウィザーディング・ワールドの9作目となるという映画ファンなら知っていることを知らない。ハリーポッター・シリーズをたぶん3作目くらいまでしか観ていない。同じことの繰り返しという印象が強くなって、観る興味を失ったというのが本音だ。
中身はハリーポッター・シリーズと同じようなものだった。あまりにも魔法が使え過ぎるのが興味を削ぐ。ニューヨークにも魔法を使える種族がいるというのがストーリーなのだが、空想にしてもちょっと無理がある。夢の世界を他人に押し付けるのには、それなりの納得性が必要になってくる。
あまりにも現実離れした物語には子供騙しという烙印を押すしかない。この映画はお金もかかっているし、アクションも立派でなかなかのものだと思うが、一歩映画の中に心を踏み入れる勇気が湧いてこない。考えが理解できても、言っていること、やっていることにどうにも同調できない現実社会に似ている。だからこそ、少しでも心の安らぐ仲間を見つけたら離したくなくなるのだろう。
『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』(Fantastic Beasts: The Crimes of Grindelwald)
2018年・イギリス/アメリカ 監督/デヴィッド・イェーツ
出演/エディ・レッドメイン/キャサリン・ウォーターストン/ダン・フォグラー/アリソン・スドル
今日は2021年(令和3年)5月3日。
『ブラックブック』(蘭: Zwartboek、英: Black Book)
2006年・オランダ 監督/ポール・バーホーベン
出演/カリス・ファン・ハウテン/セバスチャン・コッホ/トム・ホフマン/ハリナ・ライン
今日は2019年(平成31年)4月13日(土曜日)。この映画はちょっと前に観ていたのだが、訳あって本日の登場となった。といっても、以前にも観ているので、重ね書きということになる。
気になっていた映画があった。ナチスもので、ドイツの将校に取り入るために、髪の毛ばかりか下の毛も金髪に染めて敵陣に乗り込むユダヤ人女性を描いたものだった。この映画だった。題名を見てもピンとこなかったが、一言読んだ解説に、もしやという予感はあった。
前回観た時の印象の悪さが気になっていたのだ。下の毛を金髪に染めるというシーンを映画製作者は敢えてきちんと撮影しているのにも関わらず、日本の法律運用者はそこをボカせと命令している。想像がつくから良いだろうという安易な判断すらもない、ただ法律を厳格に適用する日本的文化程度の低さが、いたるところに蔓延っていることに耐えられない気持ちになったものだった。
今回の放映ではそのシーンがボカされていない。別になんていうことないシーンだが重要なシーンとして、映画の進行を妨げない。その後の別のドイツ人将校がセックス直後にすっぽんぽんでトイレに入ってきておちんちんをぶらぶらさせているシーンでは、さすがにおちんちんはボカされていた。それぐらいなら仕方がなかろうと思える男のイチモツと状況。
『フィフス・ウェイブ』(The 5th Wave)
2016年・アメリカ 監督/J・ブレイクソン
出演/クロエ・グレース・モレッツ/ニック・ロビンソン/ロン・リビングストン/マギー・シフ
主演のクロエ・グレース・モレッツについて:2010年公開の『キック・アス』で“ヒット・ガール”を演じ知名度を上げた。 このキャラクターは11歳の少女でありながら、父親と共にスーパーヒーローとして登場し、薙刀、バタフライナイフ、銃器、マーシャルアーツなどを使用し、ギャングを叩きのめしていく。放送禁止用語を多用するこの役柄については、(役柄の上で)「あの文脈だと特に意味を持たない言葉で、『おい!』と同じような形で使っているわけでしょ」と語っている。しかし監督と脚本家に「なるべくコミックを忠実に再現したいから、とりあえずワンテイクだけ言ってくれ。そのテイクは使わないだろうから」と説得されたが、結局使われたとも語っている。マーシャルアーツ、ガンアクションなどの過激なアクションシーンの9割を自分自身で演じ、撮影前に7か月の訓練を行った。 道徳的非難もありながらこの演技で広く賞賛され、映画評論家ロジャー・イーバートは、4つ星中1つ星の映画としながらも「ヒットガールのキャラクターについて物議はあるだろうが、モレッツは存在感があり魅力的である」と評している。クロエはキック・アスの撮影に入る前、参考に『キル・ビル』を観たこと、またヒット・ガールを演じるに際し、アンジェリーナ・ジョリーに一番影響を受けたと語った。
薦められて観た「キック・アス」がめちゃめちゃおもしろくって、その時の彼女はまだ13才だったが今や22歳、特徴のある顔立ちは珍しく忘れないでいられるのが嬉しい。この映画はSFスリラー映画というジャンルに属するらしいが、ちょっとばかりおもしろくない映画で、よくぞ最後まで作りきったなぁ、という程度の印象しか残らない。
地球人ではない宇宙人が人間と同じ格好で目の前に現れた時、あなたならどうする、という疑問符を投げかけてくれるだけが救いの道だった。ただ自分の家族だけを必死に守ろうとする身勝手さが顕著なアメリカ人の姿も映し出していた。そこまで家族を守るのなら、その前に自分の目の前の人にももっと敬意を払わなければ、と思うのは日本人のDNAなのだろうか。
『PUSH 光と闇の能力者』(Push)
2009年・アメリカ 監督/ポール・マクギガン
出演/クリス・エヴァンス/ダコタ・ファニング/カミーラ・ベル/クリフ・カーティス
かつてナチスが始めた超能力を持つ兵士の開発研究を、各国の政府がディビジョンと呼ぶ部署を設けて続けている。ディビジョンは市井の超能力者を野生動物のように狩り、使役し、人体実験を行っている。 主人公ニックは10年前に米国ディビジョンに父を殺された過去を持つムーバー能力者で、以来逃亡生活を続け、現在は香港に潜伏している。(Wikipediaより)
ディビジョンだ、スニファー能力者、ウォッチャー能力者、ブリーダー能力、スティッチャー能力者、だと超能力を発揮してくれるが訳が分からない。製作者の頭の中でしか理解できない代物。観客はポカーンとただ口を開けて観ているだけ。あるいは、子供だましのトリック映像を観ている感覚に襲われた。懐かしい香港が舞台で、「あぁ香港、ホンコン、ホンコン」と叫んでみたってもう行くこともないだろう。
超能力なんて持てれば素晴らしいが、人間社会の凡人生活には縁もゆかりもないこと。漫画や夢の中でさえ信じられないことは、現実逃避としか見えない。昔、もしかするとちょっと超能力的なところがあるかもしれないと錯覚したことは、間違いなく錯覚だった。今やただのじじいに成り下がった姿は、人間本来の欲も希望もない真っ直ぐな人間に戻っているような。
『ジュラシック・ワールド/炎の王国』(Jurassic World: Fallen Kingdom)
2018年・アメリカ 監督/J・A・バヨナ
出演/クリス・プラット/ブライス・ダラス・ハワード/レイフ・スポール/ジャスティス・スミス
『ジュラシック・パーク』シリーズの映画第5作目ということだが、3作目と4作目を観たかどうかの記憶がない。ジュラシック・ワールド事件から3年後の2018年。パーク崩壊後も、イスラ・ヌブラル島では恐竜達が自由に島中を徘徊して生きていた。が、島北部のシボ山で火山噴火が起き、島の恐竜達は存亡の危機にさらされる。そんなところから始まるが、途中抜けていたとしても、なんとなくストーリーは繋がって見える。
アクション・冒険映画の典型のような映像はやっぱり観ていて楽しい。お金をかけられない映画と比較すれば一目瞭然、映画らしい映画が少なくなってきてしまった昨今、たくさんのこういう映画の出現を望む一人。大きいスクリーンで観たいと思わせてくれる。今、39インチから50インチテレビに交換しようと結託している最中、帯に短し・・・・なんとかで、決断が鈍っている。
生きているうちにもっと多くの時間を映画で楽しみたい。大きい画面は間違いなく満足度を増加させてくれる。余計な4Kや8Kテレビの出現、しかも「対応」や「チューナー内蔵」と価格を含めて選択肢が多すぎる。同じ大きさでも何種類も存在する。メーカーの思惑を知れば、少しは決断が速くなるのだろうが。
『マネーモンスター』(Money Monster)
2016年・アメリカ 監督/ジョディ・フォスター
出演/ジョージ・クルーニー/ジュリア・ロバーツ/ジャック・オコンネル/ドミニク・ウェスト
1988年公開の『告発の行方』と1991年公開の『羊たちの沈黙』で2度アカデミー主演女優賞を受賞したジョディ・フォスターが監督した作品はおもしろかった。テレビの人気番組「マネーモンスター」では資産運用、株の動向などを大胆に予想する。主人公はその番組の司会者とプロデューサー、アドリブ得意な司会者だが、突然暴落した会社の株価の責任を追及するために暴漢らしき若者が拳銃と爆弾を抱えてナマ番組に乱入してきた。
番組は拳銃を持つ青年と司会者とを映しながらまったくライブ状態となって放送されている。どういうストーリー展開をしたら観客が喜ぶだろうかと監督は良く分かっているようだった。たいした作品に出演している彼女ならではの演出のようにも見える。映画監督が私説小説的に他人の目を一切感じないで映画を作ってしまうケースも多い中、地道に映画のおもしろさを訴えてくれて嬉しい。
自爆装置を身に着けさせられた場合、狙撃すらも封じられる。犯人は爆弾のボタンを押し続けていて、離すと爆発するという仕掛けだった。ナマで進行する迫力のある攻防劇はおもしろい。様々な企業の秘密も暴露され、株価がアルゴリズムで操作されているなど、難しいシステムも紹介されて勉強になった、と言っておこう。
『ワイルド・ギャンブル』(Mississippi Grind)
2015年・アメリカ 監督/アンナ・ボーデン
出演/ライアン・レイノルズ/ベン・メンデルソーン/シエナ・ミラー/アナリー・ティプトン
ゲリーはギャンブルで生計を立てていたが、ここ最近は思うように稼ぐことができずにいた。そんなある日、ゲリーがアイオワ州のカジノでプレイしていると、カーティスという年少のギャンブラーに遭遇した。テキサス・ホールデムで大勝ちして気前が良くなったカーティスはゲリーにバーボンを奢った。数時間後、再びカーティスに遭遇したゲリーは、さっきのお返しに酒を一杯奢ってやった。ゲリーがトランプで勝つ秘訣を尋ねたところ、カーティスは「勝ち負けにこだわらないことだ」と答えた。意気投合した2人はそのまま酒を飲み続けた。(Wikipediaより)
見知らなかった二人が意気投合したというのだろうか、セントルイス→メンフィス→ニューオーリンズへとロードムービーのようなギャンブル二人旅が始まった。時には人生訓のような言葉の言い合いが嘘っぽく見える映画ストーリー、日本公開は出来なかったらしいがさもありなん。
所詮はギャンブル、大儲けしてすぐまた堕ちていく人たちがどれだけ多いことか。パチンコをする人は自分が勝ったことを吹聴する人が多い。麻雀では負けたと喋る人が多い。ギャンブルの特性なのだろうか。刹那的な快楽に身をゆだねがちな人は、終始一貫後先を考えずに人生を生きている。それでも何とか生きていけるのが人生、他人のことを言えるほど立派な人生を歩んでいない自分も同類だ。
『奇跡の絆』(Same Kind of Different as Me)
2017年・アメリカ 監督/マイケル・カーニー
出演/グレッグ・キニア/レネー・ゼルウィガー/ジャイモン・フンスー/ジョン・ボイト
「他人からどうこう言われる筋合いはないけど、私は自分の顔を変えたり、目の手術をするという選択はしていません」と、整形疑惑をキッパリと否定。あくまで「このことは誰にとっても大事ではない」と前置きした上で、「でも(整形の)可能性について、ジャーナリストが公の場で語ることにより混乱を招いていること、そして社会の肉体第一主義的な考えを定着させることにつながる」と考え、真実を語る決意したという。
さらにレネーは「痩せすぎ、太り過ぎ、老化してる、茶髪の方がいい、太もものセルライト、フェイスリフト・スキャンダル、薄毛問題、太っているのか妊娠か、変な靴、汚い足、美しくない笑顔…。そんな見出しが、密かに人の価値を決めるようになっている。今の社会は、人々が“社会的に認められる”ために存在し、“プロフェッショナルとして価値を見出される”必要があると、感じているの。笑いものにされて、傷つかないようにね」と言及。「その風潮は、若い世代や感受性の強い人々にとって、大きな問題を引き起こしかねない。偏見や自己否定、いじめ、などを引き起こす、トリガーにもなりかねないわ」と、“外見至上主義”なメディアのあり方に苦言を申し立てた。(SPUR.JP より)
『ブリジット・ジョーンズの日記』で有名なレネー・ゼルウィガーが整形疑惑に答えたという。映画を観終わってこの事実を知らされるまでこの映画の主人公が彼女だとは気が付かなかった。歳のせいも少しあるが、好きな顔立ちだったので、凄く意外だった。邦題ほどには面白味がなくちょっと残念な映画だった。事実に基づくと大上段にかぶったようなタイトル・クレジットだったので、少し期待していたのだが。映画が詰まらないのではなく、その事実が映画にするほどおもしろくないということなのだろう。
『カリートの道』(Carlito's Way)
1993年・アメリカ 監督/ブライアン・デ・パルマ
出演/アル・パチーノ/ショーン・ペン/ペネロープ・アン・ミラー/ブランコ - ジョン・レグイザモ
ニューヨーク州最高裁判所の元判事エドウィン・トレスの同名小説、およびその続編『それから』を原作とする。ゴールデングローブ賞2部門の候補に挙がったという。元麻薬王の主人公は、親友の弁護士の尽力によって、30年の刑期だったものがたった5年で刑務所から出所した。彼が5年ぶりに見た街と人々は、仁義も信義も失って変わり果てていた。アル・パチーノのような役者が出ていると映画が引き締まる。監督ブライアン・デ・パルマはヘラルド時代に配給した「殺しのドレス」で印象に強く残っている。
おもしろい解説があった。原題“Carlito's Way”はフランク・シナトラの「マイ・ウェイ」にちなんでつけられたが、劇中に「マイ・ウェイ」は一回も使われていない。『それから』をベースにしているのに映画のタイトルが『カリートの道』なのは、『それから』と原題が同じマーティン・スコセッシ監督の『アフター・アワーズ』(After Hours)との混乱を避けるためである。生い立ちから30代までのカリートを描いた『カリートの道』と40代のカリートを描いた『それから』が原作としてクレジットされているが、映画で描かれているのは主に『それから』の部分である。
カリートとイタリアン・マフィアとの電車でのシーンは、予算の都合で見送られた、アンタッチャブル (映画)のクライマックスシーンを応用している。クライマックスの銃撃戦が行なわれるエスカレーターは、ニューヨークのグランド・セントラル駅に実在する。映画では非常に長いエスカレーターに思えるが、実際はかなり短い。これはデ・パルマの得意する撮影テクニックであり、アンタッチャブル (映画)の乳母車のシーンにもその手法が使用されている。(Wikipediaより)
『リップヴァンウィンクルの花嫁』
2016年(平成28年)・ニホン 監督/岩井俊二
出演/黒木華/綾野剛/Cocco/原日出子/地曵豪/和田聰宏/金田明夫/りりィ
知る人ぞ知る手作りアメリカン・バーボンの銘酒にリップ・ヴァン・ウィンクルという名の酒がある。1800年代中頃から4代に渡るヴァン・ウィンクル家が作り続けたオールド・リップ・ヴァン・ウィンクル醸造所が家族の名を冠した由緒あるバーボン。リップヴァンウィンクルは、アメリカ版浦島太郎といわれた寓話の主人公の名前、リップ・ヴァン・ウィンクルは、旅先で出会った小人に酒をご馳走になります。あまりに美味しいお酒なので、飲み過ぎて寝てしまい、目覚めると数十年経ってしまっていた、という昔話。
特異な映画題名の内容もちょっと不思議な映画だった。主人公はインターネットで物を買うかのようにSNSで知り合った彼と簡単に結婚してしまった。ところがどっこい、いつの間にか簡単に離婚する羽目に陥って人生の進路が闇に入って行く。若い女が嵌められてどん底に落とされていくような流れだったが、結局はそうではなかったという救いがあって安堵した。本編が3時間と長過ぎる。描かなくてもいい些細なことを映像化するので、飽きが来るのは仕方がないことだろう。CM時間を入れて録画はなんと3時間25分だった。
主人公の母親は若い男と駆け落ちして離婚していた。親族もさほどいないらしく、結婚式に出席する親族や友達をそういう人を集める業者に託していた。そんな商売が本当にあるのだろうかと驚くばかりだが、もしかするとちゃんと存在するのかもしれない。そんな仲介業者が主人公の運命を勝手に左右する。それにしても何も出来ない主人公の若き女性、その程度の分別なら人生が何処に行ったって自分のせいだと後悔しようもない。そんな感じがする。ここまで酷い人間も珍しいと思える。
『アンデルセン物語』(HANS CHRISTIAN ANDERSEN)
1952年・アメリカ 監督/チャールズ・ヴィダー
出演/ダニー・ケイ/ファーリー・グレンジャー/ジジ・ジャンメール/ジョーイ・ウォルシュ
“これはハンス=クリスチャン・アンデルセンの伝記ではなく、そのおとぎ話の世界の映画化”である旨の文章で始まる、テクニカラーの見本のような色彩感溢れる美術と撮影が嬉しい童話ミュージカルの良心作。ミュージカルだと分かってから観る速度が急速に落ちた。落ちたというより、歌になった瞬間に休憩に入る始末。それでも、何故か観る事を止めようとは思わなかった。
ハンス・クリスチャン・アンデルセン(Hans Christian Andersen、1805年4月2日 - 1875年8月4日)は、デンマークの代表的な童話作家、詩人。活字に親しまない者には彼の名前は眩し過ぎる。火うち箱、エンドウ豆の上に寝たお姫さま、小クラウスと大クラウス、イーダちゃんの花、親指姫、いたずらっ子、旅の道連れ、人魚姫、裸の王様、しっかり者のスズの兵隊、野の白鳥(白鳥の王子)、空とぶトランク、ひなぎく、パラダイスの園、コウノトリ、天使、小夜啼鳥(サヨナキドリ)、仲よし、みにくいアヒルの子、もみの木、雪の女王、赤い靴、マッチ売りの少女、ある母親の物語、とび出した五つのエンドウ豆、最後の真珠、沼の王の娘、パンをふんだ娘、雪だるま、父さんのすることはいつもよし、蝶、かたわもの。
今、『1日1話3分で読める 頭のいい子を育てる[おはなし]366』という本を借りて読んでいる。毎日1話が1ページに書かれている。童話を読んだ記憶のない自分には新鮮だ。なかなかページが進まないが、ようやく7月に入ったばかりだった。この映画の中に出てくるおはなしも少し書かれていて、そのあたりがタイミングよく興味深かった。
『レディ・バード』(Lady Bird)
2017年・アメリカ 監督/グレタ・ガーウィグ
出演/シアーシャ・ローナン/ローリー・メトカーフ/トレイシー・レッツ/ルーカス・ヘッジズ
アメリカの女子高校生を主人公にした青春映画。この手のシチュエーションは日本映画では当たり前だが、アメリカ映画では珍しい。監督が女性ということが大きな理由だと思ったが、女子高校生の会話がかなりきわどい。日本映画にはまったく考えられないシーンが続いていた。同じ年頃の日本人女子高校生の感想を聞いてみたい。
冒頭のクレジット『カリフォルニア州の快楽主義を語る人は-”サクラメントのクリスマスを知らない”J.ディディオン』という何とも自虐的な言葉が出てくる。監督が自身の出身地でもある米カリフォルニア州サクラメントを舞台に、自伝的要素を盛り込みながら描いた青春映画との記載も見つけた。
男だらけの兄弟で育った自分には女子高校生の日常生活なんて、想像だに出来ない。男だって女だって同じようなものだよ、と言われてしまえばそれまでのことだろうか、死ぬまで神秘的なものは変わらない。主人公が通う高校がカトリック系だというのも、彼女の飽き飽き感がもの凄くよく伝わってくる感じがする。妊娠中絶を認めないカトリック、そんなことを皮肉ったセリフや映像があっておもしろい。普通の日本人にはキリスト教は同じようにしか見えないのも現実だろう。
『2ガンズ』(Guns)
2013年・アメリカ 監督/バルタザル・コルマキュル
出演/デンゼル・ワシントン/マーク・ウォールバーグ/ポーラ・パットン/ビル・パクストン
この映画の監督はアイスランド出身であるらしい。観ている途中でこの映画の監督は昔ならサム・ペキンパー、ここしばらくならクエンティン・タランティーノだろうなどと映画通ぶった見方をしていたが、それ以上の監督を知らないだけのこと、やっぱり別の監督だったことが分かり、そうなんだーと頷くばかり。
麻薬取締局の特別捜査官と海軍犯罪捜査局の捜査官が二人の主人公、お互いに相手の素性を知らないままに悪の巣窟へと向かったまでは良かったが、返り討ちにあって七転八倒、アメリカ人気質とでもいうべき行動力で最後はハッピーエンドとなるコメディ・アクションという訳。コメディと分類されるけれど、日本のお笑い芸人のコメディとは似ても似つかない。まず、本人たちが自分や相手の挙動に笑うことはない。観客を笑わせようとしていることもない。こんなことはあり得ないだろうと思えることをやってのけるからこそのコメディだと分かる。
二人で取っ組み合いをして潮時の頃、どっちが先に掴んでいる腕を離すかでもめる。「絶対離すから、3・・2・・1・」と2回やってもどちらも放そうとはしない。相手に信用させようとしていて、どちらも相手を信用していない。そんな付き合い方がアメリカ的だと感じたりする。偏見、知らぬことでしかないのだろうけれど。信じることは疑わないことだと、誰しも分かっているつもりが、なかなかどうして、半信半疑などと大きな声でいうのがオチ。
『麗しき日々』( Les beaux jours)
2013年・フランス 監督/マリオン・ベルノー
出演/ファニー・アルダン/ローラン・ラフィット/パトリック・シェネ/ジャン=フランソワ・ステブナン
今日は2019年3月21日(金曜日)。 60歳で歯科医をリタイアしたカロリーヌ。数カ月前に親友を亡くし心に痛手を感じていた。見かねた娘たちは、シニアクラブの会員証をプレゼントする。気乗りしないまま通い始めたクラブだったが、パソコン教室の若い講師ジュリアンと親しくなり、誘われるままベッドを共にしてしまう...。(Amazonより)
おばばだって恋をする。爺だって同じこと。隙あらば身体を重ねたいとも思うだろう。それは人間が自然に生活していることの証。異常なら狂気に走る輩もたまにはいることも恐ろしい。親友が5か月前に亡くなってしまったことが不倫に走る原因だとしてしまっているが、何が本当かは神にしか分からない。原題を直訳すれば「美しい日々」。
面と向かって新しい他人と親しくなるのには労力がいる。普通の人はそうだろう。何が怖いのか、何が知りたいのか、おおらかな気持ちがあれば何も恐れることはないはずだが、そんなに簡単に人間の心理は動かないのが普通らしい。ボールを壁に向かって投げれば、必ずそのボールがどう戻ってくるのかが分かる。壁が乾いてなければ反発もなく下に落ちてしまうだろう。もしもコンクリートの壁のようなものだったら、自分の想定以上に勢いよくボールが返ってくることになる。自分なりの想像、想定力と実際の現実とのギャップを埋めながら人生は日々明日になって行くのだろう。
『ファントム・スレッド』(Phantom Thread)
2017年・アメリカ 監督/ポール・トーマス・アンダーソン
出演/ダニエル・デイ=ルイス/レスリー・マンヴィル/ヴィッキー・クリープス/カミーラ・ラザフォード
本作は批評家・観客双方から賞賛されている。 Rotten Tomatoesでは276の批評家レビューのうち91%が支持評価を下し、平均評価は10点中8.5点となった。 Metacriticでは359のユーザーレビューに基づいて、平均評価は10点中7.7点となった。Metascoreは51の批評家レビューに基づいて、100点中75点となった。(Wikipediaより)
評価が高いけれど、おもしろくなかった訳ではない。評価の高い映画の欠点である進行の遅さと、繰り返しストーリーにちょっと苛立つが、この映画の主人公の苛立ちを観ていると、自分の欠陥なんて甘っちょろいものだと痛感する。高級既製服をデザイン、仕立てることを生業としている主人公の我儘さ加減は半端ではない。
それが赦されるこの主人公の才能は並大抵ではないようだ。洋服のデザインなんて誰がやったって、さほど変わらないだろうし、もうデザインパターンも出尽くしてしまったのではないかと思われる。ただ人間生活が続く限り、服を着飾ることを辞めることはないであろうから、一部のデザイナーが生き残ることは確かだ。作曲作業にも似ているような気がする。これだけ世界中で作曲されていれば、もうユニークなフレーズなんて生まれてこないような気がしてならないが、次から次へと新曲が発表されている。おそらく生みの苦労は凄まじいに違いないが、そういう仕事ではない人生で仕合わせだった。
『セールスマン』(FORUSHANDE/THE SALESMAN)
2016年・イラン/フランス 監督/アスガー・ファルハディ
出演/シャハブ・ホセイニ/タラネ・アリドゥスティ/ババク・カリミ/ファリド・サッジャディホセ
アーサー・ミラーの「セールスマンの死」が劇中劇として主人公とその妻が舞台に立っている。主人公は大学教授、引っ越してすぐに妻がその部屋でレイプされ暴行されてしまった。その犯人探しが主なストーリーとなっている。暗くて長い映画だ。この監督の作品はいつも評価が高いらしい。この映画もカンヌで男優賞と脚本賞、アカデミー賞で外国語映画賞を受賞しているという。
そういう評価の高い映画を何故かいつもおもしろくなかったと評しているのが私だ。今回も同じ道。ここでも小さな嘘が氾濫している。宗教に関係なく欧米人というひとくくりで、小さな嘘を平気でつく人種と認定しそうだ。映画の話ではない。おそらく現実社会も大した違いはないであろう。
イラン映画を何本か観ているが、この監督作品だったかどうかわからない。そういう映画鑑賞姿勢を強く非難されそうだが、これでいいのだ。監督が誰、この役者の前回出演した作品はこれ、この映画の舞台の歴史的背景はこう、などとたくさんの情報を知っていることは、自分にとっては大きな要素ではない。何の情報もなく映画を観始まって、おもしろいのか、おもしろくないのかが大重要なのだ。事実に基づく映画なら、あとから調べつくして身体の血となってくれればと思うだけだ。
『マッド・プロフェッサー 悪の境界線』(Asesinos inocentes)
2015年・スペイン 監督/ゴンザロ・ベンデーラ
出演/マキシ・イグレシアス/ミゲル・アンヘル・ソラ/ルイス・フェルナンデス/ハビエル・エルナンデス
どうにも欧米人は小さな嘘をつきまくって日常生活をしているに違いないと、思わせるシーンがどの映画にも随所に出てくる。この映画にだって、ひとつや二つではない小さな嘘のオンパレードという感じ。真っ正直にすべてのことに答えるのは馬鹿なんじゃないのと言われているよう。
邦題は狂気の大学教授というくらいだろうが、何のことはない病気の妻のために死亡保険金を遺そうと考えている大学教授が、自殺する勇気がないから試験の点数を加味する代わりに学生に自分を殺してくれと、執拗に迫るというものだった。その学生は学生で、借金を返済できずに暴力団まがいの輩に脅迫されている始末。社会の空気が濁っているように見える。スペイン語は美しいはずなのに、汚く聞こえてくる。
結末には視聴者が驚くような幕の降り方を用意しているような気配があったが、ちっとも驚かなくてよわった。まぁそれまでのずるずるとした展開を観ていれば、それほど期待できないなぁという感覚は否めなかった。小さな、ホントに小さな嘘をひとつつけば、その後の生活は大きく左右されると考える人種が多くなることを祈るばかりだ。
『ハートビート』(High Strung)
2016年・アメリカ/ルーマニア 監督/マイケル・ダミアン
出演/キーナン・カンパ/ニコラス・ガリツィン/ソノヤ・ミズノ/ジェーン・シーモア
成功物語が気持ちいいい。分かっていてもそうなることが映画の基本、原点。圧倒的なサクセス・ストーリーなら大ヒットにつながるのだろうけれど、ストーリーや役者がもう2歩と言うところなのかもしれない。ニューヨークを舞台に夢をかなえるために奮闘する若者たちの姿を、ジャンルを超えた音楽とダンスを融合させて描いた青春エンタテインメント。
プロのバレエダンサーを目指してニューヨークにやってきたルビーは、ある日、地下鉄でバイオリンを演奏するイギリス人青年のジョニーと出会う。2人は徐々に惹かれあっていくが、ルビーは奨学金資格はく奪の危機に直面し、ジョニーはバイオリンを盗まれた上にグリーンカード詐欺に遭ってしまう。追い詰められた2人はヒップホップダンスチーム「スイッチ・ステップス」を誘い、互いの夢をかなえるため弦楽器&ダンスコンクールに出場する。主人公ルビー役は、ロシアの名門バレエ団で活躍し、本作で女優デビューを果たしたキーナン・カンパ。ミュージシャンとしても活躍するニコラス・ガリツィンがジョニー役を演じた。
「エクス・マキナ」にも出演したソノヤ・ミズノが、ルビーの同居人ジャジー役で共演。監督は、歌手やブロードウェー俳優として活躍した経歴を持ち、映画監督や脚本家としても活動するマイケル・ダミアン。ダンサーだった妻でプロデューサー、脚本家のジャニーン・ダミアンとともに執筆した脚本を、自ら映画化した。(映画.comより)
『パシフィック・リム: アップライジング』(Pacific Rim: Uprising)
2018年・アメリカ 監督/スティーヴン・S・デナイト
出演/ジョン・ボイエガ/スコット・イーストウッド/ジン・ティエン/ケイリー・スピーニー/菊地凛子
2013年公開の映画『パシフィック・リム』の続編であるSF怪獣映画。また子供騙し映画だったが、人間が中に入った巨大ロボットが興味深かった。この、巨大ロボットの中に人間が入ってロボットを操る人型巨大兵器を「イェーガー」と呼んでいる。西暦2035年の地球。 太平洋の海底の裂け目から異世界より襲来した異種族「プリカーサー」の操る怪獣との激戦が終結して10年が経過した、というストーリー。
ロボットには興味がある。小学生の頃、欲しいものが何もなかったが、出来れば無線で動くロボットで遊びたいと願っていた節がある。同じロボットでも有線で動くものには何故か興味が湧かなかった。鉄腕アトムや鉄人28号全盛の時代だったが、これらの日本製ロボットにはまったく反応しなかった。天邪鬼なのだろう。
イマイチ好きになれない菊地凛子がアメリカ映画に時々登場する。日本人が思う日本人と外国人が好む日本人とは根本的に違う見本のようなものだと思うしかない。日本人にうけたからってすぐにアメリカで人気になることはない。ドリカムはその典型。悪くはないが、アメリカで売れるだろうと算段したことが間違いだった。音楽性が違い過ぎるのだろう。森昌子の息子、ONE OK ROCK(ワンオクロック)は今や世界標準になりつつある。どこが違うのだろうか。
『ジュピター』(Jupiter Ascending)
2015年・アメリカ/イギリス/オーストラリア 監督/ラナ・ウォシャウスキー/アンディ・ウォシャウスキー
出演/チャニング・テイタム/ミラ・クニス/ショーン・ビーン/エディ・レッドメイン
壮大な空想SF、監督はウォシャウスキー姉弟の二人だというが知らない。主人公ジュピターは亡くなった先代女王の生まれ変わりとして、地球を所有する権利を有してい